「おはようございます、コロッケ10個ください」
「おう、ありがとう……って弦巻さん!?」
「よしてくれはぐみの親父さん。今の俺は鶴田愛だ」
愛の言葉にそう言われてもと戸惑うのは商店街で大人気の肉屋の店長である。別名北沢はぐみの父親で、愛とは正体をバラす前までずっと関係を持っていた。店長の作るコロッケは絶品で、こころのバンドメンバーであるはぐみも父親のコロッケはとても美味しいと宣伝を続けているほどである。
家族贔屓もあるだろうが、一切嘘はついてない。現に愛が気にいるだけでなく、Afterglowなどのガールズバンド達がこぞって食べに来るくらいの品物である。
「あ、愛君! いらっしゃい! とうしゅ? だかになったんでしょ? すごいね!
「こ、こらはぐみ! せめて敬語を……」
「おう、はぐみさんありがとう。お前さんも朝から元気で良いじゃないか」
「うん! ありがとう。でも、愛君もでしょ?」
そう言って2人で笑うが父親としてはハラハラしていた。それでも愛ははぐみの父親の心を汲み取りながらも、普通にコロッケ買いに来たので、すぐ帰るわけにもいかない。
「はぐみさん。今日はコロッケを買いたいんだが、他におすすめは?」
「串揚げかなぁ、父ちゃんと最近お肉だけじゃなくてれんこんも揚げてみたんだ!」
「はぐみ、流石にれんこんは……」
「分かった。コロッケとれんこん串10本貰うか」
当主がれんこんを買うなんて嘘だろと店長は思ったが、これが愛である。高級だろうがそうでなかろうが、美味そうなものは自ら買って食べる。そうしてみんなに振る舞うのだ。
そのまま動かない店長の代わりにはぐみが用意して愛に渡した。愛ははぐみにお金を渡して、そのままお礼を言った。
「また来るよ、次のバンドイベント頑張ってくれ」
「うん! ありがとう!」
そうして、愛はそのまま別の店に買い物に行った。所々から弦巻だの鶴田だの声が聞こえてくる様子から自分と同じやり取りをしているんだなと思いながらも、愛という人間に昔と同様の接し方をしなければと、愛娘の態度を見て反省した。
☆
「お疲れ様……えっと、ポピパ、ピポパ、ポピパパピポパのみんな」
「普通に言えよ!? しかもスラスラ言えてる時点で相当聞いてるな!?」
「ガールズバンドのファンだからな」
「愛さん! お疲れ様です!」
Poppin’partyの練習場所である蔵に来た愛はリーダーの香澄に抱きつかれながらも、みんなに差し入れを渡す。
「こんにちは愛さん、うさぎいる?」
「可愛いな」
花園のおたえはどこから持ってきたのかうさぎを愛に見せた。愛はうさぎを撫でるとそのまま抱き抱えて撫でるのをやめない。
「愛さん……これ、良かったらどうぞ……」
「お! チョココロネだ、ありがとうりみさん」
「い、いえ! そんなお礼を言われるほどじゃ……」
「りみりん緊張しすぎだよ」
ポピパのみんなは分かっているが、中でもりみからすれば富豪の人間を相手に話した事は無かったのもありかなり緊張している。何度か彼とは話した事はあるがいまだに慣れない。
「まぁ、いつかなれるだろう。チョココロネ食べるわ。みんなはコロッケとれんこんの串焼き食ってくれ」
「どんなチョイスだよ」
「はぐみさんのオススメ」
「じゃあ食べないわけにはいかないな!」
愛の言葉に対して手のひら返しを行った有咲。みんなで串を食べて笑い合った。商店街を歩いたという愛の話になり、ポピパのみんなは愛が商店街の人からどんな風に見られたかを聞いた。
「確かに少し戸惑っていたけど、普通に接してくれたぞ。はぐみさんとか、沙綾さんとか、つぐみさんとか」
「ほとんどガールズバンドの人じゃねぇか」
「まぁ、私はよく来てくれてるし前から知ってたから……」
「最近たまにこころんと歩いているの多くなりましたよね!」
「まぁ、バレてるからもう良いかなって」
「愛さん、うさぎ返して下さい」
「あ、ごめんずっと撫でてた」
「お前ら自由過ぎだろ!?」
「愛さんが買ってくれた串美味しいわぁ……ほんまおおきに」
「おう、遠慮なく食え」
結局、今日1日はポピパのみんなと過ごす事になった愛であるが、たまにはこうやって幼馴染以外のバンドとゆっくりするのが良いよなと感じたのだった。