シン・南斗の拳 俺達の戦いはこれからだ! 作:マジカル☆さくやちゃんスター
199X年、世界は核の炎に包まれた!
海は枯れ、地は裂け、全ての生物が死滅したかのように見えた。
だが、人類は死滅していなかった!
――という出だしから始まる物語をご存知だろうか。
そう、北斗の拳である。
何やかんやあって、世界中で戦争が起こって、何やかんやあって核戦争で世界が滅亡して、荒廃した後の世界で何やかんやあって、胸に七つの傷の男こと、ケンシロウが世紀末救世主となる物語だ。
見ている分には楽しいが、当事者にはなりたくない世界、個人的ランキングナンバーワン!
その中で、もし転生先を選ぶとしたら誰を選ぶだろう? 逆に誰を選ばないだろう?
俺としては、まずケンシロウの
後、ユリアに惚れる男ポジションにもなりたくない。
何故ならユリアはケンシロウと両想いで、その上、天の意思的なものもケンシロウとユリアのカップルを
それと当然だがケンシロウの敵だったり、敵組織のボスにもなりたくない。
これはもう理由を言うまでもないだろう。
ケンシロウは世紀末救世主とは言うけど、世界をよくする為に何かしてるのかって言えば基本的には悪そうな奴をぶっ殺して回るだけ。つまりケンシロウと敵対した奴は死ぬ。
これらの条件を当てはめて考えると転生先として最悪なのは?
それはズバリ――最初のケンシロウの
こいつはもうやばい。死亡フラグの塊。むしろ生存できる理由がない。
ケンシロウの
ついでに北斗南斗元斗は天帝を守る宿命があるので、リンと出会ったら己の意志と関係なく気付いたらリンの盾になっていた、とか普通に有り得る。死亡フラグ+1。
挙句の果てにこいつの宿星は殉星。
もう名前からしてやばい。方向性としてはレイの義星に似ているが、レイよりもやばい。
だって殉星よ? もう名前からして、死ねって言われてるやんけ。
南斗六星のうち、とびっきりの大外れ星だろ、こんなん。
何もしてなくても死亡フラグを常に背負ってる状態だよ。死亡フラグ+100。
……で、まあ、つまりだ……。
転生しちゃったわけなんですよ……シンに……。
前世の名前は
子供の頃はよく『お前南斗聖拳とか使いそうな名前だな』とからかわれたものだ。
職業は総合格闘家兼アクション俳優。実際に戦っても強いアクションスターとしてそれなりに有名だった。
チャンピオンベルトも腰に巻いたし、防衛戦も負けたことはない。
死因は事故死。子役の少女の上に撮影機材が落ちてきたから、咄嗟に彼女を突き飛ばして代わりに下敷きになって死亡。
で、何故か自我の連続性が途切れずにシンに転生して、赤ん坊から人生リスタートとなった。
南斗聖拳使いそうな名前とはよく言われていたけど、本当に使い手になる奴があるか。
転生してから今日までを詳しく語ると長くなるから省略するが、この度見事に核戦争が勃発して世紀末世界が出来上がったわけだ。
いやー……どうするかな、これ。
一応ここが北斗の拳の世界だと分かってからは必死に修行したから多分原作のシンより強いと思うし、多分現時点のケンシロウくらいなら瞬殺できると思う。
やたらサウザーが突っかかってきたので、よくサウザーと組手をしていたし……サウザーが実は手を抜いていたとかでなければ、サウザー相手に善戦できるくらいには俺は強い。
具体的には天翔十字鳳さえ出されなきゃ6:4で俺が有利なくらい。
天翔十字鳳出されたら3:7でボコボコにされる。
だってあれ、物理攻撃当たらないし。触れずに攻撃しなきゃ倒せないんだけど、俺の持ってる技で直接触れず闘気でダメージ与える技ってそんな多くないんだよ。
後、対北斗神拳の一撃死対策として、闘気を体内であれこれして秘孔の位置を変える秘孔変位の真似事も習得しておいた。
俺はもうただのシンではない。俺は――スーパーシンだ。
俺は究極のパワーを手に入れたのだ!
で、だ。ここまでパワーアップしたスーパーシンとなった俺の結論は……。
――ケンシロウ&ユリアカップルに横恋慕しない! 敵対しない!
俺がユリア誘拐しないとケンシロウが弱いまま? 知るか! 何でケンシロウの為に俺が踏み台になって殺されてやらなければいかんのだ! どうせ天に選ばれた救世主様なんだから、勝手に他の踏み台見付けて強くなるだろ!
ジャギも言ってただろ。ユリアは必ず誰かの手に落ちると。
つまり俺が何もしなくても、多分誰かがケンシロウを倒してユリアを奪い、ケンシロウは執念を燃やしてユリア奪還に旅立ち、強くなる。
仮にケンシロウが強くならず死んだとしても、それはそれで俺の最大の死亡フラグが消えるので別にいい。
と、いうわけで俺は原作ムーブをせず、俺の道を往くことを決めた。
俺は生きる! ケンシロウやユリアの為の都合のいい踏み台になど、決してならない。
最後まで生き延びてやるぞ!
★
核戦争が起きてからまず俺が考えたのは、治安がよくて住みやすい俺の町を持つことだった。
食糧や水を手に入れるのに、一々遠出したり野盗をぶっ飛ばしたりするのは非常に効率が悪い。
そこで俺は、とある町に目を付けた。
その名をゲッソーシティ。巨大な浄水装置のおかげで水が豊富にあり、電気も生きていて、食料も豊富な町だ。俺はこの町を手に入れようかと思っている。
普通なら町の略奪など、ヘイトが無駄に溜まる行為でケンシロウに後であべしされるフラグでしかない。
しかしこの町はシスカという暴君に支配されている町で、しかも放っておくとジュガイという俺の同門が攻め込んだ挙句に何やかんやあってシスカが町を爆破して住民が全員死んでしまう。
しかもこの世界では俺がケンシロウをボコってないので、多分ケンシロウもこの町に来ない。
なので放置すれば確実にジュガイ軍に攻め落とされて、シスカが自爆して町が消える。
いやまあ、ケンシロウがいてもケンシロウ以外全員死んで、哀しみという名前の強化パーツにされるんだが。
そうなるくらいなら、俺が手に入れた方がまだ結果的にマシだろう。ここをサザンクロスとする!
……原作のサザンクロス? いや、あれ、ただの廃墟群だし……正直要らないかなって。
俺は崖の上からゲッソーシティを見下ろしながら、腕を組む。
「首尾はどうだ、ジョーカー」
俺が問いを投げかけると、俺の後ろに無言で気配が現れた。
ジョーカー……南斗孤鷲拳の傘下の一つ、南斗翔天拳の使い手であり、戦争前からの俺の忠実な部下だ。勿論本名ではない。
南斗六聖拳はそれぞれ、南斗108派の内のいくつかを傘下として抱えている。
最も多いのは29派を抱える南斗鳳凰拳だが、俺もそれなりの派閥を配下に持っている。
更に核戦争前からの俺のよき配下であったアルフレッド……ハートを筆頭に、スペード、ダイヤ、クラブ、そして原作にはいない幹部としてハートの姉であるクイーンといった配下が並んでいる。
スペード、ダイヤ、クラブは核戦争の前から部下を率いて暴れていたので、派閥ごと俺の下に取り込んだ。
俺の下に就いてからは無駄な殺しはしないように徹底させている。もしこれを無視して無辜の民を殺すようなら公開処刑だ。
おかげで今は誰も、村を襲って種籾だヒャッハー! とかやらない。
「はっ。ザリアは既に教会……鐘の位置に待機しております」
「よし……やれ!」
「はっ!」
俺が指示を出すと、ジョーカーはペットの鷲を飛ばした。
それから少しすると、町全体に鐘の音が鳴り響き、住民全員が地面に倒れた。
南斗108派……から更に派生した南斗モドキ拳法の一つ、南斗暗鐘拳!
その奥義は、鐘を鳴らすことで出した音波に闘気を乗せて発することで敵を切り裂き、眠らせ、意のままに操り、死体すら動かす!
このゲッソーシティで最も厄介なのは、町の至る所に爆弾が仕掛けられていることと、シスカが起爆装置を握っていることだ。
俺ならば正面から乗り込んでシスカを仕留めることは容易い。シスカが起爆スイッチを押す前に仕留めることも容易。浄水装置のパスワードも外伝知識で知っている。
だが、作中で明記されなかった爆弾の位置だけは分からない。何かの間違いで爆弾が起動してしまえば、折角ゲッソーシティを手に入れても水の泡だ。
だからまず、シスカを無力化した上で爆弾の場所を聞き出す必要がある。
また、他にも外伝で描写されなかっただけで、『シスカが死んだら数分後に勝手に起爆する』とかの仕掛けがあるかもしれない。
それが分からない以上、軽挙にシスカを消すのは危険だ。
「ついてこい、ジョーカー」
「はっ!」
俺は崖から飛び降りて町の中に入り、堂々と正面からシスカの居城へ乗り込んだ。
邪魔をする者はいない。全員、ザリアの暗鐘拳によって眠っている。
南斗暗鐘拳はある程度の実力があれば闘気によって防げてしまう欠陥拳法だが、何の対策もできない一般人や雑魚相手ならばこの上なく有効だ。
シスカの寝室に入ると、ベッドの上でガマガエルのような男と、裸の娼婦二人が寝ていた。
俺が近付くと、罠が作動して上から鉄格子が落ちてくる……が、俺は手刀の一閃でそれを切り裂いた。
それから寝ているシスカからベルトを奪い、ジョーカーに投げ渡す。
続いて椅子の肘掛を開けると、その中にもスイッチがあるのを確認した。
「下手に動かしても危険だな。この部屋から全員追い出し、封鎖しろ。シスカは持ち物、服、全てを奪え。奥歯にスイッチを仕込んでいる可能性もあるから、歯も全て調べ、少しでも怪しいと感じたら抜いておけ」
まず催眠状態にある娼婦二人を追い出し、シスカは裸にしておく。
こんなガマガエルなんぞひん剥く趣味はないが、どこに起爆スイッチを隠し持ってるか分からないからな。念には念だ。
後、身動きできなくなった時の為に歯に何かを仕込んでおくというのも定番なので、こちらも調べさせよう。
スパイ物とかで折角敵を生捕りにして動けなくしたのに、呆気なく自害されて何の情報も引き抜けないパターンは大体これな気がする。
ジョーカーも俺の指示に異論を挟むことなく、ペンチでシスカの歯を何本か抜いていた。
「どうだ?」
「インプラントが一本、金歯が二本、治療跡のある歯が一本……人の手が加えられている歯は全て抜きましたが、スイッチらしきものはありません。その他、皮膚の下などに何かを仕込んでいることもなさそうです」
「よし……起こせ」
ここまで入念にチェックをした上で、シスカを起こすように指示する。
起こすと言っても、ザリアの催眠は維持したままだ。
シスカはぼーっとした、どこか遠くを見ているような顔で目を覚ます。
「さて……問いに答えろ、シスカ」
それから俺はシスカに、念入りに質問をした。
他にスイッチはあるか。シスカが死ぬことで起動するシステムはあるか。爆弾の位置……それらの情報を、暗鐘拳の影響下にあるシスカはベラベラと吐いてくれた。
結果、外伝で描写されていなかった隠し起爆スイッチが更に床から一つ、テーブルから一つ出てきた。
爆弾の位置も聞き出し、シスカを殺しても起爆しないことも確認した。
ならば最早用なし。俺はシスカの首をはね、絶命させた。
……躊躇とかないのかって? そんなものはない。
悪党一人処分するのに一々躊躇してたら、世紀末ではやっていけんのだ。
アニメのOPでも言ってただろ。まともな奴ほど後悔するってな。
俺は後悔したくない。だからやる、それだけだ。
★
それから俺は、暗鐘拳を解除させ、ゲッソーシティの兵士達を全員ホールに集めさせた。
四重臣(ハート、ダイヤ、クラブ、スペード)を連れ、戸惑う兵士達の前に出た俺は彼等の前にシスカの首を投げて転がす。
「……!」
「こ、これは……」
「シスカ……様……!?」
突然目の前に投げられたかつての主の首に、兵士達は混乱しているようだ。
それでも誰一人として、「よくもシスカ様を!」と怒らないのを見るに、余程人望がなかったのだろうと分かる。
「見ての通りだ。シスカは死んだ……これからは南斗六星が一人、このシンがこの町の支配者となる。とはいえ、いきなりこんな事を言われても、はいそうですか、と俺に従う気にはならんだろう。
そこで、貴様等にプレゼントを用意してやった」
俺は指を鳴らす。
すると、それと同時にホールに女や子供が入ってきた。
それはシスカが、町の人々に言う事を聞かせる為に人質として捕えていた、彼等の家族だ。
解放された人々は茫然としている兵士達に駆け寄り、再会を喜んでいた。
「貴様等を従わせる為にシスカが捕らえていた人質だ。まずはそれを返してやる」
兵士達から困惑と疑惑の視線が俺に集中するのを感じる。
まあそりゃそうだ。誰だってこんな突然、今日から俺がニューリーダーだ! と言われたら冷静でいられないだろう。
しかし俺は休む間を与えず、更に言葉を重ねた。
「それと、この町に仕掛けられていた爆弾は全て、俺の部下が解除している。
……つまり貴様等が俺にこの場で歯向かっても、俺は人質を殺す事はできんし、町も爆破できん。
何故、このような状態にしたか分かるか?」
「……ひ、人質を返された我々が歯向かうはずがない、と判断したから……?」
「違うな」
俺は、兵達によく見えるようにゆっくりと右手を振り上げた。
そして手刀を、誰もいない位置目掛けて振り下ろす!
すると床が裂け、ホールの端まで到達する亀裂を刻んだ。
その破壊力に、兵士達が唖然とする。
「
「…………っっ!!」
「仮に貴様等が今ここで俺に歯向かったとしても……俺なら、十秒以内に全員殺れる。
貴様等など俺から見れば等しく、脆弱な雑兵に過ぎん。故に人質などいらぬし、町を盾にする必要もない……理解したか?」
少し強引で乱暴だが、俺なりに色々試した結果、この世紀末ではまず力を示すのが最も有効だということを今日までに学習したのだ。
力こそが正義! いい時代になったものだ! 強者は欲しい物を心置きなく手に入れることができる!
……いや、やっぱ核戦争前の方がいいな。そもそもこんな時代じゃなければ、ここまで面倒なパフォーマンス自体必要ない。
普通に前世と同じくアクションスターをやりたかったよ、俺は。
今の身体能力ならきっと、凄いアクションシーンもできただろうになあ。
「理解したならば、その上で選択肢をやろう」
「選択肢……?」
「この町に留まり、俺に従うか。自由を求めてこの町から逃げるか……あるいは欲望を胸に俺に歯向かうか。この場で選ぶがいい。
先に言っておくが、逃げても俺は一切追わんし、追跡も出さん。ただし何かあっても救わん。生も死も、正真正銘貴様等の自由だ」
ここまで話し、大げさにマントを翻して注目を集める。
「だが! もし俺に従い忠誠を誓うならば……南斗六星の名と、この拳にかけて貴様等の守りたいものを俺が庇護してやる! 貴様等の妻を、息子を、娘を、恋人を! 南斗六星のシンが守ってやる! 誰が相手であろうと、俺が指一本触れさせん!」
そう言い切り、俺は兵士達に背を向けた。
……決まった。今のはいい演技だった。
カットなしの一発成功間違いなし。渾身の手応えだ。
後は、兵士達が動揺しながらも決断を下すだけ。
まあ、五割……いや、四割も残れば上出来かな。
「KING、大変です! 町に、ジュガイ軍が攻め込んできました!」
――なんて余韻に浸っていたら、ホールに飛び込んで来たスペードが町の危機を知らせてきた。
え、このタイミングで? マジで? ジュガイお前ふざけんな。空気読めよ。
────────────────────────────────────────────
✪ というわけで皆様こんばんは。
以前、ドラゴンボールとGANTZでSSを書いていたこともある咲夜さんの元オプションです。
何となく北斗の拳のSSを漁ってみたら、全然なかったので「ほな、自分で書くかあ……」となり投稿しました。
ついでにたまにはいつもと方向性を変えてみようと思ったので今回は野郎主人公に加えて、原作主人公とあまり仲良くしない系主人公です。
というか主人公のシンはケンシロウとユリアアンチです。
【シン】
ご存知KING……に転生した人。本作の主人公。前世の本名は孤鷲清。
前世では総合格闘技の選手で世界チャンピオンにもなったことがある実力者。
副業でアクション俳優をやっていたが、副業の方が稼げるようになったので格闘技を引退した。
演技とアクションが得意で、割と世紀末脳。
ケンシロウとユリアを恐れている。後、天帝のリンにも近付きたくない。
実力は天翔十字鳳を使われなければサウザー相手に優位に立てるくらい。
無想転生がなければラオウ相手でも渡り合える。
ケンシロウのことは嫌いだが敵対しても面倒臭いので表面上はそれなりに親しい知人関係を続けている。
ユリアのことは別に好きではない。
というか好きとか嫌いとか以前の問題で、ただの脅威。
ユリアに近付いた男は悉くユリアに惚れてユリアの為に命すら投げ出すという謎現象が起こるので、半径100m以内に近付いてほしくないと思っている。
【ジョーカー】
アニオリのシンの側近。原作では短く終わってしまったシン編をかなり長引かせた功労者。
ケンシロウともそこそこいい勝負をして、秘孔を突かれても「情けはいらん、やれ!」と言い切るなど漢気に溢れている。
このSSの独自設定として、本名は鬼札城下。シンだけが本名を知っている。
【ザリア】
アニオリのやべー奴。鐘を鳴らすだけで人を切るわ操るわ、死体も動かすわでやりたい放題。
ケンシロウには効かなかったので、格上相手だと通じないらしい。
このSSでは鐘の音に闘気を乗せ、耳から相手の体内に流し込むことで色々な効果を起こすと解釈している。