気がつけばモブハンターになってた。 作:ドーモ。ギルドナイト=サン。
今後もこの作品をよろしくお願いします!
「これは、すごいな………」
工房の入り口に立った俺は、ゲームで見たものと同じはずの光景に圧倒されてしまっていた。
工房には、調査拠点アステラに現住する〈2期団〉の調査員達が主に活動をしている。
〈2期団〉は、このアステラのあらゆる設備を作りあげる、技術者達を中心に構成された調査員達だ。ハンターの武具の加工、スリンガーやロープリフトなど機材の開発、流通エリア全体や居住区などの施設建築を行っている。控えめに言っても凄すぎる集団だ。
そして俺にとって重要なのが、アステラのハンター達は工房の中にある〈加工屋〉と、〈武具屋〉の2つの施設を利用することにより、モンスターと戦うための装備を作成や、装備の売買を行うことができるということ。
装備の性能が命に関わるハンターにとっては、特に重要な施設の1つとなっている。
「夜なのにとんでもなく明るい炎だな……」
そんな工房の中に入ってすぐ目に映るのは、工房の中心にある巨大な炉の中で燃え続ける炎だった。大量の燃料によって大きく燃え上がる炎は、照明が必要ないほどの光量を持っており、工房の中を眩く照らしている。
工房の中は窓が無いため薄暗いが、炉の炎によって灯りを確保することを前提とした設計なのだろう。
次に目に映るのは炎の上、炉の中心部から天井へと伸びる伸びる大きな円柱の中心くらいの高さに、竜の首の形をした梁がシーソーのように揺れている。揺れる動きと連動して梁の両端に取り付けられたピストンロッドが炉の側面の装置から出入りしている……これ蒸気機関っぽいんだよなぁ。似て非なる物の可能性もあるが。
梁の上には大きな車輪に似た物が反時計回りに回転しており、その車輪の外側には3つのクレーンアームが均一に取り付けられている。
クレーンアームは車輪が回転して一定の位置で止まり、それぞれのアームがバケツから素材を取り出して運び、融解した金属が入ったるつぼの中へと投入するなど、複数のアームが別々の動きを行うようだ。
「なんというか。ここだけファンタジーより、スチームパンクって言葉の方がしっくりくる場所だな……」
視線を下げればまた異様なものが目立っている。
炉の左隣には、巨大なふいごが設置されている。しま板……ふいごの上の板を引き上げることでふいごの中に空気がたまり、下に萎ませることで送風口から空気が放出される仕組みだ。空気は炉の炎に送られて、鍛治に必要な火力を維持している。
最大4m程まで広がるふいごの大きさは凄いが、それ以上にしま板に取り付けられたチェーンブロックが弛張されることによって自動で上下に動くことが驚きだ。
このサイズのふいごを動かすとなると人間10人でもキツそうだしな…いや、ハンターなら1人でいけるかもしれないが。
炉の右側には、焼けた金属を冷却するための水を溜めてあるプールが設置されている。また、プールの水を排出する装置も取り付けられている。
プールには手押し式の井戸ポンプが隣接していて、常に綺麗な水が汲み上げられている。鍛治で使う冷却水は温度が低いことが望ましいため、おそらく地下水を汲み上げてきているのだろう。
井戸ポンプの持ち手が無骨な骨なのがモンハン世界らしい……曲がり具合がちょうど良かったのだろうか。
そして炉の正面。ふいごとプールの間に平らな空間が広がるその場所は、装備を加工する職人……2期団の調査員達の作業スペースとなっている。
精製所にもあった骨などの素材が入った木箱や、色とりどりの鉱石が詰まった籠が大量に置かれ、その近くでは様々な職人達が忙しなく働いている。
炉の中に金属を入れる者。
鉄床の上で熱した金属を槌で打つ者。
自動で回転する円砥で武器に刃付けをする者。
誰もが真剣な眼差しであり、そんな職人達の汗の結晶である完成した武器や防具が、作業スペースの中で揺らめく炎を反射させながら鎮座している。
「完成している武器でも調査団のエンブレムは付けられてないんだな……ハンターによっては付けない人も居るのかな?」
出来上がり並べられている武器を見て些細な疑問が浮かぶが、一旦置いておく。
この作業場にはまだまだ見所は多いからな。
炉の次にインパクトが強いのはやはりこれだろう。
炉の周りの空間ををぐるっと囲う様に、なんと大きなベルトコンベアーが敷かれていて、作業スペースと通路に境界線を生み出している。
ベルトコンベアーの上には加工段階の武器や防具がいくつも流れていて、それは巨大な骨を削っただけに見えるものから、持ち手を付けたらすぐに完成しそうな武器の刀身など加工段階はバラバラに感じる。
そんな大きなベルトコンベアーをどうやって動かしているのかは下に目をやれば分かるだろう。
工房の床は金網状になっていて床下が見える仕組みで、床下は巨大な歯車が何層にも分かれて回転しており、この機構によって工房のあらゆる設備に必要な動力を送っているのだろう。
……工房にある設備の動力も水車から引っ張ってきているのかな。もしそうだとしたら、工房にある装置の1つ1つの機構が複雑極まりない事になりそうだが。
工房の壁や天井にはびっしりとダクトが張っており、炉の後ろ側に回る階段の近くには自動でプレス動作をするハンマーがカンカンと火花を散らして動いている。自動ハンマーの上にはウォールシェルフが設置され、樽や木箱などが大量に積まれている。
また、壁の高い場所や天井には大量の換気口が取り付けられ、工房に充満した二酸化炭素などを含む有害な空気を循環してくれている。
「相変わらず原始的な世界には似つかわしく無い技術力だよな……」
ゲームを遊んでる時も思ったが、どう考えても工房の設備の数々は、外の環境とのギャップの差が激しすぎる。
それでも、モンハン世界らしく原始的な要素を残した箇所もいくつかは存在している。これがまた面白いんだ。
そう思わせてくれる物体に目を向ける。
工房の上で回転している回転アームの上部にある、鎖を巻き付けるウインチ部分の支持軸やふいごの支持軸には、なんと大骨が使われているのだ。
融解した鉱石の中に入るクレーンアームの爪も骨。チェーンブロックのフックも骨……と、見たところ強い負荷がかかる部分にあえて骨を使っているようだ。
初めて気づいた時は衝撃を受けたが、モンハン世界の住民からすればこれらは当たり前の事なのだろう。
「あんなクソ頑丈なファンタジー骨材を加工する技術も、俺の知る方法とは違うんだろうなぁ」
モンハン世界の骨はそのまま振り回せば武器にもなり得るくらいだし、この世界の骨は鉄より圧倒的に頑丈な可能性が高い。
そんな骨がメカニズムな場所で1部品として使われていても、パッと見て違和感をあまり感じないのがなんともモンハン世界らしい。
モンハン世界における不思議物質の1つ、骨の頑丈さや軽さには興味が尽きない。
◆
「……って、工房の見学に来たんじゃ無かった」
俺は〈武具屋〉に防具を買いに来たんだよ……!
つい話が脱線しすぎた。
俺は工房の中にある目的地……武具屋へと向かう。
〈武具屋〉は、工房に入ってすぐ左にあるカウンターとその周り一帯に構えられおり、カウンターの周辺や後ろの壁及び、壁沿いの階段の上には〈加工屋〉によって作られた片手剣やランス、大剣など多種多様の武器が立て掛けて展示されている。
また付近には加工屋のシンボルであるハンマーが描かれた盾が複数飾られている。因みに武具屋のシンボルは剣なのだが、それが描かれた盾は何故か1つも飾られていない。
ちなみに〈加工屋〉は名前の通り、武具の加工を行い装備を強化してくれる場所だ。モンスターの素材を使って、その強力な特性を武具に持たせる技術力を持つ。
今の俺は素材も金も無いので寄ることは無いが、そのうち嫌というほどお世話になるだろう……ゲームの様にな。
話を戻すが、武具屋では武具の売買が可能で、加工屋よりも品揃えが少なく、価格も割高にはなるものの、zさえあればハンター装備を揃える事ができる。
装備を作成する素材も無い今の俺が、手っ取り早く装備を揃えるならここを利用するのが一番だろう。
「早く防具を買って、この格好を卒業しないとな……!」
今の俺の格好は、防具を着込む前のインナー装備。
モンスターを狩るハンター達はこの上に頭、胴、腕、腰、脚の5部位の防具を着込んでからフィールドへと向かう。これが基本的かつ最低限の準備となる。
そんな基本的かつ最低限のことすら守れていない俺は、現在のままでは変態か不審者の扱いを受けること間違い無しの状況である。
……食事場での事件は目を逸らしておく。
とにかく、防具を揃えればより安全にフィールドを探索できるし、気分も上がるしで良いことずくしだ。
探索の成果で所持金も1590zまで貯まったし、これなら武具屋で防具が買えるはず。
俺は武具屋のカウンター前に立ち、前に目を向ける。
カウンターには40代程の女性……"武具屋"が立っており、何かの書類と本を手元に広げている。
この人もゲームの登場人物だ。俺が記憶している限り、この世界に来て2人目の登場人物との邂逅となる。
"武具屋"の外見は大きなゴーグルと加工用の作業着が特徴的で、筋肉質の引き締まった顔をしている。顔に煤が付いているため正面からだとパンダメイクをしている様に見えるが、横顔は綺麗な人だ。
ゲームでの会話では姉御肌というより、世話焼きのおばさんって印象が強いが……口には出してはいけない。
"武具屋"は集中した顔で書類と本に目を通していた。
このまま話しかけると当然驚かす事になるだろうし、何より邪魔になるよな。作業を待つのがベストなんだろうけど、時間がかかるかも……いや、でもお客さんだし声をかけても許されるよな?
第一印象が悪くなは無い事を祈りつつ声をかける。
「すいませ〜ん」
「……ぅわあぁっ!?」
どうやら今回も驚かせてしまったようだ。俺はすかさず謝罪した。
……まぁ、まぁ?本を閉じても考え事って頭の中で続いてるし、この反応も俺がおかしな格好だからという訳では無いはず。そうであれ。
「……びっくりしたよ。あんた、いつの間に居たんだい」
「少し前からです……えぇと、防具を購入したいんですけど大丈夫ですか?」
「なんだ客かい……んん"っ、いらっしゃい!
防具を買うなら、これを見て決めておくれ」
少しの問答の後に武具屋は咳払いをして表情を引き締め、挨拶を掛けてくれる。それと同時にカウンターの上に購入できる防具の載ったリストを置いてくれたので、俺はリストを手に取り商品のラインナップを確認する。
どうやら、販売されている防具の種類はゲーム序盤でお馴染みの2つだけのようだ。
この世界が元いた世界のゲームのバージョンアップデートを反映しているならば、この時期にはもう一つの防具が売られているはず。
防衛隊αシリーズとかいう、序盤だと破格の性能をした強力な防具を。
……しかし、その防衛隊α装備がリストに無い事を踏まえると、この世界はゲームのアップデートされるより前の世界の可能性がある。
他に理由があるとすれば……HRの低いハンターには売り出されていないのか、あるいはゲームのメタ要素を多く詰め込んだ物だったのでこの世界には存在しないのか。
もし手に入るなら防衛隊α装備一択なのだが、無いものは仕方ない。
「レザー装備かチェーン装備の二択か。買うならどちらにしようか……」
リストに書いてある2つの装備から、今の俺にはどちらが最適となるか。
装備の詳細欄を注目しつつ、じっくり考えるとしよう。
恋愛要素は要りますか?(物語の結末が変化します)
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いらない
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いる
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めっちゃいる(ハーレム)