気がつけばモブハンターになってた。   作:ドーモ。ギルドナイト=サン。

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9話

 

 

 ドスジャグラスの落とし物を回収し、フィールドへ向かう。

 

 門から続く道の先には、巨大な滝が岩肌をなぞって緩やかに流れているのが見える。遥か下には海へと続いている滝壺だろうか、大きな水溜りが広がっていた。

 

 この滝を通り抜けた先に見える光景こそが、俺が今日探索するフィールドにして、ゲームでの思い出がたくさん詰まった場所でもある。

 

 

「……ここが、新大陸の始まりにして一番大きなフィールド……〈古代樹の森〉か……!」

 

 

 〈古代樹の森〉。モンハン世界のフィールドの1つだ。

 そこは新大陸に流れる協力な生体エネルギーを潤沢に取り込み、異常な成長を遂げた古代樹達によって形成された場所であり、フィールドのあちこちにそれ自体が大木とも思えるほどの古代樹の根が張っている。

 

 また中央には古代樹の木々がうねり、絡み合う事で空へと伸びていき、巨大な大樹がそびえ立っているように見える。その大きさは、元の世界の城が小さく思えるほどだ。

 まあ、厳密に言えば古代樹なんて樹木は存在しないのだが、今はそれは置いておく。

 

 

「……とにかくデケェ! ……スゲェ!」

 

 

 つまり伝えたい事はこれだけだ。

 とにかくデカい。凄い。つまりは感動する。

 あまりにも広大で、圧倒的で、ファンタジー感満載のそのスケールを前に、俺の語彙量は子供レベルに低下していた。

 

 

 古代樹の森は、海に隣接しているにもかかわらず、土の中や風が含む塩分をものともせず木々が成長している。古代樹だけじゃ無く、様々な種類の植物もだ。

 そしてそんな自然豊かな場所には、同じく多種多様な生物達が暮らしており、その生態系ピラミッドは凄まじく大きく複雑である。

 

 

 下を見れば、目に見えるもので虫や魚。

 その上には小動物や鳥類。

 真ん中には、小型モンスターと呼ばれる、元の世界の豚や牛のような大きさの生物達。一部例外有り。ジャグラスはこの位置だ。

 さらに上が、中型モンスターと呼ばれる、元の世界の車のような大きさをした生物達。主に小型モンスターを捕食しており、ドスジャグラスはここに位置する。

 

 

 そして、先ほどのドスジャグラスですら他のモンスターに捕食対象として襲われることがある。

 それを行う頂点捕食者達が、大型モンスターというモンハン世界の生態系でトップに君臨する生物達だ。

 

 だが、そんな大型モンスターの種類も多種多様であり、生態系への影響力もピンキリだ。

 大型モンスターと一括りにしているものの、その中でさらに捕食者と被捕食者に分けられていく。

 弱肉強食。まさに魔物の巣窟と言えるだろう。

 

 

 そんな大型モンスターが蔓延るこの場所は、同時に自然の恩恵が溢れる場所でもある。

 

 古代樹の森でいえば、急成長した古代樹の根が地下深くにある鉱床を掘り上げているのか、森の中を歩くだけでも鉱石が採取可能だったりする。

 他にも希少な植物だったり、その環境に適応するべく特殊な進化をした虫や魚の素材が採れることだろう。

 

 

 また、フィールドの中で息絶えたモンスター達の死骸から採れる骨は、その激しく動く巨体を支えるためかとても頑丈であり、人類を含む多種多様な生物にとって重要な資源として扱われる。

 

 この骨も、元の世界にいた恐竜の骨とは全く別の性質であると俺は考えている。大型恐竜達の骨は中身が空洞に近く、軽いからこそ巨体を持ち上げて動けていたという説があるためだ。モンハン世界の骨の扱いを見るに、おそらく生物として根本から異なるのだろう。見た目は似ているけどな。

 

 

 そんな、自然の脅威であるモンスターと、自然の恩恵である鉱石や骨などの資源がたくさん集まる場所。

 モンハン世界ではそれを、フィールドと呼んでいる。

 

 

 ◆

 

 

 辺りを見渡しながら歩く。フィールドにはモンスターが生息する以上、常に周辺の確認を怠らず行動しなければならない。

 

 

「特に大型モンスターの警戒はな。なんせ〈導虫〉がいないんだから」

 

 

 そう……今の俺はスリンガーと同じく、探索で便利な〈導虫〉を持っていない。

〈導虫〉は元いた世界のホタルの様に、緑色の光を帯びた小さな虫達だ。こいつが特定の匂いや物質に反応する習性をアステラの調査団達が発見した事で、未開の地である新大陸の調査をより行いやすくしたとか。

 

 導虫がいれば、モンスターの痕跡に導虫が反応を示し、近くに大型モンスター達が居た事がわかるんだが……。

 

 

「居ないものはしょうがない……なんなら、導虫やスリンガーを手に入れるためにフィールドに来たわけだしな」

 

 

 フィールドの資源や、売れそうなアイテムをかき集めれば、装備が買えるようになる。その時に一緒にスリンガーや導虫を買えばいい。

 つまりはz(ゼニー)さえあれば、一気になんでも揃える事ができるわけだ。世の中z(ゼニー)ですよとは、誰が言った言葉だったか。

 

 

「頭の中の知識で、どこに何があるかは把握できてる。

 金欠とは今日でおさらばだ……!」

 

 

 気持ちだけは意気揚々と、視線は常に周りへ注意を向けながら、フィールドを進む。

 先ほどのドスジャグラスの一件が俺にトラウマを植え付けてしまったからだ……もうあんな目はこりごりだ。

 

 

 しばらくして、大きく開けた場所に出る。

 右には巨大な古代樹の根が、左には海岸沿いまで続くなだらかな坂が、真ん中には砂浜と植物が交互に混じった広場さらに奥は木々と大岩に囲まれた草場が広がっている。

 間違いなく、ここはゲームで見た〈エリア〉4だろう。

 

 

「おぉ……なんか、記憶の中の景色よりずっと広くて多きい気がするな。しかも光景が若干違う気がする……」

 

 

 この世界に地に足つけて見ているからか、ゲームで見たものと同じ景色のはずでも違って見える。

 実際に、この〈エリア〉4では、古代樹の森で唯一、海と面している場所があるのだが、その下までの距離が遥か遠くに感じてしまうのだ。

 しかも、記憶にある物よりずっと物体が多い。ゲームでは簡略化されて表示していたのだろうか。

 

 

「記憶の中のエリア4とはもはや別物になってるな……」

 

 

 早速、知識を活かしたチート計画に支障が出てきた。

 ちなみに〈エリア〉とは、フィールドを大まかに分けたものを指す。どこに何があるのか、モンスターの生息域はどの辺りなのかの説明を分かりやすくする、フィールドの調査をする上で非常に便利となる定義だ。

 

 

「本来ならここで釣りに行くつもりだったんだが、やっぱりいるよな〈ケストドン〉」

 

 

 このまま下に降りて海沿いに行けば、釣りスポットがあり、持って来た釣竿で魚を釣れるんだが、その近辺には〈ケストドン〉という小型モンスターが生息している。

 近づけば敵対してくる、今の俺には厄介な相手だ。

 

 

「本来なら、なんて事ない相手の筈だったんだが……」

 

 

 〈ケストドン〉は前の世界の恐竜、スティギモロクによく似たモンスターであり、群れを形成して自信の縄張り内で生活をする。

 

 注目すべきは性別によって違う身体的特徴だろう。

 メスは黄土色の体色をしており、小盾ほどの大きさの、バックラーの様に突き出た頭殻を持っている。

 

 オスはメスより更に一回りほど大きい。赤みがかった体色をしており、大盾と見紛う程の大きさをした、角ばって鋭利な頭殻を持つ。

 群れに近づく存在が現れた際には、その発達した頭殻と強靭な後ろ足によって勢いよく頭突きを行い、外敵を追い払う。

 

 

 ゲームでは今の装備でも簡単に狩れる獲物だが、今の俺に同じことをする勇気も自身も無い。

 本当は海岸沿いまで行って、ケストドンを狩って素材を剥ぎ取り、目当ての魚がいれば釣りをしようと考えていたが……潔く諦める事にした。

 

 

「安全第一に、なんてな」

 

 

 ……俺はどこか、モンスターに対して身を引いてしまう考え方をするようになった。

 モンハン世界に来たらこうしようと考えていた、装備を集めてハンターランクを上げる高速出世プランのほとんどが、今の俺にこなせるのか不安になってくる。

 

 

「それでも、動かないよりはマシだろ……!」

 

 

 臆病だとしても、俺の今後のハンター生活のために進まなくちゃならない。

 今だって、このまま時間が過ぎてしまえば日が暮れる。

 ランタンすら無い俺には、闇夜を歩き回って採取する自信なんてない。実質的なタイムリミットだ。

 

 

 俺は探索のプランを頭の中で練り直し、前にある木々と大岩が見える場所へ足を進める。

 向こう側には、いくつかの鉱石が採れる場所があるからだ。そこでは安全に素材が手に入る。

 装備を入手するまでは、モンスターとの戦闘は避けて活動しよう。

 

 

「採取ポイントまで距離があるな……走るか」

 

 

 日が暮れないように、俺は地面を蹴って走りだした。

 

 

 ◆

 

 

 エリア3へと向かう道中。

 陸地から海に飛び出た崖の上、その上にある鉱石の採取ポイントを目指し、俺は走っている。

 そして、走りながら考えている事がある。

 

 

「……なんか、向こうまでの距離が遠くないか?」

 

 

 どうやら、想像していたよりずっとフィールドは広いみたいで、エリアからエリアの移動距離もゲームとは比べ物にならないくらい開いている。

 ……こりゃ、帰りの移動時間を考えておかないとな。ゆっくりしすぎると日が暮れちまう。

 

 

「ようやく、エリア3に到着した……」

 

 

 ゲームでエリア3に存在していた、稲穂のように大きくて柔らかい草むらに辿り着いた俺は、すぐにしゃがんで身を隠す。草の葉が優しく肌に当たって少しくすぐったいが我慢だ。

 

 ゲームではこの辺りは大型モンスターの通る場所だ。迂闊に顔を上げて、見つかるなんて真似は避けたい。

 周囲を観察して、モンスターが近くにいないか調べる……気配はなさそうだ。

 

 難しいところだが……モンスターを警戒しすぎても時間がかかり過ぎる。

 今後はなるべく迅速かつ、モンスターとの接触を心配する必要が無い採取ルートを探す事にしよう。

 

 

「……ん、ってお前らな……」

 

 

 そんなことを考えていると、目の前に〈トウゲンチョウ〉と呼ばれるピンク色の体毛をした大型のオウムの様な鳥がピョンピョンと飛び跳ねて現れる。愛くるしい動きをして、俺の周囲をずっと移動している。

 

 

「ここの〈環境生物〉達……危機感なさすぎだろ」

 『……内と外………認識し合えない………あなたはいったい………?』

 

 辺りを見渡せば、大型モンスターの気配は無い。その影響か〈ニクイドリ〉という赤いトサカのついたカラスみたいな鳥も、落ち着いた様子で近くで何かを啄んでいる。

 

 ……この2羽は〈環境生物〉と呼ばれ、ゲームではハンターが近くに来ると即座に飛んで逃げてしまうのだが……この世界だと違うのだろうか。

 それとも、俺に敵対心がないと分かっての行動なのか……いや、可愛いし害を与えるつもりは無いけどさ。

 

 

「分からんが……動物見て癒されに来たわけでも無いしな。周囲にモンスターの気配も無いし、行こう」

 

 

 環境生物の生態について気にしている場合では無い。

 草むらから周りの安全を確認できたため、体を起こして、南側へと歩いて向かう。

 ここは日当たりが良く、崖上に位置するので遠くの地形を眺められる絶景スポットであり、なぜか大型モンスターがたまに休んでる場所だ。

 

 

「……あれ、鉱石が無い……」

 

 

 それでも比較的安全である崖上の鉱石の採取ポイントに来たのだが……しかし、ゲームだと青く輝いていた鉱石の採取ポイントがどこにも見当たらない。

 ゲームの記憶と同じ場所には、モンハンの他作品の採取ポイントのように、崖上の大岩に少しの亀裂が入ったものがあるだけだった。

 

 

「まさか……鉱石の採掘場所の見た目ってこの世界だと違うのか」

 

 

 俺は大岩の亀裂を覗き込むと、今暗い場所からキラッと光が反射したのが見えた。

 どうやら、この中に鉱石らしきものはあるようだ。

 

 ……確かに、鉱石が剥き出しだったら雨や潮風にやられたり、もうとっくに他の調査員が見つけて取ってるだろうしな。

 ゲームでは、採取ポイントを分かりやすく親切設計にしてたのかな。メタいがそうとしか考えられない。

 

 

「んじゃ見つけた事だし、早速ピッケルでカンカンしますかね……!」

 

 

 なんであれ、見つけられたならそれで良し。

 俺は腰にあるピッケルを1本取り出して、亀裂の中で光った場所に目掛けて大きく振りかぶる。

 

 

 ゴッ!

 

 

 ピッケルの先端がぶつかった瞬間、思ったよりも低い音が響き、腕にも重たい振動が伝わる。

 ……あれ、なんも亀裂から出てこないぞ。

 

 

「……ピッケルの振り方を間違えてるのかな」

 

 

 もう一度やってみよう。

 大きく振りかぶって、ピッケルを亀裂にぶつける。

 ……また同じ音と振動が伝わる。

 

 

「おいおい……嘘だろ。まさかもう採取済なのか」

 

 

 俺は、この場所から採れる鉱石がもう無い可能性を考える。このような亀裂が採取ポイントだったモンハン作品だと、規定回数採取したらその後はいくらピッケルで叩いても、何もありませんでしたと表示されていたからだ。

 

 

「いや、やっぱり中で何か光ってるんだよな……」

 

 

 亀裂の中の光は見えてはいる。全く鉱石が無いって訳では無いはずだ。

 どうにかならないかと懇願しながら、腕を力の限り振り続ける。

 

 

 ゴッ!ゴッ!ゴッ!……バキッ!

 

「……!やべっ!」

 

 

 思ったより力を込めすぎたのか、ピッケルの先端が亀裂に差し込まれ抜けなくなり、そのまま持ち手の部分が折れてしまった。

 ……俺の160zが、こんなにもあっさり消えるなんて。

 

 

「……諦めるにしても、どうにかこの先端は引き抜いておきたいな……再利用できるかもしれないし」

 

 

 俺は差し込まれた先端だけのピッケルの端を掴み、グラグラと上下に力を込めて動かす。

 ……すると、大岩の亀裂の1部に小さな亀裂が入った。

 

 

「おっ、そろそろ抜けるかも!」

 

 

 そのままグラグラとピッケルを動かしていると、だんだんと大きく動かせる様になり、遂にはボロッ!と音がなり、小さな亀裂が入った岩が割れてピッケルの先端と同時にこぼれ落ちた。

 

 

「おぉ!抜けてよかった……ん?」

 

 

 俺は先端が抜けたピッケルをポーチに閉まって、先ほど落ちた拳2個分ほどの岩に目を向ける。

 そこの岩の表面には、確かに太陽の光を反射する、小さな鉱石が含まれていたのだ。

 その岩を拾い上げ、見間違いじゃないことを確認する。

 

 

「これが鉱石素材……? なんか思ってたのと違うな?」

 

 

 てっきりキラキラとした鉱石の塊が手に入ると思っていたが、実際は岩に銀色に光る小石サイズの鉱石が所々付着しているだけだった。それでも元の世界よりは多いし大きいのだろうが、期待していたぶん現実はこんなものなのかと落胆してしまう。

 

 

「多分鉄鉱石かな……ていうか、それ以外は分からん」

 

 

 元の世界の鉱石……しかも精錬前のものなんて金とか銅とかの有名な物しか見たことないし、ましてやモンハン世界の鉱石なんて知るはずもない。

 俺が今手に持っているものも、銀色ってだけで鉄鉱石と決めてしまっているが、実際はなんなのか……。

 

 

「まぁ、でも何かの鉱石ってのは間違いないしな。

 ……何よりここでもちゃんと採掘出来たんだ。今は喜んでおこう」

 

 

 俺は何も手に入らないという悲劇を回避できたことに安心して、続けて発掘するために腰から2本目のピッケルを取り出す。

 再び亀裂の中の光に目掛けて、力強くピッケルを振る。

 

 

「……ふんっ!……はぁ!」

 

 コン! コン!

 

 

 今度はむやみやたらと振らずに小さく亀裂を広げて、そこそこの岩の塊を落とすイメージで叩く。

 まるで気分は炭鉱夫だな……いや、この言葉はモンハンでは気軽に使うもんじゃないか。

 その後は、一度目の経験が活きたのかあっさりと次の鉱石も手に入る事が出来た。

 

 

「っし!3個目っ!」

 

 

 成果は鉄鉱石らしきものを含んだ岩3つだった。

 不安だったが、ちゃんと採取できて良かった……!

 もう亀裂を覗いても光っている箇所は見えないし、場所を変えて次の採取ポイントに向かうとするかね。

 

 

恋愛要素は要りますか?(物語の結末が変化します)

  • いらない
  • いる
  • めっちゃいる(ハーレム)
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