魔王城ダンジョン部エロトラップダンジョン課 作:カヲリユーキ
本編というか第0話ですね。先に本編を投稿しろとか言われそうです。
長々と書いていますが「昔はこんなことあったんだど~」みたいなものです。本編に関係あるかと言われると怪しいところ。
まあ、こういう始まりでもいいですよね!おうこちとら初心者だぞ優しくしろよ
魔族の歴史を紐解いていくにあたり欠かすことのできない存在、この本における騒動の原因は全て彼女であるといっても過言ではない存在、『始まりの人』。
始まりの人が何気なく、趣味の延長線上で発した一言。「魔物とセックスしたい」。
これこそが『魔族』という種族の誕生、今後二百年余り続く魔族とヒト族の動乱、そして融和と今日までの共存。その全ての始まりである。
始まりの人は王国史上彼女に並び立つ者はいないと今もなお多くの者に語られる天才である。そして実態を知る者は口を揃えて「彼女以上の変態を見たことがない」と言うほどの存在であったらしい。その本名を知る者は彼女と親しかった者しか知らず、その誰もが名前を語ろうとはしない。そもそも本名を明かしていないから分からない、彼女の頼みで名前を誰も口外していない、名前そのものに強力な呪いをかけられているなど数多くの理由が推察されているが真実は不明である。
幼少期より魔力(現在でいうところのマナ)を知覚して扱うことができていた彼女は齢17の若さで国立魔法研究所(現 ハウロシア国立魔法学院)に所属。空気や水と魔力の類似性に着目し、所属を共にしていた研究者達とチームを組み、魔力の状態変化の実現、魔法陣の構築、絶対的な害悪として畏怖されていた魔物の肉体構築と発生条件の解明などの多くの偉業を残した。魔力を『マナ』と命名したのもこの研究チームであるため、その代表者である始まりの人は「レディ・マナ」と呼ばれ人々から尊敬されていた。始まりの人、齢22のことである。
余談だが、この始まりの人の研究チームは今(新マギア暦1622年現在)も現存する人物が多く錬金術の開祖、『シャウトハンマー』ことマグナス・グレイ氏や生体マナ学の最高権威者である『透視の解析者』アルバータ・イエロ氏、『防人』エインワーズ・スカーレット氏などの傑物ばかりであるため半ば創作物として語られている節がある。が、当人達が現存していること、証言が記録と一致することから間違いなく真実であるため留意してほしい。
こうして人々の尊敬を集めた始まりの人。しかし一つだけ皆が苦言を呈していたことがある。それは彼女が度し難い変態であり、異常性癖の持ち主であったこと。完全にヒトと違う外見や習性、生態をした魔物に性的興奮を抱く
始まりの人はそんな魔物に性愛を抱いていた。元より色事を好み、肉体関係を持つ相手こそ居なかったもののアブノーマルなことに興奮していた彼女にとって、それは趣味の延長線上に他ならないことだったのだろう。実際彼女の扱えるマナ量は規格外で済まされないものだったと語られており、魔物の体液等の純粋なマナを取り込んでもさして人体に影響を及ぼすことがなかったのが現代の研究にて明らかになっている。そのことがより拍車をかけたのだろうと推測されている。
いつの日か、始まりの人はついに魔物とセックスをした。とびきりの体験で、全身が痺れるような刺激と甘美さを持った快感だったと著書「マダム・マナ」に記している。この時に通常のヒト同士の生殖でも、ヒトと獣の交尾でも信じられない出来事が起きる。一通りの行為を終えた後、始まりの人は孕んだのだ。そして、ものの二週間ほどで出産まで行った。通常、ヒトはヒト同士でのみ子を成し、出産まで十月十日と言われるほど長い時間を有す。受精から二週間という余りに短い時間での出産はヒト族と魔物というイレギュラーな組み合わせによるものと考えられるが、実践した記録は始まりの人以外に存在しないため真相は未だ不明である。
このような経緯を経て誕生した始まりの人の子供こそ、世界で最初の魔族である。
魔族は角や翼、尾などの魔物の特徴を持ちつつ、直立二足歩行や言語の意味を理解し、発することができるなど高い知能などといったヒトとしての特徴を併せ持っていた。それでいて凄まじい成長速度を持っており、生後三日ほどで立ち上がり、一週間も経たないうちに言葉を発し始めたという。まさかの結果に始まりの人は驚き、それでいて我が子が出来たことに感動と愛おしさを覚えた。寂しい思いをさせないようにという親心からか、はたまた甘美な体験をもう一度ということなのか。彼女は幾度となく行為を行い。魔族の数を増やしていく。その過程で様々な種の魔物と行ったため、様々な魔物の特徴を持った魔族が生まれた。今日において二百近い基本種のいる魔物のうち、百三十の魔物が魔族にも確認されていることを考えると始まりの人がどれだけ事を成したのか分かるだろう。
始まりの人が産んだ百三十の魔族、『原初の魔族』の一人であるフラクタル氏は始まりの人のこの行いを「いくら母親でも流石に引いた」と語る。
また、この頃から始まりの人は自身のことを「マダム・マナ」と自称するようになった。研究チームが「レディ」と呼ぶ毎に「今はマダムと呼びたまえよ」と訂正していたという辺り、かなり気に入っていたものと考えられる。
当時、始まりの人はイヅマの森の奥、現在の魔王城がある場所に私設の研究所を兼ねた家を構えていた。己の趣味で他人に迷惑をかけたくないという倫理的な配慮のためである。森の奥で子育てを行い、半年も経つと総勢百三十一の魔族とヒトが暮らす、一つの集落と呼べる規模になっていた。子供たちはとてつもない速度で成長し、大体一か月ほどでヒトでいう成人したほどの体躯に育つ。言葉を覚え、一通りのコミュニケーションができる。ただ一つ魔物の特徴があるだけで、魔族は何一つヒトと変わらない存在であった。このことを知った始まりの人はヒトと魔族の共存を目標に動き始める。人の世での生き方を教え、ルールを伝え、研究チームの伝手で上質な衣服を着せた。全ては共存の道のため、我が子の未来のためを思ってのことだった。
しかしこの試みは大失敗に終わる。これが後の魔人対戦、長きにわたる確執の始まりともなった。
魔物の特徴を持ち、ヒト族よりマナを扱うのに長けた存在である魔族を、人々は恐れた。
そこで始まりの人は自ら魔族についての性質を説くなどの行動を起こしたが、理解と納得は違うのが人間というものである。ヒトと変わらず、害はないと理解していてもヒトと異なる異質な部位に対する恐怖や抵抗感は感じることには変わりない。表立った差別は鳴りを潜めたものの根底的な部分に残った恐怖と差別は拭いきれず、いまいち融和しきれないという状況が続いた。当時のことをフラクタル氏は「仲良くしようとしてくれるのは感じるけど……どうしても受け入れきれないって部分を感じて何とも言えない居心地だった」と語る。
新マギア暦1387年、始まりの人29歳の時。遂に事件が起きる。当時主流だった聖道教会より『魔族排他令』が公布される。聖道教会の経典には主神エクスクルディアにより人が創られ、それから他の全てを作り、最後に残った創生の残滓と澱みで魔物を作り上げたとする内容が記載されている。人間を至上とし、魔物を絶対の悪とする聖道教会にとって魔族は赦されざる種族であった故に起きたことである。それからは信者からの陰湿な差別や暴力による迫害が始まり、被害も無視できない規模となってきた。当時の聖道教会は国の中枢に置いてもかなりの影響力があったため、瞬く間に王国全体が排他的な雰囲気に包まれた。いくら始まりの人といえど暴力無しに国一つを相手にするのは難しいと判断したのか、市井との交流を取りやめ、イズマの森に戻ることとなった。
同時に始まりの人による研究、情報提供も殆どが途切れることになる。この件に関して、唐突な打ち切りに王国では混乱が起きたと多くの資料に残っている一方、彼女と親しかった者や公布された後でも接しようとした者たちにはこっそりと会っていたという情報も残っている。そのため自身の子ともいえる魔族を迫害する人々に手を貸す義理はないと判断したためであると判断できる。それだけ子供たちへの愛が深かったこと、愛する子供たちが迫害されたことへの怒りがあったのだろう。
こうして森の中で暮らすようになった後、魔族は兄弟姉妹の間で子を成し、着々と数を増やしていった。近親相姦ではあるが、これは魔物としての野生的な部分が関与したと考えられている。今でも魔物の血が濃い魔族は年に幾度か発情期がある。『原初の魔族』は始まりの人と各魔物のハーフ、魔物の血が色濃く残っていた故の結果だと考えられている。
なお、当事者たちはこの件に対して「あまり蒸し返さないでほしい」と発言を控えていた。
ヒトへの協力をやめた始まりの人はその後の人生をイズマの森にて、時には研究チームの友人の元を訪れたり遠くの国へと旅行に行ったりと活動的ながら穏やかに過ごし、やがて老衰によって命を落とすことになった。享年108歳、新マギア暦1495年のことだった。優れたマナ使いほど肉体年齢が衰えにくく、若々しさを保つため寿命が長い傾向にある。当時の平均逝去年齢が62歳前後、マナ使いの平均逝去年齢が80歳前後であったことを考えると街に比べて必然的に質素な暮らしとなる森暮らしで108歳まで生きた始まりの人がかなりのものであることが分かるだろう。
死ぬ前に、自身の王国での研究と、イズマの森にて行った研究、これまでの魔法への新見解などを書き記した書「マダム・マナ」。そしてこれまでの人生で発見した魔族という種族の特性、特徴をまとめた書「ネクストデイズ」を遺す。前者は知識の継承のため、後者は自身の死後、魔族の研究をするものの為に遺した書であり、始まりの人が最後まで捨てきれなかった相互の和解への希望でもあったことが両著書のあとがきに記されている。
始まりの人が森に籠ってから80年近い年月が経過し、王国側の意識には変化が起きていた。王の交代により聖道教会の王宮での影響力が弱まり、魔族への迫害意識が薄れていた。というよりも魔族そのものの姿が消えたこと、当時を知る者は挙って話をしなかったことより、魔族そのものが御伽話の存在になっていたのだ。ヒト側は長年謎のマナにより奥地に辿り着けず、魔族がいるとされて立ち入りを止められていたイズマの森の調査を始めた。そしてついに、始まりの人とその子供、孫、曾孫までもが暮らす集落を発見する。
ヒトから迫害を受けたことのない若い魔族が入り込んだヒトを歓迎した。魔物の特徴を持つ魔族にヒトは警戒するも、特に敵意や悪意などのない魔族の姿を見て、そう悪しき存在ではないのかもしれないと感じる。
しかし、歓迎した魔族とは違う魔族はヒトに敵意を向けた。なぜなら始まりの人という分かりやすいリーダーがいなくなったことで、魔族の中でも派閥が生まれていたのだ。
所謂「親睦派」と「保守派」である。
保守派の魔族がヒトに剣先を向けたことで敵対。こうしてヒトと魔族の戦い、「イズマの争乱」が起きたのだった。
保守派の魔族はこの戦いを皮切りにヒトに対して徹底抗戦の構えを見せ、それに対しヒト側、特に聖道教会が先導して魔族に対し宣戦布告。両者の間での争いが起きる。「魔人戦争」の始まりである。
双方の親睦派は共に手を取り保守派に和解を説得し続けるが効果は薄く、争いは苛烈さを増す。お互いの親睦派同士が集まり、ヒトと魔族が入り混じる中立地帯も生まれたりして、魔人戦争は進んで行った。
多くの動乱と戦いが起きたがここでは割愛する。
魔族の中で、特に魔法の扱いに長けたものは魔王と呼ばれた。
魔法の王、という意味である。
ヒトの中で、魔族のリーダー的な存在は魔王と呼ばれた。
魔族の王、という意味である。
魔族の中でも魔王は矢面に立って戦う存在のため、いつしか両者間での認識の違いは無くなっていった。
魔族は始まりの人の直属の弟子とも言える存在。数ではヒトに不利を取れど、個人個人での技量ははるかにヒトを上回っていた。一方ヒト側は技量こそ劣るものの、数による暴力で渡り合った。そうした戦闘になるものだから、戦争は長引き、膠着状態にもなる。
しかしヒトは「魔物に近い、紛い物である魔族を生かしておくわけにはいかない」という目的で、魔族は「我々に迫害してきたヒトを許すな」という看板を掲げて戦争を続けていった。
ヒトは戦争の過程で魔法の研究を進め、魔族は戦争の過程でより高度に魔法を扱えるようになっていく。そうして力の増した両者がぶつかり合い、戦火は広がっていく。
こうした負の円環の中、ついに世界を変える事件が起きた。
新マギア暦1522年、かの有名な『勇者召喚』である。
ヒトの方の保守派は今までつくりあげた魔法の体系を全て駆使し、異世界への扉を開くことなった。が、実際はただの事故である。
本来はただの大規模転移魔法のはずが、魔力回路にミスがあった結果、異世界からの召喚となってしまったのだ。
当然、そんな奇跡を実現するマナは莫大な量になるため、召喚の魔法陣は召喚の儀に居合わせていた者のマナを全て吸い尽くしてようやく起動した。
マナ不足で泡を吹いている魔法使いに囲まれながら、異界からの勇者は目を覚ましたのだった。
勇者は異世界からのヒトでありながら、大量のマナと驚異的な身体能力を持っていたためすぐさま魔人戦争の切り札として訓練を受けた。
しかしその感性も異世界のもの。当人からすればどこかも分からない場所に来た挙句、知らない種族を殲滅しろというのはというのも納得がいかない話だったのだろう。
訓練の合間に正体を隠し、双方の親睦派や保守派と関わっていくうちに、勇者にとっての魔族の印象が固まっていく。
魔族もただの人なのだ、と。
よって、勇者は魔族との和解の道を探し始める。もっと良い道が、もっと良い未来があるはずだという決意を胸にしたのだ。その決意を示す第一歩として、初めて戦場に立った時から今日まで勇者はヒト、魔族双方を手にかけたことはない。勇者の振るう剣が「不殺の剣」と謳われるようになった所以であり、今でも人を守る剣技として広く名を馳せている。
こうした戦いの中で、勇者はある魔族と出会う。当時のことを
「たまに訪れては休む花畑があったんだが、その時に出会ってね。赤いドレスローズが似合う、気品があって、それでいて可愛らしい人だった」と勇者が、
「毎日様子を見ていた花畑でとうとうドレスローズが咲いたのが嬉しくて、思わず時間も忘れて眺めてたの。そしたら今にも死んじゃいそうなくらい悲しげなのに、見たことないくらい輝いてて、温かい心を感じて。どんな人なんだろって思ってそっちを向いたらダーリンが呆けた感じでこっち見てて、それがもう可愛くってねー? 話しかけてみたら顔を真っ赤にしてしどろもどろなのにこの私と目を見て話そうとしててそれがもーたまんなくて(以下略」と魔族がそれぞれ語る。
つまるところお互いに一目惚れをしたわけである。
2人はその日のうちに意気投合、交際を始めた。
親睦派には歓迎された。和解にとっての分かりやすい象徴であると同時に、少なくとも停戦までは持っていけるという確信が持てたからだ。
聖道教会側のヒト族、魔族の保守派からは煙たがられた。戦争とは正反対の存在であり、ヒト族にとっては切り札である存在が魔族と関係を持ったからだ。
いつしか勇者と魔族は表舞台から姿を消した。それが何を意味するのかは当時誰も理解していなかった。
数か月後、長らく膠着状態にあった戦争に動きが起きる。
イズマの森南方、タックスバレーにて両軍の前線基地が設けられた。あと数日もすれば衝突が起きるという緊迫した状況になる。近くには中立地帯もあるため、避難や防衛体制を敷くなどといった慌ただしい空気感が続いた。
そうして衝突当日、両軍が睨み合う中、緊迫した空気を切り裂くような雷が、間に割って入るように落ちる。
件の勇者と魔族である。そして、魔族の腕には小さな命が輝いていた。
彼らは、この世界において初めてヒト族と魔族の子供を成したのである。
困惑する両陣営の前で二人がこう宣言した。
「この子は俺と彼女の、ヒトと魔族の間に産まれた子供だ! この子は何も知らない、俺たちの争いも、諍いも、何も知らない。故に彼女が、彼女達の世代こそが、未来を担う光になる! 俺はそう信じている! だから皆、今一度その剣を収めてくれないだろうか、これからを担う子供たちには、不要なものだから!」
「そして私は、魔王イグニス・アールビオン、その娘フラルネ・アールビオンの名において、ヒト族との和平交渉を願います。時はこれより三日後。私が直接ハウロシア王国に赴き、調印しましょう」
驚くべきかな。勇者と恋仲になり、子を成した魔族は初代魔王イグニス・アールビオンの娘、フラルネであったのだ。
ヒト族と魔族が結ばれた事実、突然明かされた子供の存在、今に争いが起こると当然各方面はパニックになった。
魔族の保守派は魔王の娘に子供が出来てることに驚き、戦争してる場合じゃないということで矛を収めた。聖道教会側のヒト族からは嫌悪されたものの、抗議の声よりも騒動のほうが大きかったためさして大事にならなかったらしい。
両種族の親睦派は小さな命を大きく歓迎。ヒトと魔族の和解の象徴として大事に育てていくことになる。
その後、和平の調印や今一度両者が歩み寄るための数々の事件を超えたのち、ようやく戦後の騒乱は落ち着く。その中心にいた小さな命にはなんと魔王イグニスから名前を与えられ、健やかに育っていくこととなった。
二百年余り続いた騒乱は異世界の勇者と魔王の娘、そしてその間に産まれた子供「マナ・アールビオン」の存在によって落ち着きを取り戻し、現在の様相へとなったのだ。
ネクロノミア出版 『魔族の今までとこれから』──著 ヒルト・ニーベルング──より抜粋