ゴールドラッシュ   作:switch2外れた

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 説明回は一旦終わり!書いてて辛い

 ※ご指摘により同一人物の発言を複数の「」で区切っていた点を修正(05/28)


みずのはどう

 

「そう言いながら病人らしい顔色になったのはどうしてだい?まさか誤用の方だったかな」

 

「こっちは()()()()個人事業主なんだよ……!マフィアだのチンピラだのならいざ知らず──」

 

「それだって御免だが」と早口で付け足しながら、無礼を承知でビシっと指差す。

 

「──ポケモンリーグの!四天王!なんだってそんな大物が絡んで来やがる!」

 

 ヤケクソじみたその叫びに、ギーマは愉快そうに声を上げた。相好を崩し、冗談めかして「病院ではお静かに」なんて言ってみせる。

 良い奴そうだ──()()()()()()と直感した。

 

「……おや。どうも雑談はお嫌いかな?なら、さっそく本題に入ろうか」

 

「是非そうしてくれ」

 

「ああ。とは言え、君の予想通りのつまらない話さ。"ゴールドラッシュ"──というのは、技の名前だったか。それを使うポケモンを追っている。君ならなにか知っているはずだ」

 

「……なぜ?」

 

「『なぜ』というのは──」

 

「──なぜあんたが?って意味だ。裏の顔は殺し屋、なんて話じゃねえだろ」

 

 嘯くが、そうあって欲しくない、と言った方が正しい。身分を聞いて──新聞だのニュースだのの記憶を辿ってそれを信じ──死の予感こそ薄れた。

 しかし避難先に追手が来た現状は変わらない。危機が去るか否か、そのすべてがギーマの一存で決まる。

 

 そんな緊張を察してか、ギーマの語りは軽い調子だ。

 

「言ったろ?わたしも所詮、雇われの身分(サラリーマン)。つまり単なるお使いさ。わたしに与えられた仕事は、ポケモンの捕獲でも犯罪者の検挙でも、ましてや殺人でもない。事態の終息。それだけだ」

 

「収めたい『事態』ってのは?」

 

「それもまた()()()()()()()()だ」

 

 「ポケモンの技ではなく、現象としての」そうギーマは付け足した。

 

「ここ数年、この街のインフレは異常な水準にある。そして、その背景の一つが銀行の金庫と街全体に流通する(きん)の不自然な増加。鉱脈もなく、輸入でもなく、リサイクルですらない。由来もなく得体の知れない(きん)の──湧出、とでも言おうか。申請なく鉱山開発をしているとか、密輸入が深刻な域にあるとか、そんな原因ではないかも当然探られている。しかしそんな調査に成果はなく、おまけに一つの噂が聞こえてきた」

 

 「SNSや掲示板はお好きかな?」と笑うギーマに否定を返し、しかし言いたい事には「知っている」とも応える。

 

「ブラックシティの七不思議、だろ」

 

「まさしく。『違法なバトル施設の頂点に君臨する、黄金の体を持ち、黄金を生み出す奇跡のポケモン──』」

 

 芝居がかった調子で紡がれるその言葉には、当然心当たりがある。

 

「『──黄金卿(ゴールドラッシュ)、サーフゴー!』」

 

 随分楽しそうに口にしたものだが、そんな遊びに取り合う余裕はない。精神的な意味で。

 取り繕うこともせず、うんざりした顔と声色で問いかける。

 

「んじゃ、二つ目の”なぜ”だ。なぜそんな話が回ってきた?」

 

「つれないな──ま、単純な話さ。事が事だからな、どうしたって荒事になる。加えて騒動の中心にいるのが優れたポケモンとトレーナー。故にリーグに声が掛かかった。そこからわたしが選ばれたのはアデクさんの采配さ。この街に一番『馴染めるだろう』なんて曖昧な理由だがね」

 

 リーグが選ばれた経緯はともかく、ギーマが選ばれた理由には納得した。

 作家に格闘家にお嬢様。他の四天王は皆この街の、それも特別後ろ暗いところには相応しくない。

 ブラックシティの暗がりを行くなら、胡散臭さ極まりないギャンブラーなんて身分が適任だろう。

 

「……四天王サマが公務で来てるってんなら、まあ善良な一般市民としちゃ協力は惜しまねえさ。だが最後に一つ聞かせてくれるか。最後の”なぜ”だ」

 

 不明な点はまだ多いが、せっかく渦中からギリギリで逃れた──厳密には逃れられ()()な──身である。

 知る情報は最低限でいい。だから最低限、知るべきことを──譲れない一線を問いかけた。

 

「なぜサーフゴーを追う?この場合の”なぜ”は、動機じゃあなく目的。どうやってこの事態を収めるつもりで、あいつらに接触したがってんだ?」

 

 まさか口頭で注意して終わりなんて事はないだろう。

 そして、四天王ギーマの裏の顔が殺し屋だなんて話は噂ですら聞いたことはないが──荒事に出張る”武力”の一員であることは周知の事実。本人すら言及した通り。

 表の顔のまま殺しに及んだとして、それが命令の下にあるならば咎める法はない。

 

 そんな懸念を含意することは察しているだろうに、ギーマは変わらず人好きのする笑みを保ち、気負いはない。ポーカーフェイスとは笑顔を指すのだろうか。なんて思えてしまうほどだ。

 

「物騒なことはしない。塾帰りの少年にだって憚ることはないとも」

 

 そう言うと、ギーマは懐かしい動きをした。遠い日に、トレーナーズスクールで見た手振りだ。確か、ポケモンの技についての授業で先生がやっていた。

 どんなポケモンでも覚えておける技は最大四つ。五つ目以上の技を習得するなら取捨選択が必要になる。そんな時には──

 

「1、2の……ポカン!」

 

 

▽▽▽

 

 

 接客から調理、配膳まで。全てをポケモンのみで運営する新たな形の無人店舗──通称をポケモンカフェ。

 数年前急速に流行したそんなチェーンのとある店舗が、指定された待ち合わせ場所だった。

 

「カフェオレとウインナーコーヒー。あとマカロンアソートで」

 

 イエッサン♂が丁寧なお辞儀をして厨房に下がる。店内が空いているおかげか、料理担当であろうマホミルたちとのやり取りが聞こえてきた。

 

「癒される……!流行るのも頷けるね」

 

「もう廃れたけどね。愛護団体との衝突で」

 

 ポケカフェ運営企業とポケモン愛護団体との泥沼の訴訟合戦は今も続いている。過激な嫌がらせなんかもあって客足は遠のき、この街だけで15店舗あったのも過去の栄光。今となってはほんの3店舗が残るのみ。

 うち2店舗も撤退が決まり、残った元祖たる本店も経営が怪しい。いくら平日午後という時間帯であれ、俺たちしか客がいないのもその証だ。ギーマがここを指定したのも、人目を避ける思惑があったのだろう。それでいて個室や裏通りを選ばなかったのは、恐らく俺たちへの警戒ゆえ。

 

 なんだかここ最近ずっと貸し切り状態の店ばかり渡り歩いているのは、後ろ暗い人間の悲しいところだ。

 

「早いトコお天道様の下を歩けるようになりたい……」

 

「夏が終わるまでの辛抱だね」

 

「美白に気を使ってる訳じゃないね」

 

「冗談冗談」

 

 そう言うと同時注文した品が運ばれてくる。人ではないと言え店員が立ち去るまで間をおいて、人前ですべきではない本題に戻る。

 

「そのためにここに来たんでしょ?」

 

「いえす。マスターに感謝だ」

 

 四天王ギーマ、ひいてはポケモンリーグ。交渉如何では難敵が増えるが、味方にできればこれ以上ない相手だ。なにせ公権力の強大さについては、前世以上に身に染みている。

 昨夜描いた力業すぎる──策とも呼べないような──解決策よりもずっと平穏に。ずっとスマートに。問題を片づけられるだろう。

 

 まあそんな期待も不安も、交渉の席に着かないことには意味がないのだが。

 

「『話の途中だがワイバーンだ!』ってヤツ、俺嫌いなんだよね」

 

「何言ってるかあんまりわからないけど、始まる前だからセーフってこと?」

 

「アウトだよ。襲撃が頻発するとダルいって話だから」

 

 ため息ごとカフェオレを一気に飲み下す。通りに面した大きなガラス窓越しに、ぽつぽつと路面が濡れていくのが見えている。

 ぽつぽつ、しとしと、ざあざあ──すぐさま勢いを増して、()() ()()()()()

 

 最初に雨粒が落ちたタイミングからして、ギリギリマカロンを頬張る時間はあるか。なんて考えてすぐに否定する。口内を潤せるものが雨しかないからだ。カフェオレを一口分残しておくんだった。

 

「トウコちゃん」

 

「もう終わってる」

 

 頼もしい言葉の通り、店内のポケモンはみんな奥へと隠れているようだ。初対面の、それも他人のポケモンですら問答無用で従えるとは──なんて今更すぎるツッコミは放棄する。

 予想通りの相手が来るなら、巻き込まないためにも逃げてもらうに越したことはない。愛護団体に目を付けられたくもないし、使えるものは化け物でも使うべきだ。

 

「あ、来る」

 

 化け物(トウコ)がそう呟くと同時、降り注ぐ雨の一部が()()()

 宙に波紋を描くように、雨粒を伝う振動──”みずのはどう”が、一面のガラスにぶち当たる。





 ギーマさんの口調がマジでわからない。ファンの人には読ませらんないね
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