「いやぁ! 今日もしんどかったねぇ」
「でも、かなり上達はしてるよリサ姉!」
「まだですね、まだ足りません」
三者三様の感想を言い合いながらRoseliaの練習は終わって、休憩を取る。
「今日はここまでにするわ」
「友希那さん……まだ時間ありますよね?」
「何か予定があるのですか?」
「今日はこのライブハウスに弦巻家が挨拶に来るらしいわよ」
友希那の言葉にRoselia全員がどういうことか聞いた。なんでも、このライブハウスで働く月島まりなという人から、今日は弦巻家の御当主が新しくなったので、この区域内で挨拶回りをするという話を聞いたらしい。
「つ、弦巻家ですか。花咲川に本人の弦巻さんがいるので特別緊張はしませんが、やはりこういう事情だと意識させられますね」
「へぇ、こころが御当主ねぇ」
「違うわよ」
「え?」
リサはてっきり弦巻こころが御当主だと思って発言したが、友希那に否定された。友希那ははっきりと、こころの兄が御当主だと伝えた。
「えっと、こころの兄って確か弦巻愛って人だよね。顔見たことないから見てみようかな」
「偉い人なのに私達見られるんですか?」
「SPがいるけど顔くらいは見られるんじゃないかしら? 折角だから挨拶くらいはしておきましょう」
「ゆ、友希那さんなんか冷静じゃないですか?」
弦巻家の当主が挨拶に来るというのに、友希那は何も緊張してなかった事にあこが指摘した。リサは茶化して友希那は音楽以外興味ないからと言ったが、友希那の本心はただ一つ。驚かせてやろう一択である。
何を隠そう彼女だけがRoseliaの中で鶴田愛が弦巻愛であることを知っているのだ。他の人は鶴田愛と思い込んでいるのもあり、少しばかり揶揄ってやろうと思ってしまった。
「気のせいじゃないかしら? だって、どうせ私達の知り合いと会うのだから緊張する必要もないでしょう?」
「え? 湊さんは御当主の方とお知り合いなんですか?」
「私だけじゃないわよ、私達全員の知り合い」
「え? 誰?」
☆
「よう、久しぶりだな、友希那さん」
「ええ、久しぶりね愛」
「え? 嘘、マジ!?」
「あ、リサさん今度コンビニでイベントやるの知ってるからまた行ったらスイーツをモカさんと選んで欲しい」
「あ、愛さんがこころのお兄さんなの!?」
「巴さん隠しててくれたのか……後で礼としてラーメンでも奢るか。一緒にあこちゃんもどうだ?」
「い、行きます! で、でも行きずらいですよ!?」
「あ、愛さんって……本当に弦巻さんの……」
「紗夜さん、こんにちは。すまんな、苗字隠してて。まぁ色々あったんだよ」
「あ、愛さん……こ、こんにちは……」
「こんにちは燐子さん。また面白い本紹介してくれ、この前の本返すからさ」
「い、いえ……お気になさらず……」
弦巻愛の挨拶が済んだ後、Roseliaが混乱していた。知らない仲では無いので、軽く話しかけると、友希那以外緊張していたので苦笑いしか返せなかった。
「愛様、そろそろ商店街に」
「待てシマエナガ。友希那さん、Roselia全員にこのカップケーキ差し入れするよ」
「ええ、ありがとう。ずいぶんと綺麗な形ね。どこのお店なの?」
「俺がシェフと一緒に作ったから食ってくれ」
「貴方が?」
「味は保証してくれたぞ、シェフとシマエナガが」
「なら安心ね。頂くわ」
「友希那は知ってたのかぁ……ちょっと悔しいな」
「何の戦いしてたんだ? 2人とも」
「揶揄ってあげただけよ」
そう言って友希那は笑い、Roseliaと愛は少しだけ乾いた笑いをしたのだった。
☆
「よう、千聖さん。この間の撮影、世話になった」
「やっと正体バラす気になったのね」
「成り行きだよ」
「ブクブクブクブク……」
「千聖さん! 彩さんが驚きのあまり泡吹いて倒れてます!」
「あはは! 彩ちゃん面白い!」
「愛さん! また一緒バイトしましょうね!」
「おう、明後日行くわ! つぐみさんにお願いする」
商店街で挨拶をしたらたまたまパスパレの収録に鉢合わせたので軽く挨拶をした愛。結局この後、少しだけテレビに映った愛は、5バンド全員に正体がバレるのであった。
「愛さん! やっぱりここにいたんですね!」
「おう、巴さん。事は終わったからここにきた」
「愛さんといえばつぐみだからね」
「本当お似合いですな〜」
「つぐ、大丈夫?」
「お願いだから今日は来ないで欲しかった……」
その後予定を済ませてすぐ羽沢珈琲店に行った愛だが、つぐみが胃痛と戦い続ける事が延長されたのを確定させただけである。