Puriφ's 方舟の花々   作:ばりるべい

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対策委員会編 ユメガナイ チイサナホシノハナシ
新しい出会い


 

シャーレなる単語やようやく出会った普通の成人の存在に首を傾げながらも、俺は黙って事の成り行きを静観していた。

どうやら連邦生徒会なる行政機関にアヤネが連絡を送っていたらしい。

で、晴れて支援が認められたという訳だ。

 

「皆、今までたったの6人で頑張ってきたのか」

 

先生は感心した様に言った。

 

「正確には5人ですよ。俺は新参の居候に過ぎないんで」

 

「こ〜ら!自分を卑下しないの!あんたがいなかったら私もシロコ先輩もこの場にいなかったんだから」

 

セリカにそう言われ、俺は思わず頭をかいた。

自分を卑下するのはよくあったが、それを咎められる事は今まで一度たりとも無かった。

 

「君は…どうやってここに?」

 

「いや、それが一切わからないもんで困ってるんですよ…」

 

俺は再び頭をかいた。

しかし、男性が来てくれたのは助かった。

女子ばかりの空間は非常に肩身が狭い。

 

「所で、先生はこちらにどの位滞在するご予定で?」

 

「うーん。君たちの問題が解決するまでは離れないほうがいいと思うんだけど…流石にずっとって訳にもいかないしなぁ…物資が届くまで?」

 

「さいですか」

 

俺は適当に相槌を打った。

 

「何はともあれ、これで…」

 

アヤネの台詞は爆発音に遮られた。

全員が窓際に殺到する。

 

校門付近でヘルメットを被った集団が発砲していた。

 

「アビドス高校の諸君、我々はヘルメット団だ!」

 

「まんまだな」

 

「名は体を表すって言うからね」

 

俺のぼやきにホシノが乗っかった。

 

「我々の要求はただ一つ!ここを出ていってもらう!」

 

「人ん地に土足で踏み入って何ってんだ…部外者の俺が言える事じゃ無いが」

 

「あんたはもう部外者なんかじゃ無いわよ」

 

俺は自分を下げるのがなんとなく常習化している訳だが、コイツらといると非常にやりにくい。

悪いのはコイツらではなく俺の方なのだが。

 

「要求に応えなければ実力を行使する!」

 

「…だってよ」

 

「いいねぇ。思い知らせてあげようか」

 

ホシノがぎらぎらとした目つきで挑戦的に言った。

対策委員会の面々も重々しく頷いた。

 

全員が銃器を持って部屋を飛び出した。

俺も自室へ向かおうとしたのを先生が引き留めた。

 

「君は戦えないでしょう?」

 

「いや、俺には」

 

「ファイズの力がある…って?」

 

俺は衝撃のあまり目を見開いたまま固まった。

 

「ファイズの力はオルフェノクを倒す為のものだよ。人と戦う為の道具じゃ無い」

 

「それは…」

 

正しい。

反論の余地は無い。

 

「信じてあげたら?君が来る前から彼女達は戦っていたんだろ?」

 

「そう…ですね」

 

窓際から俺達は校庭を見下ろした。

 

シロコとセリカが先陣を切って奴らに突撃していく。

アヤネが弾切れしたタイミングでドローンを使った給弾の援助をする。

ノノミとホシノは固定砲台として敵を薙ぎ払っていく。

 

時に視覚からの敵の接近をカバーしたり、時に自ら仲間を守る盾となり、皆が皆のために行動している。

戦場にいながら自らの役目を果たしつつだ。

 

凄まじい連携だ。

確かに付き合いの浅い俺が加わった所で足を引っ張るだけだっただろう。

 

「ね?」

 

先生は俺の肩に手を置いて一言だけ言った。

俺は何も言わずに頷いた。

 

「はぁ…大口叩いた割に大した事はなかったわね」

 

死屍累々と地面に転がるヘルメット団を見回しながらセリカはそう言った。

 

「一昨日きやがれ…ってやつですね♪」

 

「ノノミ先輩…そんな台詞をどこで…」

 

アヤネはノノミの発言に困惑した。

 

「まっ、おじさん達の敵じゃなかったねぇ」

 

「ん。私達の勝ち。なんで負けたか次に会う時までに考えておいて」

 

シロコは気絶しているヘルメット団の一人を叩き起こして態々聞かせた。

 

全員が和気藹々としながら校舎へと戻っていった。

 

 

 

一部始終を数十メートル離れた廃ビルの屋上からもう一人の超人カイザが見つめていた。

 

 

 

その後、特にやる事の無くなった俺達は一旦解散して、各々好きな様に行動を始めた。

俺とセリカはシフトが入っているので柴関ラーメンへと向かう事にした。

 

「お前もヘルメットあったら後ろに乗せれるんだがなぁ」

 

「さっきの今でヘルメットの話する?」

 

「ヘルメット団は関係ないだろ。道具は使うやつの問題だ」

 

「何カッコつけてんのよ」

 

「えぇ…そんなつもりは無かったんだが…」

 

そんな軽口を叩ける関係性になった事に若干の感動を覚えつつ、柴関ラーメンへの道を進んでいった。

 

「いらっしゃいませ〜」

 

入り口の戸を開けると知らない女子の声が閑散とした店内にこだました。

 

「…誰?」

 

「…あ、もしかしてぇ、バイトの先輩方ですかぁ?」

 

やけに間延びした喋り方の女子はどうやら新しいバイトの様だ。

柴大将はこうも連続して新しいバイトを雇って大丈夫なのだろうか。

言っちゃ悪いが、今の柴関ラーメンにそんな余裕がある様には見えない。

まさか、店員を増やして人海戦術を試みるつもりか。

そもそも、客自体が少ないと言うのに。

 

「おぉ!来たか。この子、新しく入った野入ミツコちゃんだ。仲良くしてやってくれ」

 

奥から湯気と共に現れた大将は額に汗を浮かべながらそう言った。

 

「…俺は巽翔一、よろしく。で、こっちが」

 

「黒見セリカよ…よろしく」

 

既に胡散臭いものを見る目でミツコを見つめているセリカを横目に俺は制服を取り出した。

 

「まぁ…その、なんだ。仲良くな…」

 

「分かってるわよ…」

 

「もっちろんですぅ」

 

 

 

素人目にもミツコは戦力になっている様に見えた。

意外にも細かい所まで気配りが出来ている。

ただ、潔癖症なのか、凝り性なのかやけに掃除に時間をかけている。

悪い事では無いので注意しにくいのだが…

 

「翔ちゃん!この鍋簿様子見といてくれる⁉」

 

「はいっ!」

 

いつの間にか大将から翔ちゃんと呼ばれるようになっていた。

セリカにはバックヤードで散々からかわれた。

 

「翔ちゃんせんぱ~い。これってぇどうすればいいですかぁ」

 

ミツコにもそう呼ばれるようになってしまった。

しかしこの娘、距離感がおかしいというか物理的に近い。

なんかやたら密着してくるんだが。

 

あと、スカートが驚く程短い。

アビドスの面々もスカートの丈が膝より上なので田舎者の俺には刺激が強かったが、この娘は短いとかいう次元を超えている。

少し屈んだだけでパンツが見えそうだ。

 

「ねぇねぇせんぱい。せんぱいってぇ今付き合ってる人とかいるんですかぁ?」

 

バイトに関係ない事でも密着しながら聞いてくる様になった。

ちょくちょく裏方からセリカに睨まれ、内心戦々恐々としているのだが…

彼女は気づいていないのか、気づいたうえで無視しているのか、密着を止めようとしない。

柴大将は忙し過ぎてそもそも俺達の方を見ていないので助け舟を出してくれる人物はいない。

 

「ちょっと近すぎないか…?」

 

「えぇ~?そうですかぁ?これくらい普通だと思いますけどぉ」

 

なんだこいつ

実質的に近いって言ってるんだよ

 

「離れなさいよ。翔一が迷惑してるでしょ」

 

ナイスだ、セリカ

 

「えぇ~、本人はそうは言ってませんけどぉ」

 

直接的に言わないとわからないのか?

 

「あんた、空気読めないの?今は仕事中なのよ」

 

「ちっ」

 

ミツコは顔を歪めてしぶしぶ離れていった。

 

やはり女は恐ろしい生き物だ。

そう思った。

 

 

 

仕事が終わってからもミツコは付き纏ってきた。

今はアビドス砂漠を3人で歩いて帰っている。

セリカがすこぶる不機嫌そうだ。

 

なんでこうなっちゃうかねぇ

 

ミツコは相変わらず俺の片手に密着している。

凄まじく歩きづらい。

 

「ねぇ、せんぱい。アタシてどうですかぁ?こう見えても結構人気なんですよぉ」

 

「あんたねぇ、いつまでくっついてるのよ!あんたも嫌なら自分で振りほどく位しなさいよ!」

 

「そんなこと言ったってなぁ」

 

「…私、もう一人で帰るから」

 

セリカは根が優しい割に勝気なので感情的になった時、非常に御しにくい。

つかつかと不機嫌であるのが目に見える様子でセリカは行ってしまった。

 

「あちゃぁ…行っちゃいましたねぇ」

 

「君、どういうつもりなんだ?」

 

「どういうつもりってぇ、せんぱいを狙ってるんですよぉ」

 

訳が分からない

 

突然、風が吹いて彼女の長袖の隙間から包帯の巻かれた腕が見えた。

 

「…その腕は?差し支えなければ…」

 

「いやだな、ただのやけどですよ…」

 

彼女は慌てて包帯の巻かれた腕を隠してうつむいた。

初めて仮面をかぶっていない彼女の素面を垣間見たような気がした。

 

「…じゃあまた明日…セリカともできれば仲良くしてやってくれ」

 

ミツコはそれには答えなかった。

ただ、夜風の肌寒さ以外の何かに震えていた。

俺の脳裏にその光景は強く焼き付いた。

 




オリキャラもちょこちょこ出していきます。
オリキャラの正体…一体ナニモノナンダ。

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