気がつけばモブハンターになってた。   作:ドーモ。ギルドナイト=サン。

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7話

 

 

 やあみんな!ハンターライフ、楽しんでいるかな?

 俺のハンター生活は始まったばかりだが、もう既にお先真っ暗になりそうだよ。

 

 

「なんで今まで誰も言ってくれなかったんだぁぁぁ!!」

 

 

 テーブルの上で頭を抱える。

 "黒毛の給仕ネコ"に変態扱いされたショックから少しずつ回復してきた俺の思考は、先ほど起こった不審者が出現する事件を完全に責任転換しようとしていた。

 

 ……冷静に考えてみて、話している相手がインナー服着て武器を担いでいてたとして、まさかそのままフィールドに出ようとしてるなんて分からないよな。

 やっぱり俺の自業自得だな……。

 

 "黒毛の給仕ネコ"には申し訳ない事をしてしまった。

 俺って変態だけど、どう思う?と聞いたことと何ら変わらない事をしたのだから、相手からの印象は完全に変態扱いになってしまっているし。

 本当に悪いことをしたな……今度まともな装備を着て謝りに行こう。うん。

 

 

 でも、そのおかげで確証を得られた。この格好はアウトらしい。

 そういえば、モンハンワールドはゲーム開始すれば、主人公は防具を初めから装備していた。そして、それまでの作品よりもさらに高いリアリティを追求して作られた作品だったな。

 

 ……思えばワールドの世界だと気づいた時点で、格好に問題があると確信に至るべきだったんだ。

 くそぅ、他の作品では新しく開始すればインナーと武器しか持ってなかったからな。

 

 

「最初はこの姿が普通だと、勝手に思い込んでしまった……!」

『……あなたの……望んだ姿………でしょう…………?」

 

 俺にとってのハンターの初期装備ってイメージが強かったからか、おかしいと思いきれなかったのだろう。

 様々なモンハン作品をプレイして培った知識が、俺の判断を鈍らせたのか。思わぬ落とし穴もあったものである。

 

 

「……はぁ…………」

 

 

 気づいたところでもう遅い。

 せめて、あの"黒毛の給仕ネコ"が変態を見つけたなんて噂を広げていない事を祈ろう。俺の今後のハンター生活のために。

 

 

「じっとしてても仕方がない……行くか。探索に」

 

 

 アイテムは買ったし、腹は満たせた……周囲から見たこの格好についての答えも。

 アステラでする事は、今は現状もう無いだろう。

 

 

 席を立つ……座った時はあれだけ興奮していたのにな。

 俺は物資補給所で買った物を手にして、食事場を後にした……またコソコソと人目を避けながら。

 

 俺の心はちょっぴり冷めてしまったが、食事場は最後まで変わらず賑やかなままだった。

 

 

 ◆

 

 

 食事場を出てすぐに、食事を終えたハンター達がそのままフィールドに向かうことができるように〈クエスト出発口〉が置いてある。木の柱2本を立てられ、その間に巨大な骨が括られた四角いアーチに、調査団のエンブレムが飾られたものだ。

 

 基本的にゲームでは、このクエスト出発口からクエストや探索に向かうこととなる。ちなみに、〈探索〉とはクエストを受注せずフィールドに向かう事を指す。

 

 

 ゲームではクエスト出発口の近くに来てボタンを押すだけで目的地へと向かうことができたが……この世界にはそんな便利な要素は無い。

 ではどうやってハンター達がフィールドに向かうのか。

 

 1つは徒歩。己の足で目的地を目指す。実にシンプルだ。地味だが堅実で、ハンターが学者の護衛を行う際などは大体は徒歩で移動している。

 だが、新大陸のハンター達には徒歩なんぞ遥かに凌駕する、速さと利便さを兼ねた移動方が存在する。

 

 

 それが空を飛んで移動する方法だ。

 新大陸は交通インフラが現大陸ほど進んでおらず、ハンターを始めとする調査員達の移動手段が限られている。

 その問題を調査員達は、新大陸に生息する翼竜種……元いた世界でいう、プテラノドンみたいな生物に注目する事で、ある程度の解決法を見出した。

 

 

 〈メルノス〉と呼ばれる翼竜種の脚に、ハンターが腕に装着する機構スリンガーに巻きつけられた、ワイヤーロープの先端にある〈クラッチクロー〉を飛ばして引っ掛ける事で、翼竜が飛べばハンターもぶら下がって移動する……というぶっ飛んだものだ。

 

 調査拠点アステラではこのメルノスを飼育して、移動の際は口笛などで合図して飛ばし、一緒に目的地まで飛んでいく方法を確立している。

 この方法を使えば山や谷などの障害があろうと関係ないし、徒歩の何倍も早く移動できるだろう。

 

 

 ……だがしかし、残念ながら2つ目の方法は今の俺には利用する事が出来ない。

 何故ならスリンガーが無いから。悲しいね。

 なので、必然的に徒歩での移動になるわけだ。

 

 

「うおっ、結構揺れるな……怖ぇー……」

 

 

 俺は今、食事場にあるクエスト出発口から、向かいの崖上と繋がる吊り橋の上を進んでいる。

 この先はゲームでは見ることしかできなかった場所だったので、どれもこれもが新鮮に感じられる。

 

 

「……っし、渡りきった!……もし酒を飲んだら、この橋を通るのはやめよう」

 

 

 相当高い位置にあるこの吊り橋もそうだ。

 元の世界のものと違って落下防止のネットなんて無いため、もし橋が切れたり、酔った勢いで手すりの向こうへ体を投げれば、大岩にぶつかりながら転がり落ちることになる。痛いでだけではすまないだろうな……。

 

 すぐ身近に危険がある世界を徒歩で歩く。あたり全てがモンハン世界のガバガバ建築だ。ただ歩くだけでも、スリル満点だし、小さな冒険と呼ぶにふさわしい。

 

 

 吊り橋から続く崖側の道は整地されているが、周りの景色は進めば進むほど木々や植物が広がっていき、道幅も細くなっていく。

 このまま進めば林の中を下っていくことになるだろう。

 

 俺の着ているインナー装備には靴なんて上等な代物は無い。代わりにあるのは、履き慣れていない底つきの足袋だから気をつけて進もう。

 頭上にある木々の影が、俺の体におちていく。

 

 

「おぉ〜……空気が美味いな……。

 林の中は涼しいし、気持ちいい……!」

 

 

 こうやって自然の中を進んでいると、のどかな気持ちになるな。トレッキングが好きな人の気持ちがわかる。

 周りの音も静かで、カチャカチャと腰にあるピッケル同士がぶつかる音が少しうるさく感じるくらいだ。

 

 周りを見れば、長い年月を生きたことが感じられる巨大な植物達が生い茂っている。

 なんとなく、元の世界の古植物に形が似ている気がする。

 ……遥か太古の世界を冒険しているみたいで楽しいぜ!

 

 

「まぁ、そんな冒険もこの格好じゃ台無しだろうけどな」

 

 

 ……食事場の事件を思い出し、どんどんのどかな気持ちが薄れていく。

 今の俺は、インナー服と片手剣を装備し、腰には剥ぎ取りナイフと膨らんだアイテムポーチを付け、そのベルト部分でピッケルと釣竿を挟んでいる。

 これに、フィールドへ向かう道中って要素を足そう。

 誰かに見つかれば、変態扱いされるのが確定している。

 

 

「……これ以上、誰かに見られる訳にはいかない。絶対にだ」

『……輪の内の命……記憶に………刻まれない………』

 

 復活の隠密ミッション第3弾。

 俺は気配を消して……なんて事はできないので、ただ静かに歩きながら、近くに人の気配がないかつぶさに観察する。

 

 

「おっ、このまま歩けば正門から続いてる道と合流するのか……難易度が上がるな」

 

 

 下り坂を進みながら木々の隙間を覗いていると、今の道と正門からの道の合流地点が見えた。

 人は………見たところいないようだ。

 良し、今のうちに進もう。

 

 

「ここからは、小走りでいくか!」

 

 

 フィールドに出てしまえば、身を隠す場所なんていくらでもあるだろう。

 逃げ場のない道路はさっさと駆け抜けてしまいたい。

 俺は気合いを入れて、足を強く前に踏み出した。

 

 

 ◆

 

 

 人のいない道を走る。

 先程までいた若干細い林の道とは違い、合流した道は崖沿いだが広くて移動しやすいため走りやすい。

 はっはっはっ……と、息を吐くように口が動く。

 

 

「この体の持ち主っ……相当鍛えてんのかなっ……!

 体も軽いしっ……凄く走りやすい……!」

 

 

 片手剣やピッケル、アイテムポーチの肉焼き機や背中の釣竿と、結構な荷物を持って移動しているが、俺はまだ一度も荷物や体が重いとも(・・・・)疲れたとも(・・・・・)感じる(・・・)ことは無かった(・・・・・・・)

 右腕に取り付けている片手剣の小盾などで、重心に偏りがあり余計に筋肉を使うはずなのに、だ。

 

 

 なんならさらにスピードを上げて走れそうで、この体の持ち主が相当鍛え上げているんだろうと考える。

 元いた世界の体をはっきりと思い出せはしないけど、こんなに鍛えられた肉体では無いはず。

 

 とはいえハンターなら、周りの全員がこれ以上の体力と力を持っている可能性があるのが怖い。

 こんなに鍛えられた身体をしていても、元の体の持ち主がハンターランクは1だったからな。

 ……改めてと考えると、やっぱ化け物だわハンター。

 

 

「海沿いのランニングっぽくてっ……気分が良いぜっ……!」

 

 

 若干、ランニングハイになりながらつぶやく。

 視界の左側には綺麗な海が輝いていて、そこから吹いた潮風が走って熱くなった体を冷やしてくれて気持ちいい。

 

 

「あっという間にっ……到着だっ……!」

 

 

 だんだん楽しくなってきてスピードが上がっていたのか、すぐにフィールドに辿り着くことができた。

 これだけ走ったのに、息1つ切れていないとは……食後の運動くらい軽いの消耗しかしていない。

 ふぅ……と、ゆっくりと息を落ち着かせながら歩く。

 

 

「……道のど真ん中に、城砦の門みたいなのがあるって中々見ないよな」

 

 

 視界の先に、木材で作られた大きな門が見える。その門の上部には2組の骨のアーチと2本の旗が靡いている。

 この門はモンスターなどの侵入を防ぐ為のものだ。

 門の左右は大きな岩が構えていて、天然の門壁と化している。

 

 門の上には同じくらいの大きさの落とし格子が持ち上がっている。門の近くの杭に括られたロープがピンと張られており、これを外せばあの上の格子が落下して、門が封鎖される設計になっている。

 

 

「この場所で……主人公達は助けられるんだっけ。

 "調査班リーダー"がこの落とし格子を使ってさ」

 

 

 これもゲームのムービーで見た事がある場所だった。

 思い返せば……そんなピンチの状態になった原因は、未来の"相棒"による最初のやらかしだったっけ。懐かしい。

 

 

「……今頃、主人公達はどこにいるのかね」

 

 

 ゲームでは主人公は"相棒"と一緒に、新大陸に着く目前に航海中の船から落ちてしまう。

 その後は、なんとか1匹のメルノスの脚にスリンガーを使ってぶら下がり空へ飛ぶが、しかし2人分の重さに耐えきれなかったメルノスが緩やかに落下、主人公達は見事に新大陸のどこかへと遭難することになる。

 

 

「それで主人公達は、遠くに見えてる岩山の頂上にある、〈星の船〉を目印にしてフィールドを進むんだよな」

 

 

 だが、その道中の最後に"相棒"がモンスターに襲われそうになる。そんな窮地を"総司令"の孫である、"調査班リーダー"が救うが、邪魔をされて凶暴化したモンスターに追いかけられてしまい、なんとか走ってこの門へと辿り着くんだ。

 

 

「そうそう、丁度あんな感じで…………って、は!?」

 

 

 呑気に話をしていたその矢先のこと。

 フィールドへ続く道の向こうから、2人分の人影がこちらへ勢いよく走ってきているのが俺の視界に映った。

 

 

 

 

 

恋愛要素は要りますか?(物語の結末が変化します)

  • いらない
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