本編前に死ぬ4人家族の長男として転生した件について   作:バトクロス

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この世界の貴族は主に安全圏の内層に住む貴族と、外層に住む貴族に大きく別れており、外層の貴族の土地は定期的に結界のほつれによる大規模汚染と魔物や魔人の侵略に脅かされています。
そのため貴族間の繋がりが強く、貴族としての地位が違っていたり、場所が遠く離れていても独特の仲間意識が有ります。特にテレシスとウォルターは学生時代からの親友であり、リリウムとテレシスは兄弟の為、他の貴族よりも更に繋がりが深いです。
ただケイセレンが7歳、ルクスが4歳の時に起きたあるトラブルと貴族間のパワーバランスが原因で前回まで暫く会っていませんでした。


試練の魔宮 絶

転送門を潜った自分達は直ぐさま父とテレシス閣下が待っている本邸に向かった。

「お帰りなさいませ。」本邸に着くと一人のメイドさんが自分達を出迎えた。

「お食事の用意が出来ております。」メイドさんについて行くと途中で一人の女性に会った。母とは違う美人だったが、少し体調が悪そうだった。

「お帰りなさい。ラスティ、シディアス。久しぶりですね、リリウム、ケイセレン。この子は弟さん?」

「こちらこそ久しぶりです、メーテリス様。その通り、この子はレイン」どうやら二人は旧知の仲の様であった。

「初めまして、レインと申します。メーテリス様はラスティさん達のお母様ですか。」

「そうよ。付け加えるならリリウムの学生時代の師匠だったことくらいね。」

とりあえず後で話しましょう。そう言われ自分達はメイドさんの案内に従い、父達が居る部屋にに向かった。

 

 

 

「そうか、サンドワームか……外れだな。」食事が終わり、迷宮の報告をすると父は難しい顔で呟いた。

「外れとは何故でしょうか?」

「あのモンスターは完全に攻略がパターン化されているからな。下級汚染精霊辺りが良かったと思っただけだ。」ラスティが尋ねるとテレシス閣下がそう応えた。確かに言われてみれば『炎流激』を発動した後は一方的な戦いになっていた。

「お父様は昼に何をされていたのですか?」

「ん?……あぁ、テレシスと色々と話をしていた。」

とりあえずこれからの事を交渉して、一月に1回程魔宮を使わせていただける事になったと言う父に「単純にお互いの子供の成長が見たいからな。とは言え次は手土産を持って来いよ。」とテレシス閣下が口を挟む。

どうやら定期的に使わせていただける様で、非常にありがたいと思った。

その後風呂に入り、予め用意していただいた客室で自分達は眠りについた。

 

 

 

 

 

 

「遠征隊仕込みの睡眠方を使ったのは久しぶりだな。」

「意外だな。仕事が忙しい時に使ったりはしないのか?」「メーテリスに怒られた。」「成る程。」

家族が寝静まった夜。テレシスとウォルターの二人は武装して試練の魔宮の前に居た。

「で、この事は話したか?」「リリウムにはした。子供達にはしていない。」

付いてくると言いかねないからな、と言うウォルターを見ながらテレシスは口を開く。

「本音は?」「お前と二人きりの方が試練の強度が高くなる。」その答にテレシスは満足そうに頷き、二人は詠唱を開始した。

「『炎奏の精霊よ、我が身を依り代とし顕現せよ。汝の名はプロメテウス!』」

「『疾風の精霊よ、我が身を依り代とし顕現せよ。汝の名はシルフィード!』」

 

 

 

試練の魔宮。その内部の敵性存在は内部に居る人間のスペックに対応する強さを誇る。魔宮の内部は昼と比べ物にならないほどの地獄絵図と化していた。

「『炎環葬裂香角』!」短縮詠唱により高速で放たれた上級魔法『炎葬波』が魔物の群団を飲み込むも躰の一部を焦がしながらアルマジロ型の魔物『メイスシュレッダー』が炎を突破し、高速で突撃してくる。

「俺が前に出る。後ろを!」

「分かった!」

現在前後から挟み撃ちにされている常態であるものの、二人に狼狽の色は見受けられない。

「シルフィード、上方から来ている『ブラッドレス』を抑えろ!『延刀』『接続』『粒子よ、結合し、単一となり、その他全てと反発せよ!』」

高速で飛翔する血吸い蝙蝠達を精霊に任せ、刀身が伸びた剣を構えながらウォルターが前に出る。猛烈な勢いで転がってくる『メイスシュレッダー』に対し、ギリギリで回避しつつすれ違いざまに一閃。上級魔法をも耐えた甲皮ごとあっさり両断され崩れ落ちる。()()()()絶刀永断(エターナルリーパー)』、彼が発明したこの魔法はエンチャントする事で発見されている最硬の物質をも切り裂けるようになる。結界等の魔法防御に対しては弱いものの物理相手には無類の強さを誇る。

「『風束刃』!」続け様に剣で『アサルトホーネット』8匹の首を切り、短縮詠唱で発動した『旋風連刃』で『ロックビースト』が撃ち出した岩石弾ごと本体を輪切りにする。

上空から襲いかかる『ブラッドレス』は『シルフィード』が作り出した擬似的な真空状態によって全滅していた。そのまま圧倒的な身体能力を駆使し、怯んで動きが鈍くなった魔物達を八つ裂きにし始めた。

 

 

 

「『炎環葬裂香角』!」「『零蒼氷陣散華』!」「『閃影凶陰破光』!」触れたものを灰にする火炎流、凍てつかせる蒼き波動、蒸発させる閃光。尋常ではない魔力が込められた魔法がテレシスによって連発される。

接近しようとしていた魔法に耐性を持つはずの『オブシディアン』『スカルパラディン』が魔法によって消し飛ばされていった。僅かな詠唱の隙も精霊の砲撃でカバーし、上級魔法による弾幕で魔物達を滅ぼし続け、普通ならとっくに息切れしているであろう攻撃を放ちながら彼は涼しい顔をしている。

ウォルターが近接戦闘でがメインの魔法剣士とすれば、テレシスは広範囲殲滅魔法を連発可能なマップ兵器だ。

本来この程度の挟み撃ちは彼一人で突破可能で有る。にも関わらず前方をウォルターに任せているのは彼が強くなりたいと言ったからだ。故に任せる。この程度ならウォルターは死なないとテレシスは理解している。

後方を全滅させ、前方を振り返るとウォルターが最後の汚染精霊を切り捨てる所だった。

 

 

 

 

 

 

「やはり少し弱くなったな。」「いや。お前は強いよ。」

声に悔しさを滲ませるウォルターをテレシスが励ます。実際彼が想像していたよりも弱体化幅は少なかった。

「それにしてもあの魔法はなんだ。」その理由である魔法について問いかける。

「特殊魔法だから秘匿するのも分かるが……あれは一般魔法を解析して出来た物とは到底思えない。それに中級魔法レベルの詠唱であの強さだ。」一般的に特殊魔法も詠唱の長さに出力は比例する。

「そうだな……手土産にこれの情報を軽く教えよう。」ウォルターがもう一度『絶刀永断(エターナルリーパー)』を発動する。

「この魔法のが目指したものはケイセレンが契約した精霊の特殊魔法だ。()()()()()()()()()。もっともデットコピーだが。」そう言いながら剣を近くにあった岩に軽く添えそのまま切り捨てる。

「凄いな……何所に欠点があるんだ?」「分かりやすい欠陥としては『結界』等の魔力障壁は貫通出来ないし、使い終わった後の武器は文字通り崩壊する。」

実際、一部の魔人や対人戦においてはなかなか辛い弱点ではある。

そのため成る程と納得しつつ、(でもお前は技量と強化した肉体だけで大抵の障壁は貫通出来るじゃないか。)内心笑っていた。

 

 

 

 

「ついたぞ」「その様だな。」

1時間後、二人はボス部屋の前に居た。「先に言っておくが、さっきの魔法は無しだ。実質即死魔法を使われたら鍛錬にならない。」「理解した。」

そう言葉を交わすと二人は扉を開き、中に入ると中央には小さな影が在った。

「『ソウルレス・ドラゴン』が二体か……」

禍々しい気配を纏う黒龍が頭を上げ、こちらに向き直った。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、ウォルターはそう呟き「ゴメンやっぱり使うよ。」とテレシスが動く前に走り出した。

 

 

 

龍が空を飛ぶ前に接近し、反射的に放たれたブレスを回避して『刀身拡張』と『絶刀永断(エターナルリーパー)』を発動しそのまま2体とも両断したウォルターを見てテレシスは思わず冷や汗をかいた。




特殊魔法……一般魔法の仕組みを解析して一般魔法は改良され、生み出され続ける。しかし特殊魔法は2種類存在し、その何方もその枠組みから外れている。『然創特殊魔法』は魔人や精霊が使う固有の魔法であり所謂理論不明の魔法。基本的に一般魔法とは比べ物にならない出力が有る。一方『論理特殊魔法』は一般魔法の根源を探究し、人の手で作り出されたものである。分かりやすく例えると10を11にするのが一般魔法の発明で、10からiを見つけ出しそこから発展させるのが『論理特殊魔法』である。因みに大貴族の中でも研究者気質な家とそうで無い家が有る。更に余談だが、論理特殊魔法の研究を行っているのは主にタカ派である。

ヴァルクロス公爵家……テレシス、リリウムには三人の姉が居た。最初の二人は幼少期から病弱で成人する前に亡くなった。もう一人の姉は無事に成人し、今はヘリオス公爵家に嫁いでいる。5人兄弟だったが非常に仲が良かった。
テレシス・ヴァルクロス……性格は高潔で傲慢。交友関係は何方かというと狭く深い。ヴァルクロス公爵家の現当主。現在LV90。炎奏の精霊と契約している。契約精霊を召喚すると実質的にLV120相当の実力が有る。原作ではクーデター派の双璧の一人にして原作最強の一角。分かりやすく言うと主人公が契約精霊との召喚をしてもだいたいLV100程度しか無く、最強の味方ユニットであるハト派の公爵の当主でもLv115相当。
メーテリス・ヴァルクロス……シディアスとラスティの母。子供が二人しか居ないのは母体が不安定だったから。周囲からの再婚しろという圧力をテレシスははね除け、ずっと妻を愛していた。原作では既に故人。

炎奏の精霊 プロメテウス……人類生存圏に存在する最古の炎属性精霊の分体。ヴァルクロス家を代々守護する高位精霊の一体である鳥型の精霊。
精霊……人類と友好的な存在。一度死んでも魔素に還り、やがて転生する。様々な姿形を持つ彼等は格が上がれば上がるほど、知能は発達し、魔力の扱いに長けた存在となる。しかし彼等は環境の影響を受けやすく、契約精霊でも無ければ人間よりも遥かに汚染に弱い。

ウォルター・リディスブライト……冷静沈着。交友関係は立地の都合上狭く深い。LV75。契約精霊召還後は約LV100。意図的に鍛える事を避けていたものの、遠征隊所属時からはそこまでスペックは落ちず、更には『絶刀永断』を開発しているため大型の存在に対しての戦闘能力は寧ろ上昇している。
DLC一章『天秤が壊されたとき』の主人公。
絶刀永断……対物理特攻魔法。仕組みとしては魔法をかけた対象物の粒子を圧縮、結合し、擬似的な単分子に変化させ、更にその際発生した余剰魔力を外部への斥力として発散させている。魔法を解除した場合はエンチャント対象は結合を維持できず崩壊する。
疾風の精霊 シルフィード……ウォルターの契約精霊。伯爵家が代々受け継いだ精霊は彼の兄が遠征時に死亡した際に消滅しており、現在ではこの精霊が家を守護する役目を負っている。人型だが、輪郭が不鮮明である。
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