【書籍第一巻発売中!】公女様の義腕騎士-元官僚、異世界でホームレスから成り上がる-   作:笹木ハルカ

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戦闘狂たちの狂詩曲

「姫様、足下にはお気を付けて」

 

 ハリエットが私の手をとってくる。饐えたにおいというのは、きっとこんなときのためにある表現だ。ハリエットが風の魔導を扱っているので、多分ある程度は守ってもらっているんだと思う。それでも、ここには長いこと居たくないと思えるような場所だった。

 

「……暗いですね」

 

 ハリエットは左目を隠していた布地をとるのが見えた。暗いところに目を慣すためということで、わざわざ巻いていたのだ。

 

「すぐに慣れます。行きましょう」

 

 アオ様は大丈夫だろうか。そんなことを思っていたら、頭上からズン! とお腹に響くような音がした。多分、ポーレットさんの仕掛けが発動した。

 

「間一髪でしたね」

 

 手を引いて歩きだすハリエット。迷い無く暗闇の中を進んでいく。私は少しでも魔力が流れるのを抑えるために、魔導術は使っちゃいけないことになっている。……アオ様やポーレットさんが命を張っているのだ。それをダメにするわけにはいかない。それでもやっぱり、歯がゆい。

 

「……ねえ、ハリエット」

「なんでしょう。姫様」

「アオ様は大丈夫でしょうか」

「大丈夫です。アオは必要ならちゃんと反撃できる奴です。この程度で足がすくむようなタマではありません」

 

 そう言い切るハリエット。……ハリエットにはきっと、私には見えないアオ様が見えている。

 

「それは……ハリエットがそう育てたからですか?」

「いいえ。あれはレナ様を納得させるための方便ですよ。アオと向き合ってきた時間だけであれば、私の方がレナ様より長いですからね」

「では、なぜ……」

「明確な答えがあるわけではありません。それに……きっとその答えをアオは姫様には見せたがらないでしょう」

 

 ハリエットは困ったように笑ったみたい。暗闇のせいで上手く見えない。でも、ハリエットがごまかしたことだけは、はっきりわかった。きっと『これ』という答えを、ハリエットは持っている。

 

 多分この気持ちを『嫉妬』と呼ぶのだろう。わかっている。これはただの嫉妬だ。

 

 私が知らない、アオ・ポーレットを知っているという、嫉妬。

 

「それでも、アオ様が心配です」

「そうですね。昼も無茶をしたそうですし……まあ、アオらしいと言えばアオらしいですけど」

「ハリエットの言う『アオ様らしさ』ってどういう所なんですか?」

 

 小声で話しながら進む。本当は話すのも良くないのかもしれないけれど、ハリエットは私を注意しない。きっと話しても大丈夫な状況なんだろう。

 

「格好つけて、それで大事になって、それでもなんとか上手くいったっていう謎の自信でまた無茶するような……そうですね、頼れる変な奴というか、そんな感じでしょうか」

 

 あまりにあんまりな答え……そしてそれを何一つ否定できないのも含めて苦笑いが浮かんでしまう。

 

「問題はそれで一人で何とかしようとしすぎるところなんですよね。……今回だってそう。閣下や姫様にどれだけ失礼な事をしているか、わかっているはずなのに、見ないふり。陛下の御前での騒動を私は直接聞いていませんが、それでも聞く限りに置いては、アオがアホです」

「アホ……ですか?」

「そうでしょう? アオはきっと言葉で世界ができていると思っている。……そして、アオは言葉を振るうことで世界を変えられると思っている」

 

 そんなことないのに、とハリエットは続ける。

 

「……本当にそう、でしょうか?」

「理由やきっかけにはなるでしょう。でも、言葉だけで世界は変わらない。そのために血を流すのは私たち平民です。言葉が暴力であることを、そして言葉の向こうにさらなる暴力があることをアオは知っている。それでもアオはその結果を背負うことを自身のみではなく閣下や姫様にも強いたのです」

 

 暗い下水道を進む。足下をネズミだろうか、小さい生き物がかけていった。

 

 本当にそうだろうか。よくわからない。

 

「アオ様は、厳しくて、優しい人です。ハリエットからはそう見えませんか?」

「そう見えますよ。でも、このまま行くと暴君になるしかないように見えます。……私には、フレデリック殿下とアオはよく似ているように思えてなりません。言葉に酔って、(うつつ)を抜かしている。その先に待っているのは孤独だけです。もっと悪いことに、アオは孤独でもいいと思っている」

 

 第二王子殿下を思い出す。謁見の間から退出する直前に見た、恨みとも恐怖とも取れる目を思い出す。

 

「そうして一人で悪役にでもなった気になって、自己満足のうちにそこら辺でのたれ死ぬのでしょう」

「ハリエットはそれでいいんですか?」

「嫌に決まってるじゃないですか」

 

 ムッとしたような気配。それに少しだけ安心する。

 

「アオにはしあわせになってもらわないと困るんですよ。こんな可愛いお嫁さんがいるのに、断頭台に直行されたら夢見が悪い。独りぼっちの王子じゃなくて、幸福な王子にでもなってもらわないといけない」

「アオ様は王子になるのは嫌いそうですね」

「だといいんですけど」

 

 ハリエットは少し笑ったみたい。

 

「本当に……アオの独りよがりが治ってくれるといいんだけど。……っと」

「……なんだぁお前ら」

 

 ハリエットが立ち止まった先から声がかかる。ようやく目が慣れてきて、人の輪郭がわかるようになった。多分背の高いひょろりとした男の人。

 

「ちょっと通るわよ」

「おっと、そういうことなら……あれだ、交通料がいる」

「それをいうなら通行料かしら。おあいにく様、アンタに渡す金はないし、どこをどう進めば良いかは私が知っている。消えなさい」

 

 ハリエットの声色ががらりと変わる。

 

「そういうわけにはいかねぇ。この先は緑風会の縄張りだ。お嬢ちゃんたちが案内もナシに入ったらすぐにひん剥かれて慰み者確定だぜ?」

「あら、人を見る目がないようね。……最終警告よ。道を開けなさい」

「は、何を」

 

 そこで男の人の声が止まった。風の魔導の質が変わる。……多分、空気を潰したように見えた。

 

「……っ! ……!」

「叫ばれると面倒なの。……首はどうやっても鍛えられないし、頸動脈をきちんと押さえるとあんまり苦しくないでしょう? でもこうやってずらすと」

「……!?」

「手を出さず、私たちがここを通った事を誰にも話さないこと。わかったら瞬きを五回」

 

 ふっと魔導の反応が消える。地面に倒れ込む男の人。

 

「……ぶはっ! ……このやっ……!」

 

 男の人のお腹を蹴り飛ばしてハリエットが笑う。

 

「あら、足りなかった? それともアンタが金貨を持ち逃げしたって言いふらそうか」

「……成金風情のクソ魔導師が」

「それに喧嘩を売った自分を恨みなさい。……行きましょう」

 

 手を引かれ、足早に歩き出すハリエット。

 

「……今の人は」

「ホームレスでしょう。仕事にあぶれてギャングにでも入ったのだと思います。まあ、この先で何度か同じようなことがあるでしょうが、大丈夫ですよ。恐るるに足りません」

「ハリエットは……詳しいのですね」

「ええ、……これが、私とアオの原風景ですから」

 

 ハリエットの声が少し固い気がした。見上げると長い髪が揺れているのが見えた。

 

「……姫様、彼らを哀れむべきではありません。かわいそうなんかじゃないんですよ」

 

 心臓が跳ねる。見透かされた気がした。

 

「姫様の優しさを隙と思う輩もいます。あなたが知らなくてもいい世界だってあります」

 

 それでも、ハリエットはここに連れてきた。ここを脱出経路に選んだ。それはきっと、私に何かを伝えたいからだろう。

 

「ハリエットは、さっきと真逆のことを言うのですね」

「いいえ、同じですよ。アオが見てきた景色とこれから見るであろう景色、そして姫様が見てきた景色とこれから見るであろう景色は違います。狩りと絵画のどちらが優れているのかという問いに意味はありません」

 

 ハリエットは煙に巻こうとしている。そこで、ようやくわかった。

 

 ハリエットは、私を試している。ハリエット自身が命を賭けるに足る人であるか――――――否。

 

 アオ・ポーレットが命を賭けるに足る(ひと)か、見られている。

 

「ならばわたくしは、狩りの一場面を切り取る絵描きとなりましょう」

「姫様……?」

「絵描きが狩人の極意を知ることはないでしょう。何を思って弓を引くのか、理解しきることなどないでしょう。それでもそれを共に見つめることはできると思うのです」

「簡単じゃありません。それはたくさんの敵を作ることですよ」

「でもアオ様はそこに向き合おうとしている。……私は、アオ様の婚約者です。そうでありたいと思っています。これは、きっと、心から」

 

 だから、私だけはアオ様の敵になりたくない。彼の枷になるわけにはいかない。今はそれしかできなくても、何も変えられなくても。胸を張る。

 

「だから、共に立つのです。アオ様をひとりぼっちの王様になんてさせません」

「そのためなら、今日みたいなことが続いても耐えられる、と?」

「耐えるのではありません。はねのけるのです。主人が道を誤りそうになったとき、それを止めるのは夫人の仕事です。火の粉の一つ払えずに夫人が務まるはずもありませんから」

 

 ハリエットが足を止める。振り返ったように見えた。

 

「――――――それが聞けてよかった。きっとあなたならアオをきちんと止められますね。リコッタ・バリナード第一公女閣下」

 

 たぶんハリエットは笑っていたのだと思う。だから私も笑い返した。

 

「公爵家を舐めてはいけませんよ、ハリエット」

「失礼しました、閣下」

 

 私の呼び方が姫様から閣下になった。

 

 ……ハリエットが、私を認めた。ただの公女や、護衛対象としてではなく、一人の人間として。

 

「なら、はねのけるためのファーストステップとして、ちょっとだけ悪い子になりましょうか」

「悪い子……ですか?」

 

 ハリエットが上を指した。

 

「上で無茶してるアオを助けるついでに、第二王子殿下をぶん殴りましょう」

「……それはほんとうに()()()()()()悪い子にならないとできないですね」

 

 とと様からはすごく怒られるだろうし、多分アオ様も怒ると思う。上手くいっても、ハリエットをちゃんと庇わないといけなくなるだろうから、お説教は避けられない。でも、ちょっと楽しそうだと思ってしまった。

 

 よくないことだとわかっている。それでも、頬が緩んでしまう。

 

「やりましょうハリエット。どうか私のことはリコッタと呼び捨てください。とと様にならって、ハリエットの指示の通り動きます。アオ様にそうするように、私に指示を」

「オーライ、リコッタ。……それじゃあ逆襲開始(ストライク・バック)よ」

 

 今のこの関係が心地よかった。

 

    †

 

「にーげーるーなっ! 大人しく斬られやがれぴょん!」

「素直に斬られる阿呆がいるかっ!」

 

 やたらと跳躍力のあるすばしっこい追っ手が相手だと、純粋な追いかけっこでは逃げ切れない。だから結局僕は相手を棍棒でぶっ叩く羽目になる。クリストフ・ファルマンの時とは異なり、片手でも十分に扱える短めの金属棒だ。警棒の扱いに近いのだろうが、僕に警棒を扱ったような経験はない。とりあえず剣道モドキで乗り切ることになる。基本的には相手の攻撃を躱しつつ、これで一撃で昏倒させることを狙う羽目になった。

 

 このラピィと名乗った北方部族の殺し屋。とんでもない身体能力をしているというか、僕の常識が全く通用しない。そもそも関節の位置が人間と違うことで身体の動きが僕の予測と常にずれている。武装をはたき落とそうにも、予想と違う動きをされればそれだけ対応は難しくなる。

 

「うおっ!」

「アオさまっ!?」

 

 小柄さを生かして足下を狙ってくるラピィ。下手な姿勢で受けると押し込まれる。ひたすら下がるしかない。跳ぼうとして重心が上がった所で足下を刈られる。足が伸びてきて引っかけられたのだ。そのまま後ろにすっ転ぶ。いつの間にか壁際に追い詰められていて、地面よりも先に白い壁に後頭部をぶつける羽目になった。

 

「でっ!?」

「いただ、きっ!?」

「させませんっ!」

 

 ミネットが体当たりして相手の狙いをずらす。そのまま壁に骨切り包丁が刺さってくれればよかったのだが、それほどの勢いはなかったのか、その場に留まることなく、間合いを一気に外される。……ミネットがいなければ僕は今ので死んでたな。ロングスカートでよくやると思う。

 

 相手の獲物は骨切り包丁が二丁。その柄同士を長いチェーンで繋いだものだ。トリッキーすぎてどんな攻撃がくるか予想しきれない。それにふざけた語尾の割りに無茶なタイミングでの攻撃はしてこない。相当戦い慣れているのだろう。

 

(段違いに強いな……これが本命か)

 

 ハリエット、僕を路地裏での生存率が高いとかおだてていたけれど、さすがに殺し屋との決闘の経験なんて無いぞ。後で文句ぐらい付けさせてもらおう。

 

「もう少しだったのにうるさいやつだぴょん」

 

 ラピィはピンピンしている。ミネットの体当たりにも直前で気がついて、自分から飛び退いているからダメージが何一つ入っていない。

 

「……やっかいですね」

「だね。ありがとうミネット、助かった」

「御礼は終わったら聞きますので」

 

 本当に言うようになってくれた。それがとてもうれしいけれど、問題はこのウサギをなんとかしないとリコッタたちと合流できないことにある。

 

「……ミネット、ブランカを呼び出しちゃおう。どうせここまで派手に暴れたらとっくにバレてる」

 

 空に逃げるのが一番手っ取り早いが、リコッタとの合流方法は考えなければならない。僕の左目の封魔結晶に頼ってなんとかするのが手っ取り早いか。

 

「とりあえず、なんとか逃げ切ろう」

「はい、アオさま」

「お、逃げる算段ぴょん? ラピョーネ族の生き残りであるボク様が見逃すと思ったら大間違いだぴょおん!」

 

 再度飛び込んでくるラピィを相手取る。ミネットも応戦に回ってくれるが、向こうは僕に一直線のため、応戦しない訳にはいかない。かなりの遠間で向こうが振りかぶった。

 

「!」

 

 骨切り包丁が()()()()()。包丁を投げたのだ。それを首を捻って回避。右肩のすぐ上を流れていく。たまたま義肢を支える革ベルトの上を滑ってくれた。多分もうこの服はだめになっただろう。後でリコッタに謝らないといけない。

 

 チェーンを迂闊に払いのけるのは悪手だ。身体を絡め取られては地獄を見る。

 

 だが、わかっていてもこれを逃すことはできない。相手に足を止めさせるチャンスだ。

 

「肩ロースいただきまーすっ!」

 

 チェーンを腕に絡ませる。相手は斜め上向きに切上げるように獲物を振ってくる。ちょうど左肩を狙ってくる位置だ。

 

「アオさま!」

 

 右手には武器として使っている棒がある。それにチェーンが引っかけて固定。振り上げてくる刃は左の義肢できっちり受ける。骨切り包丁は切れて骨までで、精密機器が詰まった義肢を断ち切るには重量が軽すぎる。そもそもラピィは小柄で、筋肉で振り回すしかないから、鎧を斬るようなことはできないのだろう。

 

 相手は僕が義肢だと知らなかったみたいだ。切り飛ばすつもりで振り抜いた刃が止まったことに、赤い目が見開かれている。その胴体めがけて棍棒を突き込むが、相手がふたたび大きく後ろに飛ぼうとして……地面に叩き付けられた。

 

「ぴょっ!?」

「捕まえた!」

 

 僕は左手で手首を支え、右腕の前腕だけを回転させ、ウインチのようにチェーンを()()()()。ラピィは逃げて飛ぶには短すぎるチェーンに引っ張られたのだ。

 

 ギャリギャリと、金属同士が擦れる嫌な音がする。ゆっくりと着実にチェーンを巻き取っていく。

 

 ラピィが逃げるには、武器を手放すしかないのだ。彼女の武器はチェーンで繋がった骨切り包丁。つまるところ、チェーンをこっちが握ってしまえば、チェーンの範囲でしか距離を取れないことになる。

 

「ずっこいぴょん! そんなの反則ぴょん!」

「君のルールなんて知らないよ」

 

 変則的なチェーン・デスマッチ。それでも飛び込んできた相手をチェーンで振り回す。包丁の柄にチェーンが接続されている関係で、ちゃんと刃筋を立てて斬りかかることなどできはしない。

 

 目のすぐ下を刃先が通過する。薄皮一枚斬られたが、それだけだ。一気に腕を回転させ、武器として使えないほどに近く巻き取る。斧のように衝撃で割るような使い方も、刃面を滑らせ肉を断つような使い方も、これだけ動かせる範囲が狭ければできない。力比べなら、僕でも負けない。どれだけ脚力が強かろうと、結局は重量がものを言うからだ。

 

 骨切り包丁が無力化されたとラピィもわかっただろうに、彼女は手放さない。おそらく他に武器がないのだろう。後は噛みつくとかひっかくとか、そんなところか。

 

「ミネット!」

「うぴょっ!?」

 

 後ろに回り込んだミネットが回し蹴りを喰らわせている。……すごいなミネット。一〇メートルは横に飛んだぞ。風の魔導の気配を感じて上空を見ると白い猛禽がやってきていた。ブランカだ。こっちに向けて突っ込んでくる。

 

「アオさま失礼します!」

「うおっ!?」

 

 ミネットに掬い上げられるようにして抱き込まれ、急激な加速度がかかる。お姫さまだっこの状態で真上に飛び上がる。飛び込んできたブランカを見下ろす位置まで飛び上がると、ブランカが下から僕たちを背中でキャッチ。鞍もないのにミネットはその上ですたんときれいに降りる。本当に猫みたいな身軽さだ。

 

“おまたせ!”

「ナイスタイミングですブランカ! バーチカル、ゼロ・ポイント・セブン!」

“つかまって!”

 

 上昇指示を口頭出だすミネット。手綱も鞍もないので、口頭での指示がすべてになる。

 

「逃がすかっ!」

「まだ動くのっ!?」

 

 ミネットが驚いている。飛び上がってくるのが見えた。この状況で空中戦は逃げ場がない。というか、足場がブランカしかない。ラピィの手元から強い魔力が放出されている。

 

「封魔結晶っ!」

 

 術式を見る。とても単純な術式だ。魔力を強制的に排出するようなもの。この術式には覚えがある。ミネットがアーロン・フォリオの鉄砲玉としてポーレットさんやリコッタを狙ったときと同じ術式。それが投げつけられる。

 

 手榴弾代わりの封魔結晶。前みたいに僕なら防げるかもしれないが、あまりに姿勢が悪い。ブランカとミネットを巻き込むことになる。なにより、風の魔導で無理矢理高度を稼いでいるブランカの魔導とかち合う。墜落のリスクが高い。

 

 間に合わない。

 

「――――――神の氣吹によりて(F D)氷いできたり(C G)

 

 凜とした声が割り込む。その封魔結晶の周りに大きな氷のキューブが張られた。これと全く同じ術式を僕は知っている。魔導術入門の初回で見た。

 

「……まにあった!」

 

 大通りの真ん中、桃色の光で魔導陣を空中に描いたリコッタが肩で息をしながら立っていた。




覚悟ガンギマリ公女様爆誕

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