これからもなんかあればお気軽にお声掛けください。
──愛さんもキーボード買ったら?
突如として蘭達Afterglowに言われた台詞である。愛が幼馴染のバンドを見学しながら少しだけアドバイスと称し口を挟んでいた時に、それは起こった。折角だから愛も楽器を弾いてみたらどうだと言われた。
幼馴染の言葉に対して少しだけ、試してみた結果、やはりたまにつぐみと弾いていたキーボードが1番上手いと言う事で、今後つぐみの練習に付き合うがてら1台キーボードを持っておけということになった。
正直、キーボード1つくらいなら簡単に買える愛(1日バイトのおかげ)はつぐみとの演奏を楽しみにしながら楽器屋に行く事にしたのだった。
「楽器屋なんて久しぶりだな」
Afterglow達がバンドを組む際に付き合ったりしたが、自分で楽器を探すのは初めてであった。折角だからと色々品物を見てみようかと考え、入り口に入っていくと……
「フヘヘ……このアンプカッコいいっすね!」
変人がいた。いや、文だけ見るとただアンプに興奮している楽器好きにしか見えないが、何故かギター置き場に身を隠し、一眼レフカメラで写真を撮っていた。それが無ければ普通である。
「で、電柱に隠れるならともかく……何でギターに身を隠して写真ストーカーしてるんだ……」
「あ……いらっしゃいませ……」
「誤魔化すな。警察呼ぶぞ」
「バイトっすよ!?」
お前の様なバイトがいるかと愛はツッコミを入れたが、首をよく見るとアルバイトと書かれたネームプレートを見る限り本当にバイトをしているのだろう。
「
「はい、自分は上から読んでも下から読んでもやまとまやって言います!」
アイドルみたいな自己紹介だなと愛が言うと、ボソボソとアイドルですと答えた。どうやら彼女はPastel*palletのメンバーらしい。
「彩さん、千聖さん、日菜さん、イヴさんと同じメンバーか」
「なんでそんなに知ってる風な話し方なんですか?」
「珈琲店で交流があっただけだ」
そう言って愛は、自分を鶴田愛だと名乗り、目的のキーボードを探していると伝えた。麻弥はまるで自分の事のように喜びながら、一緒に探してあげると伝えた。
「じゃあ、お願いしようかな……麻弥さんのオススメはどれだ?」
「そうっすね……これなんてどうですか?」
麻弥が指を差したキーボードは有名なキーボードであり、音も綺麗で、初心者から上級者でも弾きやすいと言うありきたりな物であった。
「楽器ではよく聞く誘い文句だが、本当にオススメなのか?」
「当然です! なんせこのキーボードはあの弦巻家の当主が有名な音楽家やミュージシャンを呼んで1から業者と作ったキーボードなんですから!」
「あの親父そんな事してたのか……」
麻弥の言葉に少しだけ頭を抱えた愛。恐らく愛娘であるこころがバンドをしたのもあって音楽業界にも事業を進出させたのだろう。次期といってもこれから先どれだけ大量の仕事を任されるのかと、後先見えない予想を立てながらも今は溜息1つ吐くしか手段は無かった。
「どうしたんですか?」
「い、いや。なんでもない……そうだな、癪だがコレを買おう」
「癪ってなんですか!?」
「機材ストーカーしてたやつのオススメだからな」
そう誤魔化した愛は麻弥にキーボードの値段を聞いてから支払う準備をする。
「それじゃあ、クレジットかキャッシュカードはありますか?」
「無いけど?」
「え?」
「現金だが?」
「え!?」
「後、基本的にはキャッシュカードは支払いの設定で利用出来るが、支払いは出来ないぞ」
「そ、そうなんですか?」
愛のキャッシュカードの話よりも気になったのは、キーボードの値段は軽く6桁程である。麻弥は当然のようにクレジット分割を組むのだと信じ切っていた。だが、それを裏切るのがこの鶴田こと弦巻愛である。分厚くなった財布から出てきたのは6桁の現金と細かいお金……つまり、丁度の支払いであった。
「んじゃ、これ持ってくから袋貰っていいか?」
「あ……えっと……」
「ああ……袋有料か? いくらだ?」
「いえ……袋は無料なんですけど……え? 現金一括?」
「そうか、それじゃあ持っていくわ。今日はありがとう麻弥さん」
そう言って彼は動揺と共に理解が追いつかない麻弥を放っておいて、店からキーボードを持って行ったのだった。
☆
「って感じのお客さんがいたんですけど……って千聖さん? どうして頭抱えているんですか?」
「あのバカはそろそろつぐみちゃんにお仕置き食らわないと気が済まないようね」
その翌日、パスパレメンバー全員にこの話をしたら流石愛だと大笑いする日菜と意味がわからないと口を開けたまま動かない彩。凄いと褒めるイヴに怒り狂う白鷺千聖がいたのは別の話。