弦巻評判記 暴れん坊当主(笑)   作:初見さん

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弦巻とギャルのぶらり旅

「それじゃあ、行こうか愛」

「羽沢珈琲店に行きたい」

「だめ、今日はショッピング」

 

 無慈悲な言葉で愛を制したのは今井リサである。愛が、休日の暇つぶしに家の釣り堀で釣りをしていた時、携帯で彼女に呼ばれた。なんでも、Roseliaの友希那と2人で買い物をしようとしたのだが、家族の用事で来られなくなったという。

 リサもこのまま帰っても良かったが、折角だからと友希那のお土産を買う考えを持っていた。そこで、相手を見つけるために片っ端から電話をしたところ、愛が運悪く最初に返事をしてしまった。

 そんな訳で、今井リサと鶴田(弦巻)愛のぶらり旅が始まろうとしていたのだ。

 

「所で、なんで俺なんだ?」

「話聞いてた? 愛しか電話出なかったからだよ」

「理由は分かるんだが、男と出かけて良いのか?」

「別にいいじゃん、彼氏とかいないし」

「え?」

「え?」

 

 殆ど愛の第一印象だったのですぐ謝ったが、今井リサには彼氏がいると普通に考えていた。リサもよく誤解されるからと愛の誤解を解くと普通に許してくれた。

 そんな会話をしながら、愛とリサは適当な雑貨屋を見回っている。

 

「これ友希那に似合いそう」

「これはつぐみさんが好きそうだな」

「女の子の前で別の女の子考えるんだ」

「男の子の前で他の女の子を考えるお前さんも同等だと思うが」

「それ、使い方違うでしょ」

「次それやったら……えっと……こうだからな!」

「使い方違うしなんで手でバズーカ持ってる動作してるの!?」

「いや、ロケットランチャーかな?」

「アタシ無事じゃ済まないでしょ」

「この店が滅ぶな」

 

 愛は割と流行に弱かった。本来なら女の子が胸元でポーズを決める物なのだが、愛は何故かその台詞と共に脚を少し曲げてバズーカどころかロケットランチャーを撃ち込む動作をしてしまっていた。

 あまりにもバカらしくなって、少しだけあった緊張も解れたリサは愛にRoseliaのみんなが似合いそうな雑貨を選ばせる。

 

「これはあこちゃんかな」

「じゃあコレは紗夜かな」

「こっちは蘭にあげよう。これはパンだし……モカさん」

「本当にAfterglowの幼馴染なんだね。みんなのこと分かってるじゃん」

「幼馴染でなくても大切な友人だ」

 

 恥ずかしげもなく言う愛に対して、聞いてたリサが恥ずかしくなったのだった。

 

 ☆

 

「あれ、愛ってパンケーキ食べないの?」

「つぐみさんのパンケーキしか受け付けない。ここではクレープで充分だ」

「拗らせてるなぁ」

 

 昼になって、昼食ついでにデザートを選んだ愛とリサは2人でクレープを食べる事にした。リサはチョコレートのクレープに対して愛は苺だらけの生クリームクレープである。普通逆じゃね? と思う人も多いが、これが愛である。

 

「甘くて美味い」

「つぐみのパンケーキとかクレープとか、愛って甘党過ぎない?」

「甘いのは好きだ、恋は酸っぱさもあるがな」

「乙女じゃん」

 

 最も、愛が好いているのはつぐみただ1人だが。リサは1つ溜息を吐いてから彼に聞いた。

 

 ──いつ、つぐみと付き合うの? 

 

 そんな言葉に愛はかなり頭を悩ませた。必死に悩ませて、1分程。そうして絞り出した答えは……

 

「こ、高校を……卒業したら……かな」

「それプロポーズする気満々の台詞だよね」

「ち、違くて! その……まぁ、今仮に付き合ったら確実にお互い苦労するかなと……勉強とか色々な」

 

 付き合う事はしたいのかと揶揄いたかったリサだが、確かに勉強とかで仲違いするカップルも一定多数いるので彼の言うことも一理あった。

 それでも、愛はともかく、つぐみが赤点取るほど怠けている訳ではないのは学年が違っても分かっている。だからこそ不安とかは無いのではなんてリサは思った。

 愛は愛で勉強とは彼女に言ったものの、本当は次期当主になる人間として、むやみやたらと彼女を作る事に抵抗があった。愛が本当に普通の家系であれば真っ先に告白1発かましてつぐみの返事を待つのだが、弦巻家として嶋長エナや父親に何を言われるか分かったものでは無い。

 

「お、親父に喧嘩売って許してもらったら……そうする」

「どれだけ恐ろしいの愛のお父さん……って言うか親に人生委ねてる人って結婚しちゃいけない人間の3Bだかを上回ってトップだからね」

「3Bの人の方がまだマシだと思うぞ。そういう人だって誇り持って仕事してるなら立派だろ」

 

 急な正論にリサは戸惑うが、それを気にせず、愛は考える。今後つぐみだけではなくAfterglow達との関係性をしっかりとあの父親に殴ってでも認めてもらおうと。

 

 ☆

 

「リサ先輩とデートしたって本当?」

「許してください」

「あ、愛さん! なんでつぐに土下座してるの!?」

「リサさんとデートしたらしいよ〜」

「それは許せないね。愛さん土下座して下さい」

「もうしてます」

「な、なぁ蘭……愛さんって本当に弦巻家の人間……なんだよな?」

「一般的はね。でも、今日は別」

「すみませんでした」

「一般人に土下座する富豪ってなんだよ……」

 

 その翌日、羽沢珈琲店で幼馴染に土下座してる愛を見たと若宮イヴからPastel*palletに通報があったのは別の話である。

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