恋のダービーステークス   作:カニ漁船

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なんか唐突に出力できたひじりんの性癖暴露回。最初から最後までギャグです。


ミーティアは暴きたい

 その日、ミーティアのメンバーには緊張が走っていた。

 

「い、いよいよ、ですねっ」

「はい、キタさんっ。いよいよですっ」

「タノシミー!」

 

 テレビの前で座っているメンバー。外泊届を出して、ミーティアメンバーが勢ぞろいしている。

 

「どうしてこんなことに……まぁ、借りがあるから仕方ないが」

「そうですわよね? それに、貴方も気になるからこういうことをしているのではなくて?」

「しかも、都留岐さんに協力をお願いしていました。でしょう? シュガーライツさん」

 

 申し訳なさそうな顔のシュガーライツ。彼女の手元にはリモコンが握られており、操作をすることでテレビの画面を切り替えることができる。

 

 で、今テレビに何が映っているのかというと。

 

《ほらほら~、きりきり吐けひじり~ん! ひじりんの好みのタイプを教えなさ~い!》

《新條さん、そうは言われても……僕にも》

《言わらいなんてゆるしゃないわよ~! おうしゃまの命令は~ぜっらいなんだから~!》

 

 酔っぱらっているトレーナー陣の姿だった。勿論そこには、都留岐涼花と高村聖の姿もある。

 

「よしよし、良い感じに質問を引っ張り出せているわ! そのままアーモンドアイって答えるのよトレーナー!」

「何言ってんのアイ。あ、あ、アタシに、決まってるんだから!」

「自意識過剰すぎやしないかい? アイ君にヤング君。私に決まっているだろう!」

「どの口が言ってるんですかタキオンさん」

 

 ミーティアメンバーwithシュガーライツ。彼女らがやっていることは、トレーナー陣の飲み会を覗き見ることだった。

 

 

 きっかけはトレーナー同士の飲み会がある情報を知った時。その時にはシュガーライツは動いていた。

 

(酒で本音を聞き出そう! 聖トレーナーのこ、こ、好みのタイプを聞き出せるはずだ!)

 

 酔っている相手の本音を聞き出す。酒の力があれば容易のはずだ。

 普段は聞けないことだって聞ける。例えばそう、口を割らない好みのタイプだって。

 

 ただ、懸念事項がある。とても大きな問題点が。

 

「しかしどうするか。聖トレーナーはとても酒に強い。生半可な量じゃ酔わないぞ?」

 

 弱そうとしている相手は、とても酒に強いという点。

 サシ飲みをしたことがあるので知っているが、焼酎を何本開けようと酔う気配がなかった。

 他の倍以上飲んでいるのに、全くと言っていいほどケロッとしていた。

 

 そんな相手を酔わせるのは自分では無理。

 なので、他人の手を借りることにした。

 

「……というわけで涼花さん、協力してくれないか!?」

「え、えぇ? 確かに、私も同じくらい酒は強いですが……」

「私はそこまで強くないんだ! だから頼む! この通り!」

 

 高村聖と同じくらい酒が強い、都留岐涼花の手を。

 

 土下座する勢いでお願いする。尊厳が消えそうになっていたが些細なことだ。

 意中の相手の好みが知れるならドブにでも捨ててやる。それほどまでにガンギマっていた。

 

 幸いにも相手は了承。

 

「そ、そこまで頭を下げなくても大丈夫です。個人的にも気になりますし、それくらい構いませんよ」

「本当か!? ありがとう涼花さん!」

 

 こうして、トレーナー陣の飲み会で【高村聖の好みのタイプを知ろう大作戦】が決行されることになった。

 

 

 なお、肝心の思惑とは少し別の方向に向かっているが。

 

《だ、ダメだよ聖君! ちゃんと王様の命令には従わないと!》

《朝霞さん、そんなこと言われても……あ、天城さんもなんとか》

《……》

「思いっきり視線を逸らしてますわね。見捨ててますわ」

「ルドルフ会長のトレーナーさんも気になってるのかもしれませんね」

 

 突如として始まった王様ゲーム。それによって王様の命令には従わないといけないのだが、幸か不幸か高村が当てられたのである。

 しかも質問内容もこれまたクリティカル。好みのタイプを教えろというもの。

 

 これにはミーティアフロアも大盛り上がりである。

 

「さ、さぁ! 早く吐くんだ聖トレーナー! 早く教えてくれ!」

「お、王様の命令は絶対、だもんね! ダイヤちゃんが言ってたから!」

「トレーナーさんの好みトレーナーさんの好みトレーナーさんの好みトレーナーさんの好み……ふふ、フフフ!」

 

 高まるボルテージ。果たしてどんな言葉が飛び出してくるのか。

 

 悩み、考え、唸って……顔を赤くしている高村。

 酔っているからではない。さっきまで全然赤くなかったのだから、それくらい察することは出来る。

 

 逃げ場がないと悟った。ついに、口を開く。

 

《そ、その……ギャップのある子が好き、かもしれないです》

《へぇ? その心はなんだ、聖》

《北原さんまで乗り気に……その、この前タキオンが珍しくしおらしくなってる時があって。その時にふと思ったんです。良いな、って》

 

 ぎゅるん、と。全員の視線がアグネスタキオンに集中した。

 当の本人はというと。

 

「ほほほほほ、ほほう? まま、まさかトレーナー君がね? 私のことをね、そんな風に思っていたとはねぇ!」

「凄く動揺してますね。妬ましい」

「ムー! ヒジリ、ワタシ、いるノにー!」

 

 分かりやすいくらいに動揺している上喜んでいた。耳が機嫌良さそうにピコピコしている。

 周りはその限りではない。明確に名指しされたことで、殺意の視線が一極集中していた。

 

《そ、それじゃあ! 次の王様を決めましょうか! くじを戻して~》

《……次は当たらないといいな》

 

 テレビでは次のラウンドが始まるところ。殺意の波動を向けている場合じゃねぇと、全員の視線がテレビに集中する。

 

 で、王様ゲームの結果はというと。

 

《や、やったやった~! 私が王様だ! それじゃあ3番の人は?》

《……僕です》

 

 王様になったのはオルフェーヴルのトレーナー、朝霞。当てられたのはまたもや高村である。

 高村は目に見えて落ち込んでいた。周りはこれ以上ないほど盛り上がっていた。

 

「よし、よし! よくやったぞ朝霞トレーナー!」

「そのまま聞き出してください! あなただって知りたいはずです!」

 

 ヒートアップするシュガーライツとホッコータルマエ。

 どんな命令が飛び出すのか?

 

(まぁ朝霞トレーナーだし、変な質問はしないだろう)

(オルフェさんのトレーナーは純真と聞いています。あまり期待はできませんわね)

(ま、まぁ? チャンスはいくらでもあるし? 大丈夫っしょ)

 

 心待ちにしていると、出てきたのは衝撃的な質問。

 

《ひ、聖君の、女性に魅力を感じる部分はどこ!?》

《ブー!?》

《ちょ、ちょっと朝霞さん!? 何聞いてるの!?》

《いや、さすがにこの質問は》

《王様の命令は絶対! 絶対なんだから!》

 

 とんでもねぇ質問を投げられている高村である。

 

 なお、ミーティアフロアはまたも興味津々だ。先程以上に顔を赤くしている高村をよそに、とてもテンションが上がっている。

 

「さぁ、高らかに口にしましょうトレーナーさんッ! サクラバクシンオーが一番の好みであり魅力を感じるとッ!」

「あらあら。私に決まっているでしょう? 強者に相応しいプロポーションを備えるこの私に」

「いいや、トレーナーは私だ。最強である私の体に興味を持っているはずだ」

 

 自信満々のサクラバクシンオー、ジェンティルドンナ、ドゥラメンテ。

 間違いなく自分が選ばれると思っている顔である。

 

 しどろもどろになっている高村。男性陣が庇おうとしているが、ギャルトレーナー新條による鶴の一声。

 

《おうしゃまの命令は~、ぜっらいなんらから~!》

 

 男性陣が迫られ、女性陣が迫る。立場が逆な気がしないでもないが、もはや逃げ場はなかった。

 

 観念した高村。どうせ酒の席で明日には忘れるだろうと思っているのか。

 

《……脚、というか、お尻》

 

 バカ正直に答えていた。嘘が吐けない男である。

 

 この情報を聞いた途端、全員がお尻へと手をやった。恥も外聞もなく。どうせ自分達しかこの場にいないからと。

 

(……自信がないわけではありませんが、まぁ)

 

 ちょっと不安になってるジェンティルドンナ。

 

(大きい方か小さい方かなんて言ってませんし。まだ、まだ将来性はありますし)

 

 これ以上成長する気かとホッコータルマエ。

 

(う、うぅ……あたしはどうなのかな? よくお、大きいとは言われるけど……)

 

 なにがなんだか分からなくなっているキタサンブラック。三者三葉の反応だった。

 

 

 その後も王様ゲームは進行する。

 しかし、先ほどの二連続が奇跡だったのか、ぱたりと高村に当たらなくなった。

 

「ふ~む。お酒に酔っている気もしないし、これで打ち止めだろうか?」

「トレーナーさんの好みはお尻の大きいギャップのある子、ですか」

 

 黒いオーラを纏っているイクイノックスをよそに、情報をまとめるミーティアのウマ娘達。

 

 これ以上の情報は期待できない、なんて思っていたところ。

 

《おっと、最後は俺か。んじゃ、8番のやつ!》

《……僕ですね》

《ひ、聖か。聖かぁ……》

 

 最後にもう1回当たった。全員がテレビにかじりつく。

 

「狼狽えないでください北原トレーナー早くトレーナーの好みの女性を聞くんです何なら好きな子を聞くんです早く早く早く」

「い、イクイちゃん落ち着いて! 黒いのが漏れてるよ!」

「ハヤクハヤクー!」

 

 なんならテレビを揺らしていた。早く言えと言わんばかりに。

 

「あー! やめ、止めるんだ! そんなことをしたら壊れるだろ!」

「そうですッ! みなさんも模範的な学級委員長のように落ち着くべきですッ!」

 

 焦っているメンバーを宥めつつ、飛び出した質問は。

 

《そうだなぁ……んじゃ、どんな女性と付き合いたいと思うか? だ。これならまぁ大丈夫だろ》

《……なんか、僕に対して恋愛系の質問多くないですか?》

《いや、周りの気持ちもわかるというか。お前さんの女性関係はとにかく心配なんだよ》

《これに関しては北原さんに同意するよ、聖君。君の場合、何時刺されてもおかしくないから》

《怖いこと言わないでください、天城さん。それにしても、どんな女性と、ですか》

 

 どういう女性と付き合いたいか? である。割と定番のものだった。

 さすがに可哀想という気持ちがあったのか、それでも恋愛系なのは高村の恋愛観が気になるからか。

 

 とにかく、先の2つに比べれば多少はマシ。高村も恥ずかしがる要素がないのか、顔の赤みが消えている。

 

「……というか本当に酒に強いな彼。周りは全員酔っているのに」

「都留岐さんと2人だけですよ。酔ってないの」

「お2人はお酒に強いんですねッ!」

 

 ドキドキしながら待つ中、高村の答えはというと。

 

《引っ張ってくれる女性、でしょうか》

《ほう? そりゃまたなんでだ?》

《僕は引っ張っていくタイプではないですし、なにかに一生懸命な子が好きなんです。その子のサポートをしたいから、自分の夢に僕を引っ張ってくれる子が付き合いたい女性かな、と。後は明るくて前向きな子ですかね》

《はは~ん、成程な。ありがとよ》

 

 自分を引っ張ってくれる女性だった。

 この質問に関しては、全員が得意げな表情を浮かべる。

 

 ミーティアのメンバーは全員アグレッシブ。ずっと高村を引っ張り続けてきたウマ娘達だ。

 シュガーライツもそうである。自分の夢のために、協力をお願いした立場。高村の付き合いたい女性像にぴったりと合致する。

 

 とはいえ、これ以外の要素も含むと途端にダメになる。

 

「総合すると、トレーナーを引っ張ってくれて、お尻が大きくて、ギャップのある子、ですか」

 

 イクイノックスのまとめに、全員が微妙な表情を浮かべる。

 好みのタイプが分かったのは良いが、この3つの条件を満たせているとは到底思っていなかったからだ。

 

(う~む、どうにかしてお尻を大きくできないものでしょうか?)

(……薬でどうにかするか? いや、効果時間と副作用を考えたら得策ではないな)

 

 サクラバクシンオーにアグネスタキオン。

 

(ギャップ、ギャップですか。どうしたものかしら? 弱弱しく振舞うのかしら?)

(お尻、はまぁこれからの成長に期待として……ギャップもある方だし、ワンチャンありますかね!?)

 

 ジェンティルドンナにホッコータルマエ。

 

(う、うぅ……大丈夫かなぁ? あたしあんまり裏表がある感じじゃないし、トレーナーさんの好みに外れてるのかな?)

(ギャップ……ギャップとは何だ? どうすればいいんだ?)

 

 キタサンブラックにドゥラメンテ。

 

(まァいいデス。ヒジリをワタシ色にソメるだけ!)

(トレーナーさんトレーナーさんトレーナーさんトレーナーさんトレーナーさん)

 

 ヴェニュスパークにもはや様子がおかしいイクイノックス。

 

(……ニアピン、ってところね)

(こ、これほどまでに自分のちんちくりん体型を恨んだことはないぞっ!)

 

 アーモンドアイとシュガーライツ。

 

(……あれ? これってもしかして?)

 

 フォーエバーヤング。改めて振り返って、自分はどうかと考える。

 

 自分のことではなさそうだ、と少しだけ気落ちするミーティアメンバー。

 まぁ、好みのタイプから外れたからと言って諦めるつもりは毛頭ない。

 それならそれで、自分の武器で振り向かせるだけだ。恋する乙女に諦めはない、その目の炎は少しも衰えていない。

 

 ……だが、気づく。

 

「……ギャップがあって」

 

 一人、たった一人だけ該当者がいることに。

 

「トレーナーを自分の夢に引っ張ってくれて」

 

 いないと思われていた該当者がいることに。

 

「明るく前向きで」

「そして、お尻が大きい子」

 

 全員が気づいた。同じタイミングで、寸分の狂いもなく。

 

 その該当者へと目を向ける。たった一人の該当者。

 

「え、え。え? え!? や、やっぱそういうこと!? アタシって、ひじりんの好みのタイプなん!?」

 

 フォーエバーヤングへと。

 

 そう、フォーエバーヤングはすべての条件を満たしていた。今高村の口から出てきた全部の条件に。

 

《そうなると、フォーエバーヤングって結構いい線言ってると思うけど。どうなの? 聖君》

《……正直、かなり危ないです。彼女、かなり押せ押せじゃないですか? 結構、その》

《なるほどね~。ま、このことはたづなさんには黙っててやるよ》

《……ありがとうございます》

 

 なんならテレビで白状していた。ぶっちゃけヤバい、と。

 

 明かされる衝撃の情報。全員がテレビを凝視する。

 

「へ、へ~? そ、そうなんだ~。ひじりんってば、アタシのことそんなに。だ、だーりん、な~んてっ!」

 

 ただ一人、顔を赤くして悶々とするフォーエバーヤング。

 幸せそうな表情が隠し切れておらず、意中の相手の好みが自分であったことに凄く喜んでいる。

 そりゃあ嬉しいだろう。好きな相手の好みど真ん中ストライクなのだから。

 

 もっとも。

 

「楽しそうですね、フォーエバーヤングさん」

「……はっ!?」

 

 それ以外は、その限りではないが。

 

 一部以外、素晴らしい笑顔だ。にこやかに、表に出ろの合図と共に、フォーエバーヤングを見ている。

 

「ダートに行きましょうよ、ダートに。久々に……本気で相手をしてあげますよ」

「模範的なレースを学びたくありませんか? この学級委員長が教えて差し上げましょう」

「捻り潰して差し上げますわ」

「ところでここにい~い薬があるんだが。飲め」

「むー! むー!」

「トレーナーの好みをアイに染め上げるわ。そうすればわたしの勝ち。でもその前に……勝負よヤングさん!」

 

 キタサンブラック、ドゥラメンテ、イクイノックス、シュガーライツ以外のメンバーは臨戦態勢だ。よっぽどアレだったのだろう。

 

 冷や汗をだらだらと掻くフォーエバーヤング。

 にっこりと笑い。

 

「逃げるッッ!!」

「逃がしませんよッ! ダート1200で勝負です!」

「ダート2000で相手しましょう。魔王の怖さを骨身に染みさせてあげますよ」

 

 逃走した。絶対に捕まらないとばかりに本気を出して。

 

 余談だが、この時の逃走劇を後にこう語っている。

 

「アタシの生涯でトップの激走だった。アレ以上はないね」

 

 と。




実は気が気でなかったことが判明するフォーエバーヤングの回。

ちなみに、気づいている人は気づいてるかもしれませんが、アオハル杯やお家にお邪魔する回にフォーエバーヤングが増えてます。
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