自分含めて最近バンドリキャラが大学生になって話が分からなくなってきた皆さまのために、第一期の高校生時代に遡り、あの感動と喜びを楽しんでもらいたいと考えて書いたものです。
暇つぶしにどうぞ。
春はあけぼの、だんだん白くなってくる山の生え際。そんな言葉があるように、春というのはほのぼのとしていて平和でいいものだ。まぁ、もう夏なんだが。
自分も春のポカポカに乗っ取って、のんびりと喫茶店でコーヒーを啜る。普通に夏だが。相変わらず君の作るコーヒーが美味いなと一言女性店員に話すと、彼女は言った。
──ほぼ毎日来るなと
「酷い話ではないか? 俺はここの店とコーヒーが気に入っている。お前さんの作るパンケーキだって美味しいしリピーターとして来ているんだ」
「それはそうですけど限度というものがありませんか!?」
金髪の男に女性店員は返した。理由としては中学の頃からこの男、
「確かにかなり来ているなとは思うけど、俺だって毎日同じメニューを食べに来ているわけではないよな? つぐみさん達に呼ばれて来ている時もあるんだから何かを言われる話はないぞ?」
愛の言葉に、この珈琲店の娘である羽沢つぐみはたじろいだ。確かにお客様として来ている愛の方が勿論多いが、たまに彼女達の都合で愛を呼ぶ事もある。その時にも店として売り上げに貢献してくれるので正直な話少女にとっては悪い話など全く無い。
「俺の事は嫌いか?」
さらにつぐみを追い詰めたのは愛のこの言葉。本音を言うとつぐみはこの愛という男に恋をしていた。だからこそ本気でお帰りくださいとは全く持って言いづらい。ただ、この男にはとてつもない事情があるので、彼の立場も守りたい。結局、そういうわけでは無いと否定するしか無いのだ。
「嫌われてなければ通わせてもらう。今の俺は
「そ、そうですよね……今は……ただの愛さんですもんね」
ふと、愛はどうして自分を帰らせようとするのか気にはなったが、ある程度理由は把握していたので、深くは聞かなかった。改めて飲んだコーヒーは苦かったらしい。こうして鶴田愛という男はのんびりと大好きなパンケーキでコーヒーの苦味を相殺したのだった。
☆
「愛! あたしに付き合って欲しいの!」
「こころか、どうしたよ?」
「
そう明るく誘って来たのは実妹である
「こころ、一体どこに……って愛さん!?」
「おう、美咲さん。お昼一緒でいいか?」
心労が無ければなと愛はこっそり美咲の心配をする。愛とこころは世に言う財閥の兄妹であった。さらに言うとこの弦巻愛は高校卒業後に弦巻家の次期当主になる予定があるのだ。つまりは将来当主になる事はほぼ確実だ。
対して美咲は完全なる一般庶民。ただでさえバンド活動やら高校生活でこころに財力や破天荒で振り回されているのにそこに兄も来られては胃薬必須である。現にクラスの人間達が弦巻兄妹に絡まれているように見える美咲に対して良くも悪くもヒソヒソと話している。
「あ、ありがとうございます。あたしで良ければ一緒に食べましょう」
「何を言っている? 美咲だから良いんだぞ?」
愛の言葉に一瞬照れてしまったが、すぐにこころが美咲と食べたいと言った事を愛が言うと息を深く吐いて、そうですよねとこぼした。
「美咲さん、そのたこウィンナー欲しいから俺の卵焼きと交換してくれ」
「え? 良いんですか? と言うか愛さんって料理とか……」
「シェフに手伝って貰ったが、大体は俺が作った。ほら、食ってみろ」
そう言って、箸で摘んだ卵焼きを美咲の口に持っていく。この無自覚タラシは何も考えず美咲にした行動だが、美咲は顔を真っ赤にしてからやがて覚悟を決めてその箸に口をつけた。普通に美味しかったらしい。
それを見た妹が自分も食べさせろと言って来たのもあり、結局愛の手作り弁当殆どがこころの中に入ったのは言うまでも無い。
「とっても美味しかったわ!」
「また作るわ、美咲さんにも作るからな」
「あ、あたしは……別に……いや、やっぱり欲しいです」
そんな美咲を見て少しだけ笑う愛。春はあけぼの、その中で財閥の兄がガールズバンドのメンバーとほのぼの過ごす日常のお話。
「今度、バンド練習見に行くよ」
「本当!? 美咲! 愛を笑顔にさせるためにミサイル飛ばすわよ!」
「いやそれはダメでしょ」
第一話にして早速妹に殺されかける兄は苦笑いしながらもこころの頭を撫でて落ち着かせるのだった。