シン・南斗の拳 俺達の戦いはこれからだ!   作:マジカル☆さくやちゃんスター

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第十一話 拳王に後退はありえぬ。仮に撤退してもそれは回れ右しての前進である

「ジョイヤー!」

「甘いわ!」

 

 ラオウの剛拳を後方宙返りで回避し、そこから空を蹴って急降下。

 ラオウの腹に手を当て、合掌手を突き刺した。

 腹筋を貫通はできなかったが、ラオウの巨体を吹き飛ばすことに成功……そのまま追い打ちの闘気を発射する。

 しかしラオウも即座に対応した。

 

「南斗鷲虐双手!」

「北斗剛掌波!」

 

 俺とラオウの発射した闘気が中央で衝突し、光が爆ぜた。

 対サウザー用に闘気技は大分練習してきたのが、ここで活きた。

 しかし流石はラオウの北斗剛掌波だ。何とか拮抗しているが、じりじりと俺が押されている。

 

「ぬうう……!」

「ふははは! 闘気ならば俺の方が上のようだな!」

 

 悔しいが、ラオウの言う通りだ。

 闘気の出力は明らかに向こうが勝る。

 このまま撃ち合いをしても呑まれるだけ……ならば!

 俺は撃ち合いを放棄して宙へ退避し、地上のラオウへ突きの連打を放った。

 

「南斗猛鷲飛勢!」

 

 突きの連打は闘気の刃となってラオウの全身を刻む。

 致命打には程遠い。だが……効いている!

 ラオウの服を裂き、肌を裂き、出血を強いている。

 今俺は、あの世紀末覇者と戦えている!

 落下の速度を乗せ、今度は蹴りを打つ。

 

「南斗獄斗双脚!」

「北斗双龍波!」

 

 俺の右の蹴りをラオウの左拳が。続けて放った俺の左の蹴りをラオウの右拳が受け止めた。

 拳のパワーに押されて弾かれるが、後方宙返りをして着地。

 その俺の目の前に、ラオウが地響きを立てて走る。

 

「ぬうおおお!」

「しぇああッ!」

 

 ラオウの拳を逸らし、心臓目掛けて貫手。だがラオウもこれを弾き、膝蹴り。

 こちらも膝蹴りで相殺……するが、パワー差のせいで後ろへ弾かれてしまう。

 そこにラオウの剛拳が振り下ろされ、間一髪回避――からの、すかさず回し蹴り!

 ラオウの首筋に綺麗に蹴りが入り、ラオウがよろめいた。

 だがその状態からのラオウのアッパー。咄嗟にガードを挟むも、ガードを貫いて脇腹に激痛が走る。

 

「ぐっ……!」

 

 今嫌な音した! ミシミシっていった!

 俺の身体が何度も地面をバウンドするが、空中で身を翻して何とか体勢を立て直し、着地した。

 喉の奥からせり上がって来た血を地面に吐き捨ててラオウを見る。

 くっそ……わかっちゃいたが、こいつ強いわ。

 芯は外しているのに、一撃一撃がとにかく重い。

 

「どうした、シン? 息が上がってきているぞ」

「フン……最近は事務仕事も多かったからな。丁度いい運動だ」

「強がりはやめよ。ダメージを隠せておらぬわ。今一度聞こう……俺に従う気はないか?」

「なァにい? ……聞こえんなァァァ!」

 

 ラオウへ跳び蹴りを放つ。

 これをラオウは指一本で迎撃……って、やばい!? これ原作でレイがやられた秘孔新血愁狙いだ!

 俺は空中で横回転して、腹へ迫っていたラオウの指を回避し、遠心力を乗せた蹴りを側頭部へ当てる。

 だが急な姿勢変更のせいで重さが足りない。

 着地した俺へ、ラオウの次撃が迫る。

 回避は……間に合わない! ならばこの一撃、あえて受けてラオウにも傷を刻む!

 

「天将轟烈拳!」

「南斗裂破爪!」

 

 ラオウの拳が俺の胸にめり込む――と同時に俺の振り上げた闘気の爪がラオウの腹から胸にかけて大きく切り裂いた。

 俺達は同時に吹き飛び、地面を転がる。

 

「ぐっ……がはあっ!」

 

 咳き込むと、ビシャビシャと地面に血が撒き散らされた。

 やばい……骨イったか?

 視界も霞むし、ダメージが予想より遥かに大きい。

 

「シン!」

 

 サラが叫ぶのが聞こえる。

 兵士達の動揺が伝わって来る。

 

「ぬうおお……!」

 

 ラオウが地響きを立てて崩れ落ちる。

 向こうの傷も浅くない。全身が傷付き、特に裂破爪の傷口からは絶え間なく血が流れ出ている。

 それでもラオウは立ち上がり、前へと踏み出す。

 そして俺を見下ろし、言う。

 

「ふふ……見事なり、シン。俺をここまで苦しませた男はリュウケンくらいなものよ。

だが勝敗は決した。新壇中を突いた……うぬは俺の許しがかからぬ限り、動くことができぬ」

「ぬうう……!」

 

 新壇中というのは、原作でトキがケンシロウにやったやつだ。

 ここですぐに死ぬ秘孔ではなく、動けない秘孔を突くのはラオウの性格故だろう。

 相手を仕留めるのは秘孔ではなく、己の剛拳であるべし、という拘りがあるのかもしれない。

 いや、ないか。レイなんか普通に秘孔で殺されているし。

 

「あくまで降伏せぬその意思は受け取った。

ならばあの世で誇るがいい! この拳王に血を流させたことを!

……さらば! シン!」

 

 ラオウの拳が振り下ろされる。

 止めの一撃……そして俺が動けないということもあって、回避されることを一切考えていない、威力のみを重視した大振りの一撃だ。

 ――この瞬間、この隙を待っていた!

 俺はラオウの拳を掻い潜り、驚愕するラオウの懐へ飛び込む。

 零距離……もらった!

 

「南斗孤鷲拳奥義! 南斗翔鷲屠脚!」

 

 闘気を足に纏い、ラオウの胸板に足をめり込ませた。

 そのまま天に堕ちるようにラオウを蹴り上げ、ラオウの吐き出した血が顔にかかる。

 手応えあり! いかにラオウといえど、これをマトモに受けては無事では済むまい。

 俺が着地し、ラオウが地面に沈んだ。

 

「はーっ……はーっ……ど、どうだラオウ……我が奥義の味は……」

「ば、馬鹿な……何故動ける……! 確かに秘孔を突いたはず……!」

「ふっ……ふはははは! 愚かなりラオウ! この世には北斗神拳すら通じぬ王の身体というものがあるのだ!」

 

 本当は秘孔変位の真似事なのだが、俺のは所詮真似事。

 そもそも本物を見たことがないし、秘孔変位に必要な狂気もない。

 一応執念で代用してはいるが、俺のは水影心でケンシロウからラーニングした秘孔技術と読み漁った書物、そして原作の知識から作り出したそれっぽい紛い物に過ぎない。

 当然秘孔奇穴は動かせないからそこを狙われると終わるし、実は常に秘孔変位してるわけでもなく、攻撃を受ける時に一時的に動かすことしかできない。

 つまり攻撃をこれから受ける、と分かっている時しか使えないので不意打ちで秘孔を突かれると普通に死ぬ。

 しかしそんな欠点だらけの秘孔対策であることをわざわざ教えてやる理由などない。

 なのでホラを吹いて、誤魔化しておくことにした。

 ついでに、サウザーの秘密がバレた後に北斗神拳の使い手と戦うことになったとしても、その時は相手が勝手にサウザーと同じと思い込んで秘孔を外してくれるかもしれない。

 

「終わりだな、ラオウ。今ここに、野望果てるがいい!

南斗孤鷲拳究極奥義! 南斗化血――」

 

 ラオウに止めを刺すべく、俺は最後の攻撃を繰り出そうとした。

 だが直後に全身に激痛が走り、血を吐き出して足を止めてしまう。

 

「ごぷっ……! な、何ぃ……!?」

 

 馬鹿な……秘孔は外したはず!

 いや、そもそも新壇中は死ぬような秘孔じゃない。

 つまりこれは……ただの打撃によるダメージ!?

 秘孔を外しても尚、ラオウの剛拳は俺に、これ以上戦えぬほどのダメージを刻んだというのか!

 俺の足がガクガク震え、ラオウがよろめきながらも立ち上がる。

 だが向こうの足も笑っている。後一押し……後一押しだというのに!

 

「ふーっ! ふーっ!」

「はーっ! はーっ!」

 

 どちらも満身創痍。全身が傷付き、今にも膝を突かんばかりに足が震えている。

 それでも……それでも尚、ラオウの覇気は衰えない。

 全身から闘気を立ち昇らせ、鬼の形相となって俺との距離を一歩一歩詰めて来る。

 俺も闘気で無理矢理身体を動かし、ラオウへ向かって歩を進める。

 

「シンよ……お前は、北斗七星の側にある小さな星を見たことがあるか?」

「フ……今ハッキリと見えておるわ! 逆に聞こう……ラオウ、貴様もその星が見えているのではないか?」

「フフ……恐ろしい男よ。このラオウの頭上に死兆星を輝かせおったわ!」

 

 ラオウが強く踏み出す。

 

「ならば!」

 

 俺も一歩前へ、踏み出す。

 

「ああ! ならば!」

 

 俺とラオウは手を延ばせば届く距離まで近付き、最後の……そして渾身の奥義を放つためにありったけの闘気を高めた。

 

「ここで戦うのが俺達の宿命! 天に滅せい、シン!」

「今こそ宿命を越える時! 地に堕ちよ、ラオウ!」

 

 殉星の宿命など俺には知らぬ、どうでもいい。

 道半ばで誰かの為に殉じて道を譲る運命などクソ喰らえ。

 俺は死なん。誰がこんな所で死んでやるものか。

 ここで死ぬのは貴様だ、ラオウ!

 ラオウと俺が同時に攻撃に入ろうとし――その瞬間、ラオウの後ろに控えていたソウガが奇襲を仕掛けて来た。

 ちょ、おま……待て! 今完全にラオウに意識が向いてたから対応できな――。

 

「南斗天舞相殺拳!」

 

 俺の後ろからジュガイが、両手を前に突き出した姿勢で高速回転しつつ突っ込み、ソウガを吹き飛ばした。

 同時にサラが俺を後ろへ引っ張り、俺を庇うようにジュガイとサラが俺の前に立つ。

 同時にラオウの側近のレイナがラオウを庇うように飛び出し、ソウガも血を吐きながらもすぐに復帰してラオウの壁になった。

 

「何のつもりだソウガ! この拳王を侮辱するか!」

「ば、罰ならば後でいくらでも受ける……! だがラオウよ、お前はここで死ぬべきではない!」

 

 乱入をしてきたソウガは、ラオウの怒りを買うことを覚悟の上らしい。

 なるほど、まさに忠臣というわけか。

 保険としてジュガイを連れてきていなかったら、今のでやられていたな。

 

「フン……礼は言わんぞ、ジュガイ」

「ここで貴様に死なれては俺の立場がない。ここから先は俺に任せてもらおうか」

 

 俺とラオウは両方ともボロボロ。

 両軍の幹部はこちらがサラとジュガイに対し、向こうはソウガとレイナ。

 俺の見立てでは、剣の腕でサラがレイナにやや劣り、ジュガイがソウガを上回るといったところか。

 総合的に見ればややこちらが有利……しかし、戦えばどちらも無事では済むまい。

 

「……ラオウよ、ここは停戦といかんか?」

 

 ラオウは性格的に絶対、自分から停戦は言い出さない。

 だが向こうも落とし所を探しているはずだ。

 このまま戦えば、どちらも無事では済まないし、それは奴が目指す覇道の瓦解を意味している。

 それが分からないラオウではあるまい。

 

「臆したか、シン」

「そう取って貰っても構わん。実際貴様は恐るべき男よ。

このシン、己のプライドを優先して敵の脅威を低く見積もるほど愚かではない」

 

 臆したかと言われれば、その通りだ。

 怖いに決まってるだろう。

 ここで死んだら全部台無しになるんだからな。

 

「このまま戦えば、勝てたとしても俺も無事では済まないだろう。そうなれば俺が今まで築き上げてきたものが崩れ去る……もっとも、それは貴様にも言える事だがな」

「ぬう……」

「仮に貴様が勝つとしても、俺もただで殺されてやるほど甘くない。死ぬ前に貴様の手足の二本……いや、三本は確実に貰っていく。そうなれば覇道どころではあるまい?」

 

 俺とラオウには共通の敵がいる。

 それは覇道を突き進むもう一人の男、聖帝サウザーだ。

 俺達がここで共倒れすれば、後はサウザーの一人勝ちだ。

 敗れた勢力は瞬く間に蹂躙、吸収され……勝利した方もすぐにサウザーに仕留められるだろう。

 

「それに……見ろ。余計な連中も集まってきている。俺に勝利できたとして、その後にあの連中とも戦えるだけの力は残るか?」

 

 俺は、少し離れた場所にある岩山を指差した。

 そこには、この近くに拠点を構える別勢力――アスガルズルの女兵士達が集まって遠巻きに俺とラオウの戦いを見守っていた。

 その顔には俺とラオウの戦いへの畏怖が張り付いており、今の所こちらに手出しする気配はない。

 だが決着が付いた後にどうなるかは分からない。

 

「…………」

 

 ラオウが無言で長考する。

 彼の中では今、ここで戦いを続行することの無意味さ、その後で生じる不利益、己の弱体化によるその後のサウザーとの戦いでの不利、拳王としての誇りなど様々な葛藤が生じているのだろう。

 冷静に考えれば、これ以上戦う利はどちらにもない。ラオウもそれは分かっているはずだ。

 だが拳王に後退はないと言っているように、退くことはそれ自体がラオウにとっては敗北なのだ。

 ならば……。

 

「俺は撤退する。できれば放っておいてほしいが……追って来るならば俺も覚悟を決めよう」

「……よかろう。逃げる敵の背をあえて追う必要はあるまい。だが次は容赦せぬぞ」

 

 ここでの正解は『俺が先に退く』、これしかない。

 こちらが逃げたという形にすればとりあえず、ラオウ側は俺を『見逃してやった』ことになるので面倒くさいラオウの誇りも守られるだろう。少なくとも拳王軍の後退ではない。

 ラオウやサウザーのようなタイプは、選択肢が『進軍』or『撤退』だと撤退を選ばないので自動で進軍が選択される。

 だがこれが『追撃』or『見逃す』になると、見逃すという選択肢も選べるようになるのだ。

 その狙いは上手くいき、ラオウは俺を追わないことを宣言した。

 要するに言い方を変えただけの両軍撤退なのだが、こういう小細工は意外と大事だ。

 

 

 こうして俺は退き、ラオウも追って来ることなく拳王府へ帰還した。

 

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【一撃技ではない翔鷲屠脚】

SSにするにあたってユダとジャギが描写的に無理のある技を没収されてしまったが、シンもまさかの一撃技下方修正。

何と腰抜けの奥義自体は残っているが、このレベルの一対一の戦いの最中にいきなり部下が出てきて敵を拘束するわけがないので一撃技ではなく、ただの大ダメージ技に下方修正されている。

ちなみに羽は隠し持っていても別にそこまで無理はないので普通に使える。

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