気がつけばモブハンターになってた。 作:ドーモ。ギルドナイト=サン。
今日も特別です!
「…………」
海を眺めて、ザザァァ……とする波音に耳を澄ませる。
……船から出て、再び流通エリアの前に戻った俺は、しかし桟橋の上で動けずにいる。
本来ならば他の五期団達と同じように活動したいところだが……ある重大な問題を抱えてしまい、進もうにも進めない状況に陥っていた。
「…………俺の今の格好って、変態じゃね?」
そう。今の俺はどう考えても普通のハンターらしくない格好をしている。
荷物があった事は大変素晴らしい事だ。0と1の差は大きい。しかし世間的に見れば、今はそれが裏目に出ている気がしてならない。
これが装備をつけてないインナーのみの格好なら、
「あっ、休日なんだろうな。お疲れ様です。」
くらいにしか思われないだろう。
だが今の俺は、筋肉をぴっちりと覆うインナー服を着て、腰にはアイテムポーチと剥ぎ取りナイフ、そしてハンターナイフを装備。右腕にはモンスターを殴る鈍器…じゃない、鉄製の小盾を装着している。そしてそれが周りからどう見えるのか。
分かりやすくいうと、俺はシャツとパンツ1丁でバットとグローブ持って野球しようとしてるような、頭のおかしな変態野郎に見えているだろう。
対して周りを見てみれば、武器を持ったハンターらしき人は皆レザー装備だのチェーン装備だので全身を固めており、モンスター溢れるフィールドを駆け巡るのに適した格好だ。
あれこそが"普通の"ハンターだろう。この差は一体なんなのか。
「この格好で注目されるのは……マズい」
………俺は潜む。なるべく注目されないように、体が隠れそうな物に若干身を寄せながら移動する。
隠密ミッションだ。ハンター達が集まっていた広場までの距離は短いが、失敗した時の影響力は計り知れない。
「大丈夫だよな、変に噂されたりしないよな……?」
幸い、見た限りでは誰も此方に注目しているものはいない。
もし、俺が変態だとか噂が広がれば俺の明るいハンター生活は一転して暗いものになるだろう。
狩りに行く仲間も見つけられまい……誰も変態と一緒に行動をしたくないだろうし。
「はぁ……早く格好良い装備で身を固めたいぜ……」
装備をしたとしても、変態扱いされる噂が残らないように、俺はコソコソと移動を開始した。
◆
船に入る前に俺が向かうつもりだった、ハンターらしき人が集まっていた広場の近くまで来た。
先程は大勢のハンターが集まっていたが、時間が経ったのか2人しか残っていないようだった。
……あれは、〈ギルドガール〉とハンターか?
何やら話をしているようだし、終わるまで待つとしよう。
「まだギルドカードの確認ができていない者が多いですね。例の推薦組の方達も行方不明ですし……」「心配いらんよ。放って置いても、ハンターなら自力でここまで辿り着くさ」
〈ギルドガール〉は名前の通り女性専用の職業で、主にハンターへのクエストの斡旋・伝達や補佐を担当する。その他にも様々な事をしており、その仕事をこなす為に幅広い知識を求められるらしい。モンハン世界の女の子の憧れにして超難関職の1つだとか。
ギルドガールの制服は、元いた世界のアーミーガールに近い。肩にかけたミニマントと腰にあるポーチ付きの大きなベルトが特徴的で、タイトスカートに折り返しロングブーツと、全体的にビジネスウーマンに近い印象を受ける。
複数人いるギルドガールは、1人1人の制服の色が違っており、桜色や薄緑色や青色など一目で見分けがつきやすくなっているのも特徴的だ。
……あそこにいるギルドガールの制服の色は薄茶色だ。顔も知らないし、ゲームでは出てこない人物なのだろう。
「念の為、捜索する人数を増やすよう提案してみます「そうか……ならば私も参加しよう。すぐに出るから、手続きは任せても大丈夫かな?」「えっ!?助かります!……お気をつけていってらっしゃいませ!」
おっと、ハンターの男がギルドガールに手を振ってどこかに行った。どうやら話は終わったようだ。
船に入る前に居たハンターの集団がギルドガールに用があったなら、他の五期団のハンター達が今頃どうしているのか知っているかもしれない。
……他には誰もいない。今が話しに行くチャンスだな。
「精力的ですね〜。流石はハンターさんd「すいませ〜ん。少し聞きたいことがあるんだけど」
……ぎゃっ!?」
マズい。どうやらまた驚かせてしまったみたいだ。
まぁ……独り言を呟くくらいだし意識を集中してたんだろう。俺の格好を見て驚いたわけではないと思いたい。
……そういえばギルドガールって役場の受付の人みたいなもんだよな。タメ口じゃマズイかも知れない。
念のために敬語で、ギルドカードを手に怪しいものじゃないですよ〜と、アピールをしながら話しかけよう。
「驚かせてすいません。俺は五期団のハンターでして……」
「……は、はんた〜?」
「そうです。この通り」
「…………」
驚きですごい顔つきになった上に、声がへにゃへにゃに萎れてしまっているギルドガール。
暫しの沈黙のあと、驚きで固まっていた目の焦点が動き出し、俺のギルドカードに向けられる。
……俺はハンターです。怪しくないよ〜。
「……あっ、えぇと。もしかして、ギルドカードの確認に来られたのでしょうか?」
落ち着いたのか、ギルドガールが俺の持つギルドカードに反応した。
ギルドカードの確認? ……あのハンターの集団もそのために来てたのか。
これは行幸だ。この流れに乗って、上手いこと同期達に続くぞ。
「えっと……はい。お願いしてもいいですか?」
「かしこまりました。突然現れたので驚いてしまいました。あはは……」
空笑いしているギルドガールだが、返事はしながらも視線は渡したギルドカードに向いており、片手で器用に分厚いリストを捲っている。
「……はい、名前とギルドカードの確認が出来ました。
こちらのギルドカードをお返ししますね」
「ありがとうございます」
無事に確認が済んだみたいで、営業スマイルと共にギルドカードを返してもらう。
確認のついでに、ギルドガールに五期団のハンターがどうしているか聞いておこう。
「あのー、他の五期団のハンター達って今頃何してるか分かりますか?」
「他の5期団のハンターさんですか?同じ船の方でしたら、ご自身のマイルームに向かわれていると思いますよ。
……他に何かご要件はございますか?」
「!だったら、そのマイルームの場所も教えてほしいです」
「はい?えぇと、ハンターさんのマイハウスが何処かまでは存じ上げておりません……あっ。
あちらにいる〈ルームサービス〉にお聞き下されば、マイルームの場所が分かると思いますよ!」
そう言って指を刺した先は、なんと斜め下。
え?と指先に視線を動かせば、流通エリアの金網上の床の向こうには地下が広がっており、そこに1匹のアイルーが見えた。
え?流通エリアって下にも広がってんの?
驚愕の事実だ。 ……いや、ゲーム内では行けないだけで実際はもっといろんな場所があるのだろう。
ひとまず教えてくれたギルドガールにお礼を言って、〈ルームサービス〉が移動しないうちに向かおう。
「ありがとうございました!助かりました!」
「お役に立てて何よりです!いってらっしゃいませ〜」
ギルドガールはニコニコと笑顔を浮かべて挨拶をくれた。 ……最初の驚き顔とは大違いだ。
それにしても……良い人だったな。
対応も話声も堂々としてたし、その姿に格好良いとも思えた。ギルドガールがなんで人気職なのか、少し分かる気がする。
「……さて、下へ続く階段でも探すとしよう」
隠密ミッション第二弾ってとこかな。
俺は再びコソコソと動き出した。
◆
〈マイルーム〉……そして〈ルームサービス〉。
これらはハンターにとっては欠かせない存在だろう。
〈マイルーム〉はハンター達が生活する部屋あるいは家だ。マイハウスと呼ばれる場合もある。
ベットやタンスはもちろん、武器掛けやモンスターの素材をしまうアイテムポーチ以上の収納力を誇る〈アイテムボックス〉が置かれており、モンハンワールドでは更にフィールドで捕まえた環境生物をマイルーム内で飼うことができる。
……この環境生物を飼うって要素が女性ゲーマーの心にクリティカルヒットしたって話もあるが、今は置いておこう。
それで、〈ルームサービス〉についてだ。
ゲームだとマイハウスの管理を努めるアイルーのことで、ハンターをご主人様と呼ぶ執事のような存在だ。
ゲームの物語が進むと様々な場所で便利要素が追加されてくんだが、ルームサービスに予定を伝えておけば各所へ連絡してくれるから自分が移動しなくて済むので、ゲームでは何度もお世話になりました……!
そんなルームサービスに今から会いに、〈流通エリア地下〉へと降りてきた俺は、全く新しい光景を前に感動している。
〈流通エリア地下〉。
そこには貨物が至る所に積み上がっているが、ところどころには店が開かれており、地上の流通エリアほどではないが多くの人が賑わっている。
上からの土煙などを防ぐためか、地上と違い必ずテントの下に商品が置かれているのが分かる。
こんな光景ゲームでは見れなかったからな…とても新鮮で楽しい。新しい発見にワクワクしてくるな……!
しかし、今は感情に浸っている場合ではない。早くルームサービスのところに行かなくては。
物が多い分、隠れての移動もやり易い。
あっという間にルームサービスの所へと辿り着いた。
……こっちも誰かと話しているようだ。また1匹になるまで待とう。
しかし、あのルームサービスってよく見ると……なんか、俺の知ってる姿じゃなくね?
「各部屋に床布を運び終わったそうですニャ」「こちらも部屋入りする人数の確認が取れました。あと5人ほどは余裕があるかと」
やっぱりそうだ。さっき上から見た時は遠かったから分からなかったが、このアイルーの毛色って濃い茶色なんだな。
……たしか、ゲームのルームサービスって綺麗な肌色だったよな?もしかしなくても、ルームサービスって複数匹いたりするのか。
いや、普通にモンハン世界の職業みたいなもんなのか。
「はい。では何かあればお呼びください」「とんでもニャいですニャ。ありがとうございますニャ」
お、1匹だけになったな。今なら聞きにいけるか。
何の会話をしてたのかは聞こえなかったが、まあ気にする必要はないだろう。
船のアイルーとの出来事を見習い、なるべく驚かせないようにルームサービスの正面に立って話しかける。
「すいません、ルームサービスさん。五期団のハンターなんですけど」
「……………ニャ?」
話しかけたら惚けた顔でこっちを見てくるルームサービス。
まずい、やはり俺の格好がおかしかったのか。
変態扱いされていない事を祈っているうちに、相手も冷静になったのか姿勢を正して話し出す。
「……ニャニャ!失礼しましたニャ。
どうかいたしましたかニャ?」
「五期団のハンターのマイルームって何処にあるかご存知ですか?」
「ニャ?五期団のハンターさん達のですニャ?
ニャらまだご自分のマイハウスはニャい筈ですニャ」
え?そうなの?
それだとなぜ同期達はマイルームに向かったと、ギルドガールは話していたのだろう。
「……もしかして、ハンターさんの乗っていた船はあの船ですかニャ?」
何か思いついたのか、ルームサービスは腕を船の方へと向ける。あれは先程、荷物を取りに向かった船だろう。
そういえば、ギルドガールも船がどうとか言っていたっけ。
「そうです、その船です」
「そうでしたかニャ。ニャらば、私めが寝室へと案内しますニャ。着いてきてくださいニャ」
何故かトントン拍子で話が進む。
うーむ……理由がわからん。俺がいた船に何かあるというのだろうか。
ひとまず、何処かへ進み出したルームサービスの後に付いて行くとするか。
◆
ルームサービスの案内のもと流通エリア地下から少し歩くと、巨大な滝の正面にある船の甲板にたどり着いた。
……滝の迫力がもの凄い。特に水が落ちる振動と音が。前の世界でもこの大きさの滝は滅多にお目にかかれないだろうな。
上を見れば流通エリアのロープリフト乗り場が見える。やはりここもゲームだと来られない場所だろうな。
「こちらですニャ」
そう言ってルームサービスは、甲板から船内へ続く階段を降りていく。俺も足元に気をつけながら進む。
船内には人の気配が無い。船も五期団のものより少し小さいのか、天井なども低い。木材も劣化からか年季のある色合いをしている。
「ここが寝室ですニャ」
ルームサービスがどこかの部屋の前で立ち止まって、目の前の扉を開けた。
「ぉ、お〜……」
扉の奥に広がる部屋の光景に思わずたじろぐ。
8畳程の大きさの部屋の床に、敷き布団と呼ぶには薄すぎる布が10枚くらい敷かれていた。それ以外には何も無いようだ。
……さっき寝室って言ってたよな?
この布の上で寝ろとでも言うのか?ほぼ床で寝るのと変わらないじゃないか。何かの間違いでは……?
「5期団の船の改装が終わるまでは、マイルームやマイハウスの代わりに皆様にはこちらで寝ていただく事にニャりますニャ。
大人数では狭い部屋ですが、ご了承下さいニャ」
間違いじゃなかった。しかも複数人で寝る部屋だそうだ。……とても寝心地が悪そうだな。
しかし、それとは別に興味深い情報が聞けた。
五期団の船の改装ね。初耳だな。
ルームサービスに聞いてみるか。
「五期団が乗っていた船を何に改装するんですか?」
「ニャ。新大陸では調査団が使える資源が現大陸より限られていますニャ。そのため、皆様がこちらに来られた船を使って、皆様の住まいを作っていますニャ」
……なるほど。ゲームではアステラの光景が変わる事がなかったから、五期団の船も使っているのは気がつかなかったな。
メタ的な理由で、ゲーム開始時点には改装後の景色にしていたとかなら、気がつけるはずもないが。
しかし、この世界の主人公っていつ遭難からアステラへ戻るんだ?ゲームだと1日も立たずにアステラに着いた感じだったが。
五期団の船全ての改装が終わった頃に戻るなら、まだまだ時間がかかりそうだ。
「他にも気になる点はございますかニャ?」
「えっと…他の五期団のハンター達が今頃何をしているかご存知ですか?」
ルームサービスの言葉に甘え、同期達の動向を忘れずに聞いておく。
ルームサービスって親切に教えてくれるし、言葉使いも丁寧だし……あの船にいたアイルーとは大違いだな。
「五期団のハンターさんニャら、多くは探索へ向かわれたはずですニャ。長い航海を終えたばかりでも、とても旺盛で頼りにニャる方々ですニャ」
「そうですか、探索に……!」
ついに同期達の動向が掴めた!
よーし、俺も早く探索へ向かおう。ゲームで見た世界を冒険したい。
……あと、懐が寒いから金になる物を採取しておきたい。
「ありがとう。ルームサービスさん」
「とんでもニャいですニャ。これからもよろしくお願いしますニャ」
親切なルームサービスにお礼を言う。本当に助かった。
丁寧な返答をくれたルームサービスは、そのまま甲板へと戻っていった。
モンハン世界って親切な人が多い気がするな。俺がこんな貧相な格好をしてるハンターだからかも知れないが。
……まぁ、何はともあれ上手くいっている訳だし、このまま探索するための準備といこう。
俺は腰につけたアイテムポーチを開き、中にあるzを確認する。
「……1500zか。これで必要なものを買い揃えるか」
無い無い尽くしの俺には、ハンターとして活動する上で必要な物が全く足りていない。
次はそれらを用意するべく、俺は船から出て流通エリアへと歩き出した。
恋愛要素は要りますか?(物語の結末が変化します)
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いらない
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いる
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めっちゃいる(ハーレム)