たかが七年   作:モラハラ

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奇才vs天才

 

 

 

その日、大部屋に一年は全員集められた。

それと。特に呼ばれていないが高学年が何人かいた。

なぜ高学年がいるのかと言えば、応援兼野次馬である。

これから始まる見せ物を見に来たのだ。サボりのようなものだが黙認される。これから行うことのために、万が一があった時、すぐ動ける魔法使いは多い方がいいからだ。

壇上には呪文学の教師がいた。二十代後半の若手の男だったが、これがとても面白い実践型の授業をするので人気の名物教師だった。初めての場合、大抵はまず論理から説明するところだが、彼はまず好きな呪文を何でもいいからやってみろ。と、初回授業で言ったのである。

あまりに実践形式すぎて生徒達からはDADA(闇の魔術に対する防衛術)の教師に転向しろとの声もある。そこも含めて支持のある男だ。

しかし一年全員が一度に集められるのはこれが初で、大広間は高い声でいっぱいだった。

 

「静かに」

 

それもこの男の一言で一斉に静まり返る。

アシュフォード・トリスタン。現在のホグワーツで呪文学を担当する若き秀才である。

彼の言葉は鶴の一声だった。声を張らずとも、この男が話せば全員が彼の声に集中するという条件付けが、一年にして全員できていた。教師としてはこれ以上ない男であった。

 

「今日は決闘をしてもらう。決闘が何かは前回説明したな。簡単に言えば魔法使い同士の喧嘩だ。人間同士、言葉で解決できない時はこれが一番の解決法になることもある。本気の場合は死ぬこともあるが…今回は、あくまで模擬戦だ。杖を奪い合うくらいにしておけ。心配はいらん。暇な上級生も呼んでおいた。危険はない」

 

と、アシュフォードが堂々と言うと窓際に背中をもたれた上級生たちはクスクス笑った。

別に誰も呼ばれていない。だが、今日に限っては居てくれた方が都合がいいから、そういうことにしてくれているのだ。

 

「それで、アシュフォード先生、くれぐれも…」

「!これはこれはディペット校長」

「怪我人等、極力出さないよう…お願いしますよ」

「ええ、お約束します」

 

今し方気がつきましたよ、と言う態度でアシュフォードはニッコリと校長に微笑んだ。なにも危ないことはしませんよ、という態度である。

しかしディペットが去った瞬間、アシュフォードは表情を変えた。

 

「……校長行った?行ったか?よし、行ったな」

「行った行った」

「行ったよ。アッシュ」

「早くしろよ、トリスタン」

「お前離婚したってマジ?慰謝料っていくら払った?」

「略すな、ファーストネームで教師を気安く呼ぶな。あと最後のやつは許さんからな」

 

上級生はヤジを飛ばしてゲラゲラ笑った。誰もアシュフォードのことを怖がりなどしていない。

一年たちはそのやりとりにヒヤヒヤした。どう成長すればこんな恐ろしい先生に軽口を叩けるようになれるのだろう、と。

だが、この純粋な一年たちも、あと五年も経てばアシュフォードを気軽にアッシュと呼び、どうでもいいことで彼の研究室を訪ね、彼のお茶請けを勝手に食べて「マジで就活とかやってらんね〜どっか楽なとこ紹介してよアッシュ〜」などと言うようになる。

それに対してアッシュは「しばくぞ貴様ら」と言うだけで別に怒ったりはしない。相手はガキだし、真剣に怒るほどのことでもない。第一、自分が学生の時はもっとヤバいことをいくらでもやっていたので。そういう男なのだ。

 

「あ〜杖を奪い合うだけ、と言ったな。あれは嘘だ。忘れてくれ。そんな死んだ馬を叩くよりつまらんことは俺の授業ではお前たちにはさせん」

 

上級生は口角を上げて笑った。

この男が、そんなお遊戯みたいな決闘をさせるわけがないのである。

アシュフォードもニヤッと笑って大声で告げた。

 

「勝ち抜き戦だ。一度壇上に上がったら負けるまで降りることは許さん。死ぬこと以外はなんとでもしてやる。どんな呪文でも使え。勝ちを譲るな。いいか?負けは恥ではないが戦うことすらしないのは生涯の恥だ。よく覚えておけ。以上だ!さあ、誰でもいい、壇上に上がれ!」

 

大好き!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

一年たちの心は一つになった。

これだからこの男は支持があるのである。彼は破天荒だが、決して退屈な授業だけはやらない。ちなみにバツイチだが、それは関係ない話だろう。

 

まずはグリフィンドール所属の一年が壇上に上がった。すると当然、彼とライバル関係にあるスリザリンの男が上がる。

二人は互いにサッと礼をした。

 

「始め」

 

開戦が告げられる。

 

「エクスペリアームス!(武器よ去れ)」

「っ、インペディメンタ!(妨害せよ)」

 

呪文が発されたのはほぼ同時だった、だが技を繰り出す速度はグリフィンドール生の方が僅かに速かった。呪文はお互いに命中、しかし杖を落としたのはスリザリン生だ。

アシュフォードは審判として素早く勝敗を告げた。

 

「そこまで!ジャックの勝利だ。いい反応だった。フレディ!呪文の選択は悪くないが遅すぎる。次!」

 

ワッと大きな歓声が上がる。

次、敗退したスリザリン生徒の友人が敵討のような形で壇上に上がった。

二人は互いに見合う。

このジャックというグリフィンドール生は、先ほどモロに呪文に打たれていたが、既に回復していた。

使われた呪文、インペディメンタは、本来ならマトモにくらえば30秒ほど身動きがとれなくなる。だが、精度が高くなかった事と大量に分泌されているアドレナリンで、体には僅かな痺れがあったが、まだまだ万全である。それをチラリとアシュフォードは見ている。

 

「始め」

 

まずは礼。その次の瞬間には呪文が飛び交っている。

今度はさっきより白熱した。呪文は命中するが、精度がイマイチなのか杖を落とすには至らない。何度か攻防が続いた。途中、流れ弾の呪文が周囲に飛散したが、それはすべて教師と上級生が弾く。このため上級生がいると助かるのだ。

 

「あっ」

 

攻防の末、スリザリン生徒の手から杖が落ちた。

 

「そこまで!ジャック、よくやった、悪くない。グリフィンドールに5点!エドワード、技の精度は良かったが速度が悪い、もっと思い切っていい。スリザリン!この程度か?やられっぱなしだと私が出るぞ!一応スリザリン出身だからな」

「大人気なさすぎだろ」

「やってみろお前懲戒免職だから」

「スリザリンだけど恥ずかしいわ」

「黙れ!サボりだろお前たちは」

 

またグリフィンドールの生徒が勝った。歓声が上がる。スリザリン生は悔しげだった。

上級生たちはフウン、と言う顔をしながら一応試合を見ている。まあこんなもんだ。まだ一年も魔法を学んでいない子供の実力なんて。

だからこそ逆に危ないが、まあ大丈夫だろう。アッシュがいる。と、自分たちも5、6年前はそうだったので軽視はしないが重くも見ない。でも見ていた。当事者たちは真剣そのものなので。

しかし、ここでこの男が出てくる。

アシュフォードは彼が上がってくるのを見て、一瞬目を見開いたがすぐに口角を上げた。

歓声を割くように、トム・リドルが壇上に上がった。

シン、と歓声が鳴り止む。

彼はスリザリン生徒という枠を超えて、おそらく学年一優秀な生徒だ。それを周囲は分かっているため、固唾を飲んだのだ。相対するジャックも緊張した面持ちで彼を見ている。

 

「よし、トムか。礼!…始め」

 

空気がすでに変わっていた。

ジャックはトムを正面から捉えた。慢心などない。

 

「エクス…」

「シレンシオ(黙れ)」

 

お互い、頭を上げたか上げないかというタイミングでトムは呪文を放った。それは寸分の狂いもなく胸に命中する。ジャックはウッ、と言葉を詰まらせた。沈黙呪文である。

トムは薄く笑い、彼のやろうとしていたことをそのまま返した。

 

「エクスペリアームス。」

 

ジャックの手からあっけなく杖が落ちる。 喋れなくては、呪文を唱えることもできない。ジャックは何の抵抗もできなかった。

 

「そこまで!トム、子生意気なことを。だがよくやった!スリザリンに5点!」

 

あまりに一方的に終わった勝負に一年はポカンとしている。

それほどトムは簡単にジャックに勝ったのだ。

 

「ボサっとするな!次!」

 

アシュフォードの怒号で周囲は正気に戻った。どよめきが広がる。

トムはとんでもない強敵だった。

敵討とばかりにグリフィンドールからまた一人壇上に上がるが、すぐに敗退した。

そこからはトムの独壇場だった。

練度、速度ともに一年のものではない。呪文のいくつかの精度はともすれば上級生に匹敵した。

とっくに場は、グリフィンドール対スリザリンの構図で、トムがスリザリンを背負っていた。

四人続けてK.Oのあとは、ハッフルパフから特に勤勉な二人、出方を見ていたレイブンクローから3人続いた。

倒された人数が十を超えた頃から、トムはスリザリンという枠を超え、もう誰でもいいからこの男を倒せ、という風潮になっている。スリザリン生も数人、勝負にもならず倒されていた。

ここまで誰も、トムに一撃も食らわせることが出来ていない。

流石に面白くて、ウィルも真剣に試合を見ていた。

壇上の彼と一瞬目があった。来いよ、と言っていると思った。自分の中の何かにカッと火がついた。この場の雰囲気に乗せられたのかもしれなかった。

 

「ウィリアムか、いいぞ、礼!…始め」

 

気づけば壇上の上だった。

目の前にはあのトム・リドルがいる。

あれほど連戦をしたのに彼はまだ息を切らす気配すら見せていなかった。

 

お互いに形式通りのお辞儀をして杖を向け合う。

 

三、二、一。

 

「エクスペリアームス!」

「プロテゴ(護れ)」

 

トムの呪文をウィルが防いだ。

オオ、と声が上がる。初めてトムの初撃を退けた相手が現れたのだ。一瞬の静寂が辺りを包み、二人の視線が絡み合う。

 

次の瞬間、目にも止まらぬ猛攻が始まった。

凄まじい速度で光線が飛び交う。

素人では二人が何をしようとしてなんの呪文を放ったのかさえわからない程だったが、少し優秀な人間はトムの方がやや優勢だと気づいていた。

トムが繰り出した呪文をウィルが凌ぐその間にすでにトムは次の魔法を繰り出している。ただ速すぎて傍目には互角に見えた。

トムの呪文を放つ速度は異次元だった。防ぐのに手一杯で、ウィルはトムの半分も魔法を使えない。

現状、確かにトムが有利だった。

 

しかしさら一段優秀な一部の高学年と、教師たちは気づいていた。

ウィルの出力がまるで落ちていない。

たしかに威力はトムより一段下だ。繰り出す速度も上級生に匹敵したが、トムよりは遅い。

ただし精度では負けていない。それどころかトムを上回っている。が。それより奇妙なのはそのブレなさだった。

この場合のブレないというのは、術の威力に波がないことを指す。

魔法の精度は精神状態に大きく左右される。しかも戦闘中などもっともブレが出るだろうに。

しかしウィル・ウォーカーにブレはない。それがいかに難しいことか、戦い慣れた人間程、身に沁みてよく分かっていた。

本来なら無理。不可能な所業である。どれだけ戦い慣れた人間でも、戦闘の最中に一度もブレが発生しないなど無理な話だ。

しかし現にウィルはトムの猛攻を捌きながらまったくブレない、威力も精度も落ちない魔法をずっと放っている。

ウィリアム・ウォーカー、彼もまた、まごうことなき天才であった。

 

トムも困惑していた。

術の威力も放つペースも自分が上。間違いなく優勢なのは自分なのに。押しきれない。決まらない。魔法は弾かれ、合間に撃ってこられる始末。しかもその攻撃は恐ろしく正確なのだ。

トム側から見れば、ウィルが加減しているか、本気じゃない様に思えた。

は?ふざけるな。なんで本気じゃない。なぜだ。本気を出してくれ。僕はずっと全力なのに。

その感情の昂りがさらに魔力を高めていく。

 

一方のウィル。

彼はスッ飛んでくる猛攻を紙一重で捌きながら。ああ、天才ってこういうことか、と思っていた。

まず使える魔法の幅が異常だ。普通なら、とても一年足らずで習得できる量ではない。しかもトムは、それを十分な威力と連射速度で放ってくるという、彼の年齢を考えれば、もはや訳のわからないことをやっていた。

特に速度が厄介で、ウィルはこれに対応するのでギリギリである。

つまり。ウィルは全力である。ずっと本気だった。本気と書いてマジと読む。出し惜しみなどしていない。本気でトム・リドルに膝をつかせるつもりで戦っている。そうでなければとっくに負けていた。それほど、トムは魔法に関して天才なのである。

魔力の出力が一定なのは本人の癖だ。この男は感情では動かないので、従って魔力のコントロールも抜群にうまいのだ。

 

「イモビラス!(動くな)」

「プロテゴ…オブスキューロ!(目隠し)」

 

ウィルはトムの放った縛りの呪文を防ぐと、お返しの呪文を放った。だがそれも容易く弾かれる。

トムはチッ、と舌を打った。また防がれた。

 

「加減すんな!本気でこい!!!」

「してない!今話しかけんな!!!」

 

トムの一撃を防ぎながらウィルは怒鳴った。

技のあまりの威力に杖を持つ手がジン、と痺れる。トムの呪文は打つほど威力が上がっている。よく戦いの中で成長する、という表現があるが、まさにそれだ。一度放った呪文が、次にはさらに洗練されている。

どうしたら手加減しているように見えるのか。

最初の一発を防いだ時からトムの方が強いことは分かっている。

だが、この二人の怒鳴り合いに周囲はまだ本気じゃないのか、と前のめりになる。一人を除いて。

 

「コンファンド!(錯乱せよ)」

 

トムは錯乱の呪文を放った。これもさっきより威力が高い。

勘弁してくれ。天才がよ。

こっちはもう手一杯だ。お前が二手打つ間に一手打つのが限界だってのに。魔法の威力があまりに高いから、逸らすだけでも神経が削れる。なのにまだ上がるのか。天井知らずか。この天才が。

だがウィルの口角は上がる。

彼が本物の天才だと確信したのだ。

 

ウィルはトムを真っ直ぐに見た。彼の目が赤い。魔力が臨界点まで高まっているのだ。しかし、それはウィルもで、常はグレーの瞳は魔力によって白夜のようなシルバーに輝いていた。

お互い調子は最高潮。

トムはほとんど同時の速度で二発の呪文を飛ばした。ウィルは一発目を寸前で弾き、二発目が来る前に一発撃って二弾目を呪文で止める。それをトムは軽く弾いてまた放つ。上がった。クソしんどい。

それでも極限まで研ぎ澄まされた集中力で、ウィルはなんとか食らい付いていく。食らいつけているあたり、彼も化け物だった。

それを打ち破らんとトム・リドルは本気で牙を剥く。

天才と奇才が鎬を削る。

 

誰もが固唾を飲んで勝負を見ていた。

そしてついに決着はついた。

 

カラン。

 

杖が落ちた。

それらどちらのものか。

 

呆然とした顔のトムは何も持たない手を振り上げていた。

あ、負けたのか。

勝負を分けたのは、コンマ一秒のズレだった。彼の守りを押し切ろうと魔法を放つことに集中しすぎて、タイミングがズレた。僅かなズレだったが、少しずつのズレがいつのまにか致命的なズレになっていた。それでも本人すら自覚できない僅かなズレだった。しかしウィルはそのスキを見逃さなかった。

教室が静まり返っている。誰も何も言えなかった。

 

「そこまで!…勝者、ウィリアム・ウォーカー」

 

アシュフォードを除いて。

彼だけは場に飲まれていなかった。いつでも二人の決闘を止められるようにしていた。教師なので。

それほど、この二人の勝負は下手をすれば大事故になりかねない決闘だった。

どちらも怪我なく終わったことにアシュフォードはホッと息を吐く。

 

「…君の勝ちだ」

 

トムはそう言って杖を拾い上げると、静かに背を向けて壇上を降りていった。

 

それを皮切りに、爆発的な歓声が起こった。連戦連勝の男が、ついに敗れたからだ。ひとしきりの盛り上がりの後は、標的がウィルに移る。

続いてグリフィンドールの男が上がった。

スリザリンが調子のいい時、まず噛み付くのは、やはりグリフィンドールなのである。

ウィルはトムと白熱した決闘を行ったので、次はどうなる?と期待の目で見られていたが、なんと次はアッサリと負けた。ウィルはトムとの激戦で魔力と集中力をほぼ使い切っていたのだ。

周囲から笑いと歓声が上がる。ウィルは気まずそうな顔をしながらも笑って壇上から降りた。もうその目はいつものグレーだった。

 

「マグレだったんじゃない?」

「だね〜」

 

そんな声もあった。

トムは馬鹿が、と歯軋りをした。

マグレなわけがない、というのはトムが何より知っていた。

 

「お疲れ、敗北者」

「君もな」

 

ウィルをオーソンが出迎えた。

オーソンもトムに負けた者の一人だ。

 

「すぐ負けやがって」

「なんだよ、オース。君だってトムに即負けだったじゃないか」

「おう二秒くらいで負けたわ。アイツ、マジで天才なのな」

「…戦って分かったけど、彼は天才だよ。本当に」

 

ウィルはしみじみ言った。そこに悔しさはなかった。ただの賞賛しかなかった。

 

「でもお前勝ったじゃん」

「彼はそもそも連戦で疲れてたんだよ。俺と戦う前に何度も戦っていた」

「いやー、ないも等しい決闘だったぜ?全員秒殺だったわ。お前以外」

「次は負けるよ」

「いや、勝てよ」

 

「やるじゃん、一年坊」

 

ウィルとオーソンは後ろを振り返った。

見ると、そこには二人の上級生がいた。

一人は、絹のようなブロンドの貴族的な容姿と軽薄な声が特徴な、とにかく容姿と中身がチグハグな男。

レイブンクロー6年監督生、ギル・イーノック。

もう一人は、どこで酒を買っても絶対に年確をされない顔立ちとガタイを持つツーブロマンバンの男。路地裏に立っているだけでジャンキーにプッシャーだと思われるほど雰囲気がカタギではないが名家出身。

グリフィンドール5年生、グレン・ホリングハースト。

ちなみに喧嘩っ早いのはギルの方で、年下のグレンがストッパーである。

 

「決闘クラブって知ってる?」

「知らないです」

「入んない?」

「いや、結構です」

「お試し期間もあるよ?やんない?」

「大丈夫です」

「先輩。」

「やろう。君向いてるよ。あ、さっき戦ってた子も一緒にやろうよ」

「いや…」

「イーノック先輩。」

「てか、やれ。先輩命令」

「えっと…」

「先輩、マジいい加減にして下さい。」

「うるさいグレン。今真剣なんだ」

 

ギルはようやくグレンに話した。

 

「一年生に詰め寄らないでください。ウチの部の元々ない名誉が無くなりますから」

「じゃあマイナス×マイナスでプラスになるからいいじゃないか」

「まったくよくない」

 

グレンはなんとかギルを押しのけてウィルの前に出た。そうするまでには「どいたどいた」「やめろ私は先輩だぞ!」「先輩らしくしてから言え」と、大変揉めたが体格はグレンの圧勝なのでギルは普通にどかされた。

 

「ごめんね、君。ウチの先輩ほんと人の話聞かなくて。あとでよく言い聞かしとくから」

「いえ…大丈夫です…」

「退けグレン、私が話す」

「本当にごめんね。でも、試合すごかったよ。よかったら見学だけでもおいで。いつも金曜に五階の階段上がったところから三つ目の部屋でやってるから」

「はい」

「退け〜〜ッッッ!!!」

「うるさい戦闘狂。戻るぞ、俺らデカくて邪魔だから」

 

ギルはグレンに引っ張っていかれた。

嵐のような人だった。

 

「おつかれ」

「いや…ほんとにそう」

「で、どうすんの?」

「行かないかな」

「でもあの先輩、お前が来るまでスリザリン寮の前で一生喚いてそうだぜ?」

「…来週顔だけ出すか」

「そうしとけ」

 

まあ、そんなことウチの先輩方が容認するはずもないとオーソンは分かっていたがその方が面白そうなので黙っておいた。彼らも悪い人ではないし。多分。

 

なお、この決闘大会。

最後はアシュフォードが本当に壇上に上がり、上級生が彼と本気の決闘をした。

相当いい勝負であったが、ギリギリなんとかアシュフォードが勝ち、彼は満面の笑顔で「馬鹿め、百年早いわ。若造どもが」と言って授業をしめた。

 

 

 

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