見た目だけで勘違いです(信じてくれない)   作:葛城

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第18話: ……あっ(寝る前の記憶)

 

 

 

 再三に渡る説得というか説明のおかげで、妖精たちは納得してくれたようだ。

 

 

「──ですから、人違いというか勘違いというか神違いというか、とにかく私はそういうモノではございません」

「はぁ……?」

「なので、勘違いなさらないように。私はただ、腕の数が多くて背中に翼が生えて天空に家を構えていて、それなりに強いだけですので」

「それなり……???」

 

 

 とはいえ、中にはうまく受け入れられない妖精もいるようだが……まあ、仕方がない。

 

 妖精たちにとって、彼女は『未知』の存在だからだ。

 

 未知は、あらゆる希望を与えると同時に、あらゆる不安を招く表裏一体、どんな未知であろうとも、必ずこの二つを同量だけ与える。

 

 かつて、『世界』の手で世界の全てがガラリと変わったとき、明日への希望を抱いた者も居れば、明日への絶望を抱いた者が居たように。

 

 そこに気付くか気付けないか、あるいは無視するか受け入れるか……なんにせよ、『はい、分かりました!』とあっさり受け入れてしまう方が、おかしいのである。

 

 実際、始まりが自暴自棄だったとはいえ、すんなり適応してしまった彼女の感性がおかしいのである。

 

 

「──とにかく、話はわかりました」

 

 

 で、まあ、誤解を解消し終えた彼女は、改めて妖精たちから事情を聞いて……なるほど、と頷いた。

 

 妖精たちの話を簡潔にまとめると、だ。

 

 要は、ドラゴンが我が物顔で地上を荒らしまわっているから、なんとかしてほしい……というものだ。

 

 ドラゴンとはなんじゃい……と思った人のためにも説明するが、要は翼の生えた超デカいトカゲである。

 

 ただ、トカゲと違う点がいくつかある。

 

 まず、空を飛ぶ。

 

 巨体になれば空を飛べないのではないかという話だが、なんか魔力とか魔法とか、不思議なミラクルパワーでどうにかなるらしい。

 

 次に、火を吐く。

 

 そんな可燃性のガスなんぞ体内に大量に溜め込んだら、臓器などが腐食して死ぬがなと思われそうだが、とりあえず、なんか吐けるらしい。

 

 次に、言葉をしゃべる。

 

 トカゲなのに、人間の言葉を話せるらしい。

 

 いや、この場合は人間……まあ、とにかく、それが可能なぐらい知能が高く、下手したらそこらの人間よりはるかに知能があるとか。

 

 後は、めっちゃ固い。

 

 なんかこう、細かい鱗というか、体表がゴツゴツしていて固いらしく、刃物とか魔法とかまるで刺さらないし通じないらしい。

 

 

 ──結論。

 

 

 推定、全長○○m~○○○mの巨体で、ミラクルパワーで空を飛んで、広範囲に即死性の火炎放射を行い、最低でも人間と同等の知能を有している。

 

 

 ……なるほど、怪物だなと彼女は思った。

 

 

 少なくとも、今の姿になった当初の時に接敵していたら、成す術もなく踏み潰され、骨まで骨になるまで黒焦げにされていただろう。

 

 だって、彼女は鈍足だし。

 

 そう、翼でふわふわ飛行できるようになっている彼女だが、相変わらず動きが遅い。ちょっと『ストア』でステータスを上げた人に負けてしまうぐらい遅いのだ。

 

 反動を利用して加速する方法はあるが、アレは1対多数の乱戦時のみで、とてもではないが逃走時に使える代物ではない。

 

 まあ、今はスピード強化は諦め、バリアとか様々な方法で防御の方向を強化したが……話が逸れたので、戻そう。

 

 とにかく、実質的に災害と同じ扱いの超巨大なモンスターが長き眠り(おそらく、冬眠みたいなもの)から目覚め、餌を求めて移動しては暴れ回っているらしく。

 

 それで、既にいくつもの国が滅んでしまった……どころか、既に絶滅寸前に至っている種族もいるのだとか。

 

 たとえば、彼女に話し掛けてきた『妖精』たちが、そうだ。

 

 妖精たちは、とある場所にある深い森の奥に居を構え、ユグドラシルという大木の傍で暮らしていたが、ある時、そこをドラゴンが襲った。

 

 妖精たちも必死になって抵抗したが、ドラゴンのパワーはあまりにも強大で、成す術も無くユグドラシルは森ごと灰になったのだとか。

 

 もちろん、抵抗したのは妖精だけではない。

 

 様々な国や人々(種族問わず)は決死の覚悟で抵抗したらしいが……先述したとおり、単純に滅茶苦茶強いせいで、手も足も出せないのだ。

 

 とにかく頑丈なので、魔法や弓矢を当てても大したダメージにならない。巨体なくせに空中を高速で移動するから、大魔法(?)とやらを当てることが至難の業。

 

 しかも、その大魔法。

 

 当てようが外そうが、防御結界(?)とやらを発動するための魔力とやらを含め、集められるだけの魔力を根こそぎ掻き集めてのソレらしい。

 

 倒せても相当疲弊してしまし、倒せなかったらそのまま滅亡とかいう、とんでもない賭けに打ってでなくてはならないらしい。

 

 つまり、これまで滅ぼされた国の数だけ賭けに出て、失敗し、腹が満たされるまで住民たちが食い殺され、置き土産と言わんばかりに滅ぼされ……という流れのようだ。

 

 

(なるほど、藁にもすがるとは、この事か……)

 

 

 一通りの話を聞いた彼女は、さもありなん、と内心にて頷いた。

 

 『ストア』が使えていたならともかく、それが無くば強力な武器などは開発しなければ手に入らない。

 

 当然ながら、そういった代物の開発は一朝一夕で出来るものではない。

 

 長い長い基礎の積み重ね……失われてしまったのであれば、それこそ100年単位の月日を必要とするぐらい、困難なのである。

 

 

(つまり、私がどうにかしなかったら、本当に滅びるしかないわけか……)

 

 

 正直、面倒臭い気持ちは大きい……が、しかし。

 

 せっかく、ここまで文明が再建しているのだ。

 

 ここで放置してしまえば、『世界』からどんな仕打ちを受けるか……最悪、彼女自身が『排除』されかねない。

 

 と、なれば、やるしかないわけだ。

 

 

「──その願い、承りましょう。これより討伐に動きますので、貴方たちは避難していてください」

 

 

 なので、彼女はそう言って……妖精たちに待機を命じたので……え、協力した方が良いのではないかって? 

 

 気持ちはありがたいが、率直に言って、邪魔にしかならない。

 

 何故なら、今の彼女が全力で獲物を仕留めようと思ったら、周囲は焼け野原では済まないからで。

 

 バリアの類でガードできなければ、ほぼ100%即死級の攻撃を放つのだから、自分の身を守れない者は、連れて行かない方が効率的かつ安全なのだ。

 

 あと、なんか下手したらまた何時ぞやのように、『天使様お助けください!』みたいな集団が現れそうだし……妖精はまあ、見た目が子供だし、ちょっと可哀想に思えたし。

 

 

 で、だ。

 

 

 とりあえず、やれるだけの事はやりましょう。

 

 そう言い残してから、彼女は『天空城』を動かし……ドラゴンが居る場所へと向かう。

 

 他の者たちとの挨拶とか、そういうのをやるつもりはない。

 

 どうせ面倒臭い事に巻き込まれそうだし、これまで何度か問答無用のちょっかいを掛けられてきた身だ……妖精だけでも十分というのが、彼女の本音であった。

 

 ちなみに、『天空城』にはレーダーに近しい機能が搭載されている。範囲は……とりあえず、惑星全土に広げてもまだ余裕があるぐらい、とだけ言っておく。

 

 ただし、レーダーで探知できる範囲は……正直、よく分からない。

 

 場所とか数とか大きさとか地形とか色々分かるけど、なんか色分けが意味不明なのだ。

 

 同じ性別で同じ種族で同じ年齢ぐらいでも、片や青色、片や真っ黒といった感じでどのような基準で色分けされているのか。

 

 ちょっかいを掛けてきた者でも、何故か色がバラバラだったり全員同じ色だったり、とにかくよく分からないのだ。

 

 まあ、そんなよく分からないレーダーでも、ドラゴンぐらい巨体だと、色が違っていたところで見分けが付くから、気にはならないのだけど。

 

 

 

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………さて、そんな感じで、空を自在に動き回る天空城によって、ドラゴンを求めて最短距離を進んだ彼女は……あっさり、ドラゴンを見つけた。

 

 

(わぉ……お食事の真っ最中か……)

 

 

 ただ、見つけたのだが、ちょっと遅かったようだ。

 

 パッと見たままを語るなら、御立派な石造りの城、それを中心に広がる城下町を踏み潰しながら直進し続けるドラゴン……といった感じか。

 

 『天空城』の位置が高すぎるので現地の声や音などは聞こえないが、ドラゴンの巨大さと、火の手が上がっているのは確認出来る。

 

 おそらく、せめてもの抵抗として火炎でもぶつけたのだろう。

 

 ただの獣ならばそれで引いたのかもしれないが、相手はドラゴンだ。生半可な炎では、怯むどころか怒って逆効果になってもなんらおかしくはない。

 

 と、いうか……上空から見下ろしていた彼女は、思っていたよりもドラゴンが巨体であることに、ちょっとやる気を失くす。

 

 妖精から話を聞いていたので想像だけはしていたが、実物は想像よりも大きかった。あと、思っていたよりも狂暴っぽくて、迂闊に攻撃するさらに怒り狂いそうな気配がする。

 

 

(こういう時は先手必勝に限る……けど、なんか逃げ遅れている人がまだ大勢いるっぽいんだよなあ……)

 

 

 しかも、レーダーで確認した限りだが、城下町にはまだまだ逃げ遅れている人がいるっぽいのだ。

 

 おそらく、ドラゴンは上空から飛行して一直線に来たのかもしれない。

 

 だから、気付いてから逃げ出すまでの余裕がなく、パニックが伝染して余計に時間が掛かり……結果、眼下の有様になったのだろう。

 

 

 ……ちょっと、気の毒だなあと彼女は思った。

 

 

 彼女も……うっすらとしか思い出せないぐらいの、人間だった時の記憶にあるのだ。

 

 集団パニックが起きている時は、蓋を開けたら些細な事故だとしても、無事に避難することが非常に難しいということを。

 

 その時は、彼女はたまたますぐに逃げ切れる位置にいたが、逃げ遅れた者は……背後から迫る避難者に圧されて骨折したり、運悪く亡くなった……話を戻そう。

 

 

 ──さすがに、諸共まとめてなぎ倒すわけにはいかない。

 

 

 そう判断した彼女は、『天空城』をドラゴンの頭上へと移動させ──そこから、トラクタービームを照射する。

 

 通常、『天空城』のトラクタービームは物体を城から地上へ、あるいは地上から城へと運ぶための設備である。

 

 しかし、実は裏ワザ的な使い方がある。

 

 それは、ビームの出力を最大まで上げて、対象の物体を意図的に拘束する、というものだ。

 

 本来は『天空城』への輸送の際に、物体が重力に引かれてビーム外に滑り落ちてしまったり、物体が反転して中身がこぼれたりといった事故を防ぐための機能である。

 

 もちろん、想定していない使い方なので、力技で突破できる程度の拘束だが……それでも、だ。

 

 

 ──ぐぅおおおお!!!!! 

 

 

 それは、ドラゴンの困惑が入り混じる悲鳴。ビリビリと衝撃で砂埃が舞っていたが、その程度ではトラクタービームは防げない。

 

 どうやら、ドラゴンの動きを止めるには十分な出力を出せたようだ。おかげで作動中は城も動かせないようだが、問題ない。

 

 ……傍から見ると、だ。

 

 『天空城』から下ろされる光がドラゴンを照らし出している。それは、なんというか幻想的な光景にも見えて。

 

 

(……これ、逃げ出そうとしている人たちを余計に驚かせてしまっている……とか?)

 

 

 と、同時に、本末転倒な事態にならないよう、意識して気を付けつつ……『天空城』からえいやと飛び降りた彼女は、動きを止めているドラゴンの下へと向かう。

 

 出来る限り、翼をいっぱいに広げた状態で。何故なら自力での落下だし、自分に注意を引き付けておきたかったから。

 

 幸いにも、ドラゴンは彼女の存在に気付いたようで、注意を彼女へと向けた。

 

 まあ、今の彼女は目立つ。淡い光に包まれた、翼を生やした女とかいう、目立たないわけがない姿だから。

 

 ドラゴンは唸り声をあげて、わずかに口の端から炎がチラホラ……まあ、真正面から放たれたとしても、バリアがある彼女には通じない。

 

 現在進行形でバリアを張っているから、彼女は、それはもう余裕たっぷりである。

 

 

「……? いま、なにかしたのかな?」

 

 

 実際、なにやらドラゴンが……魔法的な攻撃を放ってきたが、バリアを張っているおかげで、その攻撃は欠片の影響も彼女には与えなかった。

 

 

「お返しだ」

 

 

 そして、攻撃された以上はもう、彼女はドラゴンの事情とやらを考慮する理由もなくなった。

 

 手のひらを向ける──直後、彼女の掌より放たれたカミナリが、ドラゴンに直撃し──ドラゴンは、甲高い悲鳴をあげてすぐに──絶命したのであった。

 

 そう、いくら凶悪なドラゴンであろうが、『ストア』の前には叶わない。トラクタービームのおかげで、周囲への被害を考慮しなくてよいから、余計に楽である。

 

 

 ──さて、役目は終わったので一休みしましょうか。

 

 

 そして、ひとまずお願いはこれで完了したと判断した彼女は、湯気を放つドラゴンの遺体を見下ろしながら……『天空城』へと戻ったのであった。

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………妖精への報告? 

 

 

 そんなの、すっかり彼女の頭の中には無くて、思い出したのはベッドに入った後で……当然ながら、起きて報告に行くなんてことはないのであった。

 

 

 

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