本編前に死ぬ4人家族の長男として転生した件について   作:バトクロス

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幼少期 天秤が壊された時
転生


『魔導大戦』、別名『暁の巫女』、一部のゲーマーの間で熱狂的な人気を誇る伝説的なターン性RPGである。

 

世界観は精霊と契約した人類と、その敵である魔人と魔物、そして人類に敵愾心を持っていないゼニスと呼ばれる魔物が主な勢力であり、人類はゼニスに対して融和を主張するハト派と殲滅を主張するタカ派に割れている。

 

ストーリーとしては平民の主人公クルスが『剣の精霊』と契約し、帝国のロスリック学園に入学して卒業までの3年間を描いたものだ。

平民で有りながら秘められた才能を覚醒させ、最後はハト派をまとめ上げて3年生の時に起こったタカ派のクーデターの鎮圧に貢献しゼニスとの融和を持ってエンディングを迎える。

 

RPG要素とは別に複数人のヒロインとの親密度を上げる恋愛ゲーとしての要素もあった。親密度を上げると経験値の取得効率が上昇するが、その点をガン無視してやっている人も多く見かけた。

 

 

 

「で、転生先がよりにもよって原作開始前に滅んだリディスブライト家かよ。」物心ついた時に最初に発した言葉がこれであった。

 

レイン・リディスブライト、俺が転生した少年は自分でも何故覚えているか分からない名前だけが作中に出て来るモブキャラだった。黒髪黒目の特段言うことの無い美少年なのだが、この世界の住民はみな顔立ちが整っているため余り目立たない。

 

転生前の自分は多少ゲームを嗜みはしたものの、勉学に励む一般的な大学生だった。ラノベの主人公の様に転生先の記憶を詳しく持っている訳では無い。何が言いたいか。

「ゲーム内での知識はある程度持っているけど、パンフレットとか買わないと原作前に滅んだ家の知識とか分かるわけないだろ!」原因の根本的な対処が不可能な為、このままだと破滅まっしぐらであることだ。

「幸い今はまだ4歳、後6年はある。原作だけの知識でも効率的な成長法は知っている。何とかやってみせる!」

俺はよちよち歩きながらそう宣言した。

 

 

 

「お父様、稽古を付けてください。強くなりたいのです。」

「無理だな。」

5歳になった頃(ゲームのお約束で一日や一年の定義は地球と同じだった。)、俺は父に剣と魔法の稽古を頼みすげなく断られた。

父、ウォルター・リディスブライト伯爵は疾風の精霊という中位精霊と契約した武闘派の貴族だった。過去に安全圏外遠征隊として活躍した経歴の通り、引き締まった身体と鋭い目つきをした白髪の男だ。

「その心意気は良し、だが剣は教えるにはまだ速い。それに魔法は母に教わった方が良いだろう。今はまだ本を読み、知識を付けろ。」

そう言われて自分は魔法に関する知識を付け始めた。最初に学ぶ事は精霊についてだった。

 

 

 

精霊には神格精霊、高位精霊、中位精霊、下位精霊、微精霊、汚染精霊、邪霊が存在する。

神格精霊は圧倒的な霊格をもち、人類安全圏を保証する結界を昔張った存在であり、今も尚結界を維持しつつけている。ゲーム内ではストーリーで眠っている姿が確認出来る。

その分身的存在が高位精霊であり、所謂王族や上位貴族の契約精霊である。他の精霊とは隔絶した差が有り、基本的に高位精霊には高位精霊で無ければ歯が立たない。基本的にヒロインやライバル、ボス等の契約精霊である。

中位精霊は一定以上の力を持つ精霊であり、基本的に中位から下位の貴族と契約しているが、稀に精霊から一般市民にアプローチをかけることもある。当初主人公が契約した剣の精霊は当初は中位精霊と見られていたが、実体は人類が発見していなかった大聖霊が弱体化したものであった。

下位精霊は戦闘職の一般市民が契約していることが多く、 微精霊は自然界に数多く存在する精霊であり基本的に意識や自我を持たない。

これから先の精霊は国が排除する対象の精霊である。

邪霊はその名の通り、精霊としての在り方が反転した存在で有り、基本的には魔人と同等の存在である。原作でもよく邪霊と契約した戦闘員が登場するが軒並みえげつない死に方をする。基本的にはバグの様なもので最初から邪霊として生まれる。絶対的な討伐対象である。

一番面倒くさいのは汚染精霊だ。呪いや外の汚染の影響を受けた存在であり、元の精霊としての格を超えた戦闘力を持つが、意思疎通が一部の人間を除いて極めて難しく多くの場合初対面は襲いかかってくる。また放置すると汚染が進行し疑似邪霊と化すため基本的に発見しだい初期段階で討伐する。ただし、安全圏外の遠征隊等と契約していた精霊が任務の影響で汚染された場合は可能な限りの安全性を確保した上で引き続き契約を続行する。原作では軍人上がりの味方の担任とラスボスが契約していた。因みに適合者には他の精霊とは比較にならないほど執着する。

 

 

 

「ここまでは分かった?」

「はい。お母様。」

5歳にしては異常に物わかりが良いわね……あの娘もそうだったから実はこれが普通なのかしら、そう首をかしげるのは今世の母、リリウム・リィデスブライト伯爵夫人である。元4家と呼ばれる公爵家の3女であり、遠征隊で活躍した彼女はその際にリディスブライト伯爵に命を救われた後、猛アタックして結婚にこぎ着けたバイタリティ溢れる才女だ。因みに契約精霊は焔の妖精という中位精霊だ。基本的に高位精霊は神格精霊一人につき四人程しか生まれないため、4家でも普通に末っ子辺りは中位精霊と契約するらしい。

「失礼します。」母が参考資料を取りに行こうとしたときにドアがノックされ、一人の少女が入ってきた。

「例の精霊についてですが……」話を続けようとして自分が居ることに気が付いた様だ。顔が緩み、自然と笑顔を浮かべながら近づいて来る。

「こんにちはレイン。勉強中?」

「はい、ケイセレンお姉様。」

ケイセレン・リディスブライト。リディスブライト家の長女であり自分の姉だ。8歳でありながら非常に賢く、また隠し事の多い不気味な少女だ。多少抜けている事も有るが、性格も良く、実力も同年代の中では突出している。そして黒髪黒目の美少女だ。

「お邪魔したみたいね。お母様との時間を奪ったりはしないよ。」

「そんなこと気にしないですよ!」

「はいはい。お母様、後ほどまた伺います。」

「分かったわ。21:00に書斎にいらっしゃい。」

 

 

彼女が出て行った後再び勉強を再開した俺は、ある程度の所まで学習を終えると布団に包まり眠りについた。例の精霊と言う単語が気になりながら。

ケイセレン・リディスブライト、またの名をルクス。暁の巫女と呼ばれたこのゲームのラスボス。レインはその事実を知らない。

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