見た目だけで勘違いです(信じてくれない)   作:葛城

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※ ある種の説明回
 要は、一方その頃・・・な感じ


第4話: 世界人口が2割減った話

 

『侵食』……すなわち、敵宇宙との生存競争だが、その戦いがどれぐらい続くかと世界に問うたとしても、世界は沈黙するだろう。

 

 理由は、わざわざ伝える理由がない……というのとは別に、単純に、尺度が違い過ぎて、伝えても意味が無いと判断されているからだ。

 

 たとえば、争い事が起こったとして、人間の間隔で考えようとすると『何日、何週間、何カ月……もしかして、年単位ですか?』という感じで想像するだろう。

 

 しかし、此度の戦いの相手は生物ではない。

 

 他の宇宙そのものであり、その単位は最低でも億単位と思っていい。

 

 そう、軽く考えても、億単位である。

 

 つまり、この戦いが集結(すなわち、どちらかの死亡)するに至るまで、最低でも1億年(仮定の話)は掛かると考えて差し支えない……ということだ。

 

 なので、この争いが終わったら……なんて考えるだけ無駄である。

 

 なにせ、それが来るのは最低でも1億年後であり、下手したら10億年、100億年、もっと掛かる可能性だって0ではないわけで。

 

 『この戦いが終わったら、また日常が……』なんて考えで以前のままの生活を送ろうと考える行為は、もはや現実逃避どころか精神に異常を来たしている……といっても過言ではない、そういう話であった。

 

 

 ……そんなわけで、だ。

 

 

 泣き喚こうが何をしようが、世界が変わった事で起こる変化、その実感が薄い人は多いが、それでも明確な始まりは既に起こっていた。

 

 

 ──まず、この地球にはもう土地の権利とかそういった人間のルールは存在しなくなった。

 

 それはあくまでも『人間と人間』の約束事である。

 

 どのように住むかは各自の勝手だが、そこに住んで良いのかどうかを決めるのは『世界』なので、それを人のルールで捻じ曲げることはできない。

 

 つまり、賃貸でも持ち家でも関係なく、大前提として『世界』に許された者だけ。決めるのは『世界』であり、現状は全て黙認されているだけ。

 

 そして、住む場所が無い人でも、実は『世界』は家を用意している。どこぞの新築巨大マンションをそのままコピー&ペースト(インフラ工事済み)したやつだ。

 

 もちろん、お察しの通り慈悲からではない。

 

 そのマンションを利用する者は、例外なく『対価』を徴収される。その対価は、言うまでもなく、『ダンジョン』へと向かい務め果たすというもの。

 

 当たり前だが、それらを利用した以上は一切の言い逃れは通じない。

 

 泣き落としなんぞ通じるわけもなく、逃げ出したところで待っているのは、無限の体感で味わう死の苦痛である。

 

 ……なお、この建物は……というか、世界が変わった時点で大規模な自然災害は起こらなくなっている。

 

 多少の自然災害は問題無しとして放置されるが、わざわざ戦力を殺してしまうような災害に関しては、キッチリ対処されているわけ──ん? 

 

 

 不公平? 理不尽? 

 

 嫌なら、そのまま灰になるだけだ。

 

 

 勘違いをしてはいけないが、『世界』はお願いしているのではない、命令を下しているのであり、人権なんていう茶番に付き合うつもりはまったくない。

 

 命令に従わないのであれば、排除するだけ。説得なんて無駄な事はしない。

 

 邪魔な個体は排除して、素直に言う事を聞く個体を残した方がはるかに効率的……という考え方なのだ。

 

 

 ──で、話を戻すが、まだ人々のほとんどが気付いていない事がある。

 

 

 それは、『ストア』で買えないモノはほとんど存在しないということ。『ストア』さえあれば、人は1人でも生きるのが可能……という、その意味を。

 

 『世界』は、全てを捨てて戦えとは命令していない。

 

 しかし、世界からの命令に従う時間が増えれば増えるほど、確実に衰退する産業は存在し……その中でもにわかには信じ難い話だが『インフラ関係』も例外ではない。

 

 なんでそうなるかって、利便性が桁違いに良いからだ。

 

 たとえば、『ストア』で手に入る食糧には対価が必要だとしても、限度が無い。

 

 そして、『ストア』の食料品には賞味期限なんてモノはなく、常に新鮮で最適な状態で購入できる。つまり、保管の手間が一切必要なくなる。

 

 需要と供給、天候などの不作、その他諸々の要因に一切左右されない。そしてそれは、様々なインフラ設備に関しても同様である。

 

 というのも、『ストア』の中にはなんと、『家』を買える。

 

 たとえば、見た目は小さなコテージ(扉付き)にしか見えないが、内部の空間が拡張されていて、外観は小さなトランクルームサイズなのに、中に入ると見渡せるぐらいの広々とした部屋……といった具合だ。

 

 この『家』も様々であり、費用(コイン)さえ掛ければ、全てのインフラ問題を半永久的に解決することも可能である。

 

 たとえば、水道を通していないのに常に綺麗な水が使え、下水へ繋げていないのに排水などが全て処理され一切の害をもたらさない。

 

 ガスや電気に該当する部分も全て不思議な力で解決が可能。そして、『薬』を始めとして、場合によっては『医学的治療』も『ストア』で可能……これが、どういう意味になるのか。

 

 

 ……簡潔に述べるならば、だ。

 

 

 時が進んで人々が『ストア』にて『家』を買うようになればなるほど、人々が『国』という組織に属する意味が無くなるのだ。

 

 なんでかって、人々が『国』に属するのは、生きていくために、生活のために必要だからだ。

 

 現代人(特に、先進国の人々)は『国』を軽視しがちだが、どうして先進国の人達が必要最低限度の生活とやらを送れるのかって、それはバックに控えている『国』が強いからだ。

 

 バックの『国』が弱い国は、例外なく生活の質は下がる。そして、より強い『国』から搾取される。

 

 これに関しては、例外は絶対に無い。人が人である以上、必ずそうなる。必ず、『弱い国』は『強い国』の肥料にされる。

 

 大陸を渡るのが命がけの大昔ならばいざ知らず、地球の裏側まで自由に行き来出来るようになった現代では……悲しいかな、逃げ場はないのだ。

 

 しかし、それも、以前の話になった。

 

 人が『国』に属するのは、人々がまとまることでより強い国となり、その果てに自分たちの生活を良くするためだが……世界が変わった時点で、『国』はその役割を大きく変えた。

 

 何故ならば。

 

 『世界』という、絶対的な頂点による統治がもう行われた後であり、『国』の役割は、せいぜい人々の混乱を抑えて世界に協力する……それだけのモノになっていたからだ。

 

 これの何が恐ろしいって、『国』という組織の上層に位置する立場の者たちが息を吐くようにやっていた……自分たちへの優遇が一切通じなくなっているからだ。

 

 そう、一切の例外はない。一般人なら違法でも、特権階級ならば問題無しにしていた全ての事柄に、例外が消えた。

 

 それも、当然である。『世界』からすれば、そういった特権階級の者たちへの優遇を放置する理由がまったく無いのだから。

 

 放置して、その負担を強いられている者たちの分、いや、それ以上に成果を出してくれるならば放置するが、そんなわけがない以上……その結果が、世界中に出現した青い炎であった。

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………だが、それでも。

 

 

 もうコレが今の現実なのだと受け入れ、今の職場を辞めるor退職の方向に動き出している者がチラホラ現れて。

 

 周りから『おいおい、頭は大丈夫か?』といった目で見られながらも、各々が各々のペースで動き始めている……そんな最中。

 

 まだ、大半の者たちは……言い方は悪いが、そんな状況になってもなお、強固に構築された『バイアス』のまま、のん気に『政府はどう動いてくれるのか?』と他人事であった。

 

 そして、政府関係者の大半も『ここでリーダーシップを見せねば選挙が……』といった感じで、自分たちがどのような立場に置かれているのか理解しようとしないまま、混乱の中で何時ものように動こうとした。

 

 

 ……その結果は一か月後……日本のみならず、世界全ての医療関係施設に現れた。

 

 

 まず異変が始まったのは、その中でも……全国に点在している介護施設、そこに入居している高齢者たちであった。

 

 その中でも、全額税金で面倒を見られている者たちが、瞬時に青い炎に包まれて灰と化した。その数日後には、家族からの自費負担がある者たちが灰と化した。

 

 おそらく、僅かばかりの時間差は家族のおかげ……しかし、それでも数日の猶予にしかならなかった。

 

 医療と税金の力で生かされている高齢者や、日常生活が難しいレベルの知的あるいは精神障害者が次々に青い炎に包まれ、灰と化した。

 

 若かろうが、女であろうが、関係ない。生かしたところで周りの力を食うだけだと、『世界』は判断したのだろう。

 

 それは機械的と思ってしまうほどに躊躇がなく、二ヶ月が経つ頃には、日本から高齢者と呼ばれる者たちの95%が灰となって消えた。

 

 残りの5%は、辛うじて自分たちの資産で賄っているからなのだろうが……それも、時間の問題だろう。

 

 

『──緊急事態宣言を発令すると同時に、現在が有事であることを宣言する!』

 

 

 これに、日本政府は動く。それはもう、普段のノロノロ具合からは信じられない早さだった。

 

 まあ、無理もない。なにせ、日本全国内の老人が消えたのだ。

 

 そのうえ、老人が消えるということは、その老人たちのおかげで食いつないできた医療関係も困り果てる。

 

 ぶっちゃけてしまえば、膨大な票田が丸ごと消えたことに加え、対応しろと医学界からの突き上げを受けたわけだから、それはもう焦りに焦った。

 

 

『──医療関係者への給付金を支給、閣議決定!』

 

 

 ゆえに、その動きは早かった。

 

 当然ながら、それは優先順位が違うだろうと国民からの声が上がったが、政府はいつものように存在しないモノとして黙殺した。

 

 名目上は、医療関係が壊滅してしまえば助かるはずの負傷者が助からなくなる……というものだが、実質的には、医療関係者への優遇処置であった。

 

 

『──ダンジョン規制法、閣議決定!』

 

 

 続けて、『ダンジョン』に関する規制も速やかに決まった。

 

 この内容はシンプルで、ダンジョンに関する事だ。

 

 急ごしらえなので、それはもう国会は紛糾したらしいが、ただのパフォーマンスでしかなかったので、結局のところはいつものようにスピード決定となった。

 

 ちなみに、その中身で特に紛糾の原因となったのは、主に二つ。

 

 一つは、簡潔にまとめると、18歳~60歳までの男性を合法的にダンジョンへの労働(要は、ダンジョン攻略)を義務化する、というもの。

 

 言い逃れのできない人権侵害ではあるが、『有事』の一言で押し切られた。なお、特例として一部の職業(笑)の者や、条件を満たした者は除外する、というものでもあった。

 

 その為の支給品なども用意されることになった。

 

 ただし、その度に役所に申請書を提出する必要があるうえに、全額ではなく、一部のみ助成を掛けるというお粗末なモノであった。

 

 理由は、『給付という形にすると、役所がパンクし麻痺してしまうため』というものだった。

 

 他にも、手厚く支援を行うべきという意見もあったが、『それは女性差別である!』という団体(市民・NPO・その他)の活動により、却下された。

 

 結果、大半の男性は支援らしい支援を受けられないまま、怪我を負っても通常の治療(一部自己負担)しか受けられず……女性へと向けられる憎悪は日に日に増大の一途を辿ることになった。

 

 

 ……なお、当の女性たちは志願制となった。

 

 

 理由としては、とても曖昧かつ言葉を濁してはいたが、要は『子供を産めるから』という理屈からだった。

 

 ただ、これも疑問視された。

 

 何故ならば、それを理由にするならば、年齢的に高齢出産に該当する女性を含めるのはスジが通らず、また、その理屈を通すならば、出産を義務化する必要がある……という意見が数多く出たからだ。

 

 けれども、それは人権侵害に当たるとして、あくまでも女性たちの自由意思に基づく善意の協力に留めるべき……という、なんとも眠たい綺麗事で誤魔化され、そのままうやむやになった。

 

 うやむやに、してしまった。その意味を、政府も……当事者である女性たちも、深く考えなかった。

 

 男女平等にすべきではという意見が出たが、『弱者である女子供を前面に立たせるのか!?』という、女性議員や有権者の強い反対意見によって、義務化されたのは男性のみとなった。

 

 そう、なってしまった。

 

 その結果が、どうなるか……変わる前の世界ならばそれでなんとか出来たのかもしれないが……その先に何が待っているのかを、当事者たちはこれまでと同じく軽く考えていた。

 

 もちろん、この時、男性側からは強い不満の声が出た。

 

 特に、インターネットでは罵詈雑言と言っても過言ではないぐらいの不満が噴出した。なんなら、声明を出した者もいた。

 

 だが、政府とマスコミ主導による、タレントなどを使った印象操作によって全て黙殺され、反対意見を出した者は次々に実名報道により、黙殺が横行された。

 

 また、その際には『実質的に国家動員法そのものなのだから、女性を除外する理由は如何なものか?』という意見が議員から出たが、即日更迭処分となり、辞職となった。

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………それから少しばかり時が流れる最中、それでもなお、日本では多くの人々が灰になっていった。

 

 

 労働意欲が薄く……言ってはなんだが、制度や周りの善意、時には暴力を臭わせることで寄生していた者たちが、灰と化した。

 

 これは、寄生した分だけ貢献しろ、ただそれだけ。それに満たないなら存在するだけ害悪にしかならない……ただ、それだけ。

 

 次に、次に、次に……日本に限らず、世界中のあらゆる生命は、『世界』の手で(ふるい)に掛けられる。

 

 それは、如何なる身分であろうとも、如何なる権力を保持していたとしても、如何なる存在であろうとも例外ではなく。

 

 世界が変わってから、閣議決定にて賛成していた者たち(親族含む)は、多くのカメラを向けられた白昼の下で青く燃え上がり、灰となって消えた──その日。

 

 『ストア』に、『各種族に合わせた繁殖可能な生き物』が、『世界』より追加アップデートされた──その瞬間。

 

 生命が誕生して以来、一度として不仲にはなっても崩壊までには至らなかった♂と♀の関係は、ここに完全破棄されたのであった。

 

 

 

 

 

 ──さて、場面は変わり、世界も変わってから約半年ほど経った。

 

 

 その間、基本的に彼女のやる事は変わらない。来る日も来る日も『ダンジョン』に潜って、討伐して、コインを稼ぐ日々。

 

 目指すは、最近になって『ストア』で見つけた『家』である。

 

 こう、なんと言えば良いのか……憧れである。自分だけの秘密基地、1から100まで自分好みにカスタマイズしたお家……男ならば、一度は夢見るモノだろう。

 

 

 ……とまあ、それはそれとして。

 

 

 どこか他人事の気持ちであった彼女だが、色々と混乱していたなあ、と彼女は世間の様子に、ふと振り返る。

 

 本当に、ここ半年の間に色々あった。

 

 日本中の病院や介護施設から老人が灰になって消えたとか、知的障害者とか重度精神病患者とかが消えたとか、中々にショッキングなニュースが流れてきたかと思ったら。

 

 お次は国が、なんか国家動員法だかなんだで『ダンジョン』への突入義務化だとか、何故か女子供を始めとして一部の人達を除外するとか、公平性に欠けるとかで支援を限定するとか。

 

 その結果、大勢の政治家たちが灰になって消えて、その親族もまとめて灰になって消えて、他人事でいた大勢の女性たちのいくらかが灰になって消えて。

 

 他にも、なんか『一致団結を!』とか、『今こそ男女の役割を!』とか、スローガンを掲げた集団が……まあ、色々あった。

 

 正直に言わせてもらうと、最初にそれを見たとき、集団自殺でもしたいのだろうか……というのが、彼女の正直な感想である。

 

 子供を産むから……という理屈で役目を果たさないのであれば、本当に速やかに子供を産まなければならないのだ。

 

 『自由意思』とか『善意での協力』なんてのは、もはや寝言だ。

 

 『ダンジョン』に行かないのであれば産むのが義務であり、次世代を育てるのが義務であり、口先だけで先延ばししようとした時点で大罪なのである。

 

 そのうえ、その理屈を通すならば、『既に産むのが難しい年齢』に達している者たちは、自分の意思でそこから外れて義務を果たさなければならない。

 

 世界が変わる前の屁理屈で逃げようとした者を、『世界』は許さない。そんな者たちはとっとと排除して、その分のリソースを素直な者たちに回した方がよほど効率的だからだ。

 

 実際、毎日のようにソレは行われていたのだろう。

 

 最初の頃は、それはもう連日のようにご意見を述べる人たちがテレビなどに映し出されていたが、最近ではまったく見かけなくなったし。

 

 

(……そういえば、なんか芸能人もけっこうな人数が灰になったな)

 

 

 まあ、なんにせよ、だ。

 

 嘆いたところで、何一つ実りなど生まれない無駄な話である。

 

 成るように成るしかない、そう彼女は現状を受け入れているわけであった。

 

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