本編後主人公のヒロインと始めるハイスピードメカアクション   作:文才の無い本の虫

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CHAPTER-3
プロローグⅣ/鍵師、夜明けの予感


 

 

 

 

「どうですか、V.Ⅰ。新型は」

 

プライベートチャンネルからスネイルの声が届く。

俺はアリーナの中心に降りながら答えた。

 

「動作もオーソドックスでレスポンスも悪く無い。『ナハトライアー』は速い機体だったが、コイツは堅実で良い機体だ。流石はスネイルだな」

 

今装着しているのは『ラマーガイアー』ではなく、スネイルが設計し、アーキバスグループが開発した新型だ。

十分な装甲に、小回りと速さを両立したオーソドックスな二脚。

優等生というか、設計の所々にもアーキバスらしさを感じる。

・・・・・ふむ、アーキバスらしさって何だろうか。

混乱してきた。

 

「ふ・・・・・私が設計し、我がアーキバスグループが総力を挙げて開発したのです。その程度は最低条件です」

 

俺の様子を他所に、胸を張ってスネイルは言う。

身体のラインが強調されるパイロットスーツでそれを(胸を強調)されると大変目に毒なんだが・・・・・。

何も見なかったことにした。

まあ、慣れだな。

 

「それで、コイツの名前は?」

「『ロックスミス』です」

「ロックスミス・・・・・鍵師か?」

「ええ。私の『オープンフェイス』と速水鉄工から提供された『ナハトライアー』のデータを元に『ナハトライアー』の次に繋げる為の試作機。言い換えれば次の扉の鍵を作る機体です。お似合いの名前でしょう?」

「くく。確かにぴったりの名前だ」

 

それはそうと。

戦いたい。

 

「なぁ、スネイル。ヤらないか」

「はぁ・・・・・全く。そう言い出すと思って午後の予定は空けてあります。3回だけですよ?」

 

スネイルのそういう所は大好きだ。

 

 

 

〜~

 

 

 

都内にある会社――速水鉄工の研究室には異様な光景が広がっていた。

あるものは映像を繰り返し見ながら高笑いし、あるものは図面を引き始め、あるものは考えに耽る。

 

「はははははははは!!流石は空力の申し子だ!!」

「急いでデータまとめろ!!1秒でも時間が惜しい!!」

「おい!!『ラマーガイアー』と『ナハトライアー』の図面と予備パーツ引っ張り出してこい!!若からのデータを元にフィードバックして設計し直すぞ!!」

「「「おう!!」」」

「おいもっと軽くしろ!!削れ削れ!!」

「これ以上削ったら穴空くわボケ!!シュミレーションの段階で若を仏にする気か?!」

「ブースターの燃焼効率を改善して・・・・・ブツブツ・・・・・いや、多少燃焼効率は下がってもいいから出力を上げて軽量化するべきか・・・・・ブツブツ」

 

その様子に研究室の纏め役であるジョシュアは天を仰ぐ。

 

「社長、早く来てくれ・・・・・私ではこいつらをを抑えきれんよ」

 

まともなのはごく少数だけだった。

彼の願いが届いたのか、研究室の扉が力強く開かれる。

そこからやって来た社長――速水香織は声を張り上げた。

 

「何やってんのバカ共!!」

「社長・・・・・」

 

ジョシュアは香織に救いを見たが、

 

「職人達を連れてきたからさっさと迅に届ける新型を考えるわよ!!スネイルなんかに負けてられないわ!!全員集合!!」

 

救いは無かった。

 

「・・・・・社長、貴女もか」

 

ジョシュアの背中には、哀愁が漂っていた。

かわいそうに。

 

 

 

〜~

 

 

 

『今ならわかります。レイヴン、あなたこそが……!“ルビコンの戦火”そのものだったと!』

 

頭痛。

()()()()()

ああ・・・・・何で私は、彼女と戦って――殺し合っているんだろう。

 

『決着を!!レイヴンっ!!』

 

彼女の悲痛な叫びが()()()()来る。

 

『レイヴン・・・・・()()・・・・・()()()()()・・・・・』

 

 

 

「――し。簪!!」

「え、ぁ・・・・・」

 

気付くと、眼の前に迅の顔があった。

そんなに焦ったような表情で、どうしんだろう。

 

「簪!!息をしろ!!」

「え・・・・・ぅ」

 

上手く呼吸が出来ない。

まるであの頃に戻ったみたいに。

咽る。

そんな私の背中に温かい手が添えられた。

 

「ゆっくりだ、ゆっくり・・・・・」

 

言われた通りにゆっくり息を吸って、吐く。

何度も咳き込むが、その度に迅は私の背中を擦ってくれた。

 

「落ち着いたか?」

「けほっ・・・・・う、ん」

 

私は頷く。

迅は、ハーブティーを淹れてきて、私の隣りに座った。

・・・・・あ、今私が座ってるの迅のベッドだったんだ。

 

「熱いからゆっくりな・・・・・それで、何があったんだ?」

 

返答に迷う。

なんと言うべきだろう。

 

「えっと・・・・・ちょっと、嫌なことを・・・・・思い出しちゃった・・・・・だけ」

「・・・・・そうか」

 

ああ、私なんかの為にそんな顔をしないで欲しい。

・・・・・でも、迅が私の為にそんな顔をしてくれるのを、どこか嬉しく思ってしまう自分がいる。

卑しい、というのは正しくこういう事なんだろう。

 

「簪、俺は不器用だ」

「?」

 

そうやって軽い自己嫌悪に苛まれていると、隣りに座っていた迅が脈絡も無く自分は不器用だと言ってきた。

戦う事しか能が無い私(第四世代強化人間)の方が不器用だと思うけど。

すると、迅は私を優しく引き寄せた。

 

「だから、行動で示す位しか出来ない。今だけは、自惚れさせてもらう」

 

?????

次の瞬間、私を包んだ温もりに思考が停止する。

・・・・・わ、私・・・・・迅に抱き締められてる?!

 

「なあ、簪。何がお前をそうさせるのかはわからないがな・・・・・楽しい時は笑い、辛い時は泣く。それが人間だ。だから、簪。少しぐらいは泣いても良いんだ」

「え?ぁ・・・・・」

 

何もしてないのに、ぽろぽろと涙が出てくる。

ああ、そうか。

私はちゃんと人間だったんだ。

それから私は迅の肩に顔を埋めて、声を殺して涙が止まるのを待った。

 

「・・・・・ん」

「どうした」

 

・・・・・恥ずかしくて顔を上げられない。

 

「もうちょっとだけ・・・・・強く、抱き締めて」

「ああ」

 

迅は、私を強く抱き締めてくれた。

 

「今日は・・・・・迅と、一緒に寝たい・・・・・駄目、かな?」

「んぐっ・・・・・・・・・・あ、ああ。俺は別に良い、が・・・・・・・・・・んんっ・・・・・おやすみ、簪」

「うん・・・・・おやすみ、迅」

 

その日は、悪夢を見ることもなく。

これまでで一番寝心地が良かったと思う。

 

 

 

 







主人公
3回では飽き足らずヴェスパー部隊を召集して大乱闘を楽しんだ。シャワーを浴びてからほくほく顔で帰ってきたら同居人が死にかけてて大混乱。そして理性に大打撃。

かんちゃん
紅い白昼夢で親友を殺した時の事を思い出した。前は人の温もりすらも感じることはなかった為、ある意味初めて人の温もりに包まれた。これがまた誤解を・・・・・誤解?




ロックスミス(鍵師)
アーキバスグループの開発した第二世代IS。速水鉄工の『ナハトライアー』のデータを元にスネイル・アーキバスが設計し、彼女の乗機『オープンフェイス』で検証した技術を使用して開発された。そのため、大柄の『オープンフェイス』と細身の『ナハトライアー』の中間の様な標準的な人型をしている。速水鉄工の協力もあり、標準的なサイズのフルスキンISにしては軽量で、防御性能との両立を実現している。
迅の『ロックスミス』はAMSが搭載されている為、分類では第三世代となる。
余談だが、『ラマーガイアー』のパーツは全て『ロックスミス』のコア、No.009の拡張領域に収納されている。


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