「良いライブだったぞ、みんな」
愛の言葉にAfterglowのみんなからお礼の言葉が飛び交った。幼馴染からライブに誘われた愛は全てのセットリストを聞いてファンとしておおいに盛り上がった。
「愛さんやっと先頭で見てましたよね」
「いつも端っこにいるくせに今日だけ特別でしたよね」
「今日に関してはチケット購入じゃなくて、蘭さんが手渡しでくれたチケットで入ったからな」
ひまりやつぐみの言う通り、今日は特別であった。蘭から真剣な声で呼ばれてライブを見てくれとチケットを貰った。本来なら自分で購入して端で見ていたのだが、今日だけは先頭で私達の勇姿を見てほしいとお願いされたのだ。
「今日だけは、愛さんに特別な時間を上げたかったから。普段からお世話になってるお礼」
「ありがとう蘭さん」
「モカちゃん達も褒めて下さい〜すっごく頑張ったので〜」
「モカそれ自分で言うのか?」
巴のツッコミに全員が笑う。このいつも通りを大切にしていきたいと言うAfterglowの願いは愛にも通じているのだ。みんなを繋ぐ空がいつも通りの茜色に染まっていた夕方、羽沢珈琲店で打ち上げをした事を忘れないだろう。
☆
「本日はお日柄も良いので、とりあえずお伝えします。ご卒業おめでとうございます」
そんな挨拶を卒業生にした愛は在校生代表として模範になりそうな台詞を伝えた。心の中ではなんで自分がと思っていたが、愛が弦巻の当主である事は関係なく、割と勉強がトップクラスであったので無作為に選ばれただけであった。このせいもあり、花咲の全校生徒に自分が弦巻だとバレたが、正直支障は無い。
「これで俺も3年生か」
「そういえば先輩だったよな」
「すっかり忘れてましたね」
「有咲ちゃんも美咲ちゃんも酷くない?」
「俺は構わない」
まぁ、これだけ仲良くしてれば歳の差とか気にしないだろと愛は有咲と美咲の言葉を許したのだが、花音は戸惑うばかりである。
「愛、今日は商店街に行くのかしら?」
「行かないかな。つぐみさんの店は行くけど」
「そんなに好きなら早く告白しなさいよ」
「恥ずかしいので無理です」
こころに言葉を返すと千聖から爆弾が飛んできたが、愛は少し顔を赤くして自分の想いを伝えた。みんなからは呆れた視線を感じるが、妹のこころは無邪気にお弁当を食べている。
「なぁ、みんな」
「どうしたの? 愛君」
「これからも宜しく頼む」
愛の言葉に対して、円陣の様に囲んでお弁当を食べていた全員が、笑顔で頷いたのだった。
☆
「宇田川さん、もう少し頑張って下さい」
「うぅ……紗夜さんの鬼!!」
「まぁ、そう言うなあこちゃん。紗夜さんも好きで怒ってるわけではないだろ」
「あこちゃん……もう少しだから……頑張ろうね」
「愛さん、りんりん……助けて!」
「こらあこ逃げるな! アタシだって逃げたいんだぞ!」
「逃すと思うか?」
愛の言葉にものが言えない巴。学校終わりの後は何故かあこと巴の勉強を紗夜、燐子の3人で見る事になったのだが、頼んできたのは巴である。学校以外の図書館で少しばかり勉強をしている5人はなんやかんやあって全員課題を終わらせたのだった。
「なんか、これが俺の求めてきた日常なんだな」
「急にどうしたんですか?」
「いや、なんか感慨深くてな」
愛の言葉に疑問を抱くあこであるが、他の3人は少しばかり微笑んで、愛の方を見ていたのは彼が正体を明かしても人気者である事に変わりがない証拠だった。