シン・南斗の拳 俺達の戦いはこれからだ!   作:マジカル☆さくやちゃんスター

13 / 56
第十三話 具体的にどう森なのかは突っ込んではいけない

 確保したデビルリバースをKINGシティに預けた俺は、ケンシロウを連れてとある場所を訪れていた。

 そこは風の強い山脈で、目的地に近付くにつれて聳え立つ塔……風力発電施設が見えてくる。

 

「シン……俺に会わせたい男とは?」

「かつて南斗の智将と呼ばれた男だ。南斗の軍勢を率いて幾度も勝利を収めたが、南斗が分裂したことに嫌気が差したらしく、今は世捨て人となっている」

 

 よく北斗の拳では……特に外伝系では、核戦争前は平和だったかのように描写されることがある。だが、決してそうではない。

 比較的平和だったというだけだ。

 そもそもいきなり核ミサイルを射ち合うはずがなく、それは最終手段である。

 そこに至るまでには過程というものがある。まず最初は小さな紛争が始まり、国同士の戦争へ発展し……各々の国の利権や企て、同盟国からの同調圧力や世論などにより徐々に戦火が広がった。

 そして何年も通常兵器による戦争が続き、その果てに指導者達は押してはならない禁断のボタンを押したのだ。

 リュウロウはそんな、核戦争以前の時代において南斗の部隊を率いて日本に攻め込んできた外国の部隊を退けてきた智将である。

 その知恵と実力は各勢力が喉から手が出る程欲するものであり、サウザーなんかは既に何度もリュウロウを自軍に引き入れようと使者を送っているが、悉く拒否されていると聞く。

 『天の覇王』ではラオウがスカウトに来るもこれを拒絶……従わないなら殺すという短絡的な手段に出たラオウによって殺害される、という最期だった。

 その際にリュウロウは民と共に在る者……つまりケンシロウとならば一緒に戦えると言っていた。

 そうであるならばラオウが来る前にケンシロウを連れた状態で話せば、結構友好的な感じで譲歩を引き出せないかと思ったのだ。

 ケンシロウと関わること自体が特大死亡フラグなので、リュウロウをここで誘うとリュウロウがケンシロウの為に死んでしまうかもしれないが……どのみち、放っておけばラオウに殺されてしまう。

 ならばまだ、生き残る目がある分ケンシロウと会わせる方がマシだろう。

 

 風車が乱立する場所まで行くと、そこにはボサボサ頭の冴えない男が立っていた。

 やる気のなさそうな顔に、鼻の頭の絆創膏、身体に密着しているサイズが合ってないような気がするセーターに、雑に巻かれたマフラー。

 その辺どこにでもいそうな、オーラの無いおっさんだが、その実一流の拳士にして策士。

 それが森のリュウロウである。

 彼は俺とケンシロウの姿を見ると、微笑を浮かべて快く歓迎してくれた。

 

「これはこれは。シン様……お待ちしておりました。いえ、それよりKINGとお呼びした方が?」

「好きに呼べ。俺が来ることが分かっていたような口ぶりだな?」

「ここは世界中の風が集まる場所……貴方達のことも、風が私の耳に運んでくれました」

 

 風……まあ要するに情報ということだ。

 こんな場所に世界中の情報など集まるとは思わないが、そこは流石森のリュウロウ、と思っておこう。

 

「こうして会うのは、先日の会議以来か。六聖が分裂してから、会う機会が減ったな」

「ええ……嘆かわしい事です」

「リュウロウよ、お前は我等六聖の分裂を目の当たりにし、争いに嫌気が差して隠居した身……今更俺の為に戦えなどとは言わん」

「ほう。ではKING自らここに来た理由は?」

「智将としてではなく、技術者としてのお前に用がある」

 

 俺は、周囲に並ぶ風力発電施設を見る。

 これだけの物を世紀末に自力で作るとか、こいつ半端じゃなく凄いな。

 この技術は、今後を考えると喉から手が出るほど欲しい。

 

「この風力発電はお前が作ったのか? 発電モーターはどこから調達した?」

「お恥ずかしながら、自作です。拙いものではありますが」

「これを全て自作か。見事なものだ」

「恐れ入ります。大した物ではありませんが、村人達は感謝してくれます。毎日取れたての新鮮な野菜を届けてくれて、祭りのある日なんかは肉や酒さえも」

「そう謙遜するな。この施設にはそれだけの価値がある。その技術と知恵を我がサザンクロスに分けてほしいのだ」

「ほう……」

「ここに我がサザンクロスの技術者、エンジニアを寄越す。お前がここを離れる必要はない。

そいつ等にお前の持つ技術と知恵を与えてやってほしい」

 

 KINGシティは世紀末では珍しく発電施設と電気設備が生きている。

 その前身となったゲッソーシティの……そして前支配者であるシスカの遺産だ。

 そのメンテナンスは、かつてパソコン会社の社長だったグルマ率いるエンジニア集団に任せているが、やはり膨大な設備だけあって一から同じ物を造ることはもうできない。

 つまり小さな故障程度ならどうにかなるが、完全に壊れてしまえばもう替えが利かないということだ。

 そうならないように万全を期すつもりだが、何せこんな時代だ。いつ馬鹿が押し寄せてきて壊されるか分からないし、いつか壊れる時は必ず来る。

 だから、そうなった時の為の替わりを今のうちに用意しておきたい。

 そしてその替わりは、ゲッソーシティの設備のような『性能がよくてももう再現できない』物ではなく、『多少劣るとしても一からまた新しく造れる物』であることが理想だ。

 また、この風力発電ならばサザンクロス領内に大規模な施設を作ることで、最終的にはサザンクロスの全ての村に電気の恩恵を届けることも可能となるだろう。

 文明の光を末端の村まで行き渡らせることも夢物語ではなくなるのだ。

 

「理由をお聞きしても?」

「発電設備があればサザンクロスの全てに電気を届けることができる。そうなれば少しは今よりマシな生活ができるだろう。核戦争を生き延びた地下施設からは無傷の電化製品も多く発掘されているが、これらも電気さえあれば使えるようになる」

 

 核戦争で色々な物が失われたが、一方で無傷のまま残っている地下施設も多い。

 それはかつて駅地下だった場所や、デパートの地下だった場所などだ。

 そうした場所には今もほぼ無傷の電化製品……冷蔵庫や洗濯機、炊飯器、電子レンジなどが眠っているが、現状だと電気設備の生きているKINGシティくらいでしか使ってやれない。

 だが領内に電気が行き届けば、民の全て……とまでは言わないが、村全てに配備するくらいはできるようになるはずだ。

 

「それは民の為ですか?」

「結果的にはそうなる」

「結果的に……ですか」

「お前を相手に隠し事や誤魔化しをしても意味がないからハッキリ言おう。俺は別に民の為だとか、民に寄り添うだとかは考えていない。本質的にはラオウやサウザーとそう変わらん。力によって抑え付け、恐怖によって従える。程度は違えど、俺もその同類であることは否定しようのない事実だ」

 

 ラオウの名前にケンシロウがピクリと反応した。

 そういやこいつって、この段階だとまだラオウが生きてること知らないんだっけ?

 

「ただ、民が痩せ衰えた惨めな国など欲しくない。俺が王になるからには、誰もが羨む偉大な国でなければならん。その為の近道こそ、民を富ませ、民を守ることだ」 

 

 力と恐怖による統治は、リュウロウが嫌うものだ。

 だから俺は、リュウロウが俺の軍師になってくれるだとかは期待していないし、誘いもしない。

 俺はラオウのやり方にケチをつけたが、恐怖による秩序……その効果自体は否定しない。

 ただその向ける先と、極端すぎることでラオウとは相容れないが、俺も結局は恐怖を用いている。

 

「そもそも、秩序と恐怖は表裏一体だ。戦前の世界にあった警察や司法機関も、極論から言えば『悪事を働けば酷い目に遭う』という恐怖による抑止力だったと言える。ある程度の恐怖がなくば、人は容易く獣になる。ましてやこんな時代だ……誰かが恐怖の蓋とならねば、弱者はただ食い荒らされるだろう」

「……恐怖の蓋……ですか」

「そうだ。例えばこの焼けた森……ここはいい土地だな。森は焼けているが、大地が生きている。若葉が芽吹いているということは、水脈も通っているのだろう。ならばここは、放っておけばやがて豊かな森となる」

 

 俺は周りの燃えた森を見て、素直にいい土地だと評した。

 流石リュウロウだ。いい場所を見付けたものだと感心する。

 人の手を加えずとも勝手に緑化する土地……それは今の時代では貴重な宝だ。

 

「しかしここは放っておけば森にならない。先程と矛盾しているが、その理由は分かるか?」

「踏み荒らす者がいるから……ですね?」

「そうだ。だから恐怖の蓋が必要なのだ。そういった獣が生まれないようにする為に。そして力が必要なのだ。既に理性を捨てて獣未満の何かになり下がった連中を間引く為に」

 

 いや実際ね、ヒャッハーしてるモヒカン共とかどうしようもないだろ。

 あいつ等が説得だけで更生するなんて期待するだけ無駄だし、だったらもう処すしかない。

 残しておいたら女子供問わず殺して奪って犯して、自分では何も生産しない。

 最早人間ではないナニカ。害虫……いや、その呼び方は害虫に無礼か。

 害虫と呼ばれるものですら、人間の生活にとって害となるだけで自然の中で何かしらの役割を果たしている。何かを生産している。

 しかしヒャッハー共はそれすらないのだ。

 こんなん、邪魔以外の何者でもないわ。だったら間引くしかない。

 

「そう……間引きだ。若葉を育てるならば間引きの重要さはお前も知っているだろう。

育つのを妨害する余計な物を間引き、育てたい苗を生き残らせる。俺にとって育てたい苗とは国を発展させる民であり、間引きの対象はその邪魔となる獣共だ」

「……なるほど。技術提供のお話、喜んでお受けいたしましょう。民が豊かになるのは、私にとっても良い事です。ただし条件がございます」

「言ってみろ」

 

 条件ねえ。まあ内容次第だわな。

 こいつのことだから、そこまでアホな条件は吹っ掛けてこないとは思うが。

 

「この土地と、ここに暮らす人々もサザンクロスの領内に加えていただきたいのです」

「……悪くない条件だ。むしろ俺に得しかない。だがいいのか?」

「貴方を始め、今や王を名乗る者達が乱立しています。しかしその中の誰一人として民の心を掴んだ者はいない……貴方以外は。この土地もこのままではいずれ、誰かに食い荒らされるでしょう。ならば、先に貴方の支配下に入っておいた方がいい。そうすればラオウもサウザーも、迂闊には近付けなくなる」

 

 なるほど、強かな奴だ。

 確かに俺の支配下ならば、俺はそれを守る義務がある。

 そして俺が矢面に立てば、ラオウやサウザーといえどこの土地を踏み潰せない、と思ったわけか。

 

「先日の貴方とラオウの戦いは知っております。先も言った通り今は王が乱立している……しかしラオウとサウザーに対抗できる王は、貴方だけです。ならば今は貴方の庇護下にいるのが民にとって最も安全」

「……! シン、ラオウと戦ったのか!? ぶ、無事なのか?」

 

 ケンシロウが心配そうに俺を見る。

 そんな彼を、俺は嘲笑ってやった。

 

「フン、お前などが俺の心配をするなど十年早い。案ずるな……たとえラオウ相手といえど、遅れを取るこの俺ではないわ」

「そ、そうか……良かった」

「リュウロウ、その話を呑もう。今この時より、この森は俺の支配下だ」

 

 少し緩衝地帯を切り取ってしまう形になるが、幸いにしてここはサザンクロスと隣接している。

 それにそんなに広くもないから、まあ誤差だろう。

 ただできれば緩衝地帯はこれ以上切り取りたくないので、これっきりとしておこう。

 緩衝地帯には牙一族やアスガルズルといったいくつかの勢力があり、奴等という防波堤は残しておきたいのだ。

 ……まあ牙一族は近々、ケンシロウに潰されてしまうだろうが、アスガルズルさえ残しておけばいいだろう。

 

「俺の用はこれで終わりだ。そして次は智将としてのリュウロウに会ってもらいたい男がいる」

「そちらの、ケンシロウさんですね?」

「そうだ。お前は南斗に見切りを付けた。そして圧政を敷き、恐怖で抑えつける王には従わぬ。ならば、そのお前から見てこの男はどうだ?」

 

 ケンシロウを強くしたり、仲間を付けたりするのは俺にとって諸刃の剣だ。

 こいつは善人だが、その行動基準はあくまで実際今見ているものと、感情と義憤に依存している。

 例えばどれだけ農地を開拓して、結果的にその作物で多くの人々が飢えから救われるとしてもケンシロウ判定で悪党ならアウト。外道に生きる価値なしとして抹殺されてしまう。

 したがって、いつその拳がこちらに向けられるか分からない。

 しかし先日ラオウと戦って痛感したが、やはり俺が直接戦って倒すのはかなり難しい。

 そしてラオウもサウザーも、俺がコントロールするのは絶対に不可能だ。

 それならば、まだ多少はコントロールできそうなケンシロウを鍛えて奴等にぶつけた方がマシと思ったのだ。

 それに、リュウロウならばあるいは、ケンシロウに先を見るということを教えてくれるかもしれない、という期待もある。

 

「ふむ……哀しい眼をされておられます。そして民と共にある、優しい眼でもある」

「つまりケンシロウはお前の眼鏡に適ったのだな」

「それはもう」

「ならばよし」

 

 上手くいった。これでケンシロウに、リュウロウという外付け頭脳を付けることができる。

 

「リュウロウよ、うちの技術者に技術と知恵を伝授した後はケンシロウと共に往くがいい。

この村の民衆は、既にサザンクロスの民だ。誰が来ようと俺が守ってやる」

「ありがたい……お願いします、KING」

「そしてケンシロウよ。その男は南斗随一の切れ者……そいつと共に往き、広い視野を学べ」

「広い視野……シン、お前はその為に俺をここに……」

 

 さて、これでリュウロウの死亡フラグを折った……とは断言できないが、風の吹く方向は変えられたはずだ。

 頼むから、俺にとっていい方向に吹いてくれよ。

 

────────────────────────────────────────────

 

シン「リハクの野郎、サザンクロスを盾にしやがった!」

ユウ「KINGの野郎、アスガルズルを盾にしやがった!」

 

【森のリュウロウ】

風のヒューイと炎のシュレンは風と炎を操る。二つ名に偽りはない。

山のフドウは山のようにずっしりしているのでまあ分かる。

しかし雲と海はかなり苦しい。

森に至っては森要素が全然見えない。

まあ髪型はブロッコリーっぽいけど……。

 

【核戦争以前の北斗世界】

よく北斗世界は核戦争前は平和だったように描かれるが、果たして本当にそうなのかは疑わしい。

普通に考えて戦争開始→即核ミサイル発射は流石にないと思う。

原作でも何度か回想シーンが出るが、核戦争前なのに既に荒廃している

(アニメや一部外伝だと核が落ちる直前まで平和だったような描写をされていることもあるけど……)。

また、1990年代といえば平成である。しかし回想シーンの人々の恰好は平成の日本とは思えないほどに既に世紀末。肩パッドを付けてる奴が当たり前にいるし、主要人物も悉くが「お前本当にその服装で平成の日本で生きてたんか?」と言いたくなる恰好。

ココ(トキの犬)をボウガンで撃つやばいのもいたし、フドウに至っては最早論外。

この事から、このSSでは核戦争前から通常兵器による戦争が続いていて、既に世界は結構アカン事になっていたものとする。

 

【シスカの遺産】

シスカは元々グルマの部下であり、彼が保有していた電気設備も元々はグルマの会社のもの。

つまり正確にはシスカの遺産ではない。

 

【哀しい目をしたケンシロウ】

例の作画崩壊ケンシロウ。

哀しい目をしている……。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。