本編後主人公のヒロインと始めるハイスピードメカアクション   作:文才の無い本の虫

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さあーて、臨海学校はっじまっるよー(あと数話で)


第十三話/夏が来る

 

 

 

「んっ・・・・・んん・・・・・」

 

腕の中から簪の艶っぽい声が聞こえる。

もちろん簪の甘い匂いと体温付きで。

時計を見ると時間は七時を回ったあたり。

 

「・・・・・少し寝過ぎたか」

 

何時もは六時前に起きて七時頃まではアリーナで簪とやり合うのだが、寝過ごしてしまったならしょうが無い。

俺は簪を起こさないようにベッドから出て、浴室に行ってシャワーを浴びる。

 

「ふぅ・・・・・」

 

それから洗顔と保湿をする。

続けて手足の爪を丁寧に削り、爪や手のケアも済ませる。

最後に軽く髪を整えて・・・・・ふむ、タイムは二分半か。

これ以上早くするのは難しいな。

身嗜みを済ませた俺はベッドに向かう。

ベッドの上で丸くなっている簪に声を掛けた。

 

「簪」

 

すると彼女は目をこすりながら此方を向く。

 

「んぅ・・・・・おはよ、迅」

「おはよう、簪」

「もう朝?・・・・・まだ夢?・・・・・まあ、どっちでもいっか」

「良くないが??」

「ん・・・・・いい抱き心地」

「抱き着くのは良いが今は起きてくれ」

「やだ」

「・・・・・」

 

クラス対抗戦から数週間。

『ロックスミス』を受領した日――泣き腫らした簪と寝た日から一週間ほどが経っていた。

それからはなし崩し的に簪と寝ている気がする。

簪がぐっすり寝れると言うのなら良いんだが・・・・・同じ寝床で寝るということはアクシデントが起こりやすくなるわけで。まあ色々とキツイものがある。

無論、簪と寝るのが嫌だと訳では無いんだが・・・・・俺は理性を試されているのだろうか?

 

「寝惚けてる振りしてるだろ」

「・・・・・ぎくっ」

「もう7時過ぎだ、簪」

「迅・・・・・私、布団から出たくない」

「遅刻するぞ」

 

そう言うと寝癖で髪がぼさぼさの簪は抱き着いたまま上目遣いに言う。

 

「・・・・・サボっちゃ・・・・・駄目?」

「常識的に考えて駄目だろう」

「・・・・・ん、じゃあ起きる」

 

簪のものぐさな様子に俺は苦笑する。

少し前には見えなかった、彼女の別の側面。

それを見せてくれる様になったのは、少し嬉しい物がある。

 

「迅、起こして」

 

少しだらし無いのは考えものだが。

 

「全く・・・・・ほら」

「んー」

「猫かお前は?」

 

ベッドから起き上がり、簪の脇の下に手を通して持ち上げて床に立たせる。

こうしてみると彼女の長い白い髪が寝癖でふわふわとしているのがわかる。

 

「簪、シャワー浴びて来い」

「了解・・・・・」

 

簪を浴室に送り出し、俺は台所に向かう。

時間が無いので備え付けの冷蔵庫からウインナーと卵、レタスを取り出す。

この寮は設備が整っていて自炊派の俺としてはかなり助かっている。

トースターにパンを突っ込み、フライパンでウインナーを炒めた後にそのフライパンに卵を二つ落とし、少し待ってから少量の水を加えて蓋をする。

その間にレタスを千切って洗い、トースターからパンを取り出す。

フライパンの蓋を開けて中の様子を見てから火を止めて、出来上がった目玉焼きをパンの上に乗せる。

 

「・・・・・お腹すいた」

 

そうして朝食の順調を進めていると髪を湿らせた簪がぶかぶかのシャツ一枚でふらふらとやって来た。

彼女曰くシャワーを浴びるのはとても疲れるらしい。

 

「髪を拭いて、保湿をすませたらな」

「ん」

「少しは自分でやろうとしてくれ・・・・・」

 

彼女が持っていたタオルで彼女の長い髪を丁寧に拭き、ドライヤーで乾かす。

簪の格好を思考から追い出しながら。

それから心を無にして簪の顔と手の保湿を済ます。

爪は・・・・・まだ大丈夫だな。

 

「よし。良いぞ」

「迅・・・・・ありがとう」

「ああ。じゃあ、朝食にしよう」

「うん」

 

そうして、二人で朝食を食べる。

ああ、本当に簪は美味しそうに食べてくれるから料理人ではないが料理人冥利に尽きる。

洗い物を済ませて制服に着替えた簪と部屋を出る。

 

「忘れ物は無いか?」

「うん」

「なら行こうか」

 

そうして俺達は二人並んで学園へと向かった。

 

「迅・・・・・歩くの、疲れた」

「大丈夫か・・・・・?」

 

 

 

〜~

 

 

「うぅ・・・・・」

「大丈夫か?」

「むり・・・・・わかんない・・・・・」

 

そういった風に頭を抱える簪に要所要所で教えながら授業を乗り切った後。

ホームルームで告げられたある事が俺と簪の頭を悩ませていた。

 

「臨海学校か・・・・・」

「み、水着・・・・・持ってない・・・・・」

「俺も持ってないな」

 

一週間後にあるという臨海学校。

必要な準備は水着ぐらいか・・・・・ふむ。

 

「簪、少し(買い物に)付き合ってくれないか」

「ん・・・・・良いよ」

「「「「「「えっ?!」」」」」」

 

簪が頷く。

その後ろでは女子たちが慌ただしくし始めた。

 

「皆、どうしたの?」

「更識さん・・・・・返事がそんな軽くて良いの?!」

「速水くんも速水くんでサラッと言い過ぎじゃなですの?!ナンパ上級者ですの?!」

「そのまま言っただけなんだが??」

「え、えっと・・・・・迅と(買い物に行くの)は今更、だし?」

「今更?!今更って言いましたよこの子!!」

「もうヤッたの?!」

「速水くんは・・・・・プレイボーイって事?!」

 

意味がわからんし収集がつかん。

よし。

 

「簪、逃げるぞ」

「うん」

 

俺は簪を横抱きにして教室から出る。

 

「伝説のお姫様抱っこだー!!」

「羨ましい・・・・・」

「私もあんな彼氏欲しいなあ」

「っていうか逃げた?!皆追えー!!根掘り葉掘り聞きたい!!何処までヤるのかとか!!」

「我欲じゃん?!」

「取り敢えず面白そうだから追おうよ!!」

「ひっ捕らえろー!!」

「「「おー!!」」」

 

結局、そのまま十分程学園の中を移動するはめになった。

その執念は一体何処から湧いてくるんだろうか・・・・・。

 

 

 

〜~

 

 

 

『どうだい、ウォルター』

 

コックピットの中に女性(オペレーター)の声が響く。

シートに座り、計器を睨むウォルターと呼ばれた男性(パイロット)はその声に答えた。

 

「・・・・・観測したデータを見る限り間違い無い・・・・・だが、似たような反応を示す鉱物かもしれん。カーラ、降りて直接確認する必要がある」

『もちろん。その為の機体と機材だろ?』

 

ウォルターはレバーを操作し、自身の駆る()()()()をゆっくりと降下させる。

暫くしてその紅い機体が地表に着地した。

 

「これから調査に入る」

『OK。指示通りに機材をセットしてくれ』

 

彼はカーラの指示通りに機体を動かして機材を設置した。

 

『よし。じゃあ計測を開始するよ』

 

モニターに表示されたグラフを睨む。

少しの変化も見逃さないように。

 

「・・・・・反応確認」

『はぁ・・・・・此方でも確認した。どうせなら勘違いのままが良かったんだが・・・・・地球じゃないだけましな方かね』

 

その言葉に渋い顔をしながらウォルターは頷いた。

 

「ああ・・・・・()()()()()()()()()()

 

硝煙の匂いが、近付いていた。

 

 

 







紅い機体
高い精密性に、高いステルス機能も兼ね備えている。最後の安全弁に酷似している。


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