本編前に死ぬ4人家族の長男として転生した件について 作:バトクロス
自分がテレシス閣下に応援を頼み、その後最速で結界の貫通を察知して向かって居るであろうレギンレイヴ・アルフレート公爵を探していると、遥か彼方の地面から真っ赤な光が発せられた。
その事象を気にしつつも下方に数十人の明らかに強そうな部隊が居るのを発見した。恐らく結界に大規模なトラブルが発生した際に国から送られる特殊部隊だろう。
(何故動かないのだろう。)
そう思いつつ集団に向かった。
(……礼儀作法どうしよう。テレシス閣下の様に必要最低限の説明だけでは駄目だよね。)
結論から言えば部隊長には会えず、伝達係に状況を教えるだけになった。自分の前から走り去って数分後、援軍として動く事になったと伝えられた。
若い伝達係は苦笑しながら「君みたいな若者には漠然としか分からないと思うけど……色々と複雑なんだよ」と言われた。
「部隊長……見殺しにはされないのですね」「仮に奴らが五体満足で結界を突破した魔人を殺していた場合、普通に責任を追求されるだろう。かと言って小僧を殺すのは流石にな……」「今までで幾多もの外層貴族を見殺しにしてたではありませんか。」「仮に追求されかけても揉み消せるのならそうしたさ。だが今回は少々難しいのでな。……元の配置に戻れ」
「父上、援軍を連れてきました!魔人はどうなっ……」
焼け焦げた穴だらけの大地の上で、まるで子供がゴミを撒き散らした様な有様の静かになった戦場の中で、自分は家族を見つけた。
喜びながら状況を説明しようとした自分の口は凍結した。
汗だくになりながらも五体満足の父、最初に目に入ったのは頭痛をこらえているのか頭を抑えながら立つ母、そして木に寄りかかりながら目を瞑る片脚が
それは戦闘が終わり、森の外れに落下したリリウムを迎えに行き、合流した時だった。『氷結保存』で保存していた片脚が突如として崩れ始めた。
「!?ッツ……」ケイセレンは過剰な痛覚の反応に対し、絶叫するまも無く即座に意識を落とした。同時に
「何が起きている!?」倒れ伏したケイセレンにすぐさま二人がかけより回復魔法をかけながら状況を観察するが……
「これは……分解が広がっている?このまま分解が広がれば……」
「回復魔法が効かない!」
少しづつ足が消えていくなかウォルターは歯を食いしばりリリウムに向かって口を開く
「
「明らかにあの魔術の影響だ、恐らくその残りカスがケイセレンの体を蝕んでいる。恐らく当たった部分を切り離すしか無い!」
剣を構え、そう言いながらその手を振り下ろそうとすると
「……!」
首筋に刃が突きつけられた。振り向くと消えた筈のリジンが虚空から出現し、無数の刃を突き付けている。
その物言わぬ存在は、されど確実に殺意を向けていた。
「リジン、私は彼女に害意を持って剣を向けているのではない。すまないがこうするしか無いんだ。だから手をおろせ!」
ウォルターが説得しようとするも、リジンはウォルターに刃を突きつけたまま彼女の前に入る。
澄んだ音がした。
ウォルターが目を見開く中、リジンは再び掻き消え彼の視界には馬鹿みたいに綺麗な切断面を見せる切り取られた脚と
「いったい何が……」
ウォルターが困惑しているとケイセレンが目を開いた。
「……声が聞こえる、リジンの声が」
「何を言っている!」
ウォルターが顔を覗き込んでそう言うと、ケイセレンは頭を振って意識をハッキリさせた後こう伝えた。
「リジンは『代わりの脚が見つかるまで融合を応用して肩代わりしてやる、さっさと見つけろ』だってさ。」
「……これは一体どう言う事だ?」
自分の直ぐ後に到着したアルフレート公爵が重苦しく口を開く。「まさか魔人から逃げたのではあるまいな。」
その鋭い眼光を前に父はあっさりと
「倒しましたよ、真っ二つに。もし信用出来ないので有れば、そこら辺を探してみては如何でしょう、公爵閣下?」
と言いながら瓦礫の山を指す。
「ッチ、残存魔力から死体を探せ。万が一の事を踏まえ3人一組で6組作れ。」
舌打ちをしながら指示を出した後、再び父に向き直った。
「一応役割を遂行させて貰う。」
「分かっている、被害状況と敵のスペックだな。被害状況についてだが」
「それだけでは無い。」
父の話を遮り複数の隊員と同時に姉に剣を向けた。
「ただの汚染精霊と聞いていたがなんだそれは。明らかに
何を!と叫ぶ間もなく伝達者の人に口を押さえられる。(言いたい事は分かるけど、これも仕事なんだ。それに……流石に不敬罪案件だよ。)
妙に優しい伝達者の人に奇妙な感覚を抱きつつ(分かった。)と伝え口から手を離してもらう。
自分が何も出来ない中、話は熱を帯びていく。
「違う。これは融合の延長線上のものだ。彼女の自我を見ればそれは明らかだろう。」
「その魔力、中位とは思えん。人間の人格を模倣することも出来るであろう。」
「なら何故脚だけなんだ。娘は片脚を切断されていたから脚の代わりに融合しただけだ!」
父が必死に言葉を交わすも取り合わない。
「潔くその身柄を引き渡せ。」
「断る。」
そう言い放ちながら父は疲労が隠せない状態で、剣を引き抜く。一触即発の状態、そんななか
「これは一体なんの冗談だ?」
天から声が聞こえた。上を向くと火の粉を撒き散らしながらテレシス・ヴァルクロス公爵が降りてくる。
「久しぶりだな、アルフレート公爵。貴様何をしている。」
爵位が同格の外層貴族の主が降臨したのを見てアルフレートが顔を引き攣らせるなか、彼の部下が一斉に構えを解き敬礼をする。
(如何したの?)と伝達者に聞くと、(やっぱり公爵様だからね。伯爵の君のお父様とは対応が違うんだ。因みにさっき死体を探しに行かされた人の中には個人的に君のお父様とヴァルクロス公爵に恩が有る人もいるんだ。)
父から話を聞くと、テレシス閣下はアルフレート公爵に向き直った。
「大丈夫だろうが、そこまで心配なら私が保護観察しよう。例え彼女が暴れても私なら止められる。」
その発言に目を見開きアルフレート公爵は強烈な怒気を叩きつけた。
「誰が外層貴族如きを信用できるか!」
反対にテレシス閣下は目を細め、言葉を続けた。
「我々も同様の感情を抱いている……内層貴族など信用できるか。」
そう言うと少し目を瞑り、思考を巡らせた彼は再び口を開いた。
「ならばあの麒麟児に任せるのはどうだ?」
「えー……そんな面倒な仕事請け負いたく無いよ。」
「裁判所からも命令が来ている。残念ながら君に拒否権は無い、ユニカ・レーゼンベート伯爵。」
1週間後、家族総出でとある内層貴族の館を訪れた。出迎えた彼女を見て自分は驚いた。女性が当主だったからだ。
暗めの服を纏い、ゆるふわな雰囲気を醸し出す彼女に困惑していると、姉が何かを言った。
「何か言ったのかしら?お嬢ちゃん。」
笑顔でレーゼンベート伯爵から問われ、姉が口をもう一度開いた。
「仮にも危険人物と目される存在をただの一内層貴族に預けるのか?と疑問に思っていましたが……
そう言うと口を閉ざし、再び父が口を開く。
「面倒をかけてすまない。だが中立地帯、内層貴族とも外層貴族とも一定の距離を置く貴方にしか頼めないと判断した。」
頼むと父が頭を下げると彼女は姉を少し見て笑い、言った。
「報酬の変更を頼みたいわ。」
「……金では無く?」
「2年間の保護観察その代金はアルフレート公爵から頂いた分のお金で何とかなる。それよりも貴方達の論理特殊魔法を教えて?あと2年間何事も無いと早い段階で判断したとしても任期まで預からせて。」
絶句する父に対して、「あ、勿論魔法は悪用はしないし、外では基本的に使わない。ただ研究者として興味が有るの。後助手も欲しいし。」
「……まるで我々を疑って無いようだな。」
そう父が言うと、彼女はにっこり笑ってこう言った。
「外層貴族の中でも遠征隊のエリートだった貴方の方が実践経験の少ないあの人よりも信頼性が有ると考えただけ。」
結局父は取引をし、姉を預けた。静など馬車の中で父がポツリと言った。
「ケイセレンとは、暫く会えない。保護観察が終わったら直ぐに学園に行くことになる。」
遠くを見つめながら言葉を紡ぎ続ける。
「これが貴族だ、誇りを忘れ、足の引っ張り合いを行うのが貴族だ。見苦しく、惨めで、汚らしいのが貴族だ。」
そこまで言うと父はこちらに振り向きこう言った。
「最悪は回避したが最善では無かった。これからはお前はこの様な人間と対峙する機会が増える。力だけではなく包括的な能力を身に付けろ」
幼少期は終わりだ。そう締めくくり以降、彼はその日二度と自分と口を開かなかった。
ユニカ・レーゼンベート……内層貴族でありながら思想や研究について他の内層貴族と対立し、外層貴族と内層貴族何方とも距離を取る中立地帯と目されている。女性で有りながら現役時代に数多くの功績を打ち立てた結果、同じ研究者の変わり者で在った、前レーゼンベート伯爵から後を継がないかと言われ、彼の病弱な息子と結婚。その後夫は子供を残して死に、彼女一人が正式にレーゼンベート伯爵を継いだ。
通常時LV85、精霊召喚時LV105と、伯爵家の中でも突出した強さを誇る。