本編前に死ぬ4人家族の長男として転生した件について   作:バトクロス

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剣と魔法と精霊

魔法を発動するためには体内の魔動脈に存在する魔力と体外の魔素を組み合わせて魔力の回路を作成する。魔動脈は生まれつき大きな差が有るものの魔力を使い続けることで鍛え上げる事が可能である。

 

6歳の誕生日、母は最低限の魔動脈が形成されたと言い、自分に魔法の練習をさせるようになった。

「魔法を使うとき普通はどうすると思う?」

「詠唱を行う事で簡単に魔力の回路を構築して発動します。」母の質問に答えると母は笑顔で他には?と聞いた。

「声に出さなくても魔力の構築が出来る人は無詠唱で魔法を発動できます。」そう答えると母は笑みを消して前を向き、見ていなさいと言った。自分は前方に向けられた母の掌に注目した。

 

「熱き炎よ、迅雷を纏い、風の導きに沿いて立ち塞がる全てを消し飛ばせ。」魔方陣が掌に浮かび、詠唱を用いて発動した一般中級魔法である『炎雷砲』は木々を焼き尽くしながら視界の果てに消えていった。

 

目を点にしていると「次は無詠唱で撃つ」という母の声が聞こえ直ぐさま視線を拳の前に戻した。

 

『』やはり魔方陣が浮かび炎雷砲が放たれた。明らかに先程よりも魔法の発生が速かった。

 

「やはり無詠唱の方が速いのですね!私は最終的には無詠唱での魔法の行使を目指して学習していくのですね。」自分がそう興奮しながら母に告げたが彼女は「まだ見ていなさい」と言った。

 

()()()」その砲撃は詠唱らしきものをしていたが、()()()()()()()()()()()()()()

 

「中級魔法以降は短縮詠唱がもっとも効率的です。レインにはこれを目指して貰う。」

 

 

 

その日から俺の脳と魔動脈は悲鳴を上げ続けた。

「初級魔法の詠唱が覚えられないの。分かったわ。風呂場に防水魔法をかけたの暗記シードを貼り付けておくことにします。」数百はある初級魔法の詠唱を覚えさせられた。覚えきれないと言ったら、詠唱をしなければ魔力回路の作成の感覚を掴めないと言われ次の日から訓練時間を倍増させられた。

 

「体が怠いと、分かりました。食事の栄養バランスを少し変えるよう使用人に伝えておきます。明日は様子見をして無理が無ければ調整をもう一度します。」あまりにも辛いため泣き言を言ったら次の日にはこれまでよりも更に栄養素が多い食事が出た。多少は楽になったと思ったら訓練の強度が更に上がった。

 

「魔動脈が一部切れたようですね、安心して。命に別条はありません。急激に負荷をかけすぎましたね。」怪我をしても直ぐさま母が治し練習を再開させられた。

一度何故ここまで痛めつけるのですと聞いたら「ケイセレンは泣き言を言わなかったから……」と言われ、もう何も言えなかった。

 

唯一の救いはたまに姉が間食を持って来ることだ。その時に母が休憩の時間をとり、姉の料理を食べる時間が与えられる。姉には休憩時、母を独り占めして悪いと謝っているがその度に「気にしないで」と言ってくるので尚更申し訳なくなる。

本当に大学生の頃の自分と比較しても人としてよく出来た姉だ。ただ自分の前では聡明で物静かな彼女だが、以前はこのような訓練を泣き言を言わずに受けていた事を知り少し怖いとは思った。

 

母は少しずつ、口調が変わって行った。父にその事を伝えると少し考えてこう言った。「遠征隊の時の口調に戻ってきているのだろう。」と。

どうやら6才児の教育法に過去の軍隊式学習法が少しずつ浸食して行っているようだ。

 

 

 

「今日から稽古を付ける。」自分が8歳になったときに父からそう言われた。その当時は一般初級魔法は詠唱による発動はマスターし、『身体強化』や『炎雷砲』等の一般中級魔法の詠唱発動と一般初級魔法の無詠唱発動を練習していた。

父は領地の経営が忙しく早朝しか訓練は出来なかった。

最初の一月は体力を付けるためのトレーニングが行われた。元々魔法の練習を行っていたため多色体力が有り、比較的楽だった。

次の半年は剣の型を習った。最初は非常に苦戦したものの、身体強化をかけて素振りを行うと見違えるほどやりやすくなった。父はたまに振り方を矯正する以外は何も言わなかった。その時はぶっちゃけ魔法の連発でガス欠になったり魔動脈が破裂したりした事に比べれば余裕と調子に乗っていた。

実戦形式の模擬戦になった時にその驕りは粉砕された。

 

 

 

「今日から実戦形式の模擬戦だ。戦い方を身に付けて貰う。」目の前に立つ父がそう言った。

「何故ですか?」「リリウムから魔法の進捗を聞いてな。戦闘理論の基礎を学び終え、更に初級魔法が無詠唱発動で行えるようになったと。」

「分かりました。」話の展開は理解したものの1つ気になることが有った。

「しかし何故お姉様が隣にいらっしゃるのですか?」「ああ、今日はケイセレンと模擬戦をして貰おうと思い連れてきた。安心してくれ契約精霊の使用は無しと伝えてある。」

「……ケイセレンお姉様はもう精霊と契約されてたのですか?」

「ああ、だが他人には言うな。」急展開に驚きつつも前に出て来た彼女と同時に剣を構える。

「試合開始!」

 

 

 

「魔素よ、体内を還流し、変質し、我が身を強化せよ!」、『身体強化』を発動しながら横っ跳びして姉が発動した一般初級魔法『風刃』を避ける。

姉はこの模擬戦では全て初級魔法のみで戦うよう指示されていた。高性能汎用防御魔法の『結界』や戦闘ではほぼ必須の『身体強化』も使えない。

『』『』お返しに無詠唱で『視界保護』を発動後即座に『発光』を発動しながら剣を持って飛び込む。原作では初めの頃はよく使われたコンボだ。

『』一瞬動きが鈍った姉に向けて『硬化』で強度をあげた剣で咄嗟に撃つであろう初級魔法『防壁』ごと叩き割ろうとする。『防壁』は初級魔法でほぼ唯一の防御魔法であるが、簡単に割れるため確実に攻撃が当たる。

 

「『』温いですね。」

予想とは裏腹に自分の剣は魔法も使わずにいつの間にか構えられた剣に()()()()()()()()()()()

 

「防壁を強要させ、『』守りごと砕く作戦は良かったですが」目が見えてい筈なのに受け流された事に衝撃を受け、直後顎を打ち据えられた。

 

「身体強化を抜けるように打撃を工夫しましたが……抜けられませんか」体制を崩しながらも『身体強化』の力でこれ以上の反撃が来る前に無理やり後ろに飛んで、いつの間にか有った()()()()()()()()()()()()()()

「やはり経験が足りません。剣以外の近接戦闘は未熟のようですね。」

受け身をしながら立ち上がると目の前に剣を振り上げている姉が見え、振り下ろされた剣に対して咄嗟に剣をぶつけ鍔迫り合いに持ち込み腕の力で無理やり剣を振り払う。

そのまま間合いを仕切り直すため、中級魔法を放った。

「風よ、収束し、無数の刃となりて、眼前の敵を切り払え!」無詠唱は出来ずとも自分の知る限り最速で中級魔法『旋風連刃』が直ぐさま追いつこうとする姉に向かうのを確認しながら更なる詠唱を行う。

「荒れ狂う流水よ、大地を巻き込み押し流せ!」(自分が発動出来る中級魔法で間違いなく一番強い。これで動きを鈍らせて切り札を叩き込む!)

「悪くない。『』下級魔法を連打する事を選択しなかったのは、『』お母様の学習の成果が身についている。」襲いかかる風の刃を初級魔法の『風刃』で一部相殺され、速度を落としつつ弾幕を抜けられるも想定内。坂道の上で(()()()()()()()())一般中級魔法『破砕流』を発動した。

坂の上から発射された荒れ狂う水が地面ごと姉がいたであろう場所を飲み込み、押し流す。

(これお姉様は生きているのだろうか。)今更ながらやり過ぎでは無いかと心配していると

 

()()()()()()()()()()()()()()『』」

 

背筋が凍った。咄嗟に振り向くのと光り輝く拳が顎に激突するのは同時だった。初級魔法『魔拳』を纏った拳は『身体強化』を貫通して自分の脳を揺らし、そのまま目の前が真っ暗になった。

 

 

 

「ッツ!」目が覚めると俺はベッドの中に居た。

「気が付いた?さっきはごめんなさい。」ベットの側の椅子に座っていた姉が近づいてくる。

「お父様から怒られてね……初戦でやり過ぎだって。」戦闘を思い出し思わず苦笑いしてしまう自分とは対照的に姉は申し訳なさそうに言葉を続けた。

「これからは私が訓練の相手になるわ。お父様からは『教えた基礎は最低限身についている。後は経験が必要だ。』とのことです。」

姉はそこで言葉を区切り窓に目を向けた。まるで外に何か在るように。

「レイン、貴男は何故そこまで強くなろうとしているの。」問われた言葉は予期せぬものだった。

「明確な理由が私には有った。求められ、それに答えるためには強くなる必要が有った……理由も無しにそこまで鍛える事は多分不可能だと思う。」

彼女は再び自分に顔を向けて言った。

「一体貴方は何に追われているのですか?何を恐れているのですか?それだけは答えてください。」

 

 

 

口の中が渇いていた。彼女の瞳がはぐらかすことは許さないと伝えていた。多分嘘をついてもバレない。けど多分()()()()()()()。俺は明らかに向けられる視線が2つ有ることに気が付いていた。多分姉の精霊だと思う。無言の圧力に対して俺は真実の一部を話すことに決めた。

「私はずっと悪夢を見ています。家族が全員何者かによって惨殺される夢を。起きた頃には殆ど忘れており詳しいことは分かりません。勿論ただの悪夢だと思います。だけど、万が一夢と同じ出来事が起きた際結末を変えられるように強くなりたい。そう思って訓練をしています。」

 

 

 

理由を伝えた後、姉は「分かった。」と言い、自分の部屋から出て行った。疲れた自分は再び目を閉じ眠りについた。

 

 

 

「……どう考えますか?お父様。」

「難しいな、普通に考えるのなら単なる悪夢だが……精霊の予言の可能性も有る。リリウムはどう考える。」

「私と貴男ならそう簡単に負けることは無いとは思うけど……とりあえずもう一度鍛え直す事にしませんか?」「そうだな。そうしようか。」




遠雷砲……中級魔法。原作では単体に高ダメージを与え、確率で痺れと火傷を付与する。中盤以降でよく使われる。
身体強化……中級魔法。単純な身体能力だけで無く、思考速度、反射神経、動体視力も向上する。戦闘では真っ先に発動するべき魔法。原作では攻撃力防御力回避率が向上する壊れ技。序盤で入手出来るかが鍵。
結界……中級魔法。全方位に魔法で構成された障壁を張る。一般的によく使われる防御魔法。原作ではダメージカットを数ターン味方単体に与える。
風刃……初級魔法。風で出来た刃を飛ばす。だいたいカマイタチ。原作では序盤から使えるものの、消費mpが少ない以外強みは無い。
視界保護……初級魔法。強い光や暗闇、更には幻覚から眼を保護する。原作では何方かと言うと戦闘以外で使われるが、一応一定時間急所率と回避率が上がる。
発光……初級魔法。発光して眼を潰す。原作では亡霊には効果抜群だが、それ以外にはダメージが通らない。ただし、確率で次の攻撃の急所率が大幅に上がる。
硬化……初級魔法。物体の硬度を上げる。原作では何方かと言うと防具に対するエンチャントとして利用された。
防壁……初級魔法。劣化結界。一方向にしか防壁を張れず、強度も大したことない。原作では序盤は結界を入手するまで使われる。
旋風連刃……中級魔法。風刃の上位魔法。大量に風刃を飛ばす。原作では燃費の良い全体攻撃としてたまに使われる。
破砕流……中級魔法。土石流を起こす。その性質上、坂の上で発動する事が推奨される。原作では実質イベント技。
魔拳……初級魔法。拳に魔力を纏い、打撃を行う。原作では序盤以外ほぼ使わない。


レイン・リディスブライト……実は3歳頃までの記憶が、4歳で転生の記憶を思い出した影響で薄れてしまっている。現在LV15、同年代と比べるとだいぶ強い。
ケイセレン・リディスブライト……現在LV40。これは一般下位貴族の強さに迫る力量を持ち契約精霊を召喚した場合LV70程度まで上がる。これは中位貴族が契約精霊を召喚した場合の強さとほぼ同等である。基本的に契約精霊を召喚した場合の戦闘力は下位精霊ならLV+10、一般中位精霊なら+20、一部の極まった中位精霊と高位精霊は+30程の上がり幅である。
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