突然だが、この地域には質屋がある。愛は相変わらずお忍び散歩の途中だったが、珍しい質屋を見つけたので、入る事にした。
質屋である『
「えっと、ごめん下さい」
「はい……って、どちら様ですか?」
「ここに質屋があるはずなのだが、ここであっているか?」
中に入ると彼と同じ金髪の少女が怪しげな目で見ていた。彼が質屋を見に来たというと、怪しげな目をやめないままではあるが、部屋の中に通してくれた。質屋ならではの壺や屏風などを見た愛は珍しいものに目を光らせながらその少女に説明を求めた。
少女は骨董品を1から説明しながら、自分の仲間と同じ様な目でそれを見る少年の姿にいささか興味を湧いた。
「あれ、これは盆栽か?」
「ええ、まぁ……」
「特に忌み技は無いな。寧ろ綺麗だ」
「分かるんですか!?」
忌み技とは盆栽用語の一種である。簡単にいうと切ってはいけない切り方、ダメな例の事をさすのだが、愛は数回だけ弦巻家として盆栽のコンクールや展覧会などで見た事もありある程度は頭に知識があった。
それでも、恐らくこの彼女よりは詳しくないと確信している。念のため、愛は彼女に盆栽が他にもあるのか聞いてみると、少女は自分で手入れをしている盆栽があると言った。
「見せて貰ってもいいか?」
「え、ええっと……まぁ見るだけなら」
そう言って少女は彼を庭に歩かせた。何本か盆栽ある中で、かなり丁寧に処理をされているものが複数あった。そこから一つかなり立派な盆栽を愛は見つめる。
「あ……」
「どうした?」
「それ、お気に入りなんです」
「だろうな。かなり丁寧に処理をされているし、何より……」
木がこの少女に懐いている気がしたが、そんな事を言っても信じてくれないだろうと言葉を飲み込んだ。ふと、少女はこの盆栽に
「利根川か。初めまして、俺は鶴田愛だ。この少女の……そう言えば、君の名前は?」
「えっと、有咲です。
「もしかしてだが……
知っているのかと有咲が聞くと、愛は妹の知り合いがそんなバンドに入っていたと答える。名前は確か
「よりにもよって香澄と知り合いなのかよ」
「あぁ、まあ……おや?」
「ヤベッ!」
突然口調が乱暴になった有咲に疑問を抱いたが、すぐに笑ってそれがお前の本性かと言った。悪いかと言う有咲に対して猫を被るのも大切だと微笑む愛。
むしろ自分が猫を被りまくっていてもはや猫だと言う意味は有咲には理解出来なかったが。
「また、盆栽を見せてくれないか? 俺も植物を育ててみたくなった」
「大事にするなら、今度一つだけ売ってやるよ」
「本当か?」
「でも、盆栽は高いからな! お前に払えたら譲ってやる」
「仮にいくら言われても、お前の大事な盆栽を受け継ぐなら買うよ。絶対大事にする」
そう真っ直ぐな目を有咲に向けた愛は戸惑う彼女に対して盆栽の名前も教えてくれと言って、その場を去るのだった。
☆
「つ、鶴田!?」
「おう、有咲さん。同じ高校だったんだな」
花咲川学園の渡り廊下で、移動教室のため歩いていた有咲に愛は出会う。隣には猫耳の様な髪をした少女も歩いていた。
有咲が、愛と同じ高校である事を理解した後、出て来た教室から逆算して気がついた事を言った。
「もしかして先輩だったのか!?」
「一応2年生だけど……」
「あ! 愛先輩、お久しぶりです!」
「香澄さんか、もしかしてポピパ全員同じ学校なのか?」
その前に何故香澄と知り合いなのかを聞きたかった有咲だが、前会った時に妹の友達だと言っていた事を思い出して顔くらい合わせた事もあるかと冷静になったが、香澄の言葉で有咲の時が止まった。
「今日はこころんと一緒じゃないんですか?」
「え?」
「か、香澄さん……それは……」
「どうかしたんですか? あ、そう言えばこの前こころんと愛先輩が歩いてたの見ましたよ! 兄妹で仲がいいんですね!」
「兄妹……え?」
香澄の純粋な言葉に対してもはや怒る気も無くなってしまった(元々怒る気もなかったが)すぐに慌ててどう言う事だと説明を求める有咲に対して香澄はすぐに気づいて静かになる。
元々香澄と愛は妹のこころ経由で知り合っており、弦巻の苗字ではあまり呼ばない話をしていた事を思い出してかなり申し訳ない気持ちになっていた。だが、時すでに遅しとはこの事であったので、諦めた愛は有咲に生徒手帳を仕方なく見せる事になった。生徒手帳を見た有咲はだんだんと顔が真っ青になりながら身体を震わせた。
「有咲さん。今度、盆栽を俺に売ってくれないか?」
「そ、そんな人に……う……売れるわけ……」
「ないだろぉぉぉぉ!!」
そう全力で叫ぶ有咲のせいもあり、戸山香澄を筆頭にポピパは変わった人しかいないと誤解されてしまったのはまた別の話である。
結局、弦巻愛に対して盆栽を売るのではなくそのまま渡した有咲だった。これを機に、愛と有咲がたまに彼女の家の縁側でお茶を啜っているのをPoppin'partyが目撃しているのも仲が良くなった証拠である。