本編前に死ぬ4人家族の長男として転生した件について   作:バトクロス

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テスト期間でした。遅れて本当に申し訳ない……


崩壊の魔人VS切断の使い手達

朝食をとっている最中、それは唐突に鳴り響いた。空気が震える重低音、それは明らかに異常な音であり、その何者かがやってきた事を表していた。

 

「そうか……今日がその日だったのか。」父はナイフを置くと、「三分後に玄関前に完全装備で集合しろ」と言い、自室に向かった。

自分達も部屋に戻り、魔法耐性が付与されたバトルクロスに着替え、剣と邪魔にならない程度のポーションを装備して玄関に集合した。

「……向かうぞ」

先に到着していた両親と共に音の鳴る方へ向かった。

 

 

 

 

向かった先、草木が生い茂る山が有ったはずの場所にはただ細かい粒子が舞うだけの平地となっていた。その中心には影がそのまま形を纏ったような、漆黒の龍人が鎮座していた。

「まだこちらには気が付いて居ないわね」

母がそう呟くと素早く詠唱し、『身体強化』を発動した。それに続いて自分達も『身体強化』を発動し、同時に精霊を召喚した。

父が疾風の精霊シルフィードを、母が炎骸の精霊フレアスポーンを、自分が風葬の精霊を召喚するなか、最後に姉が精霊を召喚した。

「『切断と結合の精霊よ、我が身を依り代とし顕現せよ。汝の名はリジン!』『融合(ユニゾン)』」

明らかに見覚えのある姿の精霊を。

 

 

 

 

汚染精霊『リジン』。理神やら利刃やら当て字が考えられてきたがその正体は不明。もともと中位精霊としては破格の強さを持っていた野良精霊が汚染された存在。ラスボスである暁の巫女と契約しており、原作では文字通り最強。固有能力として切断と結合を司る。

黒いローブに隠された躰からは鋭利な長い爪を持つ数多の細長い腕がはえており、翼は合計8枚。顔は無くただフードからはただ深淵が覗くのみ。

タカ派もしくは革命派の切り札にして主人公達を除いて接敵した()()()()()()()()()()()()()()()殺戮兵器。

 

 

 

そんな化け物が目の前に現れた。

「お姉様が……暁の巫女?」背筋が凍った。思わず口から零れ落ちた言葉は誰の耳にも入らずに空へ溶けていく。融合したケイセレンは黒い翼を纏い、背中から複数の手が生えている見覚えのある姿をしていた。即ちラスボスの第一形態である。

リディスブライト家は全滅したはずじゃ、いや死体は確認されなかった。でもお姉様と主人公の年代は違う……いやそうか成長の阻害!邪霊や悪魔に乗っ取られた存在は成長速度が減衰する。どうする?原作だと最大の不確定要素にして最大の障壁。badendを回避するなら直ぐにでも殺した方が良い……けど自分の姉なんだ……どうする?何とかして死んで貰うか?

 

 

 

「どうしたレイン。」

父の言葉も耳に入らない状態で、朧気だった原作の記憶を引っ張り出し高速で思考を回転させ始めようとした矢先、一筋の斬光と光り輝く無数の槍、そして岩石弾と火炎流が龍人に放たれた。

接近する魔力と風切り音に気が付いた魔人が振り向き、()()()()()()()()()

 

 

 

崩壊の魔人、彼は生まれながらただ只管に本能が教える目的にそって動き続けていた。人を殺せ、精霊を殺せと言う本能に。

崩壊の魔術を司る彼はほぼ全ての物理、魔法を分解し消滅させる力により、久しく外敵からもたらされる痛みと言うものを忘れていた。

そして今、崩壊による防壁を貫通して直撃した槍と斬撃波によって久方ぶりの()()と無視できない損傷を経験した彼は

 

全身全霊を持って、攻撃してきた存在を葬る事に決めた。

 

 

目の前の戦闘の事を忘れ、この先の展開を考えようとしている自分にとって、魔人の咆哮と共に放たれた魔術に対応する事は至難の業だった。

咄嗟に展開した結界を無色透明の()()()が文字通り()()()()()()()自身に迫る。

 

「馬鹿かお前は!」

 

その言葉が聞こえた瞬間、自分は横から来た()()()()()()()()()近くの木をへし折りながら魔術を強引に回避させられた。受け身を取りながら飛び起きると目の前にはシルフィードが居た。

 

『パートナーからの連絡だ。お前では力不足。応援を呼べとのこと。』それだけ言うと彼?は直ぐさま父の方向に向かった。

 

(先程の風は彼?のか)

先程の突風がシルフィードによる物だったと遅ればせながら理解し、内心感謝をしつつ要請通りに応援を求めるため、全力で戦場から撤退し始めた。

(とりあえずまだお姉様はラスボスの第二形態ではないから様子見しよう。そもそもヴァルクロス公爵家だって想像よりは穏やかだ。バタフライエフェクトを期待するべきだ、だが……これから自分は何方に付けば良いんだ。……とりあえず結界に重大な損傷が発生した都合上アルフレート公爵も来ているはず。テレシス閣下に応援を求めた後、念のため応援を求めよう。)

 

 

 

 

 

そんな迂闊なレインを余所に、戦場は瞬く間に激化の一途を辿っていた。

 

 

「『炎環葬裂香角』」

「『零蒼氷陣散華』」

『!』

爆ぜる咆哮と共に繰り出された『崩壊』の奔流と、リリウムとウォルターの放つ火炎流と氷結の波動が交差する。接触した瞬間、魔人の放った崩壊が空間を裂き、二人の魔法『炎葬波』と『蒼楔陣』は魔素の塵となって分解された。

術式ごと空間から消し飛ばされる。そこに在った座標がまるごと抉り取られたような、完全な崩壊。

そのまま直進する『崩壊』によって地面がえぐられ、粉塵が巻き上がる中、次々と飛来する火炎、岩弾、風刃といった魔術の乱流。しかしそれらもまた魔人が薄く纏う『崩壊』による絶対防壁に阻まれ、触れた瞬間に微粒子へと分解されていく。その特異な性質を認識しても二人は揺るがない。

 

「やはりあの魔法、いや魔術……どうやら()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()性質を持つようです。通常の魔法では恐らくダメージを通すためにはあの魔人が持つ魔力を全て枯渇させる程の物量か、放射熱を利用して崩壊の内側に対して間接的なダメージを与える位かと。何方も現実的ではありません。」

「だか『切断』と『絶刀永断(エターナルリーパー)』は効く。恐らく『切断』は、その()()()()()()、『絶刀永断(エターナルリーパー)』は魔法が分解されても、付与対象が一瞬だけ()()()()()()を保ち続ける仕様ゆえ……その僅かな時間差が原因で攻撃が通っているのだろう。」

 

一般的な魔法や物理攻撃に対する特攻を持つも、自分達に切れる札はある。絶望するほどでは無い。分析さえ行えば後は冷静に対処するだけだ。そう思い、彼らは再び機動戦を再開した。

 

 

二人から意識をそらした魔人が自分をこの場所に縛り付けていたケイセレン相手に腕を振るう。次の瞬間その爪が空を裂いたかと思うと、その軌跡から()()()が発生した。揺らぎの進行上にあった木々が、岩が、一瞬で存在ごと削除されるように消え失せる。

 

迫り来る崩壊の波動に対しケイセレンは抜刀の構えをとり一閃。纏わせた『切断』の力が、揺らぎの波を空間ごと断ち切った。

そのまま魔人に斬撃波が迫るもあっさりと右へ回避され、そのまま魔人は崩壊の弾丸を連射。粉塵に紛れながら高速で動き、ケイセレンの視界から消え失せた。

 

訪れる不気味な沈黙。

 

ケイセレンは即座に感知を広げ、警戒しつつ跳躍した。

その直後、地面が震える。

 

「っ……来る!」

 

無色透明の波動が地中から放たれる。回避してもなお無差別に放たれる砲撃は、あたり一帯の森を一瞬で灰燼に変えた。

 

「……これは、まずいな。『融合(ユニゾン)』!」

遠方にいたウォルターとリリウムにもその破壊の奔流が迫る。二人は精霊と融合し、空中へと退避を強いられた。

 

 

「痛っッッァア!」

ケイセレンから迸る様な悲鳴が上がった。放たれる揺らぎの端が遂に触れ、ケイセレンの右脚の側面はえぐり取られたように消失したのだ。

「回復しろ!」そう言いながら高速で飛翔してきたウォルターとリリウムが砲撃のヘイトを買う。

 

矛先が切り替わった『崩壊』をよそに一度難を逃れたケイセレンは回復を試みる。

「ハァハァ、『回生連創流聖白』」「

崩壊に接触した部分を再生しようと上級魔法『回生聖光』を使用した。白い聖なる光が傷を再生しようとするが回復しない。

「やはり、無理ですか。しかたありません『結聖氷安護練』」

完全に壊死した体には効果がなく、仕方なく上級魔法『氷結保存』により応急処置をする事にした。蒼き流水が傷口に巻き付きそのまま凍り付いた。

臨時の応急処置を施したケイセレンは、翼をはためかせそのまま戦線に復帰した。

 

 

上空においてリディスブライト一家は防戦一方だった。

「地中に籠もられると対応が難しいですね……発射地点の予測だけでは、手が届きません。」

苦々しく呟きながら必死で砲撃を回避し続けるケイセレン。

だが、その声に、リリウムが静かに応じた。

 

「……私なら、やれます。秘術なのであまり見せたくはないですけれど。」

そう言うと、彼女は瞼を閉じ、詠唱を開始する。

 

「紅き太陽よ、偽りの姿を宿し降臨せよ。捧げるは一人と一柱の魔の全て。」

 

空気が震える。莫大な魔力が収束し、小さな火球が形成された。

 

「雲が消え、大地が燃え、海が干上がる。」

 

その火球はリリウムの肌を焼きながら出力を上げ

 

「今ここに、終末の星が降る。」

 

火球が地上へと落とされた瞬間――大地が裂け、地表が貫かれ、灼熱の地獄が広がった。

 

論理特殊魔法『星光劣華《サンブレイク》』。ヴァルクロス公爵家に代々伝わる『攻性火砲《アサルトフレア》』を精霊との鍛錬の後に変質させた魔法。

代償は重く、発動前の自傷、制御不能な魔力充填が起こる。だが、その一撃は地表から魔人をあぶり出すのには十分な熱量だった。

 

灼熱の奔流にあぶり出され、魔人が地表を砕いて飛び出す。しかしその瞬間、リリウムは魔力の余波に耐えきれず、防壁を張ったまま気を失い、地表へと落下した。

 

それを構うことなくケイセレンとウォルターが空へ舞う。

リジンと融合し、羽を広げて飛翔するケイセレン。シルフィードと同調し、風を纏い舞うウォルター。

魔人がその二人に向かって飛びかかり、空中戦が始まった。

 

ケイセレンはぎこちない軌道で必死に応戦する。一方で、空を知るウォルターは軽やかに滑空し、空中の支配権を徐々に掌握していく。

 

ケイセレンの放つ斬撃波に魔人が意識を向けた瞬間にウォルターが仕掛けた。

「『岩縛槍』『接続』『粒子よ、結合し、単一となり、その他全てと反発せよ!』」

 

無数の岩槍が虚空から生成され、魔人へと突撃する。それは、さきほど魔人を貫いたものと同じ性質。

 

魔人は反撃を断念し、緊急回避に転じるが遅い。『崩壊』をも貫通した岩槍が翼を穿ち、魔人がよろめく。

 

切断と『絶刀永断(エターナルリーパー)』、その差異は多岐に渡る。

切断には貫通性能、構造の特性で劣り、更には魔力防壁に対して無力と言う欠陥を持つ『絶刀永断(エターナルリーパー)』。その魔法の強みは、接続魔法『チェイン』による無限の拡張性にこそある。

 

「今だケイセレン!!」

 

魔人が全方位に砲撃を放つ。だが、機動力を失ったその体で行う砲撃は余りにも隙が大きかった。

 

何とか砲撃を掻い潜ったケイセレンが『切断』を纏い、全霊を込めて剣を振り抜いた。

放たれた斬撃波が次々と発射される空間の()()()を切り裂き

 

魔人の体を、正面から真っ二つに両断した。




星光劣華……論理特殊魔法。ヴァルクロス公爵家に代々伝わる『攻性火砲』を精霊との鍛錬の後に変質させた魔法。
最大の特徴はその出力。精霊との融合後に全残存魔力と引き換えに高位精霊との融合後に放つ上級魔法を凌駕する火力を誇る。原作ではシディアス・ヴァルクロス、ラスティ・ヴァルクロスが『攻性火砲』を使う。
回生聖光……上級魔法。肉体を再生させる。上限としては精々手首から先が吹き飛んでも作り直す程度。だが短縮詠唱でこれを連発される事を考えるとこれでも破格の性能。欠点は魔力消費量が膨大な事。
氷結保存……上級魔法。再生では無く状態の悪化を防ぎ、鎮痛効果をもたらす魔法。


原作との相違点。ケイセレンとウォルターが大幅に強化。それにより感知範囲外からの先制攻撃に成功。レインを応援に向かわせることで戦闘における邪魔者を排除。
これらの変化により、全員五体満足かつ、ケイセレンの魂接合無しでの討伐に成功しました。

崩壊の魔人……LV100の魔人(尚体力敏捷性本体の防御力についてのスペックである。)。基礎スペックでは上が居るがそんなものどうでも良くなるような魔術を扱う。基本的に高位の魔人はそれなりの知性を持つが、この魔人は持たない。
恐らく知能を高める要因も含めて、全て崩壊させたのだろう。
崩壊……崩壊の魔人が扱う魔術。ある程度の形状の自由性を持つ。触れた存在を最小単位まで分解する。魔法なら魔素、もしくは魔粒子に、物質なら単原子にまで分解する。この魔法を貫通可能なのは絶刀永断と切断のみのため、基本的に無敵の矛にして無敵の盾。ただし超広範囲の空気を全て抜いて窒息させたり、超高温の物質から発せられる熱を彼の崩壊の膜の内側の皮膚に放射熱として照射したり、非現実的ではあるものの攻略法自体はある。
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