本編後主人公のヒロインと始めるハイスピードメカアクション   作:文才の無い本の虫

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――私に自由はありませんが、何かを残して死ぬ(壊れる)事ぐらいは許されると思いませんか?

――ねぇ、イレギュラー





第十八話/シルバリオ・ゴスペル

 

 

 

「VOB接続良好。システムオールグリーン。全ブースタ出力チェック完了。シールドバリア、形状変更・・・・・」

 

()()()()()()()()()、思考入力を駆使しながら各部の最終チェックを進めていく。

 

「・・・・・ねえ、迅。本当に・・・・・この格好で行くの?」

 

腕の中で簪が言う。

端的に言うと、俺は簪をお姫様抱っこしている。

重量バランスの問題もあるが、亜音速を叩き出すVOBの上にISを固定できないのが一番の問題だからだ。

どれぐらいまずいかというと、ISの生命維持機能があっても数分間の加速で固定が吹っ飛ぶか、耐G能力の低い人間はあの世行きとのシミュレーション結果が出ている。

・・・・・今でも俺はVOBが自殺用の装備なんじゃいかと思っている。

 

「ああ。これが一番合理的だ・・・・・あと俺だって恥ずかしいものは恥ずかしい」

「んぅ・・・・・わかった。私も、我慢する」

「頼む」

「うん。頑張ろう」

「ああ」

 

俺は通信回線を開く。

 

「V.Ⅰより各位へ。そろそろ作戦開始時刻だ。準備は良いか?」

「ん、『LOADER4』問題無し」

『V.Ⅳ『プリミティブライト』、何時でも行けます』

 

先ずは簪とメノの声が聞こえてくる。

 

『『・・・・・』』

『はぁ・・・・・すまんな。返事は無いが織斑と篠ノ野は問題無い。おい、返事はちゃんとしろ馬鹿者共!!』

『だってよ・・・・・』

『だっても何も無い!!帰ってきたら叩き直す必要があるようだな』

 

・・・・・少し心配だな。

 

『此方『シュバルツェア・レーゲン』。所定のポイントに到着した。僚機共に問題無しだ。V.Ⅰ、腕の良い戦士と聞いている。健闘を祈る』

「ありがたく受け取っておこう、ラウラ・ボーデヴィッヒ」

 

此方は安心出来るな。

流石は本職の軍人といった所か。

後で話してみたいものだ。

 

『こちらV.Ⅱ。最終防衛ラインに到着。この私が後詰めというのは釈然としませんが、役割は果たしましょう。V.Ⅰ、アーキバスが誇るヴェスパーの力、見せつけて来なさい』

「主役は俺じゃないんだが・・・・・まあ良い。了解した。善処しよう」

 

スネイルからの応援も貰った事だし、作戦開始時間だ。

はじめようか。

 

「V.Ⅰより各位へ。作戦開始時刻だ。始めるぞ」

 

 

 

〜~

 

 

 

「迅、見えたよ」

「ああ」

 

VOBで程々にかっ飛ぶこと数分、銀色の機体を確認する。

向こうも気づいた様で減速し、武装を展開しているのが見えた。

 

「V.Ⅰ、目標を確認した。戦闘を開始する。織斑、篠ノ野両名は作戦通りに」

『・・・・・了解』

『・・・・・』

 

・・・・・ため息が出そうだ。

 

「行こう、迅」

「ああ」

 

VOBを収納して、簪を離し、慣性飛行に移行する。

武装を展開し、『シルバリオ・ゴスペル』に向けて飛ぶ。

 

【――――LaLaLa】

 

無数のマズルフラッシュ。

 

「散開!!」

 

エネルギーカノンがばら撒かれる。

カノンと銘打つだけはあり、かなりの太さのエネルギー弾が飛んでくる。

無数のミサイルも追加で。

・・・・・IS一機に積める量かこれ?

凄まじい弾幕の密度。

連射速度もそうだが、それよりも火器管制システムが優秀だ。

この数の武装を持て余していない。

ISコアの他に優秀な演算装置を積んでる筈だ。

 

「暴走中にしてはしっかりしている動きだな!!」

 

引き付けて切り返す事でミサイルを躱す。

エネルギーカノンに当たるような事は無いがミサイルが面倒だ。

 

「簪!!このままでは織斑が目標に接近出来ん!!俺が注意を引く。ミサイルランチャーを潰せ!!」

「了解!!」

 

レーザードローンを六機展開。

支援射撃モードに切り替えて周囲に追従させる。

これでドローンのバッテリーが切れるか撃墜されるまでは攻撃密度を底上げ出来る。

スタンニードルランチャーをコールし(呼び出し)、構える。

ロックオン。

 

「『シルバリオ・ゴスペル』!!俺を見ろ!!」

 

スタンニードルランチャーは速水鉄工の職人達が鍛造した鉄の杭を帯電させて打ち込む準質量兵器だ。

これならエネルギーカノンやミサイルで減衰する事があっても命中はする筈だ。

 

【La――エネルギーシールドの減衰を確認。対象の脅威度を引き上げます】

 

命中はした。

展開されているエネルギーシールドに防がれたが。

それよりも・・・・・。

 

「喋れるのか」

「そこ?!・・・・・ま、まず一つ!!」

 

ガツン、と『シルバリオ・ゴスペル』の羽に搭載されているミサイルランチャーが簪によって蹴り壊される。

誘爆するが、損傷は軽微。

いや、全体的に頑丈なのか。

 

「残り、22っ!!」

 

そうして撹乱している間にも簪がミサイルランチャーを破壊していく。

エネルギーシールドが全周囲型なのが仇になったな。

 

『こちら『プリミティブライト』。データリンク完了。大型ミサイルとスタンニードルランチャーによる支援を開始します。迅さん、簪さん、退避を』

 

飽和攻撃には完全に防御に回るか、本体しか守れないのだから。

轟音と共に、爆発。

 

【LaLa―La】

 

無傷。

・・・・・防御に回ったか。

まあいい。

隙は作り出した。

後は奴らの仕事だ。

 

『行くぞ一夏!!』

『おう!!』

 

白い機体が光る剣を構えながら『シルバリオ・ゴスペル』に吶喊する。

あの輝きは【零落白夜】。

かのブリュンヒルデの代名詞とも言えるワンオフアビリティ。

エネルギーに類するものなら絶対防御であろうと全てを切り裂く刃。

ミサイルが無ければ『シルバリオ・ゴスペル』の天敵と言ってもいいだろう。

 

『これで、終わりだぁぁあ!!』

 

だが・・・・・そう簡単に終わるのか?

 

『V.Ⅰ、周囲に不審船を確認しました』

「何?敵か?」

『いえ、密漁船の様ですが』

「・・・・・不味い」

 

もし、もしもだ。

『シルバリオ・ゴスペル』がその密漁船に気付いたとしたら、片手間で撃沈させようとするのではないだろうか?

そしてそれに織斑が気付いたなら、庇おうとするのでは無いか?

 

【――La】

『人?!クソッ!!』

『何をやっている一夏!!』

『ぐあああああああ?!』

『一夏!!』

 

集中砲火を食らって落下していく白い機体が見える。

ああ、最悪だ。

 

「スネイル、織斑達(お荷物)を撤退させる。支援を」

『もうV.Ⅲを向かわせました。一分待ちなさい』

 

墜落していく白をキャッチした紅が集中砲火を浴びせられようとしているのが見える。

落とさせるわけには行かない。

思考トリガー。

 

【――ASSAULT BOOST READY】

 

「簪!!」

「間に合わせる!!」

 

いつの間にか『シルバリオ・ゴスペル』の背後にいた簪がパイルバンカーで背中を殴る。

その隙に横から織斑達を掻っ攫って距離を取る。

200m程離れてから減速する。

 

「無事か?」

「い、一夏が・・・・・目を開けないんだ」

 

目が折れている。

確か少し前に専用機を受領した・・・・・いや、貰ったばかりだったな。

姉から貰ったオモチャにはしゃいでたガキか。

・・・・・ため息が出そうだ。

 

「はぁ・・・・・ソレを抱えて下ってろ。腑抜けの役立たずは邪魔だ」

「役立たずだと?!」

「ああ。怖くなったんだろう?」

「うっ」

「逃げる建前をくれてやる。命令だ。さっさと下がれ。それとも命令無視という不名誉を被って織斑と心中するつもりか?」

「・・・・・わかった」

 

織斑を抱えて下がっていくのを視界の端に、装備を整える。

右にアサルトライフル、左にレーザーブレード。

プラズマミサイルの残弾とレーザードローンの残機も問題無い。

 

【ASSAULT BOOST READY】

 

「行くぞ『ロックスミス』」

 

そう声に出して、俺と『ロックスミス』は『シルバリオ・ゴスペル』に向けて加速した。

 

 

 

〜~

 

 

 

「・・・・・硬い」

 

『シルバリオ・ゴスペル』の装甲にハンドガンが弾かれる。

エネルギーシールドの前に全体的に堅牢だ。

カタフラクトみたいなら楽だったのに。

 

「取り敢えず迅が戻って来るまで、時間を稼がなきゃ」

 

それはそうとマガジンをもう既に六本使い切ってしまった。後で学園に弾薬費を請求したら払ってくれないかな・・・・・。

 

【LaLaLa――】

「うるさい」

 

初動を見て、進行方向に割り込んでセンサーが集中しているであろうゴテゴテした頭部を蹴り上げる。

ん、上手く入った感じがする。

ちょっとだけ相手が硬直する。

――ハンガーシフトをしながらアサルトブーストを起動して、左腕に接続されたパイルバンカーをチャージして・・・・・抉る。

 

「えいっ」

【▓▓――損傷拡大 脅威度を最大に引き上げます】

 

あ、この流れは知ってる。

私は『シルバリオ・ゴスペル』を蹴って距離を取る。

その次の瞬間、『シルバリオ・ゴスペル』を中心にしてエネルギー爆発が起きた。

海水がその熱量で蒸発し、白い煙が視界を遮る。

 

「・・・・・あぶなかった」

 

ピリついた感じがして横にずれる。

さっき迄私がいた場所をエネルギーカノンが通り過ぎた。

 

【La――LaLaaaaa】

「うわぁ・・・・・」

 

煙を吹き飛ばして『シルバリオ・ゴスペル』が出てくる。羽の使えなくなったミサイルランチャーとかを捨てたのかちょっと縮んで見える。

――あ、来た。

かっ飛んできた藍色の機体が体制を整えたばかりの『シルバリオ・ゴスペル』を蹴り飛ばした。

ちょっと可哀想かも。

 

「ん、遅い」

「すまん、少し遅くなった」

【Laaaaaaaa】

「くく・・・・・第二ラウンドと行こう」

「迅。さっさと片付けよ?」

 

疲れたし、眠い。

そう言うと迅は変な顔をして言った。

 

「・・・・・あーうん。そうだな。さっさと片付けるか」

「うん」

 

そうして私と迅は数分で『シルバリオ・ゴスペル』を撃破した――

 

 

 

 

 

「うそ、再起動?!」

【Laaa――ASSAULT ARMOR READY】

「――簪!!」

 

その筈だったのに。

 

「ゴホッ。簪・・・・・無事か?」

「迅!!血を吐いてる!!」

「・・・・・かすり傷だ。『シルバリオ・ゴスペル』に動きは無い。武器がイカれた。一旦撤退するしか無い」

「う、うん」

 

私達は撤退する事になった。

 

 

 







いくらかんちゃんでも超広範囲アサルトアーマーを連発して来るとは思わないよねぇ(ヒトデナシ)



主人公
『ロックスミス』中破。戦略的判断で簪を庇った・・・・・つもり。理由は後付で、気付いたら身体が動いていた。『シルバリオ・ゴスペル』のアサルトアーマーもどきによって装備損壊。

かんちゃん
『LOADER4』損傷軽微。『ウォルターの猟犬』よりも『少女としての簪』の比重が大きくなっていたのが原因。要するに戦場での勘が少し鈍っていた。殺し合いの機会など無かったから当たり前なのだが。本能的にパイルバンカーは守ったので戦闘続行は可能。
(多分彼女一人なら半壊した『LOADER4』でチャージパイルを決めて『シルバリオ・ゴスペル』の第二形態も撃破したと思われる)

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