【書籍第一巻発売中!】公女様の義腕騎士-元官僚、異世界でホームレスから成り上がる- 作:笹木ハルカ
「アオ・ポーレット……貴様か」
「殿下、話しているのはアオ様ではなくわたくしですわ。アルフォンス殿下ですら、淑女の話はお聞きになりましたのに」
ここまでキレているリコッタは初めて見たかもしれない。初手で躊躇無く第二王子殿下の逆鱗に触れている。彼女の方から一歩前に出た。僕は今のうちにと右腕に絡まっている鎖をほどいていく。
僕らと第二王子の他には、付き人が何人かいるだけだ。第二王子殿下は寝首を掻かれるのが怖くて文官で固めていたのだろうか、全員非武装に見える。この状況ならなんとかなる。最悪でもリコッタを抱えて飛び降りるという選択肢がある。
「一度殿下とはきちんとお話してみたかったのです。お昼はアオ様ばかりで、わたくしになんて目もくれていただけなかったですから」
「――――公爵家の長女だからといってそう易々と声をかけられると思うなよ。せいぜいアルフォンスの慰み者がお似合いだ」
「第三王子殿下にわたくしの事を紹介してくださったのは貴方でしたのね。ですがアルフォンス殿下に無礼をはたらいてしまったので、残念ながらわたくしはアルフォンス殿下の元には参れないのです」
リコッタの桃色の髪が風に揺れる。腰を抜かしたのか、地面に尻餅をついたままの殿下を見下ろして、リコッタはどこか楽しそう。
「これはアオ様からの受け売りですが、王権とは、人民を統治すべしと神が選ばれし人間にお与えになったものです。それは王家に仕えることで封地を治めることを許された我々貴族もまた、同じ責務を背負うということでしょう」
いつそんな話をしたっけと思い出すのに手間取った。確かそんなことをアルフォンス第三王子の前で口走った気もする。
「それがどうした」
「領地を治めること、そして、その民の生活に責任を持つこと。それこそ、統治者としての責任であり名誉であるとわたくしは弁えております。そして第二王子殿下もまた、軍務卿としてより広範な責任を負っていらっしゃる。だからこそ、わたくしは今夜のことが悲しくてたまらないのです」
殿下、とリコッタが呼びかける。
「殿下は何を信じてその権力を振るうのですか。その強権の向こうに、貴方が見据えるのはどこの、どなたですか」
声が凜と澄む。あぁ、リコッタは本当に怒っていたんだなと今更ながらそんなことを思った。
「貴様ら! 第二王子殿下の前で何を……!」
「――――今はリコッタ閣下がお相手の最中です。無粋な真似はお控えください」
骨切り包丁を殿下の付き人の前に突きつける。魔導術を発動し、刃の部分だけを焼き入れる。その熱とほの青く光る刃にその付き人がたたらを踏んだ。
「わたくしは貴族の娘です。まだ成人にもほど遠いですが、それでもこの身も心も全て、わたくしの自由にできるものではない事ぐらい承知しておりますの。この身は陛下の臣民であり、われらがバリナード公爵領に住まう領民の安寧のために使われるものです」
リコッタの声は周囲の誰にも口を挟むことを許さない。……位としては上のはずの第二王子殿下にも。
「殿下は今宵、わたくしの父、バリナード公爵たるトマス・バリナードを攻撃した。そしてその父が『絶対的な信頼を置く』と評したエルジック男爵アオ・ポーレットを攻撃した。……当然そこには、殿下なりに我々が王国の民にとって害悪であるという確信があってこそのことだと推察いたします」
「私が攻撃を指示した証拠などどこにある。そもそも銀弓が噛んでいるという証拠はあるのかね」
「殿下が関わっていないのであれば、わたくしたちを襲った者達はただの賊。公邸は公爵領に準ずる扱いを受ける以上、そこで無礼を働いた彼らはこちらで
「……っ」
いきなり話が今後の対策という具体案に着地したが、これは上手い論の運びだ。
第二王子殿下はリコッタの話を無碍にはできない。ここで渋れば追撃を喰らう。しかし、襲撃に加わったグループの全員をトカゲのしっぽとして切り捨てることになるのだ。
単純な損害としても相当なものだし、第二王子の求心力の低下は避けようがない。また王都のど真ん中で騒動が起きたのもまずかった。すでに事態の隠蔽は不可能……というか、ハリエットとポーレットさんが魔法戦で大暴れしたせいもあり、ことさら大事になってしまった。これらの補填も必要だ。それを公爵家との
「……当然だ」
「では彼らの扱いは
第二王子殿下は相当頭に血が上っているらしい。これで襲撃犯の身柄はまとめてバリナード家の管轄に移る。それはすなわち彼らが知っている情報も得られることと同義だ。今回の対応に加担した人員をそのまま労働刑などの形で公爵領にもちこむこともできる。
もっとも、それを諦めるための『交換条件』としてなんらかの譲歩を迫ることになるだろうが、これを呑ませることに成功した。
「フレデリック第二王子殿下、殿下が指示をしていないとしても、今晩のようなことが起きてしまった。なぜ、デモンストレーションを望んだのですか?」
デモンストレーション。そう、これはパフォーマンスであり、デモンストレーションだった。王子殿下はバリナード家に対して『いつでも押さえつけることができるんだ』ということを示そうとした。そして僕たちはそれに対抗できることを示した。
「……私がそれを望んだだと?」
「だってそうではありませんか。貴方はここからずっと見ていた。わたくしたちは、誰からも
第二王子はどこか恨みがましい目線をリコッタに送る。
「……王権を愚弄する気か」
「あら、第三王子殿下も同じ事をおっしゃいましたわ。誰もが貴方がたを無条件に肯定してくれると考えているのですね。それが王権であると。それが王族の特権であると」
月明かりが陰り、皆の顔に影を落とす。
「特権は責務を伴います。それをわたくしは父であるトマス・バリナードから叩き込まれました。また目標となるような暖かい統治のあり方をレナ・ポーレットに学びました」
再びリコッタが前に踏み出す。
「そして、そのためにあがくことの大切さと難しさをアオ・ポーレットに教わったのです。それがたとえどんな結果を招くとしても、どんな未来になるとしても、責任を負うために足掻いてきた。わたくしは、わたくしたちはそうして救われてきた」
こつり、こつりと硬い足音が響く。
「それは特権があるからではないのです。そして、より広範な責任を負う貴方もまたそのような視座を持っている方だと信じていたのです」
リコッタはそう言いつつ、殿下の前で膝をつき顔をぐいと近づける。僕は斧を握り直す。リコッタは第二王子殿下に近づきすぎだ。
「わたくしはね、怒っているんですよ。フレデリック第二王子殿下。父上を危険にさらしたことにでも、アオ様を襲ったことにでもなく、あなたを信じた者達を切り捨てておいて平気な顔をしていることにです」
「なに、を……」
「そうして貴方は独りぼっちの王様になればいい。誰も貴方の野望も理想もやり方も、何一つ否定しません。その時に貴方の抱える王権とそれをたたえる器がどのようなかたちになっているかは存じ上げませんが、さぞ気持ちの良い生活が待っているのでしょう」
……これは、あれだな。僕にもわざと聞かせている。僕にとってもかなり耳が痛い。
「ですが、わたくしはその列へ加わる気などございません。わたくしの後ろには、公爵領民八三万人が控えているのです。彼らにまで殿下のデモンストレーションに付き合わせるわけにはまいりません」
「……貴様」
「王国にわたくしが不要だというならここで切り捨てればよろしいのです。ここでの会話を聞いているのは、アオ様を除けば皆あなたの忠臣。ここで子ども二人を文字通り斬り伏せればここでのことはあなたの思うがままです。もしそうなさるのであれば、父が報復に走る前に縛り付けた方がいい。そうすれば西はあなたの思うがままとなります」
リコッタの手が第二王子の頬に触れた。
「あなたの大義がそこにあるのなら迷うことはないでしょう。ですがそこに嘘偽りがあるのなら、それは一生の呪いとなります。一時の甘言に絆されて答えをすり替えたとして、それを周りの誰もが讃えても、すり替えたことを知っている自分自身だけはそれを覚えている。……それがどれだけ恐ろしいか、あなたはご存じで?」
「お前のような子どもが何を知っているというのだ」
「知っていますとも。……わたくしは運良く踏みとどまれただけです。馬車が襲われ『わたくしが彼らについていけば父が助かる』という明らかな嘘を、嘘だとわかった上で飲み込もうとした。それがよりひどい結果を生むとわかっていたのに、その一時から逃れるためだけに選ぼうとした。あの時、アオ様がいてくれなければ、きっと自らを呪わずにはいられなかった」
あのとき……僕が彼女と初めて出会ったとき、リコッタはそんなことを思っていたのか。
リコッタが第二王子の手を取り、彼女の首筋に触れさせる。……第二王子が力を込めれば、リコッタは文字通り絶体絶命だ。
「呪いとは、甘いのです。とても甘く、とても怖いもの。……殿下はそれを飲み干す覚悟がおありですか?」
微笑むリコッタ。彼女が一気に天秤へ自分の命を乗せた。
「……どうして力を込めないのです? そんなに嫌そうな顔をされているのに。力を込めれば終わるのですよ。それとも、そんな覚悟もなく踏み込んだのですか」
さっきから僕の心臓も早い。リコッタが命を張りすぎている。わずかでもボタンを掛け違えば、すぐに取り返しのつかないことになる。
「なんだ、なんなんだお前らは!」
ひっくり返った第二王子の声。たかだか七歳の少女に、大の大人が気圧されている。
「お前らに何がわかる! この大国を守るために王家がどれだけの事を犠牲にしてきたか! 貴様らにわかるののか! 末端であるお前らが想像もできないような戦争を、我々はずっと抱えてきた! 鎖としての命でしか無いお前が! 前線しか知らないお前が! それを断罪するか! リコッタ・バリナード!」
「わたくしは前線すら知りませんよ。そんなわたくしですが、それでもわかることがあります……自らの責任すらとれないひとに、貴族は務まらないのです」
ゆっくりと第二王子の手を自分の首元から外し、立ち上がるリコッタ。
「鎖としての命……よい表現です。貴族の娘とはそういうものなのでしょう。……そうとしか生きられないとしても、誰を繋ぐかは、わたくしが決める。あなたは、繋ぐにはふさわしくない」
リコッタが声を張る。
「恥じ入りなさい! フレデリック・リンスター=ヴェッテン! あなたの御旗を信じ尽くした者達に報いるにはそれしかないのです!」
「わかったような口を――――――――!」
第二王子が魔力を練る。火属性。おそらく魔道具かなにかのプリセットを呼び出している。
潮時だ。リコッタの前に飛び出す。リコッタが水属性の魔導術を僕にかけた。……これは、回復魔法の応用だろうか。ふっと体重が軽くなったように感じる。
「きく……なっ!?」
第二王子の懐に飛び込み、骨切り包丁の背で相手の胴を殴りつける。魔力が散る。相手の胃液が多分服のどこかにかかったのだろう。饐えた臭いがする。
「……そもそもですね、こんな至近距離で悠長に魔力を練ったところで間に合うはずないでしょう、殿下」
第三王子の時もそうだったが、王族一家は戦い慣れてないのがよくわかる。どんなに強い魔法でも、発動させられなければ意味が無い。そもそも、火力だけならハリエットの方が間違い無く上だっただろうし、術式が読めた以上は対策も容易い。
「手を出したのはそちらだ。こちらも応戦はさせていただく。……なに、死にはしないでしょうし、腕のいい義肢職人にはツテがあります。子どもでも二月ちょっとで日常生活に戻れたのですから、殿下ならすぐでしょう」
骨切り包丁を手に言うのはさすがにパンチが効きすぎるかと思ったが、案の定、第二王子が逃げ出した。転がり落ちるように……というか、実際に転がり落ちながら階下へ逃げていく。
「……あれだけ大口叩いて逃げるんかい」
なんというか、一気に気が抜けた。まだクリストフ・ファルマンの方がよっぽど肝も据わってたし筋も通したぞ。
「とはいえ、追いかけないとですよ。きっとレナ様やとと様も下に来ている頃ですから」
「……ですね」
どこか楽しそうなリコッタに言われ、あえて足音を盛大にたてなががらゆっくりと降りていく。一応背後を警戒しつつ、前へ。金属のドアをガンガンと叩く音が聞こえる。……ドアを開けるのに手間取っている? だれかが下でバリケードでも構築したのだろうか。
強力な魔力が煌めいて、音が止む。……今の魔力はポーレットさんか。階段を降りきると、月明かりが差し込んでいた。どうやら外では包囲網がきっちりできていたらしい。
「……フレディ。どういうつもりか説明したまえ」
絶対零度の目線で第二王子殿下を見下ろすのはトマス・バリナード公爵閣下。文字通り胸をなで下ろしているのがポーレットさん。その奥でこの場の誰よりもぶっちぎって怖い顔をしているのが国王陛下だ。寝間着なのに怒気がすごい。
「フレディ……いや、フレデリック・リンスター=ヴェッテンよ。お前には恥という概念がないのか?」
「ち、父上……!」
「飛空魔導騎士団の設置は余が直接聞き届け、余の国の発展に寄与すると認めたものだ。その立役者たるバリナード公をこのようなくだらない手で試すなど言語道断であるが、それすら見失うほどお前は耄碌したか」
「しかし父上」
「
ポーレットさんがこっちをみてちょいちょいと手招きしたので、ふたりで王子の横をすり抜けて外へ。腰をかがめて小声でささやいてくるポーレットさん。
「大丈夫だった?」
「リコッタ様のおかげで」
「そう。よかった」
心底ほっとした様子のポーレットさん。
「もうよい。これほどの騒動になった以上、余の臣下たる市民にはそれなりの説明と責任をとらねばならん。さて……どうしたものか……」
「陛下、恐れ多くも一つ、よろしいでしょうか」
割り込んだのはリコッタだった。公爵閣下がぎょっとした顔で彼女を見る。
「リコッタ・バリナードか。よい、申してみよ」
「先ほど塔の上で、今回わたくしたちを攻撃した者達についてはバリナードの裁量で捌いて良いと第二王子殿下からお許しを得ております」
「それは……」
「あら殿下、先ほど『攻撃の指示などしていない』、『銀弓が関わった証拠などない』とおっしゃったではありませんか」
リコッタの声に盛大にため息をついた国王陛下。
「……残念ながらリコッタよ。そやつの言葉には嘘が含まれておる。襲った者達の中には余も名を知っておる銀弓騎士団の者が紛れておった。フレディが主体的に関わったことには疑いようがない」
「そうですか。……ですが王家の約束は口約束であっても重たくあるべきです」
リコッタの物言いに土気色の第二王子の視線が陛下とリコッタの間で揺れる。
「その通りだ。王家がその名の下に約束を交わしたのであれば、それはいかなる事情があろうとも履行されねばならない。……ではこの件についてリコッタよ、お前は何を望む。それをわざわざ余に問うたということは、それなりの要求があるのだろう?」
「はい、陛下」
リコッタが見えないドレスをつまむ。
「今夜の騒ぎが殿下の指示で行われたことであるならばなおのこと、現場で戦い、傷ついた者達が居る以上、その損害は補填されなければなりません。命を散らしたものもいるでしょう。その者達がなぜこのようなことに巻き込まれねばならなかったのか、つまびらかにする必要があるのではないかと思料いたします」
「……リコ、まさかとは思うが」
戦慄した表情の公爵閣下。
「わたくしが望むのはただ一つです。今夜傷ついたものたちへの慰めとして、今宵何があったのかを包み隠さず、全てを公開していただきたいのです。誰が、何を望み、どうしてこのようになったのか、すべてです。それでのみ、今宵戦ったものたちの魂を、そしてその家族の安寧を守ることができると、そう考えております」
震え出す第二王子。国王陛下も絶句している。
「つまりは……余の名でフレディの罪を臣民に向けて知らしめろ。そういうことであるか」
「いいえ、陛下。それはフレデリック第二王子殿下の口から直接語られるべきです。彼らと彼らの家族に対し、公の場で、直接に」
「それは、死ねというのと同じではないか! そんなことをするぐらいであればこの場で殺せ!」
第二王子がわめき散らすが、国王陛下は顔から表情を消している。そんなことを一般市民の前で行うことは文字通り命がけの行為となる。いつ投石があるやもしれず、刺されるリスクだって高い。
それをリコッタは、国王に対し息子である王子にそれをさせろと迫ったのである。
「殺されるような指示を出した自覚がおありなのですか?」
「それは……」
「残念ながらこれは戦争ではないのですから、戦場でのルールは通用しません。貴方の生首で解決できる問題ではございません」
リコッタがそんなことをぴしゃりと言っている。これは多分僕や国王陛下のみならず公爵閣下にも刺さった。今日のリコッタは強火というか、きっと本当に頭にきているのだろう。
「銀弓騎士団が殿下の命で動いたのであれば、それは賊としての略奪行為ではなく、明確な軍事行動でありましょう。無理矢理軍事で解決しようとし、上手くことが運ばなかったとしても、王国は騎士団の勇気と忠誠に報いるべきです。彼らへは十分な報償が支払われてしかるべきと考えます」
「……で、あるか。王国はそなたのような者にこそ好かれる努力をするべきであるな。よろしい。本件にあってはその通りとしよう」
「父上!」
「お前はもう父と呼ぶでない。
国王陛下の目に哀れみが混じる。
「易々と西方鎮守の要たる重臣と余の間にこのようないらん軋轢を生んだのみならず、その幼稚な矜恃を守るためだけに騎士団を余の都で動かした。……本来ならばこの場で最後の杯を預けるところであるが、
「生き恥を晒せというのですか!」
「今日だけでこれほど恥を晒しておいて今更何を言うか!」
国王陛下が怒鳴った。直後咳き込む陛下。
「お前に王族の矜恃がまだ残っているのであれば、死に時を選べると思うな。どれだけ恥にまみれようが、どれだけ辛酸を舐めようが、国の責務から逃げることは許さん。そう我が子らには教えてきたはずだ」
国王陛下がそう言い、トマスに向き合った。
「トマスよ、此度の騒動にあって君の愛娘、そして
リコッタの顔がパッと明るくなって、慌ててその感情を隠した。……政治カードとして利用された感が強いが、これをカードとして幕引きを図れるのであれば、王家としても安いものだろう。そして、これを蹴ってまで王家と対立する理由は公爵閣下にもリコッタにもない。
「王都内の騒動による物的損害や人的被害は、王宮が責任をもってこの者に工面させる。また、それ以上の賠償にあっては日を改めて確認としたい。マックスにはそちらの言い分を全面的に飲み込むよう、余から厳重に言い含めておく」
つまり、ここから先は公爵閣下と侍従長との間で話をまとめろということだ。公爵閣下が恭しく頭を下げた。
「御意」
「フレデリック・リンスター=ヴェッテンはもはや王の子ではない。一市民と同様に処分して構わん。一市民であるから、その処遇について余への報告も不要である。……まったく、チャールズを早々に新大陸から呼び戻さねばならん。新大陸総督と軍務卿の兼務は激務であろうが、飲み込んでもらうしかあるまい」
もはや第二王子殿下……いや、
「この者を牢に繋いでおけ。死なれても困るから、独房に厳重に見張りも付けておけ。せめてもの情けとして、毛布ぐらいは投げておけ」
王の命令で半ば引きずられるようにして去って行くフレデリック。……多分、僕とリコッタはもう二度と会うことは無いんだろうな。
(まあ……会うことになったら色々面倒だろうけど)
そんなことを思っていると、また遠くが騒がしくなった。今度は何だ。
「父上! 兄上が引きずられていたが、何事……か……っ!?」
一番めんどくさいタイミングで一番めんどくさい人が王都に戻ってきたらしい。第三王子、アルフォンス・リンスター=ヴェッテンを前に国王陛下が何度目かわからないため息をついた。
おまたせしました! 『公女様の義腕騎士 -元官僚、異世界でホームレスから成り上がる-』の刊行日が2026/04/10に決定しました!
刊行レーベルは本条謙太郎先生の『汝、暗君を愛せよ』や、蝸牛くも先生の『ブレイド&バスタード』が連載中のDREノベルスとなります!
……雲の上の人みたいな先生がズラズラいるぅ……負けないように頑張ります!
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次回 さらば王都