【書籍第一巻発売中!】公女様の義腕騎士-元官僚、異世界でホームレスから成り上がる- 作:笹木ハルカ
本日は2話更新です。よろしくお願いいたします。
第五〇騎士団編成完結式典より編成報告全文
王国に、そしてご臨席の皆さまにもまた女神ディアナの祝福があらんことを。
ヴェッテン王国王太子にして軍務卿であらせられるチャールズ・リンスター=ヴェッテン殿下に謹んでご報告申しあげます。
我々は殿下をはじめとした皆さまの多大なるご支援により、編成完結式を無事迎えることができました。前身となる仮称飛空魔導騎士団設置準備室開設から五年、長きにわたる支援の末、本日皆さまにお目通り叶うことは、我らにとって最大の名誉であり誇りです。今日は第五〇騎士団にとって最初にして最大の、そして最後のハレの日であります。
第五〇騎士団はご覧の通り、飛空魔導騎兵三六騎を主力とする空中戦力です。実際に戦場を飛ぶのはこの三六騎、ですがその一騎が兵士一〇〇〇人をも超える働きを成すと確信しております。いかなる兵力よりも先んじて戦地に入り、俯瞰し、撃滅する。これからの戦闘の要となるべく、我々はここにおります。
その志は、なにも空を飛ぶものだけではございません。魔鳥の育成管理を行う厩務集団はもちろんのこと、教育集団、輜重集団、気象集団、工兵集団、情報集団……。担う任務こそ異なれど、志を
その種属を問わず、その年齢を問わず、その性別を問わず、その出自を問わず。ここに集うものは皆、誠実にその任を負うことを自ら選んだ精強であります。その誰もが最後の一人になったとしても、その任を全うし、必ずや殿下にもご納得いただける戦果を上げることでしょう。
第五〇騎士団の設立により、王国は戦場においてより幅広い戦略を得ます。助攻としての後方奇襲、空からの情報収集、強固な城壁の破砕など、それらにより王国は帝国に対し戦略的優位を得やすくなるでしょう。それは味方を生かし、敵を砕くための力です。我々騎士団はそのためにあります。
戦場にある限り、我々は求められ続ける。戦場にはいつだって空があります。敵が空を見上げることすら恐れさせるだけの力を、我々は王国に提供し続けましょう。空から逃れる術を、我々は敵に与えない。我々が飛ぶ限り、戦場に敵の安全圏はない。
すなわちそれは我々が飛ぶ限り、戦場で記憶され続けるということでもあります。求められ、飛び、勝ち、帰ってくる。それは我々騎士団の日常となり、友の亡骸を越え、飛び続けることを意味します。
だからこそ、我々騎士団の目指すべき果ては明確です――――――我々の最終目標とは「忘れ去られること」にあるのです。
なぜならば、勝利はいつだって戦場ではなく、その先の未来にあるからです。戦争を生き延び、自由を謳歌する市民こそ、勝者であるべきだからです。その暮らしを、生を守ることこそ騎士の本懐であることは、私が申し上げるまでもないでしょう。
だからこそ、戦場で求められ続ける我々は、市民から忘れ去られて初めてその任を完遂するのです。
我々が望む未来は、無責任な学者が無責任に今日という日が王国最後の蛮勇であったと記録する未来です。
我々が望む未来は、こんな部隊なんて金の無駄だと批判される未来です。
我々が望む未来は、この技術が忘れ去られ風化する未来です。
だからこそ我々は市民が飛空戦力こそ金の無駄だと批判し、為政者によりその役目を終えたとして解体を命じられるそのとき、その瞬間、はじめて目的を達するのです。戦場で求められ続ける我々だからこそ、我々は自らの手で、忘れ去られ疎まれる未来を勝ち得なければならない。それこそ王国の騎士が真に勝ち得るべき勝利であると考えます。
故に今日は我らが騎士団にとって最初で最後のハレの日なのです。これより我々騎士団は解体されるその日まで真に栄誉を受ける日は来ない。我々は背後にある者達が真の栄光を得ると信じて、泥にまみれ、血の川を越え、暁を呼びに空を駆けるのです。
ここに集いし第五〇騎士団員諸君、一四二三名の戦友諸君。
ここにはさまざまな仲間が集った。肌の色が違うもの、信じる神が違うもの、獣の耳をもつもの。出自もまた様々、代々の魔導師の血を引くもの、貴族、元ホームレスに元奴隷。動機だって、名誉のため、村の家族を養うため、貴族の義務としてと多種多様だ。それでも我らはここに集い、修練に励み、同じ鍋をつつき、草の根を枕に同じ夜を過ごした戦友となった。
我らの活躍が語られるときとは、祖国が危機に瀕していることを意味する。だから忘れ去られる為に戦う我らは、当然の帰結として歴史にうち捨てられ、風化し、塵と消えるだろう。
だが、私は忘れない。諸君らの努力を、矜恃を、記憶しつづける。諸君らの隣に立つ戦友もまた忘れないだろう。それでも飛ぶと決めた諸君を、その背を護ると決めた諸君を、私は忘れない。
騎士団長として約束できるのはここまでだ。苦しみを消してやることはできない。悲しみはこれから山となるだろう。怨嗟の声に足を取られる朝が何度も訪れる。吐き出すことも飲み込むことすら許されない絶望を抱えてひとり夜明けを待つしか無い夜が何度も訪れるだろう。
恐れるな!
それでも、それでも必ず我らの手で必ず未来を掴み取ろう! 我らが必要とされなくなる未来を、必ずや手に入れようではないか!
本日我らは編成を完了し、バリナード公爵領を拠点に作戦行動を開始する。――――――なによりもまず、我ら自身のために。我らが護り、生み出す未来のために、諸君らの奮戦を期待する。
王太子殿下。チャールズ・リンスター=ヴェッテン王国王太子殿下。
このとおり我々は王国のために、そして臣民の幸福のためにあります。どうか我々を、我々の戦果を存分にご活用ください。争いはいつだって意見の対立に始まり、合意をもって終わるものである以上、王宮こそ戦争の最前線であります。その勝利を生かすも殺すも殿下のご采配次第です。どうぞ有効におつかいください。そのために我々は修練を積み重ね、ここに集いました。
今こそ、飛翔のときです。
ここに騎士団員一四二三名の命と変わらぬ忠誠をお預けし、編成完了報告に代えます。
王国に栄光あれ。
聖星歴二四二年、四月一日。王国軍政局第五〇騎士団設置準備室室長、アオ・ポーレット。
感想などはお気軽にどうぞ
次回 早速呼び出し