「爆破させて正体を知らせないとは…手が込んでるね」
黄金の超人から人間の姿に戻りながら勇介は呟いた。
翔一もファイズフォンの通話ボタンを押して変身を解除する。
「そうですね…」
「…驚かないんだ?」
勇介は地面に落ちたカイザギアを拾い上げながら聞いた。
カイザギアについた砂をを手で軽く払っている。
「えぇ、まぁ…その姿はよく知っているので」
「そっか…何はともあれ、これで新戦力が手に入ったね」
意味ありげに翔一を見つめつつ、カイザギアを軽く持ち上げながら勇介は笑った。
「そのギアは確か特殊な処置を施さないと使えないのでは…?」
「あぁ〜…そう言えばそんな話もあったね。ま、これが本当に対策委員会…オルフェノク対策委員会の事ね…の作ったものならの話だけどね」
「オルフェノク対策委員会にカイザを用意できる連中がいると?」
「そもそもこの世界にこれがある事自体がおかしな事なんだよね」
勇介はカイザギアを太陽にかざしながらまじまじと観察した。
「そんなんで何か分かるんですか?」
「いや、全然」
勇介はあっけらかんと言った。
翔一はわざとらしく肩をすくめた。
「…あ、こんなことしてる場合じゃなかった。皆の所に戻らないと」
「急ぎましょうか」
勇介と翔一はそれぞれ自分の乗って来た二輪車に跨った。
バイクとロードバイクは殆ど変わらない速度でアビドス砂漠を駆け抜けていった。
便利屋達との戦闘が始まってから数十分が経過していた。
以前としてアビドス側が優勢なまま、侵略した側である便利屋達は防戦を強いられていた。
傭兵達の士気は既にあってない様なものだった。
便利屋側は積極的な攻撃による勝利をあきらめ、アビドス側の弾薬が尽きる事による消極的勝利を狙っていた。
即ち兵糧攻めを試みたのである。
しかし、事前情報と異なりアビドス側はシャーレから救援物資を受け取っていた。
従って、当人達は知る由もないが便利屋側の勝利は実質的に不可能となっていた。
「あいつら、まだ弾切れしないのぉ⁉」
うんざりしたようにムツキは叫んだ。
「まだよ!踏ん張りなさいっ!ここで退いたら全部無駄になるじゃないっ!」
自陣の仲間を鼓舞するようにアルは声を張り上げた。
しかし、日雇いの傭兵達は完全に戦意を消失していた。
アビドス側も予想外に高い便利屋の戦闘力に手を焼いていた。
「ん。傭兵は大したことないけど…あの4人は結構強い」
「うーん…中々退いてくれませんねぇ」
「うへ…こっちも決定打に欠けるよね~」
アビドス高校校舎の大時計、その長針が一周の開始地点である12を指した。
予め設定されたシステムによって、時刻の変化を告げる音楽が各所のスピーカーから流され周囲に木霊する。
飛び交っていた銃弾がぴたりと止み、その場の全員が校舎の時計を見上げた。
「あっ!時間だ!」
「あぁ~…疲れたぁ。相手がこんなに強いなんて聞いてないよ…」
傭兵達はこれ幸いと武装を解除して撤収を始めた。
対策委員会は呆気にとられてその光景を眺め、アルは慌てて彼女らを呼び止めようとした。
「ちょ、ちょっと!まだ帰らないで!」
「もう労働時間は終わりだよ。そう言う契約だったでしょ」
「そうだけど!ここで退いたら私達が困るの!」
「そんなの知らないしぃ~あ~!疲れたぁ」
傭兵達のリーダーはそう言うと伸びをしながら帰っていった。
「…これどうする?」
「あぁ!もう!こうなったら私達も撤収するわよ!」
アルはやけくそになって叫んだ。
「あなた達覚えてなさい!」
「あはは!アルちゃん3流悪役みたいなこと言ってる~」
「う、うるさい!いいから逃げ、じゃなかった撤退するわよ!」
「はぁ…」
カヨコのため息と共に便利屋は去っていった。
「ん。勝った…?」
「そのよう…ですね。周囲に敵影、確認できません。襲撃者を撃退しました!」
アヤネの宣言と共に対策委員会の歓声が木霊した。
「…どうやら彼女たちだけで大丈夫だったみたいだね」
アビドス高校付近まで近づいたが銃声は聞こえない。
勇介はヘルメット越しの翔一に聞こえるように大声で言った。
「まだわかりませんよ。あいつらが負けたのかも!」
翔一はフルフェイスヘルメットのバイザーを上げて風切り音に負けないように叫んだ。
「そんな事、微塵も思ってない癖に!」
勇介は笑いながら揶揄するように返した。
翔一はそれには答えずバイザーを下ろして速度を上げた。
「そんなに恥ずかしがることないのに…」
みるみる遠ざかる背中を見つめながら勇介は呟いた。
「…どうやら本当に大丈夫だったみたいだな」
勇介よりも幾分か早く到着した翔一は勝利の喜びを分かち合う対策委員会を見て独りごちた。
「だから言ったじゃない」
追いついた勇介がシロコのロードバイクから降りながら言った。
翔一もホーク11から降りて車体を押しつつ、安堵のため息をついた。
そして、愛車を駐輪場まで押していった。
「さて…シロコに謝らないと。なんて言い訳しようか…」
バタフライオルフェノクの少女との約束…と言っても実際に約束した訳ではないが…を思い出して、シロコのロードバイクについた真新しい傷を撫でながら勇介は苦悩のため息をついた。
数分後、勇介はシロコのドロップキックを喰らって校庭をごろごろと転がった。
「縞々…」
駆け寄った翔一に勇介はそう言い残して気絶した。
翔一はその言葉を反芻しながら合掌した。
翌日の朝、対策委員会は利息の取り立てにやってきたカイザーローンの銀行員に現金を手渡していた。
カイザーローンの銀行員は後方で見守る男性二人に目線をちらちらと移していた。
その挙動不審とも取れる銀行員の行動に勇介と翔一は若干の不信感を抱いた。
「…では、全て現金でお支払い頂きました。今回のお支払いは以上となります」
「うへ…いつも悪いね。こっちまで来てもらって」
ホシノの発言は口座引き落としを認めないカイザーローンに対する嫌味だったが、銀行員は気づいていないのかそれには一切反応せずにしきりに勇介と翔一を気にしていた。
「とんでもございません…あの、所であちらのお二方は…?」
「シャーレの先生とアビドスに最近住んでいる翔一さんです。お二人は私達の借金返済のお手伝いをして頂いていて…」
ノノミの紹介を受けて勇介と翔一は軽く会釈した。
銀行員は慌てて会釈を返した。
「で、では私はこの辺で」
銀行員はそそくさと逃げ去る様に帰っていった。
対策委員会に面々はその光景に首を傾げた。
その後、対策委員会はいつもの部室で昨日の一件について会議していた。
「昨日の襲撃についてですが、傭兵を率いていたのは便利屋68という組織でゲヘナ学園の生徒が経営している様です。メンバーは社長の陸八魔アルさん、課長の鬼方カヨコさん、室長の浅黄ムツキさん、一般社員の伊草ハルカさんの4人です」
「ん。驚いた。ゲヘナは会社の起業が認められてるの?」
「いえ、校則で禁止されているので恐らく勝手に起業したものと思われますが…」
「ごっこ遊びか」
翔一は小馬鹿にした様に鼻で笑った。
「とは言え馬鹿には出来ません。先生からの支援が無ければ私達は寧ろ劣勢に立たされていたでしょうから」
「その通りだねぇ〜。うへぇ、先生にはお世話になってばかりだよぉ」
ホシノは両手を軽く上げて首を左右に振った。
「生徒の手伝いをするのが私の仕事だからね」
勇介はいつもの様に壁にもたれかかったままそう言った。
「…話を戻します。便利屋の皆さんが率いていた傭兵が落としていった装備を調査した所、既に流通していないものでした。これを何処で手に入れたかが分かれば便利屋68を雇って私達を狙った相手が何者かを知る手掛かりになると思います」
「ん。もう一般の市場には流通していないもの…という事は」
「ブラックマーケット…?」
セリカの呟きに翔一と勇介以外の全員が頷いた。
「ごめん。ブラックマーケットって?」
勇介の疑問にアヤネが解答した。
「ブラックマーケットは中退、休学、停学等の理由で学校をやめた生徒が根城にしている場所です。その他にも非合法の裏組織や闇企業がブラックマーケットに集まっています」
「じゃあそのブラックマーケットとやらに行くのか?」
「行かない事には調査のしようが無いからね」
翔一の問いにホシノはさもありなんと頷いた。
「それじゃあ皆さん。ブラックマーケットへ〜ゴー!」
ノノミの楽しそうな掛け声に二人の男は顔を見合わせ肩をすくめた。
最近、スランプ気味だと感じていたんですが今回は割とよく出来たのではないかなぁと思いましたマル
ただ、心理学的にはクリエイターは自分の作品を過大評価しがちであると…
その通りだなぁ(白目)
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