【書籍第一巻発売中!】公女様の義腕騎士-元官僚、異世界でホームレスから成り上がる-   作:笹木ハルカ

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明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。


国王陛下のお墨付き

「初めてお目にかかります。エルジック男爵兼オーストレスのフィッツロイ男爵、アオ・ポーレットでございます」

 

 改めて名乗り直す。いらないステップではあるが、少しでも考えをまとめる時間がほしい。

 

「フィッツロイ……? あぁ、あのフォリオ家の領地を継承したのは君であったか。封魔結晶の密売という余への攻撃に等しい事態、それに楔を打ち込んだのがこんな子ども、それも王の寵児(キングス・スカラ)だったとは、うれしく思うぞ」

「過分な評価、痛み入ります」

「さて、アオよ。戦慣れしているトマスが『絶対の信頼を置く』と言うほどだ。その君が言う新しい戦争とやら、余は勝てるのかね?」

 

 迂遠な表現は一切無しで本題に入った。こちらが子どもだからというのもあるのかもしれないが、それ以上にこちらを値踏みする意図が強い。

 

(考えをまとめる時間もくれんか)

 

 さて、どうするか。なだめすかしておだてて突破できる相手でもない。こちらも鞘当てができればいいが、そんな余裕もない。

 

「勝つという言葉をどのように定義するのかにもよるかと存じますが、領土だけであれば、容易に勝てるかと」

「だけ、とはどういう意味だ?」

 

 割り込んだのは第二王子殿下だ。食いついてくれたのはありがたい。会話のラリーができれば時間が稼げる。

 

「簡単です。侵略する意味をなくすほどにこちらの土地の価値を下げればよいのです。畑に塩をまき、井戸に家畜の死骸を投げ入れ、村を焼いてしまえばいい。……そうですね、焦土作戦とでも申しましょう。相手は自国から食料と水を運ばねば戦力を維持できません。そうして疲弊したところを逆侵攻し奪い返せばよいのです」

「そんなことをすれば、バリナード公爵領はおろか、国が貧するではないか!」

 

 第二王子殿下は強く出る。これは僕へのトス上げか、それとも単に感情的になっているだけか、どちらだ。第三王子の失脚にフォーカスを当てているなら、僕が暴れることは向こうの得になるからトス上げだと見て良いだろうか。よろしい。ならば暴れてみせよう。

 

「そのとおりです。ですから申し上げました。領土だけであれば容易です、と。……そこに暮らす民の生活、そしてその基盤こそ国の宝。陛下に信任を受け、爵位を受けた我々が文字通り死に物狂いで守るべきものであります。その点において、栄華を極める国王陛下の治世は私の言葉では言い表せないほどの成功をおさめました。それこそ帝国が妬むほどにです」

「つまりアオは余の王国の力こそが戦争を呼び寄せる、と?」

「そう言い換えることも可能でしょう。こちらの意思如何によらず、帝国が外交手段として武力による国境変更を画策している時点で、戦争は不可避です」

 

 戦争には必ず相対する当事者が必要だが、合意がなくとも発生しうる。帝国がファイティングポーズを取っている以上はこちらも構えを解くわけにはいかない。

 

「バリナード公爵軍は精強です。国王陛下の騎士団も兵もまた、帝国を凌駕するでしょう。ですが、はっきりと申し上げます。戦争に勝てたとしても、その先に待つのが焦土であれば、敗北と同義です。……そして帝国は、それを狙っている」

「余を疲弊させ、王国ごと飲み込むというわけか」

「ご賢察のとおりです」

 

 つまり、と前置きをする。相手をこちらのペースに乗せていく。コリンについてきてもらえばよかったと思うが最初から無理な話なのでぶっつけでもなんとかするしかない。

 

「相手の国力をいかに削ぎ、いかにして国ごと飲み込むのかという戦争になる。これが僕の考える『戦争のカタチ』です」

「よくわかった。では、余と王国はそれにどう備えればよい?」

「すでに国土全体が戦時下であるとご認識ください。トマス閣下の言うとおり、もはや後方はありません。実際、シェフィード市内では『公爵領を大公国として独立させよ』と言う意見もありますが、私はこれを帝国による工作と見ています」

「なるほど……緩衝国とする気か」

「それも帝国にとっては属国として抱え込める良い機会でしょう」

 

 国王陛下は少なくとも話を聞いてくれる人のようだ。だが……問題は第二王子だな。トス上げの後から黙ってしまっている。読み違えたか?

 

「最も効果的なのは、為政者を疑心暗鬼にさせて連携を断ち、孤立させることです。実際にリコッタ・バリナード第一公女は複数回襲撃を受けており、バリナード公爵領における喫緊の課題といえます。……つい先日、第三王子殿下の面前で見苦しい姿をお見せしたばかりでありますし」

「アルが?」

「西方視察をするようにとお兄様に頼まれたとお伺いしました」

 

 顔色が変わる第二王子。国王陛下には黙っていたようだ。

 

「つい先日とは、いつだ?」

「ちょうど四日前でございます、第二王子殿下。あなたもご存じの通り、リコッタ閣下の誕生日の祝いの席のことでございます」

 

 そしてこれが全部茶番だと、第二王子殿下はようやく気がついたらしい。

 

「……アオ・ポーレット。どういうつもりだ」

「含意が広すぎて答えかねます」

「この王都まで急襲に来たと言われてもおかしくない蛮行だぞ。それをわかっているのか」

「とんでもございません。祖国であるヴェッテン王国、そしてバリナード公爵領に音もなくひたひたと危機が迫っているのです。その状況に一穴を穿つことができるなら、本望でございます」

 

 我ながらすらすらとホラがふけるもんだ。一瞬でも怯んでくれれば押し通す隙ができる。僕は良くも悪くも、――――概ね悪い方向でコリンに似てきたような気がする。

 

「また、末席も末席である男爵が気を揉まねばならないほど、王宮の守りは脆くはないと信じております。当然、備えをされているものと推察いたします」

「……」

 

 反論が無いことを確認して話題を本筋に戻す。少なくとも皮肉が通じないような相手ではないようだ。

 

「飛空魔導騎士団は、戦力を空に上げることで、これまで平面でしか抜けられなかった戦線を、大きく迂回し後方を直接攻撃可能な戦力です。戦線を飛び越え、敵の補給路を締め上げ、戦う前に敵を漸減し、正面圧力を減ずる。すなわち、敵の出血を最大化することで敵の戦争のための基盤そのものを破壊せしめる戦力であります」

「それだけの効果が認められると?」

「そう確信しております。そして同時に同じ戦法を帝国が用いられたら、現状勝ち目はありません。故に、備えるべきと愚考いたします」

「ほう。それほどか。余の軍ではなすすべない、と?」

 

 ポーレットさんがすごい勢いで振り返って僕を見る。でも想定通りの地雷で、ちゃんと意図して踏んだものだ。

 

 これまでの反応から、第二王子の事情はおぼろげながら見えてきている。おそらく第二王子殿下は第三王子とバリナード公爵閣下をまとめて潰す算段をしていたのだ。

 あの誕生日パーティで流血沙汰になれば、王家に楯突いたとして公爵閣下を滅することができる。そうならずに円満に解決できた場合、すなわちリコッタが第三王子の側室になった場合でも、第三王子の悪癖が広がると同時に、人質としてリコッタを王宮に捕らえることができる。万が一にもトマス閣下が離反すればそのまま人質は晒し刑の後で断頭台だ。

 

 不愉快極まりない。

 

 どいつもこいつも賢しい()()をして、ただの女の子を政治の道具にしやがって。それが統治者としての振るまいか。そして何よりその理不尽を易々と許容する制度設計を許していることそのものが国家としての怠慢だ。それは可及的速やかに是正されねばならない。

 

 怒りと一緒に僕の未来も吹き飛びそうだが、もともと第三王子と揉めた後だ。今更リスクは変わらない。

 

 リコッタの前だ、せいぜい格好つけよう。

 

 さあ、僕と一緒に吹き飛べ第二王子殿下。

 

「戦争とは虚構によって始まり、その崩壊によって終わるものです。ただの妄想と違うのは、そこに他人の流血という過程を必須とすることにあります」

「何が言いたい。戦争とは現実に他ならないだろう。少なくとも我々は戦争の中に生きている」

「いえ、第二王子殿下。あなたは戦争を知らない。知らないからそのように楽観できるのです」

「……貴様」

「何を怒ることがありましょう。軍務卿という仕事はそうでなければ勤まらないではありませんか。兵一人一人の人生に思いを馳せるような余裕などあるはずもありません。……高級指揮官の手元に届くのは高度に抽象化された死。つまり、数字でしかないのです。おびただしい人の死に耐えられるほど、人の心は強くはありません」

 

 僕は一歩前に踏み出す。

 

「人類は目の前にない世界を思考の内側に再現することにより繁栄を得ました。現実から離れて抽象の世界に思いを馳せ、それを現実に投射することで世界を変えてきた。王都だってそうでしょう。この都市を計画し、自然すら塗り替えて、この都市は現実となった」

 

 この世界には魔法がある。そしてその魔法は、僕が最初に抱いた印象よりもはるかに現実的だった。不条理を解釈できるまで噛み砕き、それをなんとかして現実に落とし込むのが魔導術だった。魔法をシステム化し、魔導術に変えていく。

 

 それは、前世での僕の仕事、官僚という仕事に酷似していた。

 

「国家もまた虚構の産物であり、虚構であるがゆえに広く伝播し、世界を支えています。広大な領土と市民を保護するというあまりに捉えどころのない概念を国家としてまとめ上げ、王権に基づく統治として再構築する。そうして意志を、概念を運用可能なシステムに落とし込んだ。……それが本物であろうが虚構であろうが関係無く、人はそれを信じる」

「貴様っ!」

「何を怒ることがあるのです? そうして得た市民の生活とその繁栄は疑いなくこの世界に息づく現実です。……そしてそれがかりそめの繁栄だろうがなんだろうが、そこに住まう市民の幸福を最大化することこそ官僚の本懐でありましょう」

 

 僕にとって、官僚としての人生はそういうものだった。国家とは抽象の権化のようなものだ。それを支えるべしとして雇われた官僚の仕事とは、理念を誰もが利用できるサービスとして再構築することであり、その果てに顔も名も知らぬ誰かの『しあわせ』がある。そうして組み上げたシステムがいつか誰かを救うと信じて進んできた。

 

「国家を率いる陛下と殿下です。国権という抽象が、どれほどの力を持つかご存じのはずです。それを振るう戦争もときに現実を無視して進行することもまた、ご存じのはずだ。その先にあるのはあらゆるものが数値に変換された数多の悲劇です。転がる敵兵を『撃破率』として統計に置き換え、四肢を失い物乞いになるしかないような戦友の怪我も『損耗率』に置き換えられる。そうして生まれた悲劇も『ここに悲劇があった』と歴史に書き加える。……そうして生まれた歴史の先に、我々はあります」

「……それが、貴様の言う戦争にどう関係するというのだ」

「では殿下にお伺いしますが、長く膠着した戦線において、個々の戦闘における評価には何を用いますか? 何を基準にその功績をたたえますか?」

「無論、戦果をもって……」

「その戦果とは敵をどれだけ殺したかということではありませんか。もしくはどれだけ味方の兵を生かしたかという事ではありませんか……既に我々は兵を数値として、概念として捉えている。その狂気の世界に求められるのは、味方の出血を最小としつつ敵方の出血を最大化するための兵装と、それを確実に機能させる操典であります」

 

 さらに一歩踏み込む。我々と言われて第二王子殿下はようやく自身が『こちら側』の人間だと思い至ったようだ。そうだ。国を背負うということは、狂気を背負うことだ。そして、その狂気に自覚的にならねば、正しい判断など下せるはずもない。

 

「……貴様はそうまでして戦争がしたいのか」

「戦争になってからでは遅いのです。これが戯れ言と言われる世であってほしいものですが、それで済まない程に状況は切迫しつつあります。高々子どもの思いつきを、他に誰も思いついてないなんて、そんな都合の良い楽観は、してはならない。王宮が石材に還ってからでは遅いのです」

「もう良い、アオ・ポーレット」

 

 割り込んだのは国王陛下だ。ここが潮時か。止めるのが想定より早い。言い足りないが致し方無い。

 

「フレディもだ。子供相手に見苦しい」

「しかし父上。こいつは王の寵児(キングス・スカラ)でありながら……」

「手の内をすでに明かしておる以上は、こちらも対応ができよう。それとも、軍務卿ともあろうものが、ここで手をこまねくようなことはなかろう?」

 

 ぐ、と黙り込む第二王子殿下。

 

「虚を突いたのが帝国ではなく余の忠実な家臣であったのは僥倖であったな。空の防備は確かに手薄であったと認めざるをえまい」

 

 そう言う国王陛下。

 

「トマス」

「はっ」

「お前とアオ・ポーレットで王都における対魔鳥の防衛策をまとめて余に報告を上げよ。特別に王都の詳細地図の閲覧を許す。一月以内に改めて登城せよ」

「御意」

「アオもよいな?」

「御意」

「レナ・ポーレット」

「はい、陛下」

 

 ポーレットさんがさっと頭を下げる。

 

「銀十字騎士団の騎士として、飛空魔導騎士団設置における監督を命ずる。収束系の魔導師で不得手であることはわかるが、よく監督するように」

「かしこまりました」

 

 ここで監督を名指ししたということは、予算を出すのはほぼ確定、かつ最優先ラインに乗ったことになる。

 

(……コリンの忠告、もっと聞いとくべきだったなぁ)

 

 呆れ返っているコリンの顔が浮かぶが、国王陛下は僕の嘆きを待ってくれない。

 

「アオ・ポーレットには是が非にも王宮に残ってもらいたいところだが……トマスから配下を引き剥がすのはあまりにかわいそうだな。その代わりエルジック男爵の印に柏葉を一つ足すことを許す。また、報償をなにか与えよう。……欲しいものはあるかね?」

 

 ここで引き下がれるか見る気だな。本来はここで下がるべきだが、子どもということで許してもらう。

 

「ヴェッテン王国の貴族としての責務を果たしているだけでございます。報償をいただくようなことは何一つ。ですが……もし、我儘を聞いてくださるのであれば、一つだけお願いがございます」

「言ってみよ」

 

 本来であれば謁見の場ではなく、午餐会などでやんわりと根回しするつもりだったのだが、ここまでぐちゃぐちゃになってはどうしようもあるまい。一気に片付けてしまおう。

 

「私とリコッタ・バリナード第一公女閣下は婚約関係にあります。その関係を認めていただきたいのです」

 

 それでピンときたらしい国王陛下の目線がリコッタを向く。

 

「……アルの悪癖も困ったものだな。その魔力量に整った顔立ち。確かにアルが好みそうではあるが」

 

 さっとリコッタを見て大体繋がったらしい。……陛下の発言で第三王子殿下がリコッタを魔力タンクとして見ている可能性がポップアップしてきてものすごく腹立たしい。やはりあの時斬っとけばよかったかなんてできもしない選択肢が頭に浮かぶ位には冷静ではない。

 

「リコッタ・バリナードよ、アルの王族にあるまじき振る舞い、どうか許してやってくれ。トマスも手間を掛けさせた」

「いえ、手間というほどではございません」

 

 リコッタが声をあげる前にトマスが言葉を継いだ。それでも手を焼いたことは否定しない公爵閣下。精一杯の不満の表明だ。リコッタも合わせて頭を下げている。

 

 国王陛下の視線が僕に戻る。

 

「良かろう。アオ・ポーレットとリコッタ・バリナードの婚約関係を認め、祝福する。マックス、お前が証人だ。その旨、記録しておけ」

「お待ちください。父上」

 

 第二王子殿下が待ったをかける。まだリコッタ人質ルートを捨ててなかったのか。

 

「フレディ、なぜ止める?」

「バリナード公爵家は王国設立初期に成立した王族の血を引く血筋。その血の扱いは当然重くあらねばなりません。その血が新貴族の子爵に入るなど、それこそ格が問われるというものでしょう。それに先代のセドリック・ポーレットは子を成せずに戦死したはず。つまりそこのアオ・ポーレットはどこの血が入っているかもわからない養子ということです」

 

 僕を怒らそうとしているのかもしれないが、だとしたら方向性を間違えている。

 

「……それは確かか?」

 

 僕を見てくる国王陛下。まあ、嘘をついても仕方の無いことだし、少なくとも公爵閣下はすぐに調べ上げていたので隠し通せる事ではない。堂々と答える。

 

「はい、第二王子殿下のご指摘の通りです、国王陛下。私はファイフ公爵領の悪人街の路地裏で育った身であります。血の正当性という意味では確かに劣るでしょう」

 

 そらみたことかと勝ち誇った顔をする第二王子殿下。

 

「そんな者に、王家に連なる者の血が混じるなど言語道断。父上もどうかご再考を」

 

 横目でちらりと見るとリコッタが泣きそうな顔をしている。目元こそ潤んでいるものの、ぐっと堪えているあたりはさすが公爵家の子女ということなんだろう。

 

「……ふむ。フレディの言うことはもっともではあるが、封魔結晶の密売を防いだ功績、また、余を前にして、批判を恐れず進言できる知性は賞賛に値する。本件にあっては、結論を保留する。……少なくとも実際に結婚をするとなれば、互いに一四歳を超える必要があろう。それまで判断を待ったところで弊害はあるまい」

 

 フレディもそれでよいな。と念押しする国王陛下。……よし、国王陛下は話が通じる人だ。

 

「……承知いたしました」

「アオ・ポーレットもトマスもそれでよいか」

「ご高配痛み入ります」

 

 公爵閣下の礼にあわせてこちらも頭を下げる。

 

「それはそれとして、アルフォンスにはバリナード公爵領に余の許可無く立ち入る事を堅く禁じること。また、余の許可の上での立ち入りであっても、バリナード公の特権を持って拒否できる旨をあわせて記録し、広く触れを出せ。……よりにもよってトマスの所とは。対帝国の要衝だというのに……一度アルとはきちんと時間を取らねばならん」

 

 国王陛下が頭を抱えている。

 

「ともかく、飛空魔導騎士団の構想、しかと聞き届けた。より一層の奮闘を王として期待する。退出してよろしい」

 

 一同、礼をする。

 

「アオ・ポーレット……その名と顔、覚えたぞ」

 

 第二王子殿下の声に振り返る。強い感情が複数混ざった、そんな印象の視線が僕に向いていた。怒りか、恨みか、そんな感情。少なくとも友好的なモノではないだろう。国王陛下が頭を抱えていた。親子関係というのは難しいらしい。

 

「……どうかお手柔らかに」

 

 それだけ返す。ポーレットさんの手が僕の肩に置かれ、今度こそ、退場。

 

    †

 

「……あのね、アオ。あなたが怖い物知らず過ぎてお母さんは心配です」

「文句は公爵閣下にどうぞ。僕へ話が飛んでくる前提の前振りをかましたのは閣下ではありませんか」

「第三王子殿下相手にあれだけ青くなってたお前が、たった数日で第二王子殿下に喧嘩を売れるようになっているなんて思い至るわけがなかろう……あの笑みはぞっとしたぞ」

「あれ? 僕笑ってましたか?」

「……この様子じゃしばらく公爵領外での折衝には同行させられんな。まったく、いらんところまでセドリックに似てきおって」

「塩は塩気がなくなれば地に捨てられるって言うではありませんか」

「……それを私に言ってきたのは二人目だぞ。本当に似てきおって」

「でも、毅然と対応されるアオ様は素敵でしたよっ!」

「ありがとうございますリコ様。いったんは解決と思いたい所ですが……」

「無いな。今日の対応からしてアルフォンス殿下を嗾けたのは間違い無くフレデリック殿下だ。フレデリック殿下からしたら、素行に問題ありな弟に灸を据えつつこちらに貸しを作るつもりが、面子を潰された上で借りを作った形になる。まず間違い無くコンタクトがある」

「ネガティブなものではないといいのですが……」

「レナ、この状況でポジティブなコンタクトがあるわけないだろう。みんなお前ほど優しくはないのだからな」

「同感です。……とはいえ、明確な武力を使ってくるとは思えません。舌戦であれば閣下にお任せできますね」

「アオは逆に誰もがお前のように合理的な決断を下せると信じないように」

「僕は自分を合理だと思ったことなどありませんよ」

「それでもだ。……さて、何が起っても良いように準備だけは進めよう。こういう嫌な予感は当たるものだ」




新年からいつも通りのきな臭い公爵領チームです。

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