本編後主人公のヒロインと始めるハイスピードメカアクション   作:文才の無い本の虫

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CHAPTER-0
プロローグⅠ/イレギュラー


 

 

 

インフィニット・ストラトス、通称IS。それは突如として現れ、世界の価値観をひっくり返した。

ISが一体どんなモノで、何の為に作られたのか。当時幼かった俺には知る由もなかった。

それから少しして。幼い頭で理解できたことは、I()S()()()()()両親を亡くしたということだけだった。

 

 

 

〜~

 

 

 

ザアザアと会場の外では雨が降っている。

眼の前には二つの遺影と、二つの棺。

つい先日まで俺の両親だったもの。

 

「・・・・・」

 

知らない間に両親が死んだとして、どういう表情をすれば良いのか、わからない。

 

――私の前に居たのが悪いのよ!!汚らわしい男と、そんなモノと結婚した女なんて死んで当然なのよ!!どうせならお前も死ねばよかったのに!!

 

わざわざそれだけを言いに来た両親を殺した誰かの言葉の意味も、わからない。

 

「可哀想に・・・・・汚らわしい男と一緒に死ぬなんて」

「女性を守れない男なんてクズ以下ね」

「汚い餓鬼を引き取る方なんて居るのかしらね」

 

顔も知らない親戚達の言葉も、わからない。

人が、死んだと言うのに。

()()()()()()()()()()()()()()、もう戻らないのに。

聞きたくなくて、俺は式場の端にあったパイプ椅子に座って耳を塞いだ。

殺したのは女性は何故無罪放免なのだろうか?

何故俺は遠巻きに見られているのか?

わからない。

この先俺がどうなるのかもわからなかった。

そんな時に、誰かに肩を叩かれた。

 

「ねえ、貴方。私の事、覚えているかしら?」

「・・・・・かおり、さん」

「うん、よし。憶えてるわね」

 

肩を叩かれて見上げた先には、煤けた灰色の髪をハーフアップにした160cm弱程の小柄な女性が立っていた。

彼女の名前は速水 香織。

母の妹、俺の叔母だ。

香織さんは少し屈んで、俺と目線の高さを合わせて言った。

 

「ウチの子になる気、ある?愚姉の所に居た時よりはマシだとおもうわよ?」

 

考える前に答えは決まっていた。

 

「・・・・・うん」

 

何もしてくれなかった他人よりも、母親の目を盗んで俺に優しくしてくれた人の方が良いに決まっているから。

 

「じゃ、改めて。速水 香織よ。これから宜しくね、迅」

「・・・・・うん、かおりさん」

 

それが俺――速水 迅の人としての始まり(オリジン)だったのだと思う。

 

それからは目まぐるしく日々が過ぎていった。

ある日は、香織さんがご馳走を作ってくれたり。

 

「ほら、たんと食べなさい!!食べないと大きくなれないわよ!!」

「・・・・・多くない?お皿が、いっぱいあるけど」

「ええ。5人前ですもの」

「どう考えても多いよ」

 

ある日は散歩と称して大きな建物――速水鉄工の本社ビルに連れて行ってくれたり。

 

「さ、出掛けるわよ!!」

「何処に?」

「会社よ」

「会社?」

「そ、私社長なの。迅は御曹司ね」

「おんぞうし?」

「社長の息子って事よ」

 

その受付で様子のおかしい人と出会ったり。

 

「おお!!はじめまして!!小さな御客人!!」

「青次、この子は私の息子よ」

「社長、ご結婚なされていたのですか?それはなんと!!花は何処だ、祝わなければ・・・・・」

「養子よ」

「それはなんと!!」

「香織さん・・・・・この人こわい」

「青次、迅が怖がってるじゃない。というか仕事は??」

 

研究室という所でいろんな人達と話したり。

 

「ふむ、少年。空力に興味は無いかね?」

「くうりき?」

「それか戦闘機に興味は無い?」

「せんとう・・・・・?」

「君、軽そうだねえ・・・・・よく飛びそうだ」

「ぴっ?!」

「おいバカ共。迅を泣かしたら減給よ?!」

「?社長、空力の話を聞いて感涙に咽び泣くと減給されるのはおかしくないだろうか?」

「子供が空力の話を聞いて感涙に咽び泣くわけないでしょうが!!というかジョシュアはどこ行った?!」

「室長なら胃薬を買いに行ったが」

「・・・・・私も胃薬、買いに行こうかしら」

 

眠れないときには、一緒に寝てくれたり。

 

「眠れないの?」

「・・・・・うん」

「ふーん・・・・・おいで、迅。一緒に寝ましょ」

「うん・・・・・ありがと、香織さん」

「良いのよ。家族でしょう?」

 

香織さんは不器用で。

空回りすることもあった。

でも、そのお陰で今の俺がある。

 

 

 

〜〜

 

 

 

「IS、か・・・・・」

 

俺はニュースを表示していたスマホを机に置き、ベッドに見を投げ出して天井を見上げる。

数週間程前に見た『【IS】男性操縦者発見!!』の文言が脳裏を巡る。

 

「はぁ」

 

ため息をつく。

今日は他にも男性操縦者が居ないか探す検査が俺の通う中学校で行われる事になっている。

一般常識として、ISは女性しか動かせない。

そして例外は今のところ一人だけ。

その男性操縦者――織斑一夏は世界一のIS操縦者として有名な織斑千冬(ブリュンヒルデ)の実弟らしく、未だに彼以外の操縦者は見つかっていない。

たぶん彼が特別か特異(イレギュラー)なのだろう。

そうして天井を見つめながら無為に時間を過ごしていると部屋の扉がノックされた。

 

「入るわよ!」

 

聞き慣れた声と共に扉が力強く開かれる。

灰色の髪が視線を過る。

扉から入って来た小柄な女性――香織さんは天井を見上げていた俺の顔を覗き込んで元気よく言った。

 

「おはよう!!迅、遅刻するわよ!!」

「ん、おはよう。香織さん。今日はISの適性検査とかで遅く来いって言われてるんだ」

 

そう言うと香織さんは少し頭を捻ってから「あ!!」と思い出したように言った。

 

「そういえば迅の学校は今日だったわね・・・・・」

「ああ。でも適性なんて無いだろうし直ぐ帰ってくるよ」

「そ、なら良いわ。じゃあ私は仕事に行ってくるから。朝ごはんとお弁当は用意してあるからちゃんと食べるのよ。あと、電車とかは特に気を付けるのよ?」

「わかってるよ」

「ならよし!」

 

香織さんは少し背伸びをして俺の頭を引き寄せて何時もの様に撫ぜる。

彼女は俺が家の外に出る時に毎回こうやって元気付けてくれる。

最近は少し気恥ずかしいが・・・・・香織さんの優しさを感じるので嫌いという訳では無い。

 

「いってらっしゃい、香織さん」

「うん、いってきます!」

 

そうして玄関で香織さんを見送り、俺は学校に行く準備を始めた。

まあ、準備と言っても学生証を持っていけば良いだけなので準備と言うほど用意するものがあるわけでもないが。

 

 

 

〜~

 

 

 

集団を代表して眼鏡を掛けたいかにも仕事ができる女といった風体の女性が前に立ち、体育館に集められた俺達に言う。

 

「検査には速水鉄工の『夜烏(ナハトライアー)』を使用します。男である貴方方が触れること、光栄に思いなさい」

 

高慢な物言い。

きっと彼女らの中ではそれが当たり前なのだろうが。

その時の俺はそのことに関してはほぼ聞き流していて、体育館の中心に鎮座する『ソレ』から目が離せないでいた。

直線で構成された複雑で無骨さを感じさせる鉄鎧。

少しだけ見覚えがある。

コレが香織さんと彼奴等が造っている【IS】。

まあ、進学先の高校も決まったし()()()()()()()()()()あまり関わる事は無いだろう。

 

そう、思っていた。

 

「次、早く触れなさい」

 

返事をする気もなく、少しだけ香織さん達の造った物の感覚を知りたくて、俺は【IS】の装甲に手を伸ばした。

 

「そして直ぐに手を離しな・・・・・」

【メインシステム、通常モード起動】

「「「「は?」」」」

 

その日、俺は二人目のイレギュラーになった。

 

 

 

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