第一話
ロジャーの最期の宣言から、五年の歳月が流れた
世界は“ひとつなぎの大秘宝”を求め、多くの者たちが海へと乗り出していった
富を求める者、名声を求める者──その両方を手にしようとする者
しかし同時に、混乱に乗じて暴れ出す無数の海賊たちもまた、新たな名を上げ始めていた
その穏やかな海を進む一隻の小型船があった。白地の帆には商船の印。マストの先には医療活動を示すシンボルが刺繍された旗が風に揺れている
「ぜんぽー! ふね!」
「旗は?」
「かいぞくきーーっ!」
甲板で元気な声をあげたのは、小さな少女だった。赤のフード付きマントに風で揺れる青緑の髪。幼さを残す顔立ちには無邪気さと観察眼が同居している。少女──シュガーは望遠鏡を覗いたまま、興奮した様子で身を乗り出して叫んだ
その声に応じたのは甲板の一角に置かれたビーチベッドで寝そべる年上の少女だった。丁寧にまとめられた長い緑髪が風にそよぎ、羽織った白衣の隙間からは日焼けひとつないすらりとした手足が覗く。アンニュイな瞳と感情の読めない口元。控えめながらも人目を引く不思議な存在感を放つ少女──モネである
「またぁ? はあ……」
白衣の少女──モネは新聞を顔の上でパタリと閉じ、のろのろと起き上がる
「でも、黒くてドクロだったよ?」
望遠鏡を差し出すシュガー。その顔にはわずかな緊張と隠しきれない好奇心が浮かんでいる。モネは受け取った望遠鏡を覗き──二度目の溜め息をついた
「……確かに、海賊旗ね。しかも砲門こっち向いてるし」
望遠鏡を下ろしたモネはげんなりと肩をすくめた。その時、扉が開く音と共にもう一人…女性が姿を現した
「……何か見つけた?」
現れたのは腰まで伸びる青緑の髪を風になびかせた女性だった。落ち着いた黄色の瞳。白のロングコートの下には黒のインナー、足元は動きやすいブーツスタイル。背中には翼を通すためのスリットが入っており、優しげな眼差しの奥に凛とした芯の強さを感じさせる―――この船の主、セラ・ルミナである
「海賊船。もう三隻目なんだけど……海賊っていうより、あれはただのならず者集団かな」
モネの言葉から怠いオーラを感じ取り苦笑いするセラは少し考えた後に
「んー……面倒だし、ここから沈めちゃいたいけど。一応、確認しに行こうかな」
「はーい、船は任せて」
セラの言葉にモネが軽く手を振って応える。その背に、ふわりと純白の翼が現れる。舞い散る羽根を残しセラは静かに海賊船の方へと飛び立っていった
―――
「いそげ!いそげ!商船が逃げちまうぞ!」
「おい、いきなり撃つのかよ?」
「当たり前だろ!俺たちは海賊だぞ!?商船が護衛も連れずにのこのこ浮いてやがるんだ!こんな獲物、逃がす手ェあるかっての!」
怒号と喧騒が飛び交う甲板の上。粗末な装備に統率の欠けた動き。それでも、奴らの目には明らかな欲と弱者を狙う嗅覚が光っていた。小型の商船を見つけたとの報告から数分、海賊船の乗組員たちは慌ただしく砲門の準備を進めていた。だがその動きには海での経験も冷静な判断も見られない
「チッ、また逃げられたらシャレになんねぇ。村襲っても海軍がすぐ来やがるしよ……」
「だからこそ今だってんだろ!ここは
浅はかで下劣な笑い声が甲板に響き渡る
「でも、あの船……医療船でもあるみたいですよ?」
「だったら医薬品も奪えるじゃねぇか!」
「……でもさ、もし伝染病患者とか乗ってたら?」
「はあ?……そ、それは……こえぇな……」
「でしょ?」
…………
「それで、どうするの?」
「だ、誰だ!?おめぇぇぇっ!?!?」
突然、頭上から降ってきた声に船長と呼ばれていた男が思わずのけぞり、船縁に背中をぶつけた。恐る恐る視線を上げると――そこには、空を舞う一人の女性がいた
風をはらんで広がる純白の翼。腰まで届く青緑の長髪が朝日に照らされ、ふわりと輝く。笑みを浮かべ、無防備なほど優雅なその姿に船上がどよめく
「こんにちは、海賊の皆さん。……会話に割り込んじゃってごめんなさい」
「せ、船長……おれ、今……夢見てんのか?天使様が……」
「バカ言ってんじゃねぇ!どう見ても悪魔の実の能力者だろ!翼ついてんぞ、翼!!」
沈黙を破る怒号にようやく船員たちが我に返る
「ぼさっとするな!さっさと撃ち落とせぇッ!!」
叫びと同時に火薬の音が連なる。海賊たちは一斉に引き金を引いた。しかし――放たれた弾丸はセラに届くことなく空中で光に包まれ、じゅっという音を立てて溶けて海へと落ちた
「んー……人攫い、してる?」
問いかける声に、誰も答えなかった。恐怖に縛られたようにセラを見上げて凍りついたまま…。セラは小さく肩をすくめ、困ったように笑うと静かに覇気を展開した
「いない、かな?」
船には海賊しか居ない事を確認すると同時に男たちの身体を光の鎖が絡め取った。眩い鎖が次々と伸び、船上の海賊たちを拘束していく
―――
「はい、この人たちをお願いします」
小型の海賊船をけん引しながら目的の島に到着したセラはまず海軍基地に立ち寄った。拘束していた海賊たちを引き渡すためだ。海賊船の甲板に並べられた男たちは光の鎖に縛られ、口々に文句や泣き言をこぼしていたが誰も抵抗はしない。ただ、海兵たちはその異様な光景に目を丸くするばかりだった
「こ、これ全部……あなた一人で?」
「ええ、まあ。あまり暴れなかったので助かりました」
にこやかにそう伝えると、海兵の男は冷や汗を垂らしながら引きつった笑みを浮かべた
「は、はは……すごいな、あんた……。あ、いえ、大変助かりました!」
慌てて敬礼するその姿にセラは軽く会釈で返す。手際よく書類にサインを済ませると海賊たちの手配書に見合った額のベリーが別の男から手渡された
「ご協力、感謝します!良ければ今から――」
「申し訳ないですが、仕事がありますので」
にこりと笑いながら、セラはやんわりと誘いを断る。海兵が名残惜しそうに頭を下げるのを背に、セラは再び小型船に戻った。
甲板の積み荷を確認し、この島に卸す売り物や、追加で必要そうな医薬品・器具を手際よく降ろしていく。慣れた手つきで荷を整えると、彼女は港から少し離れた島の片隅にある、小さな診療所へと足を運んだ。ここは、何度か訪れている馴染みの地。セラが立ち寄るたびに仮設の診療室が開かれ、島民たちの助けとなっていた。すでに診療所の前には列ができていた。中ではモネがシュガーを連れて診察を始めているのだろう。セラは静かに微笑むと、診療所の扉を静かに開いた
「あ、姉さん。アレ、引き取ってもらえた?」
「うん。ちゃんと懸賞金分も受け取れたよ」
ちょうど診察の合間だったのか、マスクを付け替えていたモネが振り返る。白衣姿も板につき、すっかり医者兼科学者といった雰囲気になった妹にセラは微笑むと、そっと頭を撫でた
「問題なさそうだし、私は荷物を降ろしてきちゃうね」
「うん。シュガーはこのまま手伝ってね」
「はぁーい!」
元気な返事とともに、診療所の中からシュガーの姿がひょこっと顔を出す。小さな白衣に身を包み、消毒済みの手袋をぱちんと鳴らす姿はどこか頼もしくも微笑ましかった
―――
夕暮れ時、仕事を終えた三姉妹は、次の島へ向かう途中の海で船を停めていた。夜の航海は危険だからだ
この日の夕食当番はモネ。船内の小さな調理場で鼻歌まじりに準備を進めている。一方、セラは甲板に腰を下ろし、今日の仕事を日誌にまとめながら今後のことに思いを巡らせていた
(そろそろ、大型船……せめて中型船が買えないだろうか)
(やっぱり、モネの言う通り海賊から奪うのが早いかも。……とはいえ、船員が足りないか)
「むむ……」
小さく唸った瞬間、不意に膝の上が重くなった。思考を中断して視線を落とすと、こちらを見上げながらちょこんとセラの膝に座るシュガーの姿があった
「どうしたのー?」
「んー?シュガーが大きくなったから、そろそろ他の海に行きたいなぁって……そんなこと考えてたの」
ゆったりと撫でながら、セラは頬を緩める。六歳になったシュガーは既に覇気を習得していた。一歳の頃からモネと一緒に覇気の鍛錬を見よう見まねで始めていた影響……なのかもしれない
地面に絵を描くために持ってきた木の枝を武装色で硬化させていたのをモネが最初に見つけたときは、さすがに二人そろって驚いたっけ
……うちの妹、天才?
「えっ、ほんと?」
シュガーが目を輝かせて聞いてくる
「うん。でも……んー、ちょっと難しい問題がね」
「お金がかかるのー?」
「はは……。よし、この話はおしまーい」
図星を突かれたセラは誤魔化すように笑いながら、わしゃわしゃと妹の髪を撫で回す
「できたよー。……どうしたの? 姉さん、難しい顔して」
湯気の立つ皿を手に調理場からモネが顔を出す
「あ、うん。シュガーが鋭いなぁって思ってさ」
「あー……ご愁傷様」
モネはセラの様子に声を出して笑ったのだった
―――
「さて、目の前には――ちょうどいい感じの海賊船があるのだけど……」
「帆はボロボロだけど、人は結構乗ってるみたいだね」
翌日、昼過ぎのことだった。
(普通の船なら、こんな場所には近づかないはず……)
(まさか……あの海賊船、海楼石を使ってる?いや、あり得るの?海軍や政府の船ならともかく、海賊が……?)
そもそも、海楼石自体が極めて貴重だ。世界政府の管理下にあるそれを、どうやって、どこから手に入れたというのか
「少なくとも、この辺の海に出入りしてる船じゃなさそうだね。……でも」
(制圧できれば――かなり美味しい)
「船、近づける?見たところ、大砲も積んでなさそうだし」
「ううん。このまま……いつもみたいに、私が様子を見てくる」
「……気をつけてね」
―――
セラは静かに海賊船の上空で動きを止めた。見聞色の覇気を広げ、船全体を包み込むように気配を探る
(……強い気配がひとつ。それ以外は……雑魚。いや、これは――)
「……奴隷船、ね」
吐き捨てるように呟くと、セラは羽ばたきを緩めて甲板へと舞い降りた。その姿を見た海賊たちの視線が一斉に集まる。妙に小綺麗な服装に整えられた、品のない笑みを浮かべた男たち。その眼差しはまるで“商品”でも見るかのよう
そのうちの一人、飾りボタンのついたベストを着た長身の男がわざとらしい口調で口を開いた
「これはこれは……お嬢さん。まさに渡りに船というやつですね。あちらに見える商船から来られたようですが……どうか、私たちを助けていただけませんか?」
丁寧な言葉遣い。しかし、その裏にある意図はあまりに見え透いていた。演技が下手な分、なおさら気味が悪い
「海賊が商船に助けを求めるのかしら?」
セラの言葉に甲板の中央に立つ男がやや大袈裟に肩をすくめながら返す
「えぇ、そうですとも。私たちは“
その口調はあくまで丁寧で表情には余裕すら浮かべていた。セラは男の笑顔を見つめながら、そっと眉をひそめた
「……あなた達が
視線をすっと横に流し、彼女は吐き捨てるように言う
「それと、その……品定めするような視線、やめてくれないかしら?」
すると男は口元に笑みを貼りつけたまま、悪びれもせずに答える
「それは……無理でしょう。目の前に“上物”が現れたのですから」
やれやれ、といった様子で男が片手を上げる。それが合図だった。周囲の男たちが一斉に懐から武器を取り出す――
「確かに、我々は
「……で、私には手を出すと?」
「ええ。天使のように美しいあなたには――相応の値が付きそうですからね」
セラはじっと男を見つめたまま、ゆっくりと目を細めた
「……そう」
次の瞬間――
音もなく空間が震えた。目に見えぬ衝撃が甲板を中心に爆発するように広がる。ただそこに“在る”だけで、精神をねじ伏せる気迫―――覇王色の覇気だった
甲板にいた海賊たちの半数以上が膝をつき、呻き声を漏らして倒れた。意思の強い者たちだけが、歯を食いしばって立ち続ける。耐えきった目の前の男が震える手で額の汗をぬぐいながら、引きつった笑顔を浮かべた
「……ほ、ほう。まさか覇王色とは。これは想定外でしたね……」
セラは無言のまま、片手を腰の剣に添える。それを見た男は両手を広げた
「お前ら!この女は俺がやる、無駄に死にたくなければ離れて居ろ!」
そう言った男の姿が、ぐにゃりと歪む
皮膚の下から、黒光りする硬質の装甲がせり上がり、骨格が軋みながら異形へと変化していく。肩が盛り上がり、背中には節のある鋭い脚――まるで獣じみた刃のような4本の蜘蛛脚が四肢のように伸びていく。全身を覆うのは甲殻類を思わせる重厚な光沢
変身が終わった頃にはもはや人の形を保っていなかった
「“ムシムシの実・モデル:アシダカグモ”……シュレイ・ガンター、新世界じゃ俺の名もそこそこ知られてるんだがね……」
男の背から伸びた脚が甲板に突き立てられ、キィィンと金属を軋ませる音が響く。陽光を跳ね返す甲殻はまるで鋼鉄の鎧、だがそこにあるのは防御ではない、攻撃するための爪だ
「まさか、こんな東の海の隅っこで……覇王色の覇気持ちに出くわすとはな。さて、運が悪かったのはどっちか……見せてもらおうじゃないか」
キチキチと顎を鳴らし、顔の中央に並んだ複数の複眼が一斉にセラを射抜く
「なるほど、蜘蛛ですか」
セラは静かに呟くと、柄に添えた手から力を抜かずに目の前の異形を真っ直ぐに見据える
「キィィィィッ!!」
甲高く金属を引き裂くような鳴き声と共に蜘蛛の男が前肢を振り上げた。武装色の覇気で黒く染まった鋭利な脚はまるで巨大な鉤爪。振り下ろされた一撃は凄まじく、普通の人間なら一瞬で肉と骨がバラバラに砕けていたはずだった――が
「――っ! が、あぁぁあ!? あ、熱ッ!!」
エコーが掛かった悲鳴が甲板中に反響する。叫んだのは攻撃を仕掛けたはずのシュレイだった
「な……っ!?」
跳ねるように後退し、焼け焦げた前肢を見下ろす。そこには、鋼鉄の甲殻すら断ち切る熱で溶断された痕がくっきりと残っていた。甲殻を武装色ごと焼き切る一閃――男の顔が怒りと恐怖に引き攣る
セラは一歩、前へ
「その程度の硬さなら、問題ありません。……次は、私から行きますよ」
そう告げた瞬間、彼女の背から光の羽根がはらはらと散る。瞬きする暇もなくセラは正面から音もなく距離を詰め――
「先ずは、視界を潰しましょうか」
防御の為に回された武装色の覇気、シュレイの判断を嘲笑うかのように放たれたのはまるで太陽のように輝く光。頭部にかざしたセラの左手から放たれる目を焼くほどの閃光が複眼に向けて撃ち込まれる!
「っぐ……ぁあああッ!」
熱と閃光に悲鳴を上げたシュレイだったが、そのまま体を捻り、回転の勢いを乗せた脚を振るう。
黒く鋭利なその一撃が弧を描いてセラを襲った。激しい金属音と火花が散る、セラは衝撃をいなすように軽やかに身を翻し、空中で受け身を取り、次の一手へと動こうとした――その瞬間
「っ……!?」
見聞色の覇気が耳元で警鐘を鳴らす。反射的に身を翻したセラの背後、何もなかったはずの空間から、糸が――現れた
“潜んでいた”のではない。“空間そのものに縫い付けていた”のだ。
黒く細い糸が獲物を絡め取るように静かに、だが確実に迫ってくる
セラは咄嗟に翼をたたみ、身体をひねって空中で反転。ギリギリの回避に成功するも、一本の糸が頬をかすめ、純白の羽根とともに鮮血が舞った
セラの瞳が鋭く細められる
あの糸は…ただの蜘蛛の糸ではない。粘着性と鋭さに加え、並の武器では防げないほどの貫通力を持っている。セラは空中で螺旋を描きながら飛翔し、完全に回避へと切り替えた
「てめぇ……
蜘蛛の姿をしたシュレイが低く唸るように言い放つ。複数の眼がセラを捉え、そこには警戒と同時に、得体の知れないモノに対して興味が宿っていた
「翼を生やすだけかと思ったが……違う。光を生み出し、操ってる。身体能力も異常だ。俺と同じ
甲板の上を這いながらシュレイは空間全体に広がる黒い巣へと移動していった。裂けた前脚を自らの意志で無造作に千切り捨てる。直後、蠢くように新たな肢が生え、たちまち元通りの姿へと戻った
「飛んで逃げようなんて、虫が良すぎんだろうが……虫だけにな!!」
怒気と嘲笑を混ぜた咆哮と共に、彼の背からさらに多くの糸束が放たれる。鋭い槍のように束ねられたそれらは、当たり前の様に武装色で硬化され、次々とセラを追い詰めていく
「くっ……!」
受け、逸らし、斬り払う――
火花を散らしながら、そのすべてを瞬時にこなしても、数と角度が容赦ない。張り巡らされた糸は次第にセラの衣服を裂き、白い肌は紅く染まりはじめる。傷口には黒糸が絡みつき、動くたびにさらに傷を抉っていく
空中にはすでに逃げ場などなく、黒糸の網が、空そのものを覆い尽くしていた
そして――
「……ッ!」
振り払う間もなく、黒く鋭い蜘蛛糸の牙がセラの両翼を貫いた。甲高い金属音が空に響き、滑るように飛んでいたセラの動きが一瞬止まる。糸は容赦なく、次々と殺到した
「ちっ、弱けりゃ良い売りモンだったのによ」
シュレイは顎を鳴らし、勝利を確信しかけた――その瞬間
「……なに?」
目の前の光景に、シュレイの複眼が大きく見開かれる
間違いなく武装色で硬化された蜘蛛糸がセラの翼を突き刺している。だが、その翼は何事もなかったかのようにゆるやかに動き、糸を斬り払ったのだ。貫かれたはずの穴はすでに塞がり、溢れる光が翼を再構成していく
「っ……そいつも、“光”か……!」
「ええ、そうです。そして――終わりです」
翼が大きく羽ばたく。その瞬間、空間に張り巡らされていた蜘蛛の糸が一斉に崩れ落ちた。陽光に晒された霜のように、熱と光に呑まれ、音もなく消えていく
その光の中心で浮かぶセラはすでに剣を鞘に納めていた。代わりに、右手には“何か”を握っている
眩い輝きが掌に収束し、形を成していく。それは――純白にして灼熱、まさに聖槍と呼ぶべき巨大なランス
セラはそれを一回転させると、滑らかに構えを取る。白銀の槍が風を裂き、まっすぐにシュレイへと向けられた
「さようなら、新世界の海賊。―――
放たれた極光に漆黒の光がごく僅かに滲む。その光はシュレイの全身を呑み込み、幾重にも重ねられた武装色の蜘蛛糸を――熱と圧で押し潰し、焼き尽くした
光が収まると残響のように漂う光の粒子だけが残った。空間は熱を含み、かすかに震えてた
「はぁ…思ってた数倍強かった…」