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続きだよ。ぶっちゃけ最後の奴を書きたいがためにこの話を書いたまである。
家に着いて、まず最初にやったことは。
「ひじりん、さすがにストリクト過ぎない? 目隠しに手枷もだなんてさ」
「ダメ。これくらいはしないと。後は耳栓も」
お風呂に入ること。間違いなくこれが一番難易度が高い。ご飯よりも先に消化しておかないと。
間違ってもバクシンオーの裸を見るわけにはいかない。そのためには目、耳、手と動かせるところはしっかりと制限をしなければ。できれば足もしたいところだけど……さすがに制限がキツ過ぎる。足まで縛ったら移動すらままならないから。
「別にトレーナーさんになら裸を見られても構わないのですが」
なんて言ってるバクシンオーがいるけど!
「ダメ、絶対にダメ! 付き合ってもないのに裸を見るなんて……そんなの絶対にダメだよっ! もっと恥じらいをもって!」
「では、今から付き合えばよろしいのではないでしょうか? 私はトレーナーさんが大好きなので即OKです! おぉ! これはなんという名案ッッ! ではトレーナーさん、今すぐにでも」
「だだだ、ダメだよバクシンオー! つ、つ、つ、付き合うのは、あ、アタシなんだから!?」
付き合ってもないのに裸を見るなんてこと、絶対にダメだ! 神が許したとしても僕が許さない! 絶対に、絶対にこれだけはキープしてみせる!
なんてすったもんだがあったけど、どうにかお風呂に入ることができた*1。当然、縛られたままの僕ではなにもできないのでヤン子、もといバクシンオーに手伝ってもらってである。
「いや~、中々新鮮な気分ですね。自分の身体を洗うことになるとはッ!」
「……まぁ、普通絶対にありえないことだからね」
バクシンオーが感動しているけど、まず精神が入れ替わるなんて状況がない。自分の身体を介護士のように洗う機会なんて普通はないんだ。僕達の状況が相当なイレギュラーなんだから。
というか、お風呂に入っている時に思ったけど。
「ヤン子はどうしてたんだろうね? 僕らが入ってる間は暇だったと思うけど」
ヤン子は今僕の身体。一緒に入るわけにはいかないので適当に寛いでもらうように言っていた。結構長い時間お風呂に入ってたし、かなりの時間暇だったと思うんだけど、いったい何をしていたのか。
(家の散策するのは構わないけど、面白いもの何もないしなぁ。ゲームでもしてるのかな?)
なんて思いながらリビングの扉に手をかけると。
「あ、お帰り~ひじりんにバクシンオー。もう少しでメイキングが終わるからちょい待ってね~」
「おぉ! これは、なんと豪華な食事でしょうかッ!」
かなりの量の食事がテーブルに所狭しと並んでいた。どうやらお風呂に入ってる間に、粗方作り終わったらしい。
「凄いね。でも、よくこれ作るだけの時間があったね?」
「ありがと☆ ま~キッチンがラージサイズだからね。短いタイパでいろいろできるってわけ」
ご飯を眺めているとぐぅ~、とお腹の鳴る音が聞こえる。発生源は隣のバクシンオーと、僕だ。ここまで何も食べてこなかったから仕方ないか。
「アハハ! もうちょっとで出来上がりだからウェイトだよ2人とも。すぐに出来るからさ」
「はいッ! いい子に待ちますッ!」
「その間テレビでも見ようか」
ちなみに、ヤン子が作った料理は絶品だった。
「ね、ね、どう? 毎日でも食べたいっしょ?」
「そうだね。毎日食べられる人は幸せだろうね」
「ふっふ~ん♪ひじりんならエブリデイ食べさせてあげる!」
「トレーナーさん! 明日の朝は私が作りましょうッ! バクシンで模範的な朝食を作りますよ~!」
「模範的はともかくバクシン的って何?」
……食べている最中の会話は、気にしないようにしよう。僕に対する目が捕食的だったのはきっと気のせいだ。逃さないとばかりに僕を見ていたのはきっと気のせいだ。いや、気のせいで乗り切るの無理だろ僕。
「ヤン子の食事なら毎日でも食べたいくらいだよ」
「急にどうしたの? そんなこと口走って。スマホをしながらは行儀が悪いよ」
「あ~ごめんごめん。ちょいとね」
ヤン子がスマホを開きながらなにかしていたけど、何をしていたのかは分からなかった。というかいきなり何を口走っているのだろうか? 間違ってはいないけどさ。
ご飯を食べ終わったらゆっくりとする時間。バクシンオーと一緒にテレビを見る。
「シュガーライツ博士のST-2も凄いね。いろんな分野で活躍しているよ」
「どこでも引っ張りだこだと仰っていました。ですが今度合間を縫って会いに来るそうですよッ!」
「そうなんだ。その時はおもてなしを」
しよう、なんて口にする前に。
「きゃあああぁぁぁ!?」
「ちょわぁ!? な、なにご」
「ヤン子ッ!」
お風呂場の方から低い悲鳴が聞こえてきた。聞こえてきた瞬間には、もう身体が動いていた。
今のはヤン子だ。僕の低い声で、ヤン子が悲鳴を上げていた。
(一体何が!)
考える暇なんてない。とにかくヤン子のところに急がないと!
声が聞こえてきた扉の前へとたどり着く。とにかくヤン子の無事を確認しよう。
「ヤン子! 大丈夫!?」
「なにがあったんですかヤングさん! 今模範的な学級委員長とトレーナーさんが助けに来ましたよ!」
願わくば扉を開けてほしいけど、固く閉ざされている。ウマ娘のパワーでも壊れない頑丈な扉にしたのが仇になったか!
焦る。凄く焦っているけど。
「だ、大丈夫! 大丈夫だから! セーフティセーフティ! ちょっとGが出てね!? びっくりしただけ!」
「じ、Gですと!? それはいけません! 今すぐ退治を」
「だからセーフティだよ! もうどこかにゲットアウェイしたから!」
どうもGが出たらしい。なら、大丈夫か? 大丈夫じゃないかもしれないけど、とにかく命とかそういうのに関わることじゃなくてほっと安心した。
とはいえ、だ。
「掃除しても出てくるね、やっぱり。もっと対策をしないと」
「あ、あはは……ほ、程々でもいいんじゃないかな~?」
「ダメだよ。こういうのはしっかりと対策をしないと。ヤン子が怖がってるし、少しでも遭遇する確率を減らす努力をしないといけない」
「……ごめんなさい」
なんで謝るんだろう。気にしなくてもいいのに。
いろいろとあったものの、気づけばあっという間に寝る時間。客間に布団を出して、寝る準備を整える。
「トレーナーさん。お仕事はいけませんよ? 私がしっかりと見張りますからねッ!」
「さすがにバクシンオーの身体でそんなことしないよ……ところでヤン子は大丈夫なの? 僕のベッドだけど」
「問題ナッシング! それじゃ、グッナ~イ」
ヤン子は僕の部屋へ。そりゃここで寝るわけにはいかないしね。起きた時には意識が戻っているわけだし。
さて、早いところ寝ないとだ。
「それじゃあおやすみバクシンオー。明日には元に戻ってることを祈ろう」
「タキオンさんが明日には戻ると言っていたので大丈夫かとッ! 信頼できますよッ!」
「そりゃそうなんだけどね。とにかくおやすみ」
布団を被って寝る。明日には元に戻っていることを願って。
なんて思いながら眠りにつくと。
「バクシンオー、トレーナーはスリープモード?」
「ばっちり寝ていますよっ」
「あんまりシャウトしないでね。トレーナーが起きるから」
ヤン子が戻ってくる夢を見た。さっき僕の部屋で寝ると言っていたヤン子が、僕とバクシンオーが寝ている部屋に帰ってきたのである。
(まぁ所詮夢だし、いいか)
夢としてさっきの光景を見ているだけ。特に気にすることじゃないか。とにかく眠いし。
「それじゃあ、アタシがここの間に入って……」
「カメラのフラッシュに気を付けてくださいっ。明かりで起きてしまわれますっ」
「ドンウォーリー。アタシがそんなヘマするわけないって。それじゃ、失礼しま~す」
なんか、隣がもぞもぞ動いているな。夢の割には随分と現実感のある。なんか、実際に動いているような。
「アングルはこんな感じで、フォトジェニックは気にせず、パシャリ、と」
「どんな感じですかっ」
「う~ん……やっぱダークだね。ま、この程度プロセシングでどうとでもなるっしょ」
夢の中の2人は一体何をしているのやら……。
◇
朝。起きてみると。
「……なんで僕の部屋で寝てないの?」
身体はしっかり元に戻っていた。慣れ親しんだ自分の身体。ウマ娘の身体から戻ったから、結構重く感じるけど僕の身体だ。タキオンの言っていた通り、一日経てば元に戻るようだ。後で結果の方をタキオンに送っておこう。
いや、それはどうでもいい。どうでもよくはないけど、今この状況よりはどうでもいいよ。なんで僕は右にバクシンオー、左にヤン子を侍らせているんだ。どういう状況なのこれは?
(夢で見たような構図だな。僕が真ん中にいて、2人が挟み込んでいる図)
あれは夢だったはずだ。正夢のはずは……多分ない。というかこの状況を脱したい。右も左も抱き着かれて大変なことになっている。
でも、脱出できない。なんでかと言われたら、ウマ娘のパワーで抱き着かれてるからで。
「振りほどけるはずもないよね……」
仕方ないから2人が起きるまで待つかぁ。
で、起きた後なんだけど。
「なんで僕の部屋で寝てないの? そっちで寝るって言ってなかったっけ?」
「お手洗いでウェイクアップした時にミステイクしちゃったかな? ごめんごめん」
「僕の部屋2階なんだけど間違う要素ある?」
なんで僕が1階の客間で寝ていたのかをヤン子に問い詰めた。なんでもトイレに行った時に間違えて入ってきたらしい。いや、ゼッタイ噓でしょ。僕の部屋2階なんだから間違えることなんて絶対にないんだから。
どれだけ問い詰めようがヤン子はのらりくらりと躱し続け。教える気はないみたいだから諦めた。
それに、問い詰めている間にバクシンオーが朝食を作ってくれたし。
「委員長の朝食です! どうぞお召し上がりください!」
献立は和、といった感じのご飯。白ご飯に味噌汁、卵焼きに焼鮭。バクシンオーも料理できたみたいだ。
「美味しいね、うん」
「そうでしょう! 毎日でも食べたいですかッ!?」
「圧が強いね。まぁ毎日食べられたら幸せじゃないかな?」
妙に機嫌が良いバクシンオーを横目にご飯を食べた。
で、支度を済ませて学園へ行こうとしているんだけど。
「なんで2人は僕の隣をキープしているのかな?」
「定位置ですッ!」
「ここがベストポジションだからだよ?」
「……もうツッコむのも疲れたよ」
当たり前のように一緒に行くことになった。なんか言われるのも面倒だし、周りが騒ぎそうだから別々の時間に出ようとしたのに、2人とも頑なに出ていかないし。鍵を閉める関係で僕は最後に出なきゃいけないから、2人には先に行くよう促していたのに。梃子でも動かないとばかりに僕が出るのを待っていた。
遅刻するのも嫌なので3人で学園へ。
「学園に着く頃には別れてね。いろいろと面倒だから」
「周りは気にする必要ないかと! 私は気にしません!」
「アタシも特にかな~? むしろ、見せつけちゃう?」
「……はいはい」
もう何言っても無駄だね、これ。悪い気分はしないからいいけど。
案の定学園に着く頃には騒がれていた。
「見て。サクラバクシンオーさんとフォーエバーヤングさんが」
「トレーナーさんと一緒だー! 仲睦まじいね~」
「いやはや、これは2人がかなりリードってところかな? トレちゃんに報告しよっと」
たづなさんに呼び出されるんだろうな、これ。
「ふふ~ん。これぞ委員長の完璧な計画です! まだるっこしいことはせずともバクシンすればいいのですッ!」
「ちょ、ちょっとエンバレスト、だけど。これでひじりんとの仲が広まるなら……っ!」
とりあえず今の内に言い訳を考えておこうかな。
◇
身体が元に戻った日の出来事。フォーエバーヤングは周りをこそこそと気にしながら、人目のつかないところに移動している。
右を見て、左を見て。誰もいないことを確認した後。
「……よし」
意を決したように鞄を漁り、中からあるものを取り出した。
定規。なんの変哲もない、ただの定規、文房具だ。別に変わった機能があるわけでもない、どこにでも市販されているような定規を手に持つ。
両手に持つ。落としてしまいそうなほどに手は震え、今からやろうとしていることに恐怖を覚えている。
「……」
無言。1つ深呼吸をして、覚悟が決まらないのかもう1つ深呼吸をして。何度か繰り返す。
覚悟が決まらないのか、葛藤しているのか。逡巡し、俯いて、やがてバっと顔を上げる。
「……よしっ!」
再度意を決し、定規を持った手を動かした、その時。
「あれ? こんなとこでどしたんヤン子」
「わあああぁぁぁあああ!?!?」
「うわびっくりした!? ホントにどしたし!?」
後ろから声をかけてきたトーセンジョーダンに大声をあげ、思わず定規を放り投げた。
目の前でびっくりしているトーセンジョーダンに対し、必死に言い訳を並べる。
「い、いや~! アタシのイノベーションがここで反応してね! イノベってたんだよ!」
「あ、あ~、そうなん? こんなとこでイノベんのよく分かんねーけど」
「そういうこともあるって! ジョーダンだってあるっしょ!?」
「いや、そもそもイノベるってのがよく分からんし」
放り投げた定規を丁寧に拾い上げて、差し出す。
「はい、放り投げたやつ」
「あ、ありがとっ」
「てか、後ろから声かけただけでビビりすぎ。もしかして、ヤン子って結構ビビり?」
揶揄うような笑顔に対し、曖昧な笑顔で濁す。頭の中では、さっきの自分の行動に対する羞恥心でいっぱいだった。
(マジ、マジ何してんのアタシ!? いや、もう、ほんとに……~っ!)
「てか、やべー顔赤いけど。風邪でも引いたん? なら保健室に」
「大丈夫! パーフェクトオールグリーンだから! なんも問題ナッシングだから!」
「う、うん」
その場を立ち去る。さっきの行動を隠すように。
入れ替わっていた日のことを思い出しつつ、数日は悶々とした日々を過ごすフォーエバーヤングだった。
高等部組は進んでるなぁ。なぁタキオン?ジェンティル?