僕の前世はこれ以上もこれ以下もない、なんてことはない平凡な人生だった。
日本の近代社会に見られる核家族で、家族仲や友達付き合いも大変ではあるものの概ね良好であった。
地元の小学校、中学校、高校を出て、そのまま就職して社会人となり十幾年が過ぎた頃、自分の不注意で交通事故に遭い、おそらく即死だったと思う。
というのも、交通事故に遭った後の記憶がないからだ。
そして、今こうして前世を振り返ることになった要因は、正に目の前に広がる景色がそうさせるからだ。
今いるところは駅を出てすぐの大通りで、大通りに面している建物や遠くに見える建物もルネサンス様式の建築物のようだ。それらが至る所に建っていて、西欧風の町並みを作っている。
遠くには大きな木がある……うん?いや、ここから見てもあんなに大きく見えると、近くで見たらもっと大きくない?思った以上にデカいぞ…あれが麻帆良学園のシンボルともいわれている世界樹で間違いないよね。
でも、あんなに大きな木って前世にあったっけ?まあいいか!あんま深く考えんとこ。
それより、今回ここに来たのは確か、麻帆良学園男子中等部への入学案内が届いたからなんだけど、予定では僕が通うことになるところに担任の先生が案内してくれるはずだけど、どこにいるのだろうか。
そもそも、ここに通うきっかけになったのはテレビをふと見ていたら麻帆良学園について特集された番組があって、麻帆良学園に通う生徒の一日に密着したものを紹介していたからなんだよね。
朝の通学ラッシュ、学園内の学校施設や商業施設、授業風景など色々見ていくうちに通ってみたいな~って気持ちが湧いてきた。
それに、なんといっても学園全体で行われるという麻帆良祭。これがすごくて、園児から大学生、教師や学外からの来客で賑わう様子に惹かれたんだ。
あそこには色んな人がいる。きっと、僕と同じような特徴を持った子もいるに違いないと確信めいた予感がずっと胸の内から離れなかった。
そんなこんなで、物思いに耽っていると声がかかる。
「在間くんかな?」
声のした方に目をやると、そこにはショートヘアにジャージというスタイルの女性が立っていた。
案内してくれる予定の担任の先生の名前はたしか、二ノ宮先生だったはず。
「はい、そうです」
「まぁ、そうだよね。男の子だもんね!話は聞いているよね?」
「はい、二ノ宮先生ですよね?」
そう答えると、ジャージ姿の先生――二ノ宮先生は両手を腰に当てて大きく頷いた。
「そうそう!……よし、じゃあ早速行こうか」
僕は頷いて、その後ろ姿についていき、大通りを歩いていく。
すれ違う生徒たちはみんな、年齢層もバラバラで、小学校低学年くらいの子もいれば、すでに高校生かと思うような子もいた。制服も多様で、それぞれ違ったブレザーやセーラー服を着ているのが印象的だ。
――男子生徒は、まだひとりも見ていない。
「先生、ここって男子は少ないんですか?」
「…?うん、そうだね。まぁでも、近くに女子中等部があるからじゃないかな?」
それにしても、本当に女の子ばっかりだ。駅からここまで見渡す限りは男の姿はまるで見かけなかった。
そうこうしているうちに、教室に案内された。
「着いたよ。ここが、男子中等部の一年生教室」
先生が指差した先には、廊下の端にぽつんと存在する教室があった。他の教室とは雰囲気が違って、なんだかひっそりとしている。
プレートには確かにこう書かれていた。
"男子中等部 1年A組"
「えっと…A組ってことは、他にも同学年の生徒がいるんですか?」
「んー、いや。君だけかな。男子中等部の一年生は、いま在間くん一人なのよ。だから担任としては少し寂しいけど、君の専属サポートってことになるかな」
「……え?」
言葉がうまく出なかった。一学年に一人?でも、ここまで来る途中に男子生徒の姿はほぼ見かけなかったし、男子の入学条件は厳しかったりするのか……?
「まあまあ、慣れればなんてことないって。女子中等部との交流もあるし、誰とも喋らないなんて日はまずないから安心しなさい」
そう言いながら、二ノ宮先生は教室のドアを静かに開けた。
中は、机と椅子が1つだけ、教壇の前に陣取るように配置されていた。
「さ、ここが君の教室。これからよろしくね、在間くん」
先生の明るい声に背中を押され、僕は静かに一歩、教室の中へと足を踏み入れた。
ネギま二次創作が増えることを願って、初投稿です。