恋のダービーステークス   作:カニ漁船

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ドゥラちゃん。単発チケでドットさんがきました。メダルの星3チケはラモーヌ様。


ドゥラメンテは労いたい

 南国の陽気、多くの人で賑わうリゾートスパ。家族連れに友達、はたまた恋人と一緒に訪れて施設を満喫している。

 その中にトレセン学園のトレーナーが一人。高村聖がボーっと立っていた。

 

「……うん。レジャー施設を楽しみつつも鍛えるスペースがある。トレーニングにはもってこいの施設だね」

 

 どこだろうとウマ娘を育てることに注目する男。そんな男は一人でここにきた、わけではない。

 

「待たせた、トレーナー」

 

 トレーナーの下へと歩むウマ娘。人波はかき分けるまでもなく、気づけば後ずさって彼女へと道を譲っていた。

 否応なしに惹きつけられる。隣に女性がいようとも、家族連れであっても変わらない。むしろ女性も同様に視線を送っていた。

 彼女へと視線が釘付けになり、その姿、立ち居振る舞いを目に焼き付ける。

 

 黒みがかった茶色の長い髪、黒に赤のラインが入ったビキニを身に纏い、鍛え抜かれた身体を惜しげもなく披露する。

 均整の取れた肉体。豊満な胸にきゅっと引き締まったウエスト。出るところは出て締まるところは締まる。まさしく女性の理想を体現したかのような姿。

 無駄な脂肪は一切ない。全てが完璧に整っていた。申し訳程度の変装であるサングラスがあっても有り余る美貌、注目の的である。

 

 視線を集めてしまうのも仕方がないだろう。それほどまでに、ドゥラメンテの水着姿は魅力的だった。

 

「準備に手間取ってしまっていた。さぁ、行こうか」

 

 トレーナーへと手を差し出し、エスコートをする。トレーナーは、その手を取った。

 

「うん、行こうか」

 

 2人で歩いていく。周りの客は、しばらく放心状態のままだった。

 

 

 歩いている最中、トレーナーは針の筵状態だった。隣に美人を連れ歩いている得体のしれない男なのだから仕方ないところはあるが。

 もっとも、今更気にするような人間ではない。視線など知らないとばかりに歩いていた。

 

 その中で、隣を歩くドゥラメンテへと視線を向ける。

 

「新調したって言ってた水着かな? 似合ってるね、ドゥラ」

「当然だ。君のために卸したものだからな」

「……そうなんだ」

 

 思わず遠い目をしそうになるトレーナー。まぁいつものことか、とかいざ自分のために卸されたとか言われてどんな反応すればいいのか分からない、とかいろいろ頭の中で考えていた。

 なお、ドゥラメンテは褒められて嬉しいのか耳と尻尾が忙しなく動いている。さらには緊張しているのかいつもの独特なステップを刻んでいた。

 

「大丈夫、ドゥラ?」

 

 ドゥラメンテが緊張していることを察し、労わろうとするが。

 

「問題はない。今日は君の慰労を兼ねているからな」

 

 大きく深呼吸をして気持ちを整えるドゥラメンテ。何度か繰り返すことで、彼女の緊張は解けたのかステップを刻むことはなくなった。

 

 彼女の口から出てきた慰労という言葉。これこそが、2人がリゾートスパにきた最大の理由でもある。

 

「別に良かったのに」

「いいや、君はいつも仕事のし過ぎだ。だからこそ、父さんに頼んでここの手配をしてもらった」

「……本当に良かったのに」

 

 今回はトレーナーを労うために、ドゥラメンテが父親を頼ってここのチケットを手配した。国内でも最高級の施設が揃っている場所、ではなく。普通の一般リゾート施設である。

 

(さすがに一族御用達の場所だとトレーナーも尻込みをする。一般の場の方が、トレーナーも気兼ねなく休めるだろう)

 

 そう考えたドゥラメンテは普通の場所を手配した。高級な場所だとトレーナーの気が休まらないだろうと考えて。

 

 事実、ドゥラメンテの目論見通りトレーナーは肩ひじ張らずに過ごせている。リラックスしていることがすぐに分かった。

 顔を綻ばせるドゥラメンテ。

 

「行こう。ここにはたくさんの施設がある。遊びつくすぞ」

「分かった。分かったから」

 

 手を握って引っ張る。もたつきながらもトレーナーはついていった。

 

 

 

 

 

 

 2人は施設でいろんなところを回った。

 

「やはり水着だからプールだろう。君も、机仕事ばかりでなまっているんじゃないか?」

「……そんなことないよ」

「そうか。ならば私が試してやろう。まずは軽く100mほど泳ぐとしようか」

 

 時には運動したり。

 

「ここは食事も美味しいと聞いている。栄養バランスに富んだ、素晴らしいものだ」

「次の料理の参考になるかな?」

「仕事のことは忘れるんだ」

 

 時には食事をしたり。

 

「無論、マッサージ施設もある。予約してあるから受けてこよう」

「……なんて言われるんだろうな、僕」

「さぁな。だが、間違いなく岩のように硬いと言われるだろうな」

 

 マッサージも受けたりと大盤振る舞い。日ごろの溜まった疲れを癒すために、ドゥラメンテは全力を尽くしていた。

 

 彼女にも休まってほしいと考えるトレーナー。しかし。

 

(僕が休むことが、彼女へのお返しか)

 

 自分が休めば彼女もきっと休めるだろう。そう信じて、このリゾートを満喫していた。

 

 ただ、一点。一点だけどうしても気になって仕方ないことがある。

 

(さすがにこの姿でこの距離感は、意識せざるを得ないよなぁ)

「トレーナー、どうかしたのか?」

「……なんでもないよ、ドゥラ」

 

 今もトレーナーに引っ付いているドゥラメンテ。引っ付いているということはどういうことか?

 決まっている。彼女の豊満な身体が直に触れているということだ。

 

 

 トレーナーの精神は鋼だ。鋼を通り越してアダマンタイトとかヒヒイロカネとかその辺のメンタルをしている。決して折れないともっぱらの評判。

 そんな彼でも、流石にこの状況は意識せざるを得ない。お互いに水着姿で、身を守るものは布一枚のみ。

 くっつけば嫌でも彼女の身体が当たり、柔らかさを認識することになる。これで意識しなかったらもはや男として終わっている。

 

 しかもドゥラメンテ自身、分かっているのか分かっていないのかトレーナーに密着し続けている。

 

「トレーナー、私に着いてきてほしい」

「大丈夫だトレーナー。私がついている」

「問題ない、君の最強はここにいる」

 

 悪気もなく、打算もなく。ただトレーナーを導くように密着。嫌でも意識するほかない。

 

 彼女の胸が腕に押し付けられる。むにゅっとお餅のような、マシュマロのような柔らかさを感じてしまう。

 煩悩が生まれる高村の脳。それらを振り払い、正気になれと心の中で自分にビンタをする。

 

(……雑念を捨てろ、僕。ドゥラに申し訳ないと思わないのか?)

 

 しかし、そこは中央のトレーナーにして学園一のメンタルを持つトレーナー高村聖。鋼の理性をもって、ドゥラメンテの猛攻に耐えていた。

 

(彼女の厚意を無下にするのか? そんなことをしたらドゥラは悲しむ。僕の迷いで、ドゥラの表情を曇らせるわけにはいかない!)

 

 トレーナーの鑑。どれだけのアタックを受けようと、鉄壁の城砦をもって迎え撃つ。心頭滅却して事に当たり、絶対に担当を曇らせてはならぬと覚悟を決めていた。

 

 対するドゥラメンテ。

 

(……おかしい。ここまで密着すればいけると母さんは言っていたはずだが)

 

 トレーナーに対するアタックは全て打算である。悪気も打算もあって身体を密着させていた。

 

 今回のリゾートスパ慰労にあたって、ドゥラメンテは一つ計画を練っていた。

 

(トレーナーを振り向かせるにはどうしたらいいだろうか?)

 

 自分をここまで導いてくれたトレーナー。世界最強格へと育ててくれたかけがえのないパートナー。家族以外の一番近くで接してきた異性。他のチームメンバーの例に漏れず、ドゥラメンテもまたトレーナーに好意を抱いていた。

 最初の頃は考え無しに密着、無自覚にトレーナーに近づいていた。好意を自覚してからは自重する、はずもなく。むしろこれ幸いと積極的になる。

 なぜなら、ドゥラメンテは危機感を覚えていたから。トレーナーを好きと意識したからこそ分かる、女の勘というやつ。

 

(他のメンバーも私と同じ。負けるわけにはいかない!)

 

 隣にいるのは自分に他ならない。そのためにも行動あるのみと考えた彼女は、今回の計画を思いついたのである。

 

(慰労ならば彼は断らない。担当の厚意を無駄にするような彼ではない)

 

 対峙するライバルは百戦錬磨、一騎当千の猛者たち*1。自分も大胆に攻めなければ負ける、そう考えていた。

 

(水着も、恥ずかしさはあるが。トレーナーに褒めてもらえる喜びに勝るものはない)

 

 大胆だとも思ったが臆さない。最強は省みない。全てはトレーナーに振り向いてもらうためと、ドゥラメンテは覚悟を決めていた。

 

 ただ、状況は芳しくない。

 

(トレーナーに意識してもらえていない、か。想定内ではあるが、少し寂しいな)

 

 これにはドゥラメンテもしょんぼり。なおトレーナーはバリバリと意識しており、現在進行形で葛藤中だとを察することはできなかったようだ。

 この程度ではめげないドゥラメンテ。秘策中の秘策が彼女にはある。

 

「トレーナー。サウナに行こう」

「……なんて?」

「ここのサウナは特に有名らしい。いくぞ」

 

 その秘策が、サウナである。

 

 ここのサウナが個室であることは予習済み。トレーナーと2人っきりの密室になること間違いなし、意識してもらえるはずだと確信している。

 

(これでダメなら次を考えよう。母さんに聞いて、もっと知識を蓄えるんだ)

 

「いや、ここのサウナそんな有名だった?」

「あぁ有名だ。とにかく行こう」

 

 有無を言わさずトレーナーを連れていくドゥラメンテ。ふんすふんすと意気込んでいた。

 

 

 そしてサウナルーム。トレーナーとドゥラメンテは2人で耐える。

 個室のサウナは隣に座るしかない。ただでさえ熱い部屋でドゥラメンテは密着、熱さが増している。

 

(なんでこんなに近いのやら。というか、そんなにサウナに入りたかったのかな?)

 

 ここに来る目的を考える高村。もういろいろと手を尽くしてドゥラメンテのことから考えをそらそうとしていた。

 だがそれを許さないとばかりに距離を詰めるドゥラメンテ。トレーナーの腕をぎゅっと捕まえ、逃がさまいとしている。

 

「トレーナー、まだいけるか? 私はまだまだいける」

「……ドゥラ」

「私は最強だ。サウナでも無論、最強に君臨する」

「いや、サウナの最強って何?」

 

 思わずツッコむ高村。一応余裕ではあるものの、別の意味で余裕はなかった。

 

(ドゥラは無意識にこういうことするからなぁ)

 

 ドゥラは意識してこんなことはしていない、おそらくいつもの無自覚だろうと断定してサウナを耐える。そうでもしなければやってられなかった。

 

 時計の音だけが響く室内。どっちが先に音を上げるか、いつこの部屋から出ていくかと考えを巡らせる。

 そんな時ふと。

 

「トレーナー」

「……どうしたの、ドゥラ」

 

 ドゥラメンテがトレーナーを呼ぶ。その顔は赤い。サウナに入ってるから当然だが。

 

「私は、誰にでもこのようなことをするわけではない」

「……まぁ、やったら大問題だからね」

「私は、君だからこそやるんだ」

「できれば僕にもやめてほしいけどね」

 

 淡々と返す。理性を保つために、熱さに耐えるために。

 ドゥラメンテが、高村へと視線を向ける。

 

「トレーナー」

 

 熱っぽい視線。思わずごくりと喉を鳴らす高村。

 何を言うのか、何をするつもりなのか。彼女の一挙手一投足に注目する。

 視線はそらさない。姿勢も変えない。トレーナーの腕を捕まえて、顔を近づけて彼女は。

 

「……限界だ。もう出る」

「奇遇だね、僕ももう限界だよ」

「似た者同士だな」

 

 変なところで理性を働かせた2人だった。

 

 

 

 

 

 

 その後もリゾートスパを満喫した2人。

 

「どうだ、トレーナー。疲れは取れたか?」

「おかげさまでね。身体が軽いよ」

 

 腕をぐるぐると回して調子を確認するトレーナー。その様子にドゥラメンテは満足げに頷いて、今回の成果を喜んだ。

 

「それは良かった。次もまた、君を労うために違うリゾートスパに行くとしよう」

「……できれば勘弁してほしいかな」

 

 理性を保たせるのに不安しかないから。そう口には出さず、高村はどうにかして回避する方法を考えていた。

*1
あくまでドゥラメンテの主観です。多分レース的な強さで考えてます




あぁっとここでドゥラメンテ!後方から一気にドゥラメンテだ!後方一気のドゥラメンテだぁぁぁ!
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