ゴールドラッシュ   作:switch2外れた

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 原作キャラの口調一生わからん

 ※ご指摘により同一人物の発言を複数の「」で区切っていた点を修正(05/28)


ないしょばなし

 

 救急、消防、警察。有事にしか見ない車両が目白押しの眼下にため息を一つ。

 バーの跡地が見えるホテルの一室で、俺は悲嘆に暮れて言った。

 

「古巣を追われて古巣に追われて、あげく馴染みの店から出禁喰らった。今日の俺より不幸なヤツって存在するの?」

 

「マスター」

 

「いやいや、マスターは今頃天国にいるさ」

 

「……そういえばナース好きなんだっけ」

 

 マスターは信の置ける病院にぶち込んだ。爆発から守るのは難しくなかったが、それがずっと続くとなれば面倒だ。

 無傷での入院生活。それもVIP待遇。ナース好きじゃなくてもハッピーな境遇だ。これで店舗が吹っ飛んだ衝撃が少しは癒えるといいんだが。

 

「それで、どうする?」

 

 と、少しだけ真面目な雰囲気でトウコが問う。

 

「どうするってもねぇ……うーん…」

 

 状況は不透明だが、今後も襲撃があることは確実だろう。さっきは交渉の下手さとその後の武力行使の規模から、 ごく一部の人間が逸って仕掛けてきただけだと思ったが、あの"奥の手"を見るにその判断は間違いだった。

 

 複毒自殺(クロスポイズン)。つい昨日まで俺の護衛だったあの女が襲撃者に名を連ねるなら、バトルリングの運営事務所が俺へのアプローチを──強奪にせよ交渉にせよ──認め、支援しているのは確実。

 量が生産できないゆえに、リングチャンプのグッズという付加価値で稼いでいた()()なのに、チャンピオンを辞し、付加価値が失われてなお、そのポケモンは金を生む。そう明かされた訳だ。

 

 当然、それを知る奴らは噂が事実だと確信する。

 "ゴールドラッシュ"。そのポケモンには、経済を変える力がある。と。

 

「もちろんだけどサーフゴーは渡さない。こいつは俺のものだ」

 

 言うまでもない前提。トウコも軽く頷いて流す。

 

「となると逃げるか戦うかの二択……と言いたいところだけど」

 

 敵が()()()()を夢見る以上、なんでもやり、いくらでも費やし、どこまでも追ってくるだろう。物理的な限界は確かに存在するが、それはこちらも同じ。

 逃げきることは現実的ではない。()()()()()()()()()()()。それ故に。

 

「実質的に一択だ。戦う。まず戦って、噂の発生源を潰す。その後既に俺らを狙ってる勢力を粗方潰して、ちょっと身を潜めれば──噂は噂に戻る」

 

 奇妙な言い回しだが、事実としてサーフゴーが(きん)を大量に供給できるという証拠を持っている人間はいない。

 リング運営のそれは願望混じりの推測。他の勢力はそれを事実に基づくものと誤解した結果だ。

 

 だからこそ、噂の発生源を潰すだけでコトが済む。金の魔力に目が眩み、強硬にリスクを呑む一派さえ片付けてしまえば、残るのは不確かな噂話。

 それに釣られる程度の動機しかなければ、少し身を隠す程度で十分だ。あるいは盲信する馬鹿もいくらか出るだろうが、組織単位で動かれなければ躱すのも容易い。

 

「ふーん」

 

 そんな予想に、トウコは気のない返事をした。

 杞憂とも、甘い考えとも言わずただ一言。自らの役目を問う。

 

「つまり全滅させればいい?」

 

「うん。まあ……そうだね。襲ってくるポケモンを倒して、襲わせた人間を倒して、襲ってきそうな組織を倒す。て言っても噛みつく相手は──っと」

 

 背にかかる重みに言葉を切った。首筋に息づかいを感じるのと同時、胴に手が回る。

 

「どうしたの?」

 

「ん……久しぶりの荒事だったから。ちょっと」

 

 「昂っちゃって」と耳元で囁く。状況はエロいが背景で台無しだ。アマゾネスみたいなこと言いやがって。

 しかし珍しい。トウコが甘えて来たことではなく、あの程度を荒事と形容したことが。

 

「いつも通り余裕そうだったけど、気になる相手でもいたの?」

 

「いや……うん。ほら、複毒自殺(クロスポイズン)──モモンのゲンガーがいたでしょ」

 

「ああ。なるほど」

 

 複毒自殺(クロスポイズン)は当然通り名。彼女は名をモモンという。まあこっちも偽名だろうが。

 そして、トウコは以前から彼女を敵視していた──と言えば少々正確ではないが、ともかく脅威を感じているようだった。

 俺に言わせれば繰るポケモンもトレーナー自身も、トウコが圧勝しているように見えたが、まあそこは天才にしか見えない何かがあったのかもしれない。

 

 なんて思考を巡らせれば、それを邪魔するように鼻筋を擦り付けられた。

 普段なら大いに歓迎するが、流石にこの状況で乳繰り合っているほど俺は図太くない。

 

「トウコちゃん?もうちょい作戦会議続けない?」

 

「考えるのは私の仕事じゃないから」

 

 それだけ言うと黙って深呼吸している。応じる気はないという意思表示だろう。

 

「そうだけどさ……」

 

 少し思考を巡らせようとしたが、それを察して耳に舌を這わせる妨害を受けた。勘の良さはトレーナーに必須の才能だが、こんなところで発揮しないで欲しい。

 俺は諦めてため息を吐いた。

 

「……わかった。どうせ大した指針を立てられるほど情報もないし。ちょっと待ってね」

 

 元々、情報収集か状況が動くのを待つかするため、明日から早々に反撃に出るつもりはなかった。俺のサーフゴーを含めポケモンを休ませる必要もあることだし。

 だから問題ない。と内心で理論武装しながら、現実では武装を解く。

 

 武装、と言っても武器と呼べるものは持ち歩いていない。だから、やることと言えばポケモンを離すだけだ。

 

 腰に提げた鍵束(クレッフィ)を、髪を括る大きな髪飾り(キュワワー)を、ポケットに忍ばせた幾らかのコイン(コレクレーたち)を、手離しても動くスマートフォン(スマホロトム)を、ボールベルトごと5つのゴージャスボールを。

 最後に爪先を地面に打ち付け、靴底に付いた異様な量の砂(シロデスナ)が落ちるのを確認し、ロトムを介してボックスに各々を送る。ただしゴージャスボールだけは机の上に置いたまま。

 

 ふう。と一息。安堵からか不安からか。自分でもわからない。

 

 久しぶりの丸腰、身一つ。

 

 俺は切り替えるように口角を上げ、振り返って手を広げた。

 

「いいよ。おいでトウコちゃん」

 

 

▽▽▽

 

 

 死んだな。そう思った。

 

 自分の店にアウトローが押し入ったから、ではない。

 そのアウトローの口から飛び出したポケモンが毒ガスを撒き散らしたから、でもない。

 そのガスが可燃性で大規模な爆発を引き起こしたから──というのも違う。

 

 その全てから無傷で助けられ、匿われた先の病室に、見知らぬ男が訪ねてきたからだ。

 

「こんばんは」

 

 男はそう言いながら、病室のドアを内からノックした。

 

「……面会謝絶だ。聞いてねえか」

 

「それは悪いね。しかし随分と元気そうじゃないか」

 

「人を見掛けで判断すんなよ、心の病さ。対人恐怖症でね。特に身元の怪しい人間と喋ってると鳥肌が立つ」

 

「おっと。重ねて失礼。では自己紹介しよう」

 

 どこか影のある偉丈夫だった。血の代わりに指先まで自信が通っているような気障な振る舞いの、その細身と上背のわりに、存在感の大きな男だ。

 燕尾服にも似た黒のスーツに、黄色いスカーフを巻いている。

 

 男はニヤッと笑うと、襟元のスカーフを撫ぜ言った。

 

「わたしの名はギーマ。イッシュ地方ポケモンリーグで四天王を勤める、()()()()サラリーマンさ。どうだろう、この身分は、きみのお喋り相手を務めるのに不十分かな?」

 

「……役不足だよ。伊達男」





 書いてる分これで終わりなんでしばらく期間空きそう
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