気がつけばモブハンターになってた。 作:ドーモ。ギルドナイト=サン。
購入リストに書かれている防具は2つ。
その両方が実際にゲームの中で最初の装備として使う事になる、いわば初期装備と言えるものだ。
1つ目の防具は、モンスターの丈夫な皮を部分的に用いて作られたレザーシリーズ。
シンプルな構造のため着込みやすく、皮素材の為軽く、使い込めば自分の体に馴染む加工が施されているらしい。また、装備が軽いため無駄にスタミナを消費せずに済むのだとか。
火に強い皮素材を採用していると記載されているが、ゲーム的に言い換えれば火耐性があるって事なんだろう。
2つ目の防具は、皮服の上に鎖帷子と金属板を当てて作られたチェーンシリーズ。
機能性、防護性が十分な伝統的な作りらしく、破損した部分の交換や修理のしやすさから広く愛されているらしい。
金属を使っている分、レザー装備よりも確実に重く防御力も高そうだが……ゲームでは同じ数値だったはず。
防具の中に水を溜め込まない作りを採用していると書いてあるが、これもゲームで言う水耐性が高いって事だろうな。
総じて2つとも新米ハンターには扱いやすく、新しい装備を作るまでの繋ぎとして十分な性能のようだ。
そのお値段は…両方とも1部位につき300zか。ふむ。
「手持ちにzを残すなら、4部位までは買えるな……」
現在、俺の所持金は1590zある。
頭、胴、腕、腰、脚の5部位の防具をギリギリ揃えられる金額だが、そうすると探索に出る前の食事をするzが尽きてしまう。
流石に食事を抜きにはしたく無いので、購入できる部位は現状だと4部位が最大となる。
それに、今回の防具の購入は身だしなみを整える理由が大部分を占めるから……外見にあまり影響しない頭防具は候補から除外することになるだろう。
俺は再びリストに目をやり、胴から脚までの防具を確認していく。
ふむふむ……見れば見るほど、レザー装備は快適性を重視した設計で、チェーン装備は金額を抑えつつ防御力を高める設計になっているようだ。
素材に厚革を使った装備と、鎖帷子と金属板を使った装備。どちらが何に対して防御力が高いかは想像に容易い。
レザー装備は打撃系の攻撃に強いだろうが、逆に斬撃系の攻撃には脆くなる。チェーン装備はその逆で、斬撃にはめっぽう強いが、衝撃を吸収することは難しいだろう。
「……ていうか、防御力の数値ってそもそも信用していいのか?」
そうだ……もっと早く気づくべき事だった。
ゲームだと〈スキル〉の有無や防御力、属性耐性の数値で決めていた。しかし、装備によってはペラペラの薄い布の方が、分厚い鎧より防御力が高い事例も少なくないゲームの数値を、そのまま鵜呑みにするのは危険だと考える。
俺の常識が知らぬ間にゲームの知識に引っ張られていたのだろう。
ならば、そんなゲーム要素を除外して、この世界のハンターとして、自分に合う装備選びをすれば良いのだろうが……。
「問題は、俺にハンターの経験が足りて無いってことなんだよな」
ゲームの知識を除外すれば、俺の理解が及ぶ範囲は途端に狭くなる。
現に今も防具の詳細に、あると便利なポケット付き、足運びが楽になる等と書かれているが、それらの有無による違いが正確には理解出来ていない。
一度も防具を身につけたことがない俺には、防具の良し悪しなど分かる筈が無かった。
「うーん、仕方ない。ここは直感で決めるか……?」
そう結論付けようとした所で……目の前で何かの本を読んでいる"武具屋"が目に入る。俺の事は意識の中に無いかのように、本を眺めている。
……これ、普通に"武具屋"に質問すれば良くないか?
機能と用途が分からないなら作成しているプロに聞くのが一番だろう。そうと決まれば、早速聞いてみよう。
「あの、少し相談させてくれませんか?購入したいんですけど、それぞれの防具の利点が分からなくて……」
「ん…………? ……なんだい、あんた新顔かい」
"武具屋"に声をかけると一瞬固まったが、すぐに本をしまい対応してくれる。新顔と聞かれたが……新しく来た五期団かどうか確認をしたいのだろうか。なら答えはYESだ。
「はい。五期団のハンターです」
「防具について悩みでもあるのかい?
良かったら、他のハンターから人気の装備でも言うよ」
「! 本当ですか……是非お願いします!」
「お礼はいいさ。いつも使ってる謳い文句を言うだけなんだからね」
頼んだら、"武具屋"が防具の説明をしてくれるみたいだ。分からないからって、直感なんかで防具を選ばなくて正解だった。
装備の詳細を見ても、いまいち機能の必要さが理解出来なかったからな。正直とてもありがたい……!
「まずレザー装備はなんと言っても軽さだね。軽いってだけで無駄に体力を消耗しないもんさ。
柔らかいし、機能性も抜群だけど……特におすすめなのは腰装備のレザーベルトだね。サブポーチの多さによる機能性が売りで、熟練者の中でも愛用してる人は多いよ」
「なるほど……サブポーチですか」
"武具屋"の話に出てきた熟練ハンターよると、サブポーチの1つがハンターの命運を分ける事もあるらしい。
ゲームでも、使いたいアイテムを選んでる間にモンスターの攻撃を受ける事があるからイメージはしやすい。
この情報は今後の装備選びでも参考にできそうだ。
「次にチェーン装備だね。編み込んだ鎖はモンスターの鋭い牙を通しにくいからね、防御性の高さは保証するよ。
あとは……金属部分の劣化を防ぐ為に定期的なメンテナンスが必要だって事で、自分でやる癖を身に付かせるために新顔におすすめされてるね」
「装備のメンテナンス……!それは盲点だったな……」
どうやら防具をメンテナンスする必要があるらしい。
考えてみれば当たり前のことだが、ゲームにはそんな要素は存在しないため、俺の頭からは抜け落ちていた。
レザー装備も天然皮だから手入れは必要だろうが……やはり金属製の装備の方が扱いが面倒だと思われる。
"武具屋"の言葉から察すると、装備のメンテナンスが出来なくて困るエピソードなども多いのだろう。ハンター生活を今後続けるなら、俺もメンテナンスのやり方を覚えておく必要があるかも知れない。
だとすれば…………コイツで決まりだな。
念のため他の防具の説明も聞いておき、最後に"武具屋"に結論を話す。
「……チェーン装備の、胴、腕、脚の防具を1つずつ。
それと、レザーベルトを購入します!」
「はいよ!……丁度だね。まいどあり!」
俺は注文と共に1200zを手渡す。
"武具屋"の話を聞くことが出来て本当に良かった。
買うからには長く大切に使いたいし、手間は掛かるけど手入れの勉強も出来そうなチェーン装備をメインに選択した。
なにより、硬い防具を身につけていれば安心できるしな。
腰だけレザーベルトにした理由は、アイテムの持ち込み量を増やすだ。やはり利便性は大事だと思う。
やはりこの世界でもキメラ装備が正解という事か……!
「はい!この中に装備が入っているからね。
ここで装備するなら調整を見てあげられるよ」
「えっと……装備していきます」
カウンターの下から木箱を取り出した"武具屋"が、ゲームでおなじみのここで装備しますか?を聞いてくる。
どうやら、ハンターの体に合わせて、紐の括りなどの大雑把な調整が必要ならしい。
これも"武具屋"から教わりながら、俺は購入した防具を身につけていく。
「……こうして種類の違う防具を身につけるのは珍しいねぇ。新大陸の装備をしてる人だと、私は1人も見てないね」
「そうなんですか?……やっぱり、変だったりします?」
「?……あはは!この程度なら変って事は無いさ!
ただ、あまりにも装備の系統が違ったりすると、こっちが見てて不安になるだろうねぇ……」
なんと、キメラ防具は一般的では無いのか。
ゲームに登場する人物も、みんなシリーズ一式で装備を組んでいたためある程度は予想が付いていたが……。
だが、幸いなことにこの程度なら変だとは思われないらしい。
見た目の印象について、あらかじめ人に聞く事の大切さは痛感しているからな……今のうちに知れてよかったぜ。
これ以上変な扱いを受けるのは避けたいし、次からは目立たない様に装備を統一するべきだろう。
しかし、キメラ装備が外見に問題ありとなると、ゲーム知識を活せる場所が極端に減ってしまったな……〈スキル〉構成とかどうすればいいのか。
「……これでバッチリだね。違和感は無いかい?
次回からも同じ要領で装備すれば良いからね」
「大丈夫です。……ありがとうございます!」
鏡が無いため、自分の姿をしっかりとは確認できないが……身嗜みは間違いなく改善された事だろう。もちろん、防御力も改善された。
手や足を動かしても、装備した防具の鎖帷子や金属板のせいで体が重く動きにくい……なんてことは微塵も感じられない。
これはチェーン装備が重さを極力減らした作りをしているからだろう。リストにそう書いてあったし。
俺は惚れ惚れとした目で、これからの相棒となるチェーン装備とレザーベルトを見つめる。
新品の防具だからか、各部に取り付けられた金属板が工房の揺らめく炎を綺麗に反射していて美しい。
汚れ一つ無い装備を身につけていれば、周りからは装備を新しく買ったばかりの新米ハンターとして見られる事だろう。
これなら、もう変態や不審者と思われる心配も無さそうだ。本当に良かった……!
「やっと、ハンターらしい格好になったな……!
これで安心……って、ん?………ちょっと待て」
防具を手に入れた感動が収まり初め、少し冷静になってきた俺は、ようやくこの装備に不足している物に気がつく。
…………あれ、腕にスリンガーが付いてない。よく見れば腰に導虫かごらしき物も無い。
……な、何故だ!?ゲームだと防具を買えば一緒についてきたのに!
2つとも新大陸に生きるハンターの標準装備の筈だ。購入した装備につけ忘れたのだろうか……?
一応、"武具屋"に確認してみるか。
「あの、"武具屋"さん。この防具にスリンガーや導虫かごが付いてないんですけど……これって何かの手違いですかね?」
「あんた何言ってんだい。新大陸のハンターなら、みんな1つは持ってるだろう?」
「……すいません。持ってない場合はどうすれば良いでしょうか」
「あらま!壊れたりでもしたのかい?
一応ここでも買えるけど、修理した方がよっぽど値段は安くなるよ」
話を聞いた武具屋は、そう説明しながらスリンガーと導虫かごの商品リストを見せてくれる。
どうやら、ゲームとは違って防具に付属する訳では無いらしい。
スリンガーと導虫カゴの両方とも、壊れるどころか所持すらしていなかったが……しかし、新しく買い直すことは出来るそうだ。少し安心した。
装備1部位が300zなら、スリンガーや導虫かごもそこまで高く無いだろう…………などと、タカを括っていた俺はリストに書かれた値段に、大きく目を見開く事となる。
「っ!?……スリンガーが1つで4000z!?
しっ、導虫かごまで1000z以上かかるのか…!」
「当たり前だよ!作製も簡単では無いからね。
新しく用意するとなると、どうしても高くなるのさ……それでも構わないなら、すぐにでも用意できるよ」
お値段なんと合計で5000zという、防具1つが安く思える程の必要金額に驚愕を受ける。
しかも、スリンガーも導虫かごも多彩な種類があって、物によってはさらに金額が高くなる。
……今日の探索の成果で1450zの収入だが、今後も同じ程度の金額が稼げるかは正直分かっていない。
新しい装備を作る金も必要になるだろうし、いざという時の貯蓄もしたいとなれば、導虫かごはともかく、スリンガーを買えるようになるのはいつになるやら。
「……すいません。購入はやめておきます」
「構わないさ。修理ならいつでも持ち寄っておくれよ。
他に何か見ていくかい?」
リストを仕舞いながら、"武具屋"が質問をしてくる。
他に防具に付いていない物で、必要なのはランタンだろうか……ここで買えるかは分からないけど。
他にはなんだろう。修理か……あっ、そうだ。
「腰にかけるランタンと、チェーン防具のメンテナンス道具って置いてますか?」
「両方あるよ。ランタンのオイルは別料金だけど、一緒に買っていくかい?」
「全部一番安いので、いくらぐらいになりますかね」
「ランタンが700z。ランタンオイルが2日分で80z。
武具のメンテナンス道具は種類が多いけど、多く使うのは鎖帷子関係だし……一番安くて錆防止用の油剤で50zだね」
「…………」
「どうする?買っていくかい?」
……ランタン高いな!マジかよ!
こっちも金額を侮ってたみたいだ。防具を装備して浮ついていた気持ちが一気に醒めてくる。もっと稼がないと……!
幸いにも錆防止用の油剤はあんまり高くない。今はこれだけでも買っておこう。
その他の整備道具も、ぼちぼち用意する事になりそうだなぁ。
「錆防止用の油だけ1つ買います」
「はいよ!丁度だね。他にも何か見ていくかい?」
商品を受け取った後に軽く考えるが、思い浮かぶ物はない。
……もし浮かんでも、今度は所持金が足りないので買えないが。
「いえ、今日はもうこれで終わります。
色々と教えて下さり、ありがとうございました!」
「いやいや。あたしも久々に話が出来て楽しかったよ。
新大陸のハンターはみ〜んな優秀で、質問なんて滅多に来ないからねぇ」
「そ、そうですか……では、これで失礼します」
「どうも。また来ておくれよ!」
お礼を言い、武具屋を後にする。
"武具屋"はゲームの印象と同じで、明るくて親切な方だったし、話していて学べることも多かった。最後の会話に切れ味の鋭い言葉が飛んできたが、おそらく悪気は無いのだろう。
卑屈にならず、俺は俺のできることをやっていこう。
入る時とは違い、今度は堂々と胸を張って俺は工房の入り口を通り外に出た。
◆
「……すぅ〜、はぁ〜。外の空気がうまい……!
一応これで、ひと段落は着いたかな」
外に出ると、工房の中で留まっている熱っぽい空気と違う、澱みのなく涼しい空気が肺いっぱいに広がって気持ちがいい。心なしか頭もスッキリとしてきた。
現状の最大の問題点だった身嗜みの改善が済んだ今、人目を気にせずに行動できるのは大きい。
今後の目標は変わらず金策だろうが、効率よく動けるなら一度の探索で収入も上がるだろう。
なんなら探索ルートを変更してもいいかもしれない。
「せっかくだし、明日は正門を通って探索に向かってみてもいいな。
でも、ひとまず今は……晩御飯を食べに行くか!」
工房の外はすっかり暗くなってしまった。
アステラの各所でかがり火が燃えており、明かりを頼りにして調査員達は活動をしているようだ。ここからだと、先ほどお世話になったモンスター素材の精製所で、かがり火の近くで誰かが作業しているのが見える。
……これだけかがり火を灯しているんだし、アステラの照明事情は大変そうだな。
「こんだけ火を灯しているから、夜も活動出来るんだろうな……それに、天然の明かりは上にもあるし」
俺は静かに空を見上げる。
そこに広がるのは力強くも幻想的な光景。
闇夜に浮かぶのは満天の星と淡く輝く満月。
煌びやかに自信を主張する星々は、自分たちが一番綺麗に決まっていると言わんばかりの存在感を放っていた。
「夕日もそうだったけど、ここの夜空も肉眼で見たものでは間違いなく人生で1番綺麗な景色だ……」
新大陸の夜を照らす星空。
思わず目を奪われて、立ち尽くしてしまう光景。
このままずっと見ていると、夜空に吸い込まれて消えてしまいそうな……あの満月が元いた世界に繋がっていたりしないだろうか。
『……こっちを見つめて………どうしたの………?』
――――ぐぅ〜……。
力が抜けていたからか、腹の虫がだらしなく鳴る。
……は、恥ずかしいっ!?
周りには誰もいない……ちょっとノスタルジックな考えに浸ったらこれだよ!
「はぁ……アホな事してないで、早く食事に行こう」
気恥ずかしさから離れるように足を動かす。
一歩踏み出すたびにカチャカチャと鳴る装備の音をが心地いい。
ちゃんとした格好をする。俺はただそれだけのことが、ずいぶん久しぶりに感じられて仕方がなかった。
工房からは食事エリアまで歩いていける道がある。
これも崖上に橋をかけて作られてる上に、安全用の手すりは腰にすら届かないので非常に危険な道だ。
因みに落ちたら滝の下に一直線だし、チェーン装備をしているためそのまま沈んでしまう。
「とにかく足を滑らせないように気をつけなきゃな……」
かがり火や月明かりがあるとはいえ、段差などで影ができれば余計に暗さが増す。うっかり足場のない場所でも踏めばそのまま人生終了するだろう。慎重に滝を挟んだ反対側の崖上にある食事場へ向かおう。
……やっぱモンハン世界の建築物って安全性に配慮してない物が多過ぎるだろ!
現在の装備
武器 ハンターナイフl
頭 なし
胴 チェーンベスト
腕 チェーングラブ
腰 レザーベルト
脚 チェーンパンツ
現在の所持金 340z
専門家の意見「チェーン防具の中で唯一クセの無い見た目の頭装備と腰装備を付けず、モッサリ感の強い他チェーン防具を採用。腰にはレザーベルトを付けることで装備の統一感を破壊。これはアバンギャルドですね(言いたいだけ)。遠くから見ると、チェーンパンツの短パン小僧感が半端ない素晴らしい仕上がりです」メガネクイッ
総評 ダサい(確信)
今後もこの作品をよろしくお願いします。
恋愛要素は要りますか?(物語の結末が変化します)
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いらない
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いる
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めっちゃいる(ハーレム)