まぶしい朝日がカーテンの隙間から差し込んできた。俺は重い瞼を開け、狭い部屋の天井を見つめる。ここは東京の片隅にある一人暮らしの部屋だ。1DKの間取りは身を起こさなくても部屋の全貌が視界に入る程度に狭く、ベッドから手を伸ばせばキッチンのシンクにも届きそうだった。
今日から新学期が始まる。大学2年生の春だ。一年前、大学生活が始まった時も何も期待なんてしていなかったが、案の定、大きな波乱もなく淡々と過ぎていった。この1DKの住処にもすっかり慣れ、交友関係が劇的に広がることもなく、相変わらず独り身の気楽なものだ。
世間では「大学デビュー」だの「新生活で素敵な出会いを」だの浮かれている連中もいるようだが、生憎俺にとって新学期とは講義と単位取得が再開するだけのイベントでしかない。青春? 恋愛? 大学生にもなってなおそんな幻想を追う奴はおめでたい。俺は今日も淡々と日課をこなして過ごすだけだ――少なくとも、今朝まではそう思っていた。
駅まで徒歩十分ほどの道のり、朝の東京の街はすでに動き出している。…大学までは電車で5駅ほど離れているが、乗り換えもなく通えるためそこまで苦にはならない。通学ラッシュは面倒だが、住んでいる街は静かで落ち着いていて、一人暮らしにはちょうどいい。
やがて大学のキャンパスに到着した。正門をくぐれば、目前にそびえ立つ高層キャンパスビルが目に入る。全面ガラス張りの外観が朝日を反射し、都会の風景の中でひときわ存在感を放っていた。この大学のシンボルとも言える建物だ。
校内は新入生らしき若者たちや上級生、さらに留学生の姿まで、実に様々な学生でごった返している。スーツ姿で就活中らしい先輩学生、髪を派手に染めて個性を主張するグループ、外国語で会話する留学生たち――田舎の高校とは違い、まさに多様な人間が集う空間だ。俺は人混みを避けるように歩きながら、改めて都会の大学らしい光景だと実感した。
新学期とあって、キャンパスの至るところでサークルの勧誘も活発だ。正門近くの広場ではビラを配る声が飛び交い、賑やかな雰囲気に満ちている。新入生たちは興味津々で足を止めているが、俺には無関係な騒ぎだ。さっさと講義の教室に向かうとしよう――そう考えた、その時だった。
「先輩っ!」
突然、背後から聞き覚えのある声がして足が止まった。“先輩”と呼ばれる筋合いは大学では皆無だ。サークルにも所属していない俺に、先輩と慕ってくる後輩などいるはずもない。だが、この声とこの呼び方には聞き覚えがある。俺は半信半疑のまま振り返った。
そこには、見間違えようもなく高校時代の後輩――一色いろはが立っていた。
春の柔らかな日差しの下、彼女は少しだけ大人びた雰囲気をまとっているように見える。だが、人懐こい笑顔とこちらを覗き込むような大きな瞳はあの頃のままだ。制服ではなく私服姿のいろはは新鮮だった。淡い色合いのブラウスに薄手のカーディガン、そして春らしいスカートを合わせており、キャンパスの雑踏の中でもひときわ目を引いている。高校時代から垣間見えていた洗練されたセンスは健在らしい。
「…一色? お前、なんでここに」
思わず漏れた俺の問いかけに、一色はいっそう悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「なんでって、大学生だからですよ〜。今日からここに通うんです、私」
「いや、そういうことじゃなくて…ってえ? この大学に通うってことか?」
「そうですよ? 私、この春からここの一年生になりました。また一緒ですね、先輩♪」
にこにこと楽しげに告げる一色。しかし俺はまだ半信半疑だった。偶然にしては出来すぎている。
「マジか…お前、確か受験で東京の大学も考えてるとは聞いてたけど、よりによって俺の大学に来るとはな」
「ひどいなぁ、偶然ですよ、偶然。第一志望にここを選んだらたまたま合格しただけですってば」
一色はぷくっと頬を膨らませてみせる。どうやら本当にただの偶然だと言い張るつもりらしい。
「…まあ合格おめでとう。一色ならどこでもやっていけるだろ」
「ありがとうございます。先輩も無事進級おめでとうございます? …って言うのも変ですね。あ、でも留年しなくて良かったです〜」
「人を落第前提で話すな。残念だったな、俺はちゃんと単位取ってるんだよ」
「おお〜、それはそれは。さすが先輩、ギリギリのラインで生き抜く術に長けてますねぇ」
相変わらず口が減らない後輩だ。外面だけは猫を被って愛想よく振る舞う癖に、俺に対しては容赦がない。この棘のある物言いもどこか懐かしい。
周囲では新入生同士らしき集団が談笑しながら通り過ぎていく。そんな光景を尻目に、まさか高校時代の知り合いとキャンパスで再会するとは、と俺は未だに困惑していた。だが現実に、一色いろはは目の前にいて、当然のように俺に話しかけてきているのだ。
「先輩、今日はもう用事は終わりですか? 私はさっき入学式が終わったところなんですけど」
「俺は別に初日から講義もないし…まあ暇と言えば暇だが」
「そっか。じゃあちょうど良かった♪ ね、せっかくだから少しキャンパス案内とかしてくれません?」
一色が上目遣いに頼んでくる。そんな顔をされたら断りづらいではないか。だいたい、こういう時に無駄に愛想がいいところは高校時代から変わっていない。結局、俺は「わかったよ」と曖昧に頷いた。
「やった、ありがとうございます先輩♪ 先輩がいてくれて本当に助かりました〜」
満面の笑みで喜ぶ一色。大袈裟だとは思うが、こんな顔をされると悪い気はしないのだから不思議だ。
「じゃ、行きましょう先輩!」と一色は当然のように俺の隣に並ぶと、キャンパスの奥へと歩き出した。相変わらず人との距離の詰め方が自然というか…懐に入るのが上手い奴である。
俺は一色にせがまれるまま、校内を一通り案内して回ることにした。新入生向けの掲示板で履修案内を一緒に確認し、講義棟や図書館の場所を教え、購買やカフェテリアの位置も案内する。まるで大学公認のオリエンテーションのようだが、まあ初日くらいはいいだろう。
「へぇ、高校と違って建物がいっぱいで迷いそうですね。しかも高い! 都会の大学って感じがします」
「ああ、俺も最初は迷った。高層ビルばかりで教室を見つけるのに苦労したよ。明日からの講義教室も今のうちに確認しといた方がいいな」
「先輩、後で私の教室も一緒に探してくれません? 初回から遅刻したら大変ですし〜」
「お前な…まあ別に構わないけどさ」
調子のいいお願いに呆れつつも、結局俺は頷いてしまう。我ながらチョロい先輩である。
そんな他愛ない会話を交わしながらキャンパス内を歩いていると、突然、上級生らしき男子学生が声をかけてきた。
「こんにちは、新入生かな? サークル興味ある? 良かったらこれ受け取って!」
そいつは笑顔で一色にビラを差し出した。一色はいかにも面倒くさそうにしながらも、愛想笑いでそれを受け取る。
「うち、テニスサークルなんだけどさ、初心者でも全然歓迎だから。今度新歓コンパもやるんだ。よかったら友達も誘って――」
ぐいぐいと畳み掛けてくる彼の視線は、どう見ても一色にロックオンしている。派手めの新入生は格好のターゲットなのだろう。お決まりのテニスサークルとは、リア充御用達の典型だな…と俺は内心で嘆息した。
「えっと、私あんまりテニスとかやったことなくて〜…」
一色は申し訳なさそうに首をすくめる。しかし男は構わず続けた。
「全然大丈夫だよ! みんなで楽しくやってるサークルだからさ。それに見学だけでも来てみてよ。ね?」
やれやれ、これ以上絡まれるのも鬱陶しい。俺が横から口を挟もうかと考えかけたその時――。
「あの、すみません…」
一色が小さく呟いたかと思うと、次の瞬間、俺の腕に彼女の手がスッと絡んできた。
「……っ!」
柔らかな感触に思わず心臓が跳ねる。隣を見ると、一色が俺の腕に自分の腕を絡め、男に向き直っていた。
「ごめんなさい、私もうこちらの先輩のサークルに入る予定なんです。だから誘っていただいても行けないんです、すみません」
ニコリと微笑みながら一色がそう告げると、男は「あ、そうなんだ」と明らかに残念そうな表情になった。
「そっか…なら仕方ないね。良かったらこれだけ持っといて。興味出たら連絡して!」
未練がましくサークル名の載ったビラを手渡し、男は去っていった。
一色はするりと俺の腕から離れ、何事もなかったかのように笑っている。
「……お前なぁ、今のは何だ?」
「何って、勧誘をスマートに断る秘策ですよ。先輩には協力してもらいました♪」
悪びれる様子もなく一色が言う。心臓に悪いにも程がある。
「協力ってな…驚くだろ、いきなりあんなことされたら」
「先輩だってああいうの面倒ですよね? 私も嫌なんです、しつこい誘いとか。だから先輩を利用…じゃなくて、頼らせてもらいました」
ケロリと言ってのける一色に呆れるしかない。確かに一色の機転は見事だった。腕を組まれた瞬間、あの男は露骨に落胆していたし、それ以上引き止められることもなかったのだから。しかしその代償としてこちらの心臓には非常によくない。周囲の視線も若干痛かった気がする。急に美人の後輩に腕を絡まれた冴えない男――他人からはそう見えただろう。冷や汗ものだ。
「それにしても先輩、顔真っ赤ですよ? もしかして意識しちゃいました?」
一色が面白がるように覗き込んでくる。図星だった。
「は、はぁ!? 誰がするか。お前が急に妙なことするからだろ」
「ふふっ、図星ですね。先輩ってば本当にウブなんだから」
「お前な…」
悔しいが言い返せない。自分でも動揺したのは事実だし、それを敏くも一色に見抜かれてしまった。
俺は話題を変えることにした。
「とにかく、サークルの勧誘はあんなふうに断ればいいとして…お前、本当にどのサークルにも入らないのか?」
「そうですねぇ。正直まだ決めてないです。何かおすすめあります?」
「俺は無所属だし、リア充っぽいのは性に合わんからな。おすすめできるものは特にない」
「先輩らしい…でも私、せっかく大学来たんですし何かしらやってみたいんですよね。ま、興味のあることをもう少し探してみます」
一色はキャンパス内をきょろきょろと見回しながら言った。やりたいことを探す――その積極性はさすがだと感心する。俺の大学デビューは結局何もせずじまいで終わったというのに。
その後も俺たちは連れ立って構内を歩き回った。講義棟をいくつか巡り、明日の時間割の教室を事前に確認する。校舎間を移動する廊下では窓の外に都心のビル群が見え、一色は「すごい眺め…」と感嘆の声を漏らしていた。都会の高層キャンパスという非日常感に、やはり初めは誰もが浮き足立つものなのだろう。
気づけば時刻は正午を回っていた。さすがに歩き疲れて、俺の腹もだいぶ空いてきた。
「先輩、お腹すきません? 私、朝早くてあんまり食べてなくて…」
ちょうど一色も同じことを考えていたらしい。俺は頷いた。
「そうだな、俺も腹減った。学食にでも行くか」
「あっ、学食! いいですね〜、大学生って感じ!」
こうして俺たちは大学の学生食堂へ向かうことにした。このキャンパスの食堂は高層棟の上階にあり、眺めがいいことで知られている。案の定、昼時の食堂は学生たちでごった返していたが、運良く窓際の席を確保できた。
一色はいそいそと日替わりランチをトレーに乗せ、俺は無難にカレーを選ぶ。会計の際、俺がまとめて支払おうとすると、一色はちゃっかり自分の財布を引っ込めていた。
「全く…人の懐を当てにしやがって」
「先輩風を吹かせるいい機会じゃないですかぁ。かっこよかったですよ、今の♪」
「はいはい…褒めても何も出ないぞ」
軽口を叩き合いながら、二人で席に着く。
窓の外には都心の街並みが一望できた。遠くまで高層ビルが立ち並び、その合間にわずかに緑も見える。眼下には駅方面へと続く外濠が帯のように横たわり、春風に舞った桜の花びらが水面に浮かんでいるのが見えた。都会の喧騒の中にありながら、高い場所から眺める景色には不思議と静けさが感じられる。
「わぁ…綺麗」
一色が窓の外の景色に目を輝かせている。そんな横顔を見ていると、なんだかこちらまで穏やかな気持ちになってきた。
「いただきまーす♪」
一色が嬉しそうに手を合わせ、ランチに箸をつける。それにつられて、俺も遅めの昼食にありついた。
「それにしても、本当に先輩が同じ大学にいてくれて良かったです。知ってる人がいると安心しますよ〜」
食事をしながら、一色がしみじみと言った。
「俺なんかで安心になるのか? 友達でも作った方が建設的だと思うが」
「もちろん友達もこれから作りますけど、ほら、最初が肝心じゃないですか。知らない人ばかりだと心細かったんですよ、一人は」
その言葉に、俺は去年の自分を思い出す。入学当初、俺も知り合いが一人もいない環境に戸惑い、結果として孤高を貫いたのだった。心細いどころか、最初から一人でいいやと諦めていたのだが…。
「…まあ、お前がそういうなら、必要な時は声をかけてくれ。暇ならつき合うよ」
本音を言えば一人の気楽さに慣れきっていたのだが、一色相手なら断る理由もなかった。
「ほんとですか? やった、頼りにしてますからね、先輩♪」
一色はぱあっと顔を明るくした。その笑顔があまりに嬉しそうだったので、こちらが気恥ずかしくなるくらいだ。
照れ隠しに俺はカレーをかき込みつつ話題を変える。
「そういや、お前大学でも学生会とかやるのか? 高校では生徒会長とかやってただろ」
「あー、どうでしょう。さすがに1年のうちは様子見ですかね。先輩は? 何かサークルとか以外で活動してないんですか?」
「俺は何もしてないな。ただ講義受けて帰って寝るだけの毎日だ」
「それ寂しくないんですか? 友達とか…」
「別に。一人でも困らないからな」
「ふーん…じゃあその、一人でも平気なら、彼女さんとかもいない感じですか?」
不意に核心を突くような質問が飛んできて、思わずスプーンを落としそうになった。
「げほっ…な、なんだ急に」
「だって先輩、高校の時はいろいろと女の子に囲まれてましたよね〜? ちょっと気になりまして」
「囲まれてなんかない。それに大学で彼女なんてできるはずないだろ。…今も、そういうのは皆無だよ」
噛みしめるように答えた。友人も彼女もいない――胸を張って言うことじゃないが事実だ。
「そっか…ま、先輩らしいですけどね」
一色はクスリと笑った。その横顔は、なぜかほっとしたようにも見えた…気のせいだろうか。
「じゃあ私が先輩にとって唯一の後輩ですね〜。もっと光栄に思ってくださいよ?」
「ああ、お前くらいなもんだ」
「えへへ、じゃあ先輩のこと、私が独り占めしちゃいますね♪」
「なっ…! 独り占めってお前…冗談でもそういうこと言うな」
俺は思わず赤面して制したが、一色はおかまいなしに笑っている。
「冗談ですよー。でも先輩、本当にこれからよろしくお願いしますね。大学でもいっぱい頼っちゃうので」
「…お手柔らかにな」
俺は肩をすくめてみせたが、一色は嬉しそうに微笑むだけだった。
そうして取り留めのない話をしながら食事を終えると、俺たちは連れ立って食堂を後にした。エレベーターで1階に降りる間も、一色は新生活への意気込みを楽しげに語り続けていた。俺は「そうか」と相槌を打ちながら、その横顔を盗み見る。
期待に胸を膨らませ、輝く笑顔で未来を語る彼女――高校時代、生徒会長を務め皆の前で堂々と振る舞っていた姿が思い出される。その向上心と行動力には感心させられっぱなしだ。俺なんぞが先輩風を吹かせる幕はないのかもしれない。
キャンパスの門のところまで来ると、そろそろ別れの時だ。
「先輩、今日は本当にありがとうございました! おかげで初日から心強かったです」
「ああ、俺も久々に後輩の相手をして新鮮だったよ。それじゃあ、またな」
一色に背を向けかけた、その時。
「あ、待ってください!」
呼び止められて振り返ると、一色がスマホを取り出していた。
「せっかくですから改めて連絡先交換しておきましょう?…って先輩のは高校のときから知ってますけど、一応今も同じですよね?」
「別に変えてないな」
「じゃあLINE送りますね〜…はいっ、今送りました♪」
程なくポケットの中のスマホが震えた。画面を確認すると「いろは:ヤッホー☆先輩!」という絵文字とスタンプ付きのLINEが届いている。
「……相変わらず豆なやつだ」
「先輩がすぐ既読スルーするからですよ〜。これからはちゃんと返してくださいね?」
「努力はする」
苦笑交じりに答えると、一色は満足げに頷いた。
「それじゃ、改めまして…明日からもよろしくお願いします、先輩♪」
そう言って一色はいったん姿勢を正し、ぺこりと頭を下げた。冗談めかしているのだろうが、その仕草はどこか嬉しそうだ。
「大げさだっての。それじゃ、またな一色」
「はいっ、また!」
一色はいそいそと正門の方へ駆けていく。去り際にくるりとこちらを振り向き、元気よく手を振ってきた。春の日差しを受けたいつもの笑顔が眩しい。
俺は軽く手を挙げ、それを見送る。彼女の姿が人混みに消えるまで、その背中を見届けてから、ゆっくりと踵を返した。
──こうして迎えた大学二年目の春、新たな環境には何も期待していなかった俺だが、思いがけず一色いろはと再会することになった。
静かに過ぎていくはずだった日常は、今日を境に少しずつ色づき始めるのかもしれない。
まったく、せっかく平穏に暮らそうと思ってたのに。この先俺の大学生活は波乱含み…いや、賑やかなものになりそうだ。
そうぼやきつつも、自然と口元が綻んでしまうのを俺は止められなかった。
どうも、ろーです。
この文章を書いている今、僕はとてもあとがきを書いている気分じゃないのですが、ハーメルンに載せると決めた以上、書かないわけにもいかず……というわけで、例によってこうしてうだうだとキーボードを叩いております。こんにちは。あるいはこんばんは。あるいは、読まれてない。やだ、寂しい。
さて、本作ですが、「大学でいろはすと再会する話が読みたい。じゃあ自分で書けばいいじゃない」という、誰に頼まれたわけでもないのに突然始まってしまったやつです。世の中、そういうもので溢れている。自意識とか、性癖とか、あと青春とか。
僕はpixivやハーメルンにいくつか作品を投げています。が、正直に言えばそのほとんどが未完です。
ちょっと書いては満足して、少し熱が冷めたら「まあ、また今度でいっか」みたいな気分になって、いつの間にか別の話を書いている。いわゆる、完結できない人です。怖くないですか? 僕は怖いです。二度目。
でも、この作品だけは完結させようと思っています。思ってるだけじゃなくて、宣言しておきます。
なぜかって? それは、これが「俺ガイル」の続きだと、勝手に思ってしまったからです。
あの“終わったようで終わっていない青春”を、もう少しだけ見ていたくなった。それだけの理由ですが、だからこそ、きちんと描ききるべきだと思っています。
登場人物たちは、原作で確かに“答え”にたどり着いたけれど、そこからまた歩き出すことは容易じゃない。
一色いろはというキャラクターも、物語の中で「選ばれなかった」側として描かれながら、それでも印象的な存在でした。
だったら、多少時空の歪みもありつつ彼女にも“続き”があっていいじゃないか。そんな気持ちで書いています。
内容的には、八幡が静かに大学生活を始めようとして、結局いろはすに振り回される話です。はい、知ってた。
でも、ただのテンプレ後日談にはしたくなかった。彼女が持つ意志や、八幡の視線の変化、ふたりの距離の揺れ──そういう微妙な空気が描けていたなら、それだけで満足です。
というわけで、次回も、ちゃんと更新します。断言です。フラグではありません。たぶん。
最後になりますが、ここまで読んでくれたあなた、本当にありがとうございます。
コメント、反応があると、冗談抜きで嬉しいです。そういうのが次の文章を書かせてくれるんです。ほんとに。
それではまた、次の話でお会いしましょう。
5月某日、鴨川沿いのカフェでコーヒーを啜りながら。
ろー