時空管理局へようこそ(満面の笑み)   作:紅乃 晴@小説アカ

16 / 21
過去にあった法務部の稟議案件まとめ

 

 

■ 法務部に舞い込んでくる稟議内容(抜粋):

 

Q1:「この文明における“財産”の概念が、管理局法第17条の定義とズレている気がするんですけど」

 

A:確認したところ、当該文明では「財産」が物理的所有物ではなく、社会的信認に基づく“共同記憶の蓄積”として扱われている点が、管理局法第17条(私有財産の定義)と齟齬を生んでいます。

 

現地における“財産”は実体のない精神的価値(例:詩の記憶、祖霊の加護など)に重きが置かれているため、法17条をそのまま適用するのは困難です。

 

ついては、同文明に限り「第17条附則第3項:価値の文化的変容に伴う柔軟運用条項」の適用を提案します。文化省とも連携し、継続的に補足規定を設ける方向で検討中。

 

※補足:物品としての通貨が存在しないため、損害賠償請求の概念も存在しません。頭が痛いです。

 

 

 

■Q2:「魔法の使用が“神託”とされる文化圏に対し、非干渉原則を適用すべきか否か、決裁お願いします」

 

A:原則として、文化的、宗教的信仰に直結する体系において魔法が“神託”と解釈されている場合、管理局法第9条:次元文化尊重および非干渉原則に基づき、干渉は避けるべきです。

 

ただし、現地が“神託を解釈、運用する宗教団体”を政治的手段として用いており、かつ局員の行動が信仰体系を意図せず変容させる可能性があると判断される場合、「観察的関与」という暫定措置のもとで関与を限定的に容認できます。

 

よって、本事案では“非干渉を原則とした限定的関与”を提案。現地調整官は事前に祭司階級と調整し、誤認が発生しないようプロトコルを明示してください。

 

※補足:過去に管理局の使者が“神の再臨”と誤解されて国教化された前例があります。マジで取り扱いには気をつけて。

 

 

 

■Q3:「現地では“魔導具”に魂が宿るとされているため、破損すると“殺人未遂”になります。どうしたら?」

 

A:本件は文化的生命観の相違により発生する刑法解釈の衝突に該当します。現地では“魔導具”に意思が宿るとされ、破損が「霊的生命体の殺害未遂」とみなされるとのこと。

 

このため、当該世界においては魔導具の使用および修復行為に関して、法務部が発行する「意志存在非承認証明書」の携帯を必須とする方向で調整中です。

 

当面は現地裁判所と協定を結び、「局の技術規格に基づく魔導具には自立意志がない」ことを通達。該当事案が発生した場合は第32条b項「意図なき文化衝突への免責措置」の適用を請願します。

 

※補足:現地の“魔導具”が人格を持って語り出す事例も確認されています。うっかり返答しないよう注意してください。

 

 

 

■Q4:「現地で時間が非線形に認識されているため、契約期限の設定が意味を持ちません。どうしたら?」

 

A:当該文明においては、時間が「出来事の連鎖」ではなく「感情の濃淡」として捉えられており、暦や時刻の概念が存在しません。

 

このため、通常の契約書における「年月日の履行」といった記述は、現地法では無効とみなされる恐れがあります。

 

対応策として、法務部では「行動条件に適した契約(例:『第三回目の月の祭りの後に』等)」への転換を推奨中。文化省の通訳官とも協力し、現地時間感覚に即した条件文を逐語訳付きで添付するよう調整中です。

 

※補足:交渉中、「未来」や「過去」といった単語を使うと深刻な混乱を招く恐れがあります。要注意。

 

 

 

■Q5:「この世界では名前を知られる=存在を握られるという文化があるため、名乗れません」

 

A:本件は典型的な真名信仰の問題です。当該文化圏では、名前とは個人の本質を示す霊的コードとされており、名乗ることは魂を明け渡す行為と同義と認識されています。よって、局員が本名で自己紹介を行うと、重大な精神的侵害と見なされる可能性があります。

 

対応として、各局員に「仮名または職能コードでの自己紹介」を義務付ける措置を準備中。現地の信仰体系を尊重しつつ、必要に応じて正式な署名は「封印契約書面」で別途管理します。

 

※補足:現地の通訳がうっかり“本名を聞き出す呪句”を使用するケースがあります。教育を徹底してください。

 

 

 

■Q6:「現地では死亡の概念が曖昧で、遺族対応がうまくできません」

 

A:当該次元では、死後に意識の一部が【記憶霧】として現世に留まると信じられており、個体の消失=死亡とはされません。

 

そのため、当該世界で死亡事故が発生した際に、現地の住民が「まだ存在している」と主張。遺族への通知や弔意が侮辱と受け取られる可能性があります。

 

対応策として、現地文化に則った「存在移行通知文書」の作成を進行中です。局内処理と現地向け通知は別プロトコルを使用してください。

 

※補足:現地調査員の報告では記憶霧の中に“元同僚”を見たなどの報告が多数あり、調査隊の精神衛生への配慮が求められます。

 

 

 

■Q7:「現地では“集合人格”が個人として扱われており、契約主体が曖昧です」

 

A:当該文明では、複数の意識体が合意に基づいて肉体を共有し社会生活を営む「集合人格」の存在が確認されています。

 

このため、通常の個人単位での契約書では「誰が意思決定権を持つのか」が明確にできず、契約無効となるケースが発生しています。

 

対応策として、法務部では「人格単位での署名分離」および「合意代表制度」の導入を提案中。すべての意思体に対し、事前の意識確認プロセス(※精神科医的評価を含む)を義務づける方向で調整しています。

 

※補足:中には“寝ている人格”が契約に反対し、後日暴動になる例も。かなり面倒です。

 

 

 

■Q8:「この世界では贈り物を拒否すると宣戦布告とみなされるって本当ですか?」

 

A:残念ながら、事実です。

 

当該世界では「物の授受=関係の確定」とされており、贈り物を受け取らない行為は「お前とは関係を結ばない」という意思表示、すなわち敵対的な宣言と受け取られます。

 

特に公式な式典や調停の場では、贈答を通じて序列や親密度を確認する文化が強く根付いており、無意識の拒否が外交問題に発展することも。

 

対応策として、外務調整局と連携し、「象徴的・形式的な贈与プロトコル」の雛形を準備中。不要な物品が増えますが、平和のためです。倉庫を空けておいてください。

 

※補足:たまに生きた動物を贈られます。交換部とも相談のうえ、対応マニュアルを用意しています。

 

 

 

■Q9:「現地で【法律】という概念が文字通り【話して決めるもの】なんですが……?」

 

*A:ご愁傷様です。

 

当該文明においては、法とは成文の規則ではなく、「今この場に集った者たちの合意」で成り立つとされており、毎回の協議によって都度変更されます。記録もされません。

 

これにより、局側が「第○条に基づいて――」といった通常の法的主張を行うと、「それは今は有効ではない」とその場の空気で一蹴される可能性が高いです。

 

対応策として、現在は時空管理局は「即席合意参加者」として会議に出席し、合意形成に参加したうえで協定化する手法を導入中。記録係を必ず随行させ、逐語記録を残すようにしてください。

 

※補足:言った者勝ちな点と「合意を破ったら罰する」は合意形成に含まれない点があるので、事後に罰することはできません。全ては【その場の空気】です。

 

 

 

■Q10:「この次元世界では、“人型に変身できる生物”は高位存在として崇拝されてます。下手に喋ると祭壇行きとなります。どうすれば?」

 

A:本件は、文化的信仰体系が【変身能力】を神聖視する文明圏において発生しています。

 

当該世界では、一定以上の魔力を持つ生物が自発的に人型に変身できることは「啓示」と見なされ、その存在を【神種】として信仰の対象とします。

 

またその者が知性ある言語を用いる場合、現地宗教の【終末預言者】の条件を満たしてしまう恐れがあります。

 

よって、動物型の使い魔や異形型デバイスを携帯する局員は、絶対に現地で変身・会話・飛行等を行わないでください。最悪の場合、現地政教が勝手に神殿を建設し、局がその【終末予言】の解釈に付き合わされることになります。

 

※補足:過去に文献調査のためフェレット形態で現地入りしたユーノ・スクライア司書長が、【真理の主】として即日国教化されかけました。帰還までに説法24回、儀式参加7回、断食3日を強いられたとのことです。

 

 

 

 

 

次に見たいもの

  • 法務部の活躍
  • 交換部の活躍
  • 広報企画部の活躍
  • 新しい部門の話
  • 各部門の主任は同期なので飲み会とか
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。