「私は認めない!」
早朝からセリカの大声が響いた。
全く知る由もなかった事だがこの学校は9億もの借金があるらしい。
なぜそんなに膨れ上がったのかというと、カイザーとか言う悪徳企業に法外な利子をつけられていたからだそうだ。
カイザー…ね
いやな響きだ
「でも、セリカちゃん!先生は私達のために」
「確かに感謝してる!でも、今まで私達の学校は私達自身で守ってきた。大人は見て見ぬふりをしてきただけ!今更都合がいいと思わないの!」
「それまでの大人と先生には何の関係もないだろ」
思わず俺は反論した。
「うるさい!あんたには関係ないでしょ⁉」
「セリカちゃん」
ホシノが咎めるようにセリカの名を呼んだ。
「あ…」
「…悪い。部外者が口出ししていい事じゃなかった」
何を勘違いしていたんだ
彼女達が俺を内輪のように扱ってくれたのはただの優しさに過ぎない
結局のところ、俺はどこまで行っても部外者に過ぎないのだ
俺は頭をかきながら部屋を出ていった。
「せんぱ~い、なんか元気ないっすねぇ。ハグしてあげましょっか⁉」
俺は柴関ラーメンで湯切りをしていた。
あの後、いたたまれなくなって一人でやってきたのだ。
本来、シフトは入っていなかったが柴大将は俺の顔を見るなり、働いて気を紛らわしちまいなと制服を渡してくれたのだ。
よっぽどひどい顔をしていたんだろうな、俺は…
「んが~!無視しないでくださいよぉ」
昨夜とは対照的に、ミツコは元気いっぱいだ。
湯切り中だと言うのに後ろからぽかぽかと叩いてくる。
結構痛い。
この世界の住人は素の状態でオルフェノク並の力を発揮してくる。
あいつらと喧嘩したら最悪殺されるな…
喧嘩でファイズギアを使うなんて大人げない事はしないが。
そんなこんなでミツコを適当にあしらっていると、勢い良く戸が開いてセリカが息を切らしながら入ってきた。
「あ、あのね…その…ごめんなさい」
セリカは勢いよく頭を下げた。
「いや、お前は正しい。俺の方が勘違いしてたんだ」
「え、何の話っすか」
「勘違いって…何言ってるの?」
「いや、こっちの台詞なんすけど…」
「俺は結局部外者なんだ…あれは俺が口出ししていい事じゃなかった」
「ねぇ、何の話?何の話なんすか!ねぇ」
「うっさいわね、あんたこそ一番関係ないんだから黙ってなさい」
「はぁ⁉」
戸が開いて先生を含む対策委員会の面々が入ってきた。
「セリカちゃん?…それに翔一さんも」
「セリカちゃん、ここにいたんですねぇ」
「ん…もしかしてここでバイトしてる?」
「もう一人のバイトちゃんは誰なのかなぁ?」
最早収拾がつかなくなりつつある。
「お⁉団体様とは珍しいじゃねぇか」
奥から柴大将が現れて目を丸くしながら言った。
「…とりあえず座ろうか」
先生が最もらしい事を言った。
「へぇ。じゃあミツコちゃんはこの辺に住んでるんだねぇ」
柴大将の厚意で俺はシフトを繰り上げてもらい、今日の労働はこれにて終了となった。
おまけに、対策委員会の面々と一緒にまかないを出してくれるという事で、俺は店員から客へと早変わりした。
まかないなので正確には客ではないが。
「アビドスのどの辺りに住んでいらっしゃるんですか?」
「ここから歩いて数分の距離ですよぉ」
ミツコは他に客もいないので、出来上がるまで対策委員会の面々と世間話に興じている。
前々から感じていたが、彼女はあまり自己開示をしない。
自分自身について語るのを極端に避けている。
「あ、出来たみたいですね。少々お待ちくださ~い」
盆にどんぶりを乗せるミツコを横目に俺はセリカと話していた。
「だからまぁ…あんまり気に病むなよ」
「でも…私、昨日はああ言ったのに」
「感情的に受け入れられなかったんだろ。もういいって」
「うん…ごめん」
俺は目の前に置かれたラーメンをすすった。
心なしか味にばらつきがあるように感じた。
数時間後、自室で眠っていた翔一はシロコに叩き起こされた。
セリカがいつまで経っても帰って来ないのだと言う。
時計を見ると9時を下回っていた。
「セリカがこの時間になっても帰って来なかった事は?」
「ん。一度もない」
翔一とシロコはホーク11に跨った。
リアシートにシロコがタンデムする形になる。
シロコの分のヘルメットが無いが、今はそれどころではない。
二人は闇夜のアビドス砂漠一体を捜索する。
だが、どれだけ探しても影も形も見つからず時間は刻一刻と過ぎていった。
「くそっ、この間のヘルメット団とかいう連中の仕業じゃないのか…?」
その時、シロコのインカムに先生からの通信が入った。
「翔一、シロコ、聞こえるかな。連邦生徒会のセントラルネットワークにアクセスして、セリカの携帯端末の現在地を特定した。そこからかなり近い位置を移動してる。恐らく、トラックか何かに乗せられていると思う」
対向車線をヘルメットを着けた連中が運転するトラックが通り過ぎて行った。
「あれかっ!」
先の交差点で転回してトラックを追いかける。
次々にギアを上げて加速していく。
スピードメーターは100を切った。
トラックの後部がどんどん近づいていく。
相手も翔一達の存在に気付いてカバーのかかった荷台から身を乗り出して発砲してきた。
「シロコ、頼む」
5・5・5・ENTER
シロコは翔一の腰のドライバーにファイズフォンを差し込んだ。
「変身」
真紅の光が翔一を包み込んだ。
「おいおい、なんだよあれ!」
トラックの荷台から外の様子を見ていたヘルメット団の一人が動揺して叫んだ。
「慌てないで、あれはあくまで運転手よ。彼自身は手出し出来っこないわ」
助手席の女は冷静に言った。
トラックの荷台の中で縛られたセリカは何とか逃げ出そうと様子を伺っていた。
数時間前、一人で帰っていたところを突如襲撃され気が付いたらこのトラックの中で縛られていたのだった。
以前のセリカであったのなら恐怖心に屈していたかも知れない。
だが、数多のオルフェノクとの戦いを潜り抜け、翔一とファイズと言う精神的な支えまで手にしたセリカには恐れるに値しない。
トラックが一際大きく揺れ、弾みでセリカの手首を縛っていたロープが外れた。
手首の力を使って飛び起き、ヘルメット団の一人をドロップキックで荷台から外へと蹴り落とした。
蹴り落とされたヘルメット団の団員はアスファルトの道をごろごろと転がっていった。
「てめぇッ!」
仲間をやられたヘルメット団の片割れが逆上してセリカを押し倒した。
銃床でセリカの顔を二度、三度殴りつける。
頭に強い衝撃が走ってセリカの抵抗する力が弱まった。
四度、銃床が振り下ろされる。
馬乗りになっている相手の背後が赤く光った。
車体が大きく揺れ、ぐらりと傾いて横倒しになった。
セリカとヘルメット団員は荷台の中で宙を待った。
双方、受け身を取る暇もなく床に叩きつけられた。
セリカは力を振り絞って立ち上がった。
相手の銃を掴み取り、ヘルメットの下の顔面に銃口を押さえつけて引き金を引いた。
二発、三発と繰り返し、相手が完全に気絶したのを確認してからセリカは荷台の外へ出た。
シロコに指示されてフォンブラスターで後輪を撃ち抜いたが本当に大丈夫なのだろうか。
横倒しになったトラックの手前に停車して様子を伺っていると、アヤネの運転する車両に乗った先生達が到着した。
アヤネって運転できるのか…
何気に今日一番の驚きかも知れない。
たわいもない事を考えているとヘルメット団が頭を押さえながら降りてきた。
横転した際に打ったのだろう。
「なんなんだよ…こんなの聞いてねぇぞ!」
ヘルメット団どもはファイズとなった俺を見て慄いている様だ。
「クソっ!化け物なんか相手してられるか!」
ヘルメット団の連中は捨て台詞を残しながら去っていった。
「化け物…ねぇ」
変身を解除しながら俺は呟いた。
「あんまり気にしないのが身の為だ」
後ろから先生が肩に手を置いてそう言った。
前々から感じていたが先生はまるで戦士としての先駆者の様だ。
一つ一つの発言に重みがある。
トラックの荷台からセリカが姿を現した。
ふらふらとおぼつかない足取りでこちらに向かってくる。
「セリカちゃん!」
対策委員会の面々がセリカの元へと駆け寄った。
「セリカちゃん、怪我はないですか?」
「うん…大丈夫よ。何発か殴られたけど平気…皆、助けてくれてありがとう」
「いやぁ、先生がいなかったら助けられなかったよ。ね、皆?」
ホシノの発言に全員が頷いた。
「そっか…先生、それに翔一も皆も本当にありが」
どすっと音が響いてセリカの台詞は途切れた。
セリカの胸を触手の様なものが貫いていた。
“喧嘩でファイズギアを使うなんて大人げない事はしないが”
言われてるぞたっくん(小説版)
それにしても、僕の文章はやっぱりお堅いのかなぁ…
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