見た目だけで勘違いです(信じてくれない)   作:葛城

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第5話: 何事もパワー、この手に限る

 

 

 『ダンジョン』内部は、特に決まった構造をしているわけではない。

 

 

 ある時はうっそうと生い茂るばかりの森の中だったり。

 

 ある時は地平線の彼方まで続く広大な浜辺だったり。

 

 ある時は時代背景が滅茶苦茶な、無人の住宅街だったり。

 

 ある時は、天高く付きぬけた塔がそびえ立っていたり。

 

 

 地下へと続く階段があれば、地上へと登る階段もあり、かと思えば、どこまでも続いていると錯覚してしまうような真っ暗な洞窟の中だったり。

 

 とにかく、コレといった決まった形をしていない。

 

 ただ、決まっているというか、全てのダンジョンで共通している事はいくつかある。

 

 たとえば、『ダンジョン』は迷路ではなく、基本的に一本道であるということ。

 

 どれだけ広大な場所に出たとしても、必ずどこかに存在している。間違っても、入って来たモノを迷わせたりトラップが仕掛けたりといった事はない。

 

 何故かって、『ダンジョン』はあくまでも『世界の傷口』であり、傷の修復を妨げているモンスターや核を排除することが目的であるからだ。

 

 それなのに、わざわざ傷を治す手伝いをしている人類を排除する意味があるのだろうか。

 

 ただ、あまりにも長く放置された『ダンジョン』は、傷を修復されないよう『敵世界』が内部を複雑化させたり、修復を妨害するよう様々な仕掛けを設置するらしい。

 

 まあ、敵からしたら、当然の行動であり、長く続けば続くほど、その分だけ有利になるわけだし。

 

 でも、そういうのは年単位で放置され続けた場合に限る(『世界』が妨害に入っているから)ので、今はそこまで気にする必要はないだろう。

 

 

 次に、『ダンジョン内部』では、既存の物理法則とは違う法則が敷かれている。

 

 これは一概に何がどう違うのかは説明出来ないが、例えば、『ダンジョン』によっては内部の重力が違っていたり、何故か火薬だけが反応せず着火しない……といった具合だ。

 

 なので、深く考えるだけ無駄だ。

 

『不条理が不条理のまま起こる場所』で。

 

『不思議な事がまかり通る場所』で。

 

『それに疑問を覚えることが無駄な場所』。

 

 そういう場所だとだけ覚えておけば良い。ダンジョンとは、そういう場所だということだけ。

 

 そして、中に入った者たちは、前方へと進み続けるor探し続ければ必ず『ダンジョン』を守るモンスターが出現し、最奥に『核』がある。

 

 やる事は、基本的にそれだけである。

 

『ダンジョン』という名の傷口に入って『モンスター』という名の妨害(雑菌?)を排除し、修復を妨げている『核』を排除して、傷口を塞ぐ。

 

 ぶっちゃけてしまえば、人類の役割は只一つ。

 

『世界』という名の身体に出来た傷を修復する。規模のデカい白血球、血小板……とりあえず、やっている事はソレなのだ。

 

 だから、物語などにありふれた宝箱なんてモノはないし、隠された宝具なんてモノもない。

 

 そういうのは全て『ストア』で手に入る。よく動いてもらうために、『世界』が用意している。

 

 身体が死ねば必然的に内部のモノ全てが死ぬ。

 

 だから、やる事をやれと言っているわけで。

 

 

『そんな、私たちはそのために生まれてきたわけじゃ……』

 

 

 なんて言い出して拒否する免疫細胞とか、存在するだけ害悪だと判断されて排除される……なんて、当たり前の話であった。

 

 

 

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………さて、長々とした説明を終えたので話を戻すが、彼女の日常もご多分に漏れず、自宅と『ダンジョン』との往復である。

 

 『ダンジョン』はそれぞれ内部の環境が異なっているが、やる事は変わらない。

 

 まあ、とても壮大な景色が広がっていたり、一生の思い出に残りそうな幻想的な光景も見られるが……それも、すぐに慣れてあまり感じなくなる。

 

 なにせ、毎日のように見ているから。

 

 ファンタジー的な世界の住人が現代の光景を見て、『ここは、神の国なのか……?』といった感じで圧倒されるのと同じだ。

 

 最初の頃は感動して言葉も出ないだろうが、一ヶ月、二ヶ月、三ヶ月と時が過ぎれば、だんだんそれらが日常の光景になる。

 

 良くも悪くも、人は慣れる生き物だ。

 

 最初の頃は彼女とて初めての『ダンジョン』の光景に感動し、危険な仕事の最中なのにワクワクドキドキしていたが……さすがに、月日を経れば慣れて、日常の光景となった。

 

 ……で、今日も今日とて、彼女は『ダンジョン』……今回は、開けた草原地帯……そんな場所に入っているわけだが。

 

 

「──ふん!」

 

 

 今日も今日とて、彼女は持ち前のパワーをフル活用した、降り下ろしのハンマーにてモンスターを叩き潰していた。

 

 この時、彼女の前に姿を見せたのは、『巨大なカブトムシ』……のような、ナニカである。

 

 曖昧な言い回しにしたのは、パッと見た感じそう見えるだけで、よくよく細部を確認すると、なんかおぞましい要素がチラホラと……といった感じだからだ。

 

 この虫は、『ダンジョン』ではよく出現するモンスターである。

 

 草原だろうが砂漠だろうが高所だろうが、海水だらけの浜辺や湿度が常に100%の沼地以外ならば、本当にしょっちゅう出現する。

 

 特徴としては、『デカい』、『遅い』、『固い』、『多い』、『ゴリ押し』である。

 

 逃げようと思えば走って逃げ切れる。

 

 攻撃だって、瞬発力は無いから、捕まりさえしなければ避けるのは人間のままでも容易い。

 

 

 しかし、倒そうと思えば、これがまあ中々に厄介な虫なのだ。

 

 

 まず、サイズの問題。

 

 個体差はあるが、だいたいどの虫も全長1m近くある。大きいのだと、3m近いのも。

 

 次に、とにかく固い。

 

 仮に銃器を使えば、1匹殺すのに何十発使うことになるのやら。

 

 当然ながら、刃物なんかも非常に通しにくいし、何も考えず切り込めば刀身が歪みかねない──というか、下手したら欠ける。

 

 そして、なによりも厄介な点が、この虫はとにかく物量で攻めてくるということ。

 

 1匹見たら30匹なんて話ではない。

 

 文字通り、地平線の彼方まで地面が確認出来ないぐらいの数が蠢いて、『核』に至るまでの道を塞いでいるばかりか、その『核』すらも自分たちの身体で包み込んで守っているのだ。

 

 数の暴力がそのまま攻めと守りを担っているので、陽動といった戦略は一切通じない。

 

 とにかく、最初から最後まで力押しで真正面から潰すしかない。

 

 地道に潰し続けるか、火力を集中して一気に潰すか……とにかく時間を稼いでヤル気を削ぐのが目的……そう思われるのがむしろ当然な性能の虫である。

 

 

「──どっこいせ!!」

 

 

 そんな虫を前にして、彼女は……ひたすら、無心のままにハンマーを振り下ろす──振りかぶり──そのまま反対の──横殴りに──次々に潰していく。

 

 そのハンマーは、まさしくその虫を殺すためだけの武器……といっても過言ではない性能を持っている。

 

 車一台を片手でぶん投げる腕力と、その腕力に見合う耐久性と、反動やら何やらを全て無視して破壊のエネルギーを全て叩きつけた側に押し付ける、なんかよく分からない不思議な力。

 

 

 ──その名を、『地母神の選定』。

 

 

 『ストア』で購入した、現在の彼女の種族にのみ扱えるハンマー……との説明だったので、購入を決めた逸品だ。

 

 いくらぶっ叩いても変形ひび割れ劣化一切しないうえに、本来ならば彼女がハンマーに振り回されることすらも防いでくれる、まさに痒いところに手が届く素敵な武器であった。

 

 それを、片手に一本ずつ。つまり、二刀流(この場合、二本流?)というわけだ。

 

 残った4本の腕のうち、左右一本ずつには『ヘルメースのしるべ』という名の巻物を手にしている。

 

 これは、あらゆる慣性を自在にコントロールし、時には無効化することができる。ちなみに、持っているだけで効果がある。

 

 これにより、彼女は攻撃時や防御時に限定されるが、まるで一人だけ100倍速、300倍速、それ以上の速さでサイクルを加速させることができる。

 

 例えるなら、1人だけ加速装置が働いている状態、だろうか。

 

 そして、最後に残った二本の腕には……『少彦名命(スクナヒコナノミコト)のひょうたん』。

 

 これは、一口飲むだけで今にも死にかける者すらも完全回復させるという優れた秘薬(フルーツ味)である。

 

 基本的に対象に飲ませたりぶっ掛けたりすることで効果を発揮するが、実は飲まなくてもひょうたんを所持しているだけでも効果がある。

 

 ただし、その分だけ回復量が低い。中身を使用するのが本来の使い方だから、残念ながら当然を通り越して、当たり前だろう。

 

 そのかわり、このひょうたんは効果が重複する。二つ所持すると、なんと息切れがしなくなるのだ。

 

 理屈としては、酸欠や乳酸といったダメージ(?)を常に回復し続けているので、息切れしなくなる……いや、考えるだけ無駄なので止めよう。

 

 とにかく、これらのおかげで彼女は長時間(さすがに、限度はある)ノンストップでハンマーを振り回し続けることが可能になっている。

 

 

 その様は、まるで鋼鉄の台風。

 

 

 そして、彼女の真価はこういった乱戦……言うなれば、逃げ場などない密集戦にこそ発揮される。

 

 出だしこそ遅いが、『ヘルメースのしるべ』によって慣性をコントロールする彼女のハンマーは、敵を叩けば叩く程に加速してゆく。

 

 相手を叩いた反動を元に加速、加速、加速、加速。

 

 素早い相手には手も足も出ない場合が多いけど、『虫』のように動きが遅く物量に任せて攻めて来る相手には、これ以上ないぐらいに噛み合うのが今の彼女であった。

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………そう、実は世界が変わってからそれなりに時が経つと、『ダンジョン』に向かう者たちの中には、己の向き不向きで挑む『ダンジョン』を変える者が増え始めた。

 

 

 最初の頃は彼女を含めてビギナーしかいなかったので、とにかく家に近い場所に向かうといった感じだった。

 

 しかし、実際の『ダンジョン』に通い始めるようになると、徐々に己の向き不向き……変更した己の種族の特性を、身を持って理解するようになる。

 

 そうなれば、おのずと見えて来るのが、効率性である。それは、単純な話だ。

 

 水中の中では無類の強さを誇るマーメイドを、砂漠の上に連れてきて、どうしろというのか……という話である。

 

 パワーよりもスピードが大事な『ダンジョン』には、スピードに特化した種族を選択した者が。

 

 スピードよりもパワーが大事な『ダンジョン』には、パワーに特化した……そう、彼女のように。

 

 とにかくスタミナとパワーとタフネスを要求される場所には、それに合った者たちが向かうようになった。

 

『世界』からしても、人類が自らの意思で効率性を考え、より効率良く事を進めてくれるのであれば自由にやりなさい……といった感じなので。

 

 誰が決めたというわけではないが、自然と物事が収束していくように、ある種の区分けというか、そういう認識が人々の中に芽生え始めているのであった。

 

 

「──はぁ、今のでやっと15万匹か……うぉ、もう7時間も経ってる……道理で疲れるわけだ……」

 

 

 そんなわけで、今日もひたすら『虫』を叩き潰していた彼女がようやくハンマーを下ろしたのは、作業を始めてから7時間経過した後であった。

 

 

「──よお、廉《れん》さん」

「おや、マッスルさん」

 

 

 それを見計らっていたかのように、彼女が作り出した後方の道よりやってきて、駆け寄ってきたのは、マッチョの男であった。

 

 

 ──名を、マッスル。本名は、種族を変えた時に捨てたらしい。なんでも、『この見た目に似合わないから』、らしい。

 

 その種族は、『鬼《オーガ》』。

 

 全体的なフォルムこそ人間と同じだが、2m20近くある長身に厳つい顔、ボディビルダー顔負けの筋肉を搭載した、見た目通りに全てをパワーで解決する種族である。

 

 そんな彼は、いったい何者か? 

 

 答えはまあ、仕事仲間というか、世界が変わってから縁が繋がった、それなりに付き合いのある友人である。

 

 理由は、彼女と彼の特性(スピードよりパワー!)が、こういった『ダンジョン』では非常に有用だからで、必然的に顔を合わせる機会が多かったからである。

 

 

「相も変わらず、ナイスバルク、ですね」

「わっはっはっは、もっと言ってくれ! 褒められるほど、俺の筋肉は喜び、糧にするのだからな!!!」

 

 

 彼女の言葉を聞いたマッスルは、ボディビルダーよろしくポーズを取る。ぴく、ぴく、とタイミングよく震える筋肉の厚みは、見た目以上の威圧感を周りに与えた。

 

 けれども、それを見て、彼女は逆にほっこりした気持ちになった。

 

 何故ならば、彼女は前に彼から教えてもらっていた。

 

 マッスルは、『世界』が変わる前は……いわゆる、陰キャと呼ばれる学生だった。

 

 体格は華奢で背も低く、体力もそこそこ。友達は居たけど、その友達からしたら、友達の中の1人でしかなかった。

 

 兄弟が居たけど、その兄弟は彼と血が繋がっていないのではないかと思ってしまうぐらいに身長が高く、スポーツもやっていて、頭も良かった。

 

 なので、幼い頃から周りからは当然のこと、家族からもしょっちゅう比べられ、兄弟からは常日頃小馬鹿にされていた。

 

 彼も、そんな自分を変えたくて、何度か努力はした。

 

 だが、筋トレを始めると一か月後には決まって重い風邪を引く、勉強をしても家族から『時間の無駄だから、バイトでもしろ』と真っ向から否定され。

 

 大学進学の時にも、親から『おまえに金を掛けても無駄だから、行きたければ自分で学費を用意しろ』と言われたぐらいに、とにかく周りから期待されていなかった。

 

 

 ……そんな彼も、彼女と同じく『世界の声』を聞いてすぐに動いた者たちの一人である。

 

 

 周りからとにかく期待されなかった彼にとって、始めて期待を受けた……それが堪らなく嬉しかった彼は、それはもう寝る間も惜しんで頑張ったらしい。

 

 それこそ、家族から病人扱いされて絶縁されても……その結果、彼は理想の自分を手に入れ、感謝の証として積極的に『ダンジョン』に突入している、というわけである。

 

 

「ところで、もう帰るのか?」

「ああ、ご存じの通り、私の戦い方は周りに誰かが居ると全力を出せないからな……さすがに、7時間は疲れた」

「なるほど、道理で。よし、後は俺たちが引き継ごう!」

 

 

 俺たち……という言い回しから察するとおり、彼はチームを組んでいる。彼と似たような境遇に居た者たちで構成された、『チーム・パワー』だ。

 

 

「それは構わないけど、無理はするなよ」

「おう、心配してくれてありがとうな!」

 

 

 そして、彼女がそんな言い回しをするのは、彼ら『チーム・パワー』が、共同で稼いだコインを使って、ビギナーたちを支援しているからだ。

 

 彼ら曰く『誰も彼もが、気付いて受け入れて動けるわけではない。せめて、最初ぐらいは……』、という思いから、らしい。

 

 フィジカル的にはけして恵まれた方ではない(むしろ、逆だ)彼らが、自分たちよりもフィジカル的には恵まれている者たちを支援する。

 

 

 ……その内心は、相当複雑なのは言うまでもないだろう。

 

 

 けれども、彼らはソレを選択した。自分が辛い思いをしたからといって、周りもそうなれと願うのは違う……と。

 

 

「じゃあ、私は帰る。困った事があったら、何時でも連絡してくれ」

「おう、またな!」

 

 

 そんな彼を、彼女は心から尊敬し……良いモノを見たと、ほっこりした気持ちでこの日も帰路に着いたのであった。

 

 

 

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 ………………まあ、そんな彼女のほっこりした気持ちも。

 

 

『── 不平等を失くせ! 手厚い支援を!! ──』

『── 弱き者に保護を! 国は義務を果たせ!! ──』

『── 今こそ思い出せ! 人権の尊さを!! ──』

 

 

 『ダンジョン』を出てすぐの場所で、毎日のように行われているデモ隊の姿を見て、急降下してしまったけど。

 

 その者たちは……まあ、女性が多いけど、男性の姿もある。

 

 共通しているのは、年齢層が全体的に高めなぐらいだろうが。

 

 人々の邪魔をすると『世界』からのアウト判定を食らうのが分かっているのだろう。拡声器の声がやかましいが、通行の妨害などはしていなかった。

 

 

(……デモする暇があるなら、ちょっとずつでもコインを稼げば良いのに)

 

 

 そんな彼ら彼女らに向けられる視線は、とにかく冷たかった。

 

 彼ら彼女らは、必要最低限……一週間に一度、共同でなんとか弱いモンスターを殺したり、あるいは様々な活動を経て、排除判定を食らわないようにして今日まで生き延びている。

 

 だが、あくまでも最低限だから、武器やコインの確保はおろか、種族変更も出来ていない者しかいない。

 

 

 それも、当然だ。

 

 

 彼女やマッスルのように準備期間を使えた者たちとは違い、大半の者たちはいきなり本番にぶち込まれた。

 

 例えるなら、彼女たちがレベル10(装備付き)でゲームを始めて、他の者たちはレベル1(装備無し)で始めたようなもの。

 

 怖気づくのは当たり前だ。恐怖して当たり前だ。なにせ、モンスターたちはこっちを殺しに来るのだから。

 

 でも、そうだとしても、『チーム・パワー』もそうだが、かつては自分たちを病人扱いし、蔑んだ者たちだとしても。

 

 それとこれとは話が別だと、身銭を切って助けようと動いている……本当に心優しい者たちがいて、彼女はそんな者たちを心から尊敬している。

 

 

(……まあ、がんばれ、取り返しがつかなくなる、その時まで)

 

 

 だからこそ、そんな者たちの支援に対して、『こんなモノでは足りない!』と意地汚く求めるその姿は、憐れみすら覚えるほどに情けなさ過ぎて。

 

 

『── 天使様、お助け下さい!! ──』

『── どうして見捨てるのですか!? ──』

『── 偽物! 偽物の天使だ、私たちを騙したのか!? ──』

 

 

 そして、相変わらず。

 

 相変わらず、背中に白い翼を生やした彼女の見た目に何を勘違いしたのか、気色悪く縋って来たかと思えば、罵詈雑言をぶつけ始める者たちを前に。

 

 最初の頃とは違い、彼女はもう、構う気力すらなく。

 

 この日も、路傍の石を見たかのように、すぐに意識の外に追いやって……そうして、帰宅するのであった。

 

 

(……見間違いかな、なんか上司っぽい顔の人が居たような……いや、気のせいだな、うん)

 

 

 その際、嫌なモノを見たが……それも、すぐに彼女は過去のモノとして処理をしたのであった。

 

 

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