俺の姉はプロデューサーってやつらしい   作:ナスの煮浸し

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これがおもしれー女ってやつ?

 

 

 

 

「ふぅ……。それで、プロデューサーの弟が、なんでここに?」

 

 おお、さっきまでの言い争いが無かったかの様に話し始めた。まあ言い争いっていうか、月村さんが一方的になんか言ってたけど……。こういう切り替えできる人って凄いよなぁ

 

「えっと、さっきもう渡したけど。忘れ物を届けに来たんだ」

 

「へぇ……。プロデューサーも忘れ物とかするんですね」

 

「私も人間ですから。そういう時もあります」

 

「ん? いやいや、あんた昔から忘れ物酷かっただろ」

 

「ちょ、空君……!」

 

「ふ〜ん……?」

 

 月村さんは、何か面白いものを見つけたと言わんばかりに、こちらを数秒見詰めてきた。なんなんだろうか? 

 

「えーっと。何か?」

 

「ねぇ、プロデューサーのそういう話、まだあるの?」

 

「えっと。そういう話、っていうのは?」

 

「昔の話とか、そういうの。この人、自分のことはあんまり話したがらないから」

 

「月村さん!? い、いや。弟にも予定とか色々あるでしょうし……!」

 

「どうなの?」

 

「いや、今日は特に……。暇だったから来たんで」

 

「そんな馬鹿な……」

 

「じゃあ問題ないね。じゃ、早速行くよ」

 

「え? 行くってどこに?」

 

「食堂。私レッスン終わりでお腹空いたし。ほら、行くよ」

 

「わっ、ちょ。そんな急に押されても……」

 

「ふ、2人とも! 少し待ってください!」

 

 俺が月村さんに背中を押されながら歩いていれば、そんな声が後ろから聞こえて来たが、月村さんはそんなの聞こえないと言った様子で俺の背中をグイグイと押してくる。

 

 忘れ物を届けるついでで、様子を見て帰ろうとしただけなんだが……。なんか変なことになってきたな。

 

 というか……。仕事だとあんな感じなのか、あの人。なんというか、意外……ではあったな。俺の前とじゃ違いすぎるし。あんな真剣な顔、あの時くらいしか……

 

「着いたよ、食堂。……どうしたの?」

 

「ん? あ、いや。なんでもない」

 

「そう? ならいいけど。ほら、入って」

 

「ちょ、だから押さないでくれって……」

 

 なんでさっきからこんなに背中押してくるんだよ。そんなにあの人の話気になるのか? ……いやまあ、あの姉だけしか知らないなら、無理はないか? 

 

 自分の知らない側面。それが気になるっていうのは、分かる。俺もそうだからここまで来たわけだし。

 

「私、トンカツ定食。あなたは? 食べないの?」

 

 流れる様に注文カウンターの前まで来て、慣れた様に注文をしている。いや、そんな『なんでこいつ黙ってるんだ? 早く頼めよ』みたいな目を向けてくるな。知らないから、何があるのかとか

 

「いや。そもそも何があるのかも知らないし」

 

「あそこにメニュー表あるけど。ちょっと周り見えなさすぎじゃない? 気をつけなよ」

 

「あんたに押されるがままに来たから見えなかったんだけどなぁ……? というか、俺もここ使って良いのか? 一応部外者なわけだけど」

 

「ここに入ってこれたってことは、許可は貰ってるんでしょ? なら大丈夫。……多分」

 

「おい、分かってないんじゃないか」

 

「はぁ……。細かいこと気にするんだね。めんどくさい」

 

「なんだこいつ……」

 

 最初はクールな印象だったのに、蓋を開けてみればなんだ、こいつ。俺って初対面だよな? それでこの対応。中々出来ることじゃないぞ。寧ろ凄いな。絶対やめた方がいいけど。

 

 アイドルって、普段の発言とかも結構大事なんだろ? 今のこいつの感じを見るに、普段からこんな感じみたいだし……。大丈夫なのか? ああ、いや。大丈夫じゃないからあの人が疲れてたのか。なるほど、納得だ。

 

「何? さっきからジロジロ見て……。そういうの、失礼だからやめた方がいいよ」

 

「いやまあ、それは悪かったが。あんたが失礼を語るか」

 

 なんだろ、確かに女性をジロジロ見るのは良くないことだったとは思うが、こいつに注意されるのはなんか嫌だな。

 

 因みに、俺はラーメンを頼んだ。最近食べてなかったから、なんとなく食べたくなって。……さっきからめちゃくちゃこっち、正確にはラーメンを見てくるやつも居る。なんだこいつ、食べたいなら頼めば良かったのに。

 

 向かい合う様に席に座り、いただきます。そう言ってからラーメンに箸をつける。

 

 キレのある醤油スープに、ツルツルの中細麺。オーソドックスな味だが、それがまた美味い。こういうのは、シンプルな味だからこそ、誤魔化しが効かない。ここまでのクオリティのラーメンを学食で出せるのは凄いことだろう。

 

 私立ってすげぇな。こんな所まで力を入れてるのか。まあ、人間食が良いものだと心の健康に繋がる。アイドルっていう職業の関係上、そういった所にまで気を配っているのだろうか。

 

 ……で。

 

「さっきからずっと見てきてるけど、何?」

 

「え、い、いや。見てないけど?」

 

「いや、無理があるだろ。俺がこれ受け取った時から見てきてたし」

 

 そう言いながら、食べかけのラーメンを指差す。すると、面白い様に目線は俺のラーメンへと吸い寄せられていく。やっぱ食いたいんじゃねぇか。

 

「……食べる?」

 

「は? 食べかけを渡すとかありえないから。別に食べたい訳じゃないし」

 

「なんだこいつ……」

 

 明らかに食いたそうにしてるのに……。まあいいや。確かにあんま食いかけを渡すってのも良くないことではある。そういうの、気にする人も居るだろうし。

 

「それで?」

 

「ん?」

 

「いや、俺をここまで連れてきた要件だよ」

 

「……あ」

 

 こいつ……。飯に集中して忘れてたな? どこまで食い意地張ってるんだ。いや、飯を大事にするのはいい事だが。それはそれとしてここまで連れてきたのに本題を忘れるってのも良くないと思う。

 

「まぁ、覚えてたけどね。そっちがご飯に集中してたから、気を使っただけだし。私に感謝してね?」

 

「へいへい。そりゃ有難いこって。……んで、何から話せばいい?」

 

「何から? そんなの、適当でいいよ」

 

「あのなぁ……。あの人の事をを話せって言ったって、一から全部とは行かないだろ。時間がかかりすぎる。そっちが気になることを聞かせた方が早い」

 

「ん……。それはそうかも。じゃあ、そうだね。……家での様子、とか?」

 

「そんなことが気になるのか?」

 

「うん」

 

「家での様子、ね。そうだな……。いつも寝っ転がってるな」

 

「え、そうなの?」

 

「ああ」

 

 というか、立って歩いている所をあまり見たことがない。いつもソファに寝っ転がってテレビを見てるか、漫画を読んだりしてるかだ。たまに普通に寝てる時もあるが、そういう時は流石に部屋で寝かせてる。

 

「なんか、意外かも」

 

「そうなんだ。俺からしたら、意外だと思われてる方が意外だけどな」

 

 こっちの印象としては、家でのやつが強いから、あれが普通だと思ってたし。でもまあ、外では取り繕えてるのか。それは安心した。流石に家ほど酷いとは思っていなかったが、それでも少しは心配だったからな。

 

「あとは、あれだ。すぐにくっ付いてくる」

 

「くっ付く?」

 

「うん。ハグとか、そういうの。あの人スキンシップ激しいんだよ。外国じゃないんだからさ」

 

「は、ハグ!?」

 

「え、うん」

 

 椅子に座ってたら後ろから抱きついてきたりとか、俺がソファで寝っ転がってたら、足に頭を乗っけてきて、そのまま一緒に寝たりとか。まあ、後者は枕代わりに使われてるだけだとは思うが。なんだったら、この前布団に入り込もうとしてきたからな。あれは流石にビックリした。

 

「へ、へぇ〜。プロデューサーって、家ではそんななんだ……。ふ〜ん……。わ、私も今度プロデューサーにやってみよっかな……。い、いや。流石に恥ずかしすぎるかも……」

 

「どうかした?」

 

「い、いや。なんでもない。他は?」

 

「他? う〜ん、そうだなぁ。……ああ、そういや、あの人酔っ払ってる時は結構担当アイドルのこととか話してるぞ」

 

「え、プロデューサーってお酒飲むの?」

 

「そりゃ飲むだろ。二十歳超えてんだから。なんか色々ストレスとか感じてんだろ」

 

「そ、そっか。それで、どんなこと言ってたの?」

 

「そうだなぁ〜。確か……」

 

「や、やっと見つけた!」

 

 俺がその話をしようとした時、食堂に入ってくる疲労困憊といった様子の女性。まあ、俺の姉なんだが。

 

「あ、姉さん」

 

「空君……。なんか、変なこととか、言っ……て、ないよね?」

 

「お、おう……。とりあえず落ち着こう」

 

「惜しかった。あと少しでプロデューサーの酔ってる時のことが聞けたのに」

 

「変なこと言おうとしてるじゃん!」

 

「メンゴ!」

 

 本人が来てしまったら、流石に話すことはできないだろう。姉の話はここまでだな。

 

「……ねぇ」

 

「うん?」

 

「そういえば、名前言ってなかったって思って。プロデューサーが言ってはいたけど。私、月村手毬」

 

「ああ。そういえば。じゃ、俺も一応。天音空だ。よろしく。まあ、といってもこれ以降会うことはないと思うが」

 

「え?」

 

「え?」

 

 俺がそう月村さんに言えば、いつの間にか息を整えていた姉から、そんな不思議そうな声が上がった。何かおかしなことを言っただろうか

 

「あれ、言ってなかったっけ? うちの家、今日から改修工事で、当分家入れないよ?」

 

「???????」

 

 初耳なんだが? そんなこと一回も聞いてないんだが?? え? どうすんの? 住む場所とか、飯とか。え??? 

 

「い、いや待ってくれ。じゃあ俺はどこに住むんだ? 流石に野宿は嫌だぞ?」

 

「ああ、そこは安心して。この学校寮制だから、私の部屋に二人で住もう」

 

「えぇ……。学校に許可は?」

 

「取ってあるよ」

 

 取ってあるのか……。まあ、ならいいだろ。

 

「はぁ。じゃあ後で荷物とか取りに行かないといけないな……」

 

「あ、確かに。どうする? この後取りに行く?」

 

「そっちの方が良さそうだな……。ああ、そういった訳で、もしかしたらまた会うかもしれない。その時はよろしく」

 

「え、あ、うん。よろしく?」

 

「では、月村さん。今後のレッスンの予定は、先程の打ち合わせ通りに。私たちは、1度ここで失礼します。また明日」

 

「は、はぁ。また明日……」

 

 その返事を聞き、手を振りながらその場を姉と共に去る。一先ず、家に荷物を取りに行かなくては……。

 

「調理器具とかはあるのか?」

 

「う〜ん。どうだったっけなぁ」

 

「なら、家から一応持っていった方がいいな。布団とかも無いだろうし」

 

「そうだねぇ。まあ、二人でならなんとか運べるでしょ」

 

「こういうのはもっと早くに言ってくれ……」

 

「メンゴ!」

 

「はぁ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……いや急展開すぎない!? え!? というかなんでそんなにすんなり受け止められるの!? これ私がおかしいのかな!?」

 

 

 

 

 

 





(注)これは月村が正しい

こんな感じで、なんとなく話させていきます


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