気がつけばモブハンターになってた。   作:ドーモ。ギルドナイト=サン。

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6話

 

 

 〈食事場〉武器と山猫亭。

 アステラにいるハンターや調査員達の力の源となる、栄養満点の食事を提供している場所だ。

 

 名前の通りの見た目をした、背中に武器を担いだ一際大きなアイルー……"料理長"を中心に切り盛りをしている。

 そしてなんと、他の従業員も全てアイルーだ。

 モンハン世界ではアイルーが良く食事を作ってくれる。人間より味覚が鋭いのだろうか……アイルーってすごい。

 

 

 武器と山猫亭は、料理長がいる場所を中心にそれぞれの施設が設置されている。

 料理長の背後には巨大な石窯が置かれ、中にはこれまた巨大な肉が鎮座しており、料理長の前にも焼き石の板で出来た調理場がある。そこから一段下がった場所には、料理を眺められるように客用のテーブルが設置されている。

 

 

 調理場前のテーブル席意外にも、少し離れた場所に数々のテーブルが並べられているので席が足りなくなる心配も無い。

 また、巨大な石釜の左右後方に釜戸や鍋、食材の入った大籠や大樽が密集して置かれており、その釜戸の火に空気を送ったり、鍋をかき混ぜるアイルーがちらほら見える。料理が追いつかなくなる心配も無さそうだ。

 

 

 そんな調理場と客席の頭上には、巨大なネットが貼られており、そのネットの上にも巨大な葉っぱがいくつも敷かれて日陰や雨を遮るための天井となっている。

 あえて葉っぱの天井にしているのは、料理で上がる油の煙が塵と一緒にこびりついた際に、葉っぱごと交換するためでもあるのだろう。葉っぱも消臭効果のある植物のものだったりしてな。

 

 

「こんなに大きな野外調理場なんて、前の世界には無かったからな……どこ見ても興味深い」

 

 

 さすがは料理が発達したモンハン世界だ。衛生面もバッチリってわけだな。

 あとはアイルーが作る料理だし、抜け毛が入ってないことを祈ろう。バンダナも頭にしか巻いてないし。

 まぁ、大丈夫だろうから料理してるんだろうが……アイルーって不思議。

 

 

 ◆

 

 

 武器と山猫亭は現在、多くのハンターや研究員達で賑わっていて、とても混み合っている。まぁ昼時だしね。

 そんな忙しい時間ならあって当然のアクシデントが起こる訳で……、

 

 

「調理場前の席が空いていねぇ。

 なんなら近場の席すら座れねぇ……」

 

 

 ゲームだと常に空いていた調理場前の席が埋まっていて、俺は空いてる席を探してあちらこちらに歩くことになってしまった。

 どうやら調理過程を見られる調理場前の席や、料理と一緒に絶景も味わえる崖側に設置された席などは人気のようで、全ての席が埋まってしまっている。

 

 あと、賑わう席を見渡して思ったが、ゲームよりずっと多くのテーブルが用意されているようだ。アステラにいるハンターの数とテーブルの席数が考えても釣り合っていなかったしな……メタ的な理由なのだろうか?

 

 

「仕方がない、遠くの空いてる席に座るか……」

 

 

 調理場が見える席に座りたかったが……今回は諦めるしかないみたいだ。空席になるのを待っていたら、フィールドを探索する時間が減ってしまうしな。

 

 俺は泣く泣く視界の端で見つけていた、調理場より上の高い位置にあるテーブルに着く。

 ……この席からは調理場は一切見えないのか。

 今回は運が無かったが、次回こそはあの"料理長"の料理シーンをこの目に収めたいものだ。

 

 

「テーブルに置いてあるベルで店員を呼べばいいのか。さて何を注文しようか……」

 

 

 俺は注文する料理を考える。因みにテーブルにメニューは置いてなかった。

 

 

 モンハン世界の食文化はありとあらゆる物を食材として扱うことや、料理人の独創的な料理法などで凄まじい発展を遂げており、その料理を食した者には大きな力を与えるという。

 

 食事をすれば、ゲームではネコの〇〇術ってのが発動して本当に力を得れていた。

 この世界にあるかはわからないが、もし活用できればこの後の探索で大きな助力となるだろう。

 

 

「正直、何でも良いから早く食べてみたい……!」

 

 

 だが、ここまではあくまでも真面目な話。

 本心から俺が声を大にして言いたい事はそんなことじゃない。それはたった一言だけ。

 

 

「モンハンの世界の料理は、めちゃくちゃ美味そうってことだ……!」

 

 

 そうだ。モンハンの飯はとにかく、とにかくっ!美味そうに見える。

 画面の向こうに見えるそれに、熱気や匂いは存在しない。しかし料理を注文し自分の前に料理が届き、そしてクローシュを開けた瞬間……感じるのだ。

 

 暖かな熱気と食材を贅沢に使った豊潤な香り。それに包まれたボリューム満点の料理を、男女問わず美味そうにがっついて食べるゲームキャラクターの幸せな感情。

 画面の前で思わず匂いや味を想像して、口の中に唾液が溜まった事があるのは俺だけでは無いはずだ。

 

 

「あれだけ想い馳せたモンハン飯を、俺は食うぞ!」

 

 

 本当なら、ここでは新鮮な食材を多く使ったオススメ定食を頼むのが一番なんだろう。

 ゲームの知識通りなら、食材の組み合わせで得られる力は強力なものが多く、さらにオススメ定食はその力が発動する確率と最大HPが上がるため、目的達成に大きく貢献してくれるはずだ。

 

 ……でも、効率を求めるだけがハンター生活じゃないよな。

 だから、最初くらいはゲームで名前と説明を見て、どんなものか気になっていた食材で料理を注文して、好きに食べてみよう。

 

 

 チリリリーン !

 

 俺はテーブルのベルを振って席で待つ。

 しばらくすると、調理場の影から小さな影が近づいてくる。

 紫色のバンダナと腰エプロンを付けた給仕であろう、太陽の光で艶めく黒毛が綺麗なアイルーがテーブルに近づいてきた。

 

 

「……なのニャ?」

 

 

 しかし……何故か背中を向けて帰りそうだ。

 俺は慌てて声をかける。

 

 

「注文したいです!」

 

「はいなのにゃ…………?」

 

 

 声が聞こえたのか返事をしたが、しかし首を振って周囲を確認している給仕のアイルー。いや、メラルー?

 他の給仕アイルーと違って、黒くて目立つし……"黒毛の給仕ネコ"とでも呼ぼうか。が、呼ばれたテーブルが見つけられない事にオロオロしている。

 ……お店が賑わってるから、聞き取りづらかったのかな?

 俺は席を立ち、もう一度大きく声をかけてみる。

 

 

「ここでーす!」

 『……運命……惹き合う………異なる未来…………?』

「………!!」

 

 

 ようやくこちらに気がついたみたいだ。

 驚いた表情で見開かれた琥珀色の目が俺を捉え、"黒毛の給仕ネコ"が慌ててこのテーブルに駆け寄って来た。

 

 

「……ニャニャ。気がつけなくてごめんなさいなのニャ」

 

「いや大丈夫!注文してもいいですか?」

 

「はいなのニャ」

 

 

 あるかは分からないが……俺はゲームで何度もそうしたように、この時点で店にあるであろう食材を選んで注文をする。

 

 

「すいません。ホワイトレバーとドテカボチャを使った定食をお願いします!」

 

「はいなのニャ!100zになりますなのニャ」

 

 

 記憶通りに食材があったようだ。

 つつがなく注文を終えた俺は、100zをアイテムポーチから出して手渡す。

 "黒毛の給仕ネコ"は短い両腕を伸ばし、プニプニの肉球とモコモコした毛並みの手でzを器用に受け取ると、腰につけたエプロンにしまい調理場の方へと向かった。

 

 

 料理が届くまで、1人で静かに待つ。

 今俺が注文した食材の組み合わせには決められた効果はない。

 だがそれらは、現在の食材で唯一注文できる他のモンハン作品でも登場する食材なのだ。

 モンハン好きの俺にとって、1回は食べておきたかった。次からは、ちゃんと料理の効果を考えて食べよう。

 

 

「しかし、周りの席は楽しそうだな〜」

 

 

 1人静かにしているのが虚しくなり思わず周囲を見渡せば、大声ではしゃぎながら話をしているハンター達が多いこと多いこと。

 俺も混ざりたいぜ……この格好に問題が無ければ。

 "黒毛の給仕ネコ"も格好については何も言っていなかったし、やっばり俺の気にしすぎなのか?

 

 

「誰かが相席してくれたら、俺の格好もおかしくないって確信が持てるよなー」

 

 

 ここ、2人用のテーブルなんだけど誰か相席しに来てもいいんだよ?

 楽しく話をしながらお互いの注文したものを分けっことかしたいし。

 

 この格好が果たして普通なのか。

 周りにいる、武器を背中に担いだハンター達はみんな防具で身を固めてる。でも武器を持ってない人はインナーでもちょくちょくは居る。

 グレーゾーンだな……俺だけでは決められない。

 "気だるげな5期団"が食事場を通ってたら誘ってみようかな。それで俺の格好をどう思うか聞いてみても良いかも。

 

 

 そんなことを考えていたら、視界の端から"黒毛の給仕ネコ"が巨大な料理プレートを頭上に持ち上げて運んでくるのが見えた。アイルーって力持ち……。

 

 ! そうだ"黒毛の給仕ネコ"にそれとなく、俺の外見について聞いてみても良いかもしれない。

 料理をテーブルに乗せたあとに聞いてみるか。

 

 

「お待たせしましたなのニャ!」

 

 

 しかし、まともな思考回路はすぐに吹き飛ぶこととなる。

 "黒毛の給仕ネコ"がテーブルに料理プレートを置き、俺の視界は突如として銀色に包まれたからだ。

 ゲーム画面を眺めて興奮していた記憶が蘇り、冷静に思考することが難しくなっていく。

 

 

 そう、これだ……この瞬間が最高なんだ。

 俺は今、この世界に来て一番ワクワクしている……っ!!

 

 

 とうとうクローシュが外された瞬間、視界が煙でぼやけながらも、香ばしい匂いと熱気に包まれた料理が姿を見せる。

 

 

「こちらがドテカボチャのスープなのニャ。次がホワイトレバーの串焼きで、定食だから絶品丸ごと魚焼きと日替わり盛り合わせとドリンクがセットなのニャ」

 

 

 "黒毛の給仕ネコ"が料理の説明をしてくれているが、匂いで思考する力を奪われていた俺は、うまく聞き取る事が出来なかった。

 

 

 ……巨大だ。あまりにも巨大。

 まず目を引くのが、手前に置かれた巨大な魚焼き。

 魚の皮から、透明な油がス〜っと垂れており、調理後すぐの状態なのが伺える。

 

 その隣には持つだけで筋トレになりそうな木製のジョッキの中で、発泡酒なのだろうか泡だった液体が揺れている。

 

 右側には、真っ黄色でドロドロのスープが、幅も底も大きな器の中で白い湯気をこれでもかとあげており、かぼちゃ特有のまろやかな匂いが鼻いっぱいに広がってくる。

 

 左側には剥ぎ取りナイフと同じくらいの巨大な串に、拳半分ほどの若干灰色が混じったレバーの塊が4つ突き刺さり、重厚な肉の香りを漂わせている。皿の端には、なんらかの果実も添えてあった。

 

 そして上には、大皿にさまざまな具材の乗ったサラダのようなものが置かれている。

 

 

 ……口の中で無限に涎が作られている気がする。

 うまそうなんてもんじゃない。もう見て嗅いだだけでうまい。これが、これがモンハン飯!!

 

 

「……っ!」

 

 

 体が勝手に動き出す。

 手元に置かれたフォークを手に取り、勢いのまま魚焼きに突き刺す。拳の2倍以上のサイズで切り取られた魚を口元に運ぶ。

 

 

「熱ぃっ!」

 

 

 高温の湯気が頬を掠め思わず手を止める。

 …だが、冷めるまで待てるほどの理性は残っていない俺は、覚悟を決めて魚をかぶりつく。

 

 

 熱い!!うまっっ!!!!あっつうまあっ!!

 

 

 旨みの暴力が口の中で暴れる。暴れ続ける。

 臭みなど一切無い香ばしくふわふわの肉と、香辛料だろうハーブのピリッとした風味の皮が、噛むたびにまろやかな油を染み出して味に飽きることが無い。

 落ち着こうとすっと息をすれば、鼻からも香ばしい風味が脳を刺激してきて、たまらず頭の中がおいしさでいっぱいになった。

 

 

 うまい!うまい!うまい!うんまあい!!

 

 

 ◆

 

 

「…………はっ!?」

 

 

 気がつけば俺はいつのまにか席から立っていて、隣では"黒毛の給仕ネコ"が手を叩いている………。

 一体何が起こった……!?

 

 焼き魚を口に含んだ後の記憶が無い。

 しかしテーブルを見れば、少々汚く食べ終わった後であろう皿が置かれていた。

 

 

「すごい食べっぷりなのニャ。これ程のものは久しぶりなのニャ〜」

 

 

 "黒毛の給仕ネコ"が、俺の記憶には無い食事風景の勢いを語っている。

 あの巨大な料理を全て平らげたのか……俺が………?

 お腹もいっぱいだし……間違いないのだろう。

 

 恐ろしい。これがモンハン飯。

 想像を遥かに超えてくるその言葉は、俺の記憶と体に深く刻まれたことだろう。

 微かに残った食事の記憶と、満腹時特有の幸福感に浸ってまた頭がボーっとしてくる。

 もう、普通のご飯じゃ満足できないかも……。

 

 

「お粗末様なのニャ。片付けはしておくからもう行っていいなのニャ」

 

 

 "黒毛の給仕ネコ"の言葉で俺は意識を取り戻す。

 ……はっ!?知らぬ間にモンハン飯への感動で昇天しかけていた。危なかった……っ!

 

 

 一旦、落ち着こう……れ、冷静になれ。

 俺は深呼吸をして、視界をはっきりと意識する。

 視線が自然と皿を片付けている"黒毛の給仕ネコ"に向かっていく――あっそうだ。思い出した。

 

 すっかり頭から抜け落ちていたが、俺の格好がおかしく無い確証を得るために"黒毛の給仕ネコ"に質問してみたかったんだ。

 皿の片付け終わる前に、急いで声をかける。

 

 

「なぁ、"黒毛の給仕ネコ"さん。少しだけ聞きたい事があるんだけど……」

 

「なんなのニャ?食事のお誘いならお断りなのニャ」

 

「いや、そうじゃなくて。俺の格好についておかしな事があれば教えて欲しいんだが……」

 

「?なのニャ………」

 

 

 質問したらこちらを向いた"黒毛の給仕ネコ"。

 まるで今初めて俺の姿を見たとばかりに、ジロジロとこちらを見つめる。

 ……特に驚いてはいないようだし、問題なさそうかな?

 

 

「何かあるのにゃ……?」

 

「えっと、これからフィールドに向かおうと思って…………?」

 

 

 フィールドに出ると口にした瞬間、"黒毛の給仕ネコ"が固まってしまった……一体、どうしたのだろう。

 腰につけたハンターナイフを見つめて、"黒毛の給仕ネコ"はまじまじと言葉を口にする。

 

 

「その格好で、狩りに行く……なのニャ……?」

 

「え?まぁ……狩りっていうか、探索に今から向かうところで、おかしなことがないか確認し……」

 

 

 何故か片言で喋り出す"黒毛の給仕ネコ"の質問に答えていた俺だが、相手の顔を見て言葉が詰まる。

 ……だんだんと目が見開いて表情が強張ってきた気がs「……ぃなのニャ…」…え?なんか言った?

 

 

「変態なのにゃぁぁぁああ!!」

 

 

 何か呟いたので聞き返そうとした瞬間、"黒毛の給仕ネコ"は猛烈な勢いで片付けていた食器をさらって調理場へと走って行った。

 ……俺への罵倒を悲鳴のように叫びながら。

 

 

「…………なんでだよ」

 

 

 口から疑問が溢れてくる。

 どうやら俺は、今まで話した人の対応から考えて、自分の格好がおかしく無いなどと、無意識に確信していたんだろう。いくら言い訳を口にしても、もうやってしまったことは戻らない。

 

 

「………へ、変態……か…………」

 

 

 目の前で起こった状況から現実逃避したいのか、頭が真っ白に埋め尽くされた俺は、その場で立ち尽くす事しか出来なくなっていた。

 

 

 

恋愛要素は要りますか?(物語の結末が変化します)

  • いらない
  • いる
  • めっちゃいる(ハーレム)
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