見た目だけで勘違いです(信じてくれない)   作:葛城

3 / 19
第2話: 間違ってはいないのだ、これまでは……

 

 

『──戦いの時、来たれり──』

『──これより、我と共に戦うべし──』

 

 

 その声が人々の、いや、あらゆる生き物の頭の中に響いたのは、19時07分頃であった。

 

 その時、人々は最初のうちは、特に何も思わなかった。

 

 

 なにせ、突然だ。

 

 

 ほとんど……99.999999……%ぐらいは、誰かに呼ばれたのかと思って振り返り、あるいは、空耳かなと己を納得させた。

 

 例外は、既に声に応えて動いていた者たちだけ。

 

 応えて動いていた者は、既に準備を終えていた。

 

 中には応える事が遅れて中途半端に終わった者もいたが、無視していた、聞こえないふりをしていた、そんな者たちよりははるかにマシだった。

 

 そう、本当に、マシだった。

 

 これまでの日常のように、知らない分からない興味がない、平和に頭の芯まで浸り続けるのが賢く評価される事に疑念すら抱かない者に対しての慈悲は、まったくなかった。

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………始まりは、突然の強烈な青い炎であった。

 

 

 それは、人を燃やす炎。人だけを燃やす炎。その者だけを燃やす炎。

 

 夜を照らす青い光と共に、女性たちの甲高い悲鳴があがる──それは、当然だろう。

 

 なにせ、つい今しがたまで隣に居た人がいきなり炎に包まれるのだ。それも、言葉では言い表せられないほどに苦しんで苦しんで……これ以上苦しみ様がないぐらいに、顔を歪ませて。

 

 誰もが、一目で理解した。これはフィクションではなく、現実で人が燃えているのだと。

 

 だから、我に返った者から急いで消火しようとした。

 

 ある者はたまたま傍にあった消火器で、ある者はたまたま近くに水道があったから、ある者は着ている衣服を懸命に叩きつけて。

 

 それは、世界中のいたるところで見られた。

 

 ある者は家の中で、ある者はホテルの一室で、ある者は店の中で、ある者は路上で、ある者は、ある者は、ある者は……老若男女を問わず、それは一斉に起こった。

 

 そう、年齢も性別も関係なかった。

 

 人が考えた基準、守るべき道徳など、この世界そのものにとっては、心底……思考の端に挙げることすら無意味であり、価値を見出していない。

 

 たとえ0歳であろうとも、今にも死を迎えそうな老人であろうとも、関係ない。区別せず、まとめて排除、それだけであり。

 

 それゆえに、炎はどうやっても消えなかった。

 

 ある者はたまたま傍にあった消火器で、ある者はたまたま近くに水道があったから、ある者は着ている衣服を懸命に叩きつけて……それでも、1人として消火は叶わず、例外なく灰になり、塵となって終わった。

 

 それは、狼煙でもある。

 

 この世界そのものが、積み重ねたそれぞれのカルマより、『存在するだけで害悪』と定めた者たちを一斉に排除した事を知らせる狼煙であり……そして、世界は変化した。

 

 

 ──この世界から、あらゆる兵器が消えた。

 

 

 正確には、土くれになった。

 

 そりゃあ、そうだろう。世界からすれば、手足となって戦ってくれる生物にしか効果がない兵器なんぞ、存在するだけで邪魔である。

 

 

 ──この世界に、新たなルールが課せられた。

 

 それは、人が人へと化した、一部の者たちに有利な法ではない。

 

 ──この世界に、この世界に、この世界に──。

 

 全てが、過去になる。もう、戻れない。

 

 新しいルールの中で、あらゆる生命に『ストア』が与えられた……それが、この世界の意思であった。

 

 

 ……とはいえ、だ。

 

 

 朝から晩まで戦い続けろとは、世界は求めない。

 

 別に、日常生活を全て変えろとは言わない。高熱を出そうが、トラウマを負ってもなおその命尽きるまで絶え間なく戦い続けろ……とは、言わない。

 

 ただ、日常の一部に『戦い』が入り、それから逃げる事を許さない……ただ、それだけ。

 

 役者は、役者の仕事を続けてもよい。

 

 ただし、それを理由にモンスターと戦うのを拒否してはならないし、それを盾にして誤魔化す事も許さない。

 

 医者だって、医者の仕事を続けてもよい。

 

 ただ、モンスターと戦った負傷者の治療を優先させる必要があり、患者に貴賎なしなんてのは許さない。

 

 他の、あらゆる職業、あらゆる役職に対しても、同じ事。

 

 続けるのであれば、続けても良い。ただ、人のルールに則って制限を掛けたり、人間社会の……まあ、つまるところ。

 

 右から左に流すだけの中抜き行為や、無意味に間に入って価値を吊り上げる転売行為、他人には強制させるが自分はやらない……そういうのを絶対に許さない、というわけだ。

 

 宇宙からすれば、勝手に制限を掛けたり圧力を掛けたりする行為なんぞ、邪魔を通り越して害悪でしかないわけで。

 

 ……これまで一部の者たちが手にしていた『権力』と呼ばれる力は、この日、この時、この瞬間……過去のモノとなり。

 

 夜が明けて翌日になるまでに、約2000万人の命が灰になったのであった。

 

 

 

 

 

 ……そして、翌日。

 

 

 全世界同時多発『青い人体発火』のニュースが、世界各国の報道関係より一斉に……いや、かなりのタイムラグはあったが、とにかく発信された。

 

 どうして報道されるまでに時間が掛かったのか……まあそれは、所禁が灰になった割合なのだが……とりあえず、ここでようやく人々は本当に理解した。

 

 昨日のあの声は、いや、その前から聞こえていた声は、間違いなく真実だったということに。

 

 

 ──けれども、嘆いたところで全てが遅すぎた。

 

 

 既に、タイムリミットなのだ。

 

 それは各自が、誰に教えられたわけでもなく、『あの部屋』で行われていたように、『ストア』と念じるだけで『ストア』を使えるようになっている結果が全てあり。

 

 それは、『例の部屋』から自室に戻された彼……いや、彼女……彼女(人間?)もまた、例外ではなかった。

 

 

「……お、おぅ、お~」

 

 

 いきなり、眼前の光景がガラッと入れ替わった。

 

 まるで、ゲームの背景画像をパッと入れ替えたかのような変化に、面食らわない者がどれだけいるだろうか。

 

 人外となった彼女でも、思わず目を瞬かせ……いや、目を瞑ったままなので瞬きなどできていないが、とにかく驚きの声をあげた。

 

 と、同時に、なんとも表現し難い懐かしさもこみ上げてくる。

 

 滅茶苦茶に汚いわけではないが、2人に1人の割合で『ちょっと、掃除をサボっているね』と判断される程度には雑に物で散らかった部屋。

 

 部屋は大きめの1ルーム、押入れあり、風呂トイレ別、キッチン有りという……家賃に比べて非常にお得な、見慣れた我が家の光景の中に、彼女は立っていた。

 

 『あの部屋《セーフティルーム》』でもいちおう時間の感覚を忘れないよう時計を置いていたが、なにせ、戦う準備を行うのが主目的の場所だ。

 

 やる事と言えば、食って寝てトイレして、モンスターと戦うか、『ストア』で買い物をするか、それぐらいしかない。

 

 やけっぱちな気持ちのまま、半ば現実逃避も兼ねていたから気にしていなかったが、いつの間にか昼夜の感覚というか、戻った後の事を思考の彼方に置き去っていたようだ。

 

 というか、肉体がもう人間ではなくなっているから、今更なのだけど……まあ、いい。

 

 

「……お、おおう、なんかすごい事になっているな」

 

 

 とりあえず、チラッと窓から外を見下ろす。

 

 彼女の自宅は6階建てのマンションの4階にあり、ベランダ(有って無いような)から道路が見えるのだが……簡潔にまとめると、だ。

 

 道路の真ん中に現れた『ダンジョン』を囲うように、人だかりができていた。

 

『ダンジョン』というのは、特に決まった形があるわけではない。

 

 人が使っていない一軒家の扉が出入り口になっていたり、昨日まで何も無かった場所に不自然なモノ(例えば、巨大な鳥居とか)があれば、そこからダンジョンの中へと入る事ができる。

 

『ダンジョン』の外から内部の様子は確認できない。出入りすることに条件はなく、また、この行為を邪魔することはできない。

 

 

 で、だ。

 

 

 彼女の視線の先にあるダンジョンへの出入り口の見た目は、『鳥居』であった。

 

 既に声の主より、出入りの方法や入った先に何があるのかは伝えられているので、そういう意味でのパニックではないようだが……いや、そうか。

 

 

(ここまできて、まだどこか現実を受け入れられず……他人事の感覚のまま見物に来たのか)

 

 

 なんとなくだが、集まっている人々の様子から彼女は察した。

 

 と、いうのも、だ。

 

 彼女が見た範囲ではあるが、パッと見た限りでは誰も彼もの顔に本気が見られない。心の何処かでまだ、『これはドッキリではないか?』と思っているのだろう。

 

 別に、責めはしない。ただ、不思議だった。どうして、そこまで頑なに信じないでいるのかを。

 

 だがそれは、致し方ない事である。

 

 

 いわゆる、『正常性バイアス』というやつだ。

 

 

 バイアスとは、先入観や偏りを意味し、心理学や統計学でよく使用される言葉だが、『正常性バイアス』とは、自分にとって都合の悪い情報を無視したり過小評価したりする認知の特性のこと。

 

 要は、これまで大丈夫だったのだから、今日も大丈夫だし、明日も大丈夫と根拠なく思い込み、自分は大丈夫と判断してしまう……という認知のことだ。

 

 この正常性バイアスというのは、一般の人が想像するよりはるかに根深く、強かったりする。

 

 目に見える範囲に危険が迫っている段階になれば話は変わるが、そうでない時……なんの根拠もなく、『まさか、自分が?』と考えてしまう。

 

 これは特に、直接的な災害などに巻き込まれた経験が無い人ほど出やすいらしく……たとえば、海外では事件が起これば周囲の者たちは走ってでも逃げ出すが、日本の場合は野次馬として逆に近寄るとかが、そうである。

 

 それは、どうやらこの段階に至ってもなお人々の頭を強固に縛り付けているようで、中にはスマホを向けて暢気に撮影している者も少なくなかった。

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………まあ、いいか。

 

 

 そんな人たちをしばし見ていた彼女は、サッと踵をひるがえし……『ストア』より、食料品やその他諸々、あとは装備を購入する。

 

 個人がどう思ったところで、もはや無意味なのだ。

 

 『やる』か、『やらない』か。

 

 やると言いつつ実際は何もせず、やらないのに利益は掠め取る事はできない。合法的に、なんて人のルールなんぞ、もはや無意味。

 

 そんな人たちの事を考えるよりも、まずは自分の事だ……その一心で、彼女はポチポチと眼前に表示された立体映像……すなわち、『ストア』の品物リストをスクロールさせる。

 

 

(……パンツはまあ、ボクサーパンツがあるからしばらくそれでいいか)

 

 

 とりあえず、急務なのは衣服だ。さすがに、素っ裸で出歩くわけにはいかない。

 

 下はまあ、いい。他人に見せるとかではないし、最低限隠せれば。

 

 幸いにも、けっこう前にうっかり買ってしまった、サイズ違い(小さい)の新品があるから、それを代用する。

 

 

 ……以前の彼女(つまり、男だった時)はいわゆる、出不精というやつだった。

 

 

 部屋着用の安いやつ、それをセット買い&まとめ買いしたやつだ。パッと手に取ったやつを購入し、ろくに確認もせず押入れに放り込んでいたから、返品することも出来なくなったやつ。

 

 小さくて履けないが、安くとも新品なのは変わらない。

 

 いつか痩せて細くなった時にと押入れの肥やしになっていたが……人生、何が起こるか分からないモノだ。

 

 加えて、不幸中の幸いと言っていいのかは分からないが、体形がまだ女性の特徴がそこまで出ていない。

 

 だから、パンツの他に、夏用に勝っておいたズボンをベルトの穴で目いっぱい閉めれば、ピッタリとまではいかなくとも、十分使える程度に身体に合ってくれた。

 

 とはいえ、肌が敏感なのか、どうにも違和感というか、言葉にはできない不快感が……いや、問題なのはそれよりも、上の服だ。

 

 なにせ、腕が6本もある。

 

 体格自体は……鏡で確認した限りでは全体的に華奢だが、それでも無理やり袖に片方3本も通せば、窮屈《きゅうくつ》を通り越して、不快感を覚える締め付けになる。

 

 それに、背中の翼も問題だ。

 

 翼の根元辺りは細いが、それが羽の先端へと向かうに連れて羽の1枚1枚が膨らんで大きくなっているようで……ぶっちゃけると、どう頑張っても服の下に収めることは不可能だろう。

 

 胸も……まあ、これは膨らんでいるのが分かる程度なので、いいとして。

 

 とにかく、『腕が6本あって背中に翼が生えている少女』の体形に合わせたシャツなんて売っているわけがないので、『ストア』で探すしかない……わけなのだが。

 

 

「……売ってない!?」

 

 

 残念ながら、見つからなかった。

 

 いちおう、『ストア』には検索機能が付いていて、ある程度商品を絞ることができる。

 

『ストア』で購入できる物品は天文学的数字を当てはめるぐらいの量なので、そうしないと日用品一つ買うだけでも一日が終わってしまうからだ。

 

 それを使って、『6本腕の少女の服』とか『背中に翼が生えた少女の服』とか、あるいはその両方の特徴を持った少女の服とか……思いつく限りの条件を当てはめて検索したのだが、結果は今しがたの彼女の発言が全てであった。

 

 代わりに表示されるのは、とんでもなく高そうなアクセサリーと、妙に官能的なラグジュアリーばかり……というか、それしかない。

 

 いったいコレは、どういう事なのか? 

 

 まさか、『ストア』が故障した……いや、いやいや、そんなミスなど起こるわけがない。『世界』とて、命がけなのだから。

 

 

(……もしかして、変化した今のこの姿って、基本的に裸か半裸で生活するのがデフォなのか?)

 

 

 しばし考えていた彼女は、フッと脳裏を過ったその仮定に……唸りながらも、ちょっと納得してしまった。

 

 冷静に考えたら、種族が変更した後で着られる服に制限が掛かるのは、そこまで不自然でもないし不思議でもない。

 

 地球よりもずっと暑い環境で生きてきた種族ならば服は不要(あるいは、防寒着が必要)、獣のように全身が体毛で覆われている種族ならば、服など邪魔でしかないだろう。

 

 そう考えてみれば、けっこう合点がいく。

 

 室内とはいえ裸同然の恰好だったのに寒さをまったく感じないし、羞恥心も特に感じない。

 

 目を瞑っている状態なのに視界が開けている……ということを、当たり前のように受け入れている事も、それが関係しているのか……まあ、気にするだけ無駄かと彼女は納得した。

 

 

 

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………で、だ。

 

 気持ちを落ち着かせる意味でも、今の身体に慣れる意味でも、狭い室内でストレッチや、玄関外の廊下に出て軽く身体を動かしてみたが……とりあえず、現時点で分かった事は三つ。

 

 

 ──1.腕や翼は、生まれた時から使い続けていたかのように自由自在に扱える。

 

 あまりにも違和感がなかったから最初は気付いていなかったが、冷静に考えると相当にすごい事だ。

 

 なにせ、直前まで存在していなかった器官が5つも増えているののだ。それも意識して操作できない部位ではなく、精密な動作が要求される部位。

 

 それが、一切の違和感を持たせないとは……種族変更というのは、説明にあったように、単純に外見(ガワ)を変えただけではないようだ。

 

 

 ──2.見た目と筋力が釣り合わない。

 

 これは部屋の隅に置いてあったダンベル(15kg)を持った時に発覚したのだが、どうやらこの身体……華奢な少女みたいな見た目とは裏腹に、肉体のパワーが桁違いに高い。

 

 なにせ、この姿になる前(つまり、肉体強化済み)ですら重さを感じ取れていたソレが、この姿だと風船のようにしか感じない。

 

 いくら上げ下げしてもまったく辛くならないし、なんなら力を入れてダンベルを握り締めると、指の形にへこみが出来るぐらいだ。

 

 まあ、そのかわりなのかもしれないが、瞬発力がまるでない。

 

 冗談のように思えるが、この身体は素早く走れないようで……ゲームに例えるなら、スピードを捨てる代わりにパワーに全振りした……みたいな感じか。

 

 

 ──3.なんか、魔法みたいなのが使える。

 

 これはもう、なんか感覚的に『あ、できそう』という部分なので、自分でも上手く説明ができない。

 

 とりあえず、内容としては各腕に一つずつ装備をセット。このセットされた装備に限り、消したり現れたり……アレだ、これもゲームで言えば、『ストレージ』というやつかもしれない。

 

 どこへ消えているのかはハッキリとは分からないが、本当に消えたわけではない……というのが感覚的に分かる。

 

 ナニカを持っている手は、セットした装備を取り出す事ができないという弱点があるけど……それでも、常に手ぶらでいられるのはとても有り難い話である。

 

 

 ──さて、そんなわけで、準備はひとまず整った。

 

 

 今はまだ混乱して現実を受け入れられない者が右往左往しているが、それを世界が何時までも許すなんてことはない。

 

 なんでかって……それは、生きるために家賃を『世界』に支払わなければならないから……ん? 

 

 そう、家主ではない。

 

 地主だとか権利だとか、そんな人間社会のルールはもはや存在しない。不労所得などという言葉はもう、この世界からは消えてしまったのだ。

 

 人間が作った法律なんぞ、もはやただの紙切れ。

 

 法律を盾に縛ろうと思うならば、この世界は問答無用でそのように動く者たちのカルマを下げ続け、いずれは排除されるだろう。

 

 しかし、世界のために……ダンジョンへと向かって戦えば、世界は優遇してくれる。

 

 そりゃあ、そうだろう。

 

 仮に人が自分の身体の細胞の声が聞けたとして、自分のために一生懸命働いてくれる細胞と、勝手に身分やルールを作って雁字搦めにして、周りに働かせて自分は何もしない細胞。

 

 身体の主からすれば、そんな何もしない細胞なんて存在するだけで害であり、速やかに排除しようと動くのが当たり前である。

 

 そうなのだ、人間社会のルールなんぞ、その程度。

 

 それが分かっている彼女は、世界のためでもあるが、自分が生きるためにも……意気揚々と、ダンジョンに入るために家を出たのであった。

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………約5分後。

 

 

「──き、きみぃ!? なんて恰好で外に出ているんだ!? そ、それに、その姿……!!」

「お勤めご苦労様です、それでは中に入りますので──え? ちょ、なんですか?」

「なんですかじゃない! ここは危険だから立ち入り禁止だ、ソ三角コーンで囲っているのが見えないのか! とにかく、こっちへ来なさい!!」

「え、いや、あの、構いませんけど、そうすると貴方達のカルマ値が下がって取り返しのつかない事態になりますけど、御覚悟のうえで?」

「ワケの分からないことを言って誤魔化しても駄目だよ。とにかく、続きは署で聞こう」

「あの、本当に覚悟したうえで、ダンジョンへ向かう私を妨害するのですか? 警察官たちも『声』は聞こえて──」

「いいから来なさい! 緊急逮捕になっても良いんだよ、こっちは!!」

「……はあ、忠告しましたからね。どうなっても知りませんよ」

 

 

 彼女は、鳥居の向こうにあるダンジョンへと入る前に、警察署へと連行されたのであった。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。