シン・南斗の拳 俺達の戦いはこれからだ! 作:マジカル☆さくやちゃんスター
「墓標になってしまった……」
俺はKINGシティの教会裏に作られた集団墓地で、新しく追加されたダイヤの墓を見ながら溜息を吐いた。
……上手くいかないものだ。
今回の拳王軍侵攻にあたって、俺はかなり後手に回ってしまった。
ラオウ襲撃に勢いよく打って出たはいいが、途中でカレン率いる別動隊とぶつかった事でタイムロスが生じ、ラオウ撤退に間に合わなかった。
俺が到着した時は既にラオウが去った後で、しかもライガとフウガが死んでリュウロウも片腕をやられていた。拳士としては死んだと言っていい。
リュウロウの戦線離脱はなかなか痛いが……いや、ここは好都合と見るべきか。
元々リュウロウは病の身で、いつまでも戦える身体ではない。
ケンシロウもリュウロウと旅をして少しは広い視野を学んでくれたかもしれないし、リュウロウはそろそろ後ろに下げていいだろう。
幸いにしてリュウロウは戦闘力だけの男ではない。
今後はサザンクロスで療養させつつ、必要な時に知恵を借りるとしよう。
ライガとフウガの死に関しては……まあ……冷たいようだが、別に俺はなんの接点もないし……。
そしてやってくれたのがユダだ。奴は俺が不在の隙を狙ってサザンクロスに侵攻した。
こちらはレイの活躍のおかげでユダを返り討ちにし、被害もそんなに出なかったのが救いだが、この戦闘でダイヤが殉職してしまった。
これで四重臣の空席が二つ……そろそろ、誰か入れないと不味いな。
幸いにして、候補はいる。
今回の拳王軍侵攻で俺が得た、唯一の戦利品。上手く行けば、彼女にダイヤの後継を任せられそうだ。
だがその為にはまず、彼女の荒れた心をどうにかする必要があるだろう。
そこで俺は彼女――カレンを、レイと引き合わせた。
それとどうでもいいが、今回の戦闘でレイとマミヤの間に何かフラグでも立ったのか、妙に親密というか……二人で一緒に並んでいるのが印象に残った。
ユウ、カレン、ユダときて今度はマミヤか……あいつ、本当にモテるな。
「どうなるのかしらね」
「さあな……上手くレイが懐柔してくれればいいが」
場所は変わって応接室の外。
俺はクイーンと共に、そこで待機していた。
応接室の中では正気に戻ったカレンがレイと話している。
「ところで、彼女がこちらに加わってくれても、まだ空席が一つあるわ。どうする気?」
「それなんだが……実は一人、心当たりがある。ラオウを止める為ならばあの男も力を貸してくれるかもしれん」
サザンクロスの幹部がいつまでも空席というのはあまりよくない。
見栄えが悪い……とだけ言うと、大した事がないように聞こえてしまうが、見栄えというのは大事だ。
いつまでも幹部の代わりを補充しないのでは、他所から『サザンクロスは人材不足』と見られ、舐められてしまうだろう。
いっそ適当な実力者を入れてしまってもいいのだが、どうせなら六聖拳とも戦えるようなレベルの戦士を迎えたい。
そういう意味ではカレンは合格だ。彼女は戦い方と状況次第ではユダとも互角に戦える実力者である。
実力だけを言うならジャギもありなんだが、こっちはアンナがいるとはいえ、あまり権力を与えたくない。
デビルリバースも実力は申し分ないんだが、何せオツムがな……。
「あ、出て来たわ」
クイーンの声で、思考の海に沈みかけて来た意識が現実へ戻った。
開いたドアの方向を見ると、そこに立っていたのは見知らぬ可憐な娘。
翡翠色の髪で片目を隠し、顔立ちは幼い印象を受ける。
服装は少し露出が多く、上は水着のブラ、下はホットパンツ。膝まで届くソックスを履き、上からは前の空いたパーカーを着用していた。
……? 誰だ。
いや、待て。見覚えがないと言ったが、よく見たら以前見かけた事がある。
修行時代のレイの周りにいつもいて、シュウを慕っていた娘だ。つまりこいつ……カレンか!?
「あ、あの、シン様……先日戦ったばかりでこう言うのもおかしな話ですが……お久しぶり、です……カレン、です」
「あ、うむ……」
別人やんけ!
あの厚化粧ボンデージ女どこいった!?
さり気無く布面積が少ない辺りに面影があるが、少なくとも同一人物にはまるで見えない。
「驚いたな。まるで別人だ」
「実際その通りだ。お前と戦った時のカレンは秘孔で心を封じられ、無理矢理凶暴化させられていたのだろう? だが本来のカレンは優しい子だ」
遅れて部屋から出て来たレイが、カレンの肩に手を置く。
するとカレンは目に見えて、頬を赤らめた。
うーん……この色男。
「この子は兄を目の前で失ったショックと悲しみに耐えられず、打倒聖帝を目指して拳王の軍門に下った……だがそこでも優しさを捨てきる事が出来ず、別人になるしかなかったのだ」
「なるほど。それで、まだ復讐は諦めていないのか?」
話を聞く限り、この娘は復讐にまるで向いていない。
俺は復讐を悪い事だというつもりはない。
以前も語ったように、復讐は何かを生み出すプラスの行為ではなく、心の中のマイナスを消す行為だ。
しかしカレンは話が違う。向いていない復讐者など、悲惨な末路を辿るだけだ。
……理屈ではないのだろう、というのは分かる。敬愛する肉親を目の前で惨たらしく殺された怒りと悲しみは、抑えようと思って抑えられるものでもあるまい。
カレンは俺の問いに、少し悩んでから小さく頷いた。
「はい。私は……私は、どうしても聖帝軍を……聖帝サウザーを許せません」
「そうか。だがハッキリ言おう、お前では無理だ」
「っ!」
「ケンシロウのように怒りと哀しみを暴力へ変え、悪党に報いを受けさせることが出来るならば、あるいは可能性もあるだろう。しかしお前はそうではない」
ケンシロウは何だかんだ言っても、暴力型の人間だ。
気に食わない奴がいたら基本的にはぶっ飛ばすし、そこに躊躇などない。
だがカレンは悪党相手であっても、命を奪う事への抵抗が勝るタイプだ。
「故に問おう。その復讐……俺に預ける気はないか?」
「え?」
「お前の代わりに俺が聖帝軍を始末し、お前の兄の無念を晴らしてやる。
だから拳王ではなく、この俺に付け。お前の拳才、ここで潰すには惜しい。
乱世を平定するサザンクロスの剣となれ、翡翠拳のカレンよ」
俺はカレンに手を差し出す。
「奪われぬようにする為には、逆に奪うくらいの力が必要だ。
この手を取れ。そうすれば俺がお前に、奪われぬ為の力をやろう」
「奪われない……力……」
「いずれ俺かケンシロウか……そのどちらかがサウザーと雌雄を決する日が来る。
だがその時、サウザーは必ず弱い者……つまり、かつてお前が所属していたレジスタンスを狙う。
そして……ケンシロウは知らんが、少なくとも俺は、決戦の時にレジスタンスを守りながら戦う事はない。サウザーがレジスタンスの誰かを人質に取ったとしても、見殺しにしてサウザーを討つ」
これはハッタリではない。
原作でのシュウとの戦いを見るに、サウザーは人質が有効と思えば迷わず人質を使う。そういう男だ。
ケンシロウ相手に使わなかったのはまあ、主人公補正として、俺相手に人質を使わないという保証はない。
そしてもし、そうなれば……俺は勝利の為に、人質を見捨てる。
俺はそういう奴だ。
「だから、お前が守ってみせろ」
「私が……?」
「そうだ。お前の兄はもういないが、レジスタンスはお前の仲間なのだろう?
ならばお前が奴等を守れ。レジスタンスを……シュウとシバを。俺の手が届かぬ場所をお前がカバーしろ」
俺の言葉にカレンの瞳が揺れた。
「お前は、復讐には向かん。秘孔を突かねば非情になれんほどに、奪う事に向いていない。
だから俺とサザンクロスが、お前に足りん『奪う力』となってやる。
その代わりにお前は、俺にない『守る力』となれ。奪われん為に、俺に付け! カレン!」
カレンは俺の手をじっと見る。
数秒の沈黙――やがて、意を決したように彼女は俺の手を掴んだ。
「私はもう、奪われたくない! 師父を……皆を、守りたい! シン様……いえ、KING! 私の拳、貴方に預けます!」
「よかろう! ならばお前に新たな名を与える! 今、この瞬間よりお前はサザンクロス四重臣の一人、宝石の輝き……『ダイヤ』のカレンだ!」
★
「ここは私の故郷。私はここで生まれ育った」
「…………」
今、俺はなんとも言えずに目の前の男を見ていた。
俺の前で今話している男は、先に言っておくとトキではない。
黒髪に、トキそっくりの顔……全てを受け入れるような澄んだ瞳――アミバである。
あかん、やりすぎた。
「命は投げすてるもの」
すっかりトキ2Pカラーと化してしまったアミバを見て、俺は自分の失敗を認めないわけにはいかなかった。
一体何故こんな事になっているのか……それを説明するには、アミバがサザンクロスに輸送されてきた時の事を話さねばならないだろう。
上手く使いこなせばきっと、人の為になるだろうと思ってリュウロウが送ってきたのは分かる。
実際俺もアミバの才能は買っている。
だから最初は俺も、それなりにいい待遇を約束しつつ民を木偶にしないなどの条件でアミバを引き入れようとしたのだが……まあ案の定、無理だった。
イチゴ味では何故か最初からトキに懐いていたり、自己主張が控えめだったりでトキの弟子ルートが拓かれたが、この世界のアミバは普通に自己顕示欲の塊だった。
更に実際対面して分かったが、アミバからの南斗六聖への好感度はマイナスで、六聖の座を寄越せだのなんだのと言い出す始末。
これは流石に制御出来そうにないな……そう思った俺の中にアミバの拳と筋力を奪うという選択肢がチラ付き始めた頃に、アミバはふざけた事をほざいてくれた。
『そうだシン! 提案がある!
――俺は奴の言葉の意味を認識するよりも早く、無言でアミバの死環白を突いた。
死環白は目の光と共に一切の情愛を失う秘孔。正確には破孔!
突かれた者は記憶を失い、再び目覚めた時に最初に見た人間にその情愛の全てを捧げる!
うん……気付いたらやっちまってたわ。
俺の中の本能的な何かがこいつの人格いらねーなと判断したのかもしれない。
そしてこちらで用意した俺の部下の女性と最初に対面させ、彼女を愛し、彼女に従うように仕向けたのだ。
そうして出来上がったのが、目の前にいるトキ2Pカラーだ。
「ジェニファーは私達の青春だった。フッ……愛するが故に見守る愛もある」
「あの……KING、これ……」
「……すまん、まさかこうなるとは。嫌なら止めても構わんぞ……これは明らかに俺の不手際だ」
「いえ、私も承知の上でこの任務を受けましたが……いいんですか? これ」
アミバが言っているジェニファーとは、俺の部下で死環白を突かれたアミバに最初に見せた女性である。
勿論彼女には最初に、才能だけは本物だが人格が捻じ曲がったクソナルシストに一目惚れしてもらって、コントロールする任務である事を事前説明している。
しかし彼女も、聞いていた話と全然違う目の前の男の様子に戸惑いが隠せないようだ。
「俺は天才だあ!」
「あの……大丈夫ですか……?」
「……大丈夫、大丈夫だ……」
時々、素のアミバが病気のように漏れる目の前の偽トキから思わず目を逸らしてしまう。
どうしてこうなったのだろうか。
記憶を失うまではいいとして、なんでトキになった?
自分が誰かも忘れたが、トキへの妄執とトキになりたいという願望だけは消えずに自分の事をトキだと思い込むようになってしまったのか? そんな馬鹿な。
「アミバ……その……変わってしまったな……いや、変えてしまった俺が言う事ではないが」
「フッ、だがまだ生きている」
「そ、そうか……」
「辛そうな顔をしているな。これを渡しておこう、苦痛に耐えられぬ時飲むがいい」
そう言いながら、アミバは俺に酒を渡してきた。
いや、それお前のじゃないから。
冷蔵庫から勝手に出すんじゃない。
「耐えられぬ。飲む」
飲んでんじゃねーよ!
……とりあえず、この偽トキは本物には会わせないようにしよう。うん。
★
カレンをサザンクロスに迎え入れた翌日。
俺は次なる空席を埋める為、山奥を訪れていた。
目的は山奥にある洞窟……その中で隠居生活を送る一人の男だ。
洞窟の前に着くと、そこには二人の若者が武器を持って待機していた。
「コウリュウの息子のゼウスとアウスだな? 南斗聖拳のシンが来たと伝えろ」
「南斗……」
「……いいだろう」
二人のうちの一人が、洞窟の中へ入って行った。
俺がサザンクロスに迎え入れたい男、それは北斗神拳のコウリュウだ。
かつてはリュウケンと伝承者の座を競い、拳ではリュウケンを上回っていたが自ら退いたという経歴を持つ。
もっとも、リュウケンより強かったというのはあくまで修行時代の話で、後のラオウ戦を見ればリュウケンより強いとは思えないが、それでもかなりの実力者である事は間違いない。
少し待っていると、洞窟から男が戻ってきた。
「父が中で会われるそうだ」
「うむ」
洞窟へ足を踏み入れ、奥へ進む。
すると、淡々と木彫りの人形を作り続ける男の背中が見えた。
彼は人形を彫る手を止めず、背中越しに俺に話しかける。
「来たか……南斗聖拳のシン」
「北斗神拳のコウリュウ……拳では先の伝承者リュウケンに匹敵する実力を持ちながら、伝承者争いから退き、自ら拳を封じた男よ。その封印、解くつもりはないか?」
コウリュウはこちらを見ない。
だが、人形を彫る手が止まった。
「北斗神拳は一子相伝、伝承者争いに敗れた者はその拳を封じるが定め。
しかし拳を封じる事なく、覇道を突き進む男がいる」
「……ラオウか」
「ケンシロウとの戦いに傷付き、今は行方を晦ませている。だがいつか必ず拳王は帰って来る。
奴の率いる拳王軍に対抗する為に、そして拳王が倒れた後に恐怖の楔から解放された暴徒共を潰す為に、俺は一人でも多くの強い将が欲しい」
拳王軍は今、肝心の拳王が不在でかつてないほど弱体化している。
ならば今こそ、各地に散開して好き勝手している拳王軍を叩くチャンスだ。
ラオウが戻る前に、ラオウの駒を減らせるだけ減らす。その為には部隊を預ける事の出来る将が必要だ。その将となるべき突出した『個』がサザンクロスにはまだ足りていない。
ここまでは守ってきた。だが攻めに転じるべき時が来たのだ。
それに、拳王が倒れても終わりではない。その後には恐怖という秩序が崩壊した拳王軍残党が残る。
その時には我がサザンクロスが残党を始末し、世を平定する。
その為にも、力がまだまだ足りないのだ。
「コウリュウよ、一度は封じたその拳……俺に預けて欲しい」
コウリュウはこのまま放置すると、近い未来にラオウに殺される。
だがそれはあまりに惜しい。
だからそうなる前に、こちらに引き込みたい、と俺は思っている。
「その必要はない。ラオウの拳は、私が封じる」
「残念だがそれは無理だ。ラオウは貴様の想像の遥か上を往く」
「ほう。ならばその身で確かめてみるがよい」
コウリュウは自らの手でラオウを倒そうと決意している。
だがそれは無理だ。俺が原作知識で知っているから――だけではない。
こうして実際に相対して確信した。
コウリュウにラオウは倒せない。
リュウケンは病に冒されていなければラオウに勝てただろう。そしてコウリュウはそのリュウケンより上だったという。
ならば単純に不等号を付ければ、コウリュウ>万全のリュウケン>ラオウ>病のリュウケン、となるはずだ。
だが、残念ながらそう単純ではない。
「よかろう、言葉で言っても納得出来まい……来るがいい」
俺は招くように手を動かし、コウリュウの攻撃を誘う。
同時にコウリュウは拳を突き出す――が、俺はそれよりも速くコウリュウの懐に飛び込んで首筋に手刀を添えた。
「ぬっ……!」
「マグレだと思うか? 納得出来んならばもう一度来い」
一度距離を空け、コウリュウに先手を譲る。
コウリュウは警戒したようにゆっくりと構え、そして突き――と見せかけて、蹴りを放った。
だが俺は紙一重でそれを避け、再度コウリュウの首筋に手を当てる。
「貴様ほどの男ならば、もう分かるだろう……これが、今の貴様の実力だ」
「ぬぬっ……!」
「闘気も超一流、技の冴えも超一流……決して俺やラオウに見劣りするものではない。
その貴様が何故、これほどの遅れを取るのか」
コウリュウは確かに強い。歴代の伝承者と比べても見劣りしないだろう。
だが残念ながら、『歴代伝承者クラス』だ。歴代最高クラスのラオウ、トキ、ケンシロウには及ばない。
何故ならコウリュウには足りていないものがある。
「それは、実戦経験の差!」
「私に経験がないと語るか、小僧……!」
「年季を語れば俺より遥かに上だろう。鍛錬も決して欠かしていないだろう。
それは、貴様の全身から放たれる、衰える事のない闘気が証明している。
だが貴様は自ら伝承者の座を退き、拳を封じた。
つまり……それ以降、実戦経験を積んでいない」
コウリュウはかつてリュウケンを上回っていた。
だが自ら拳を封じたコウリュウはそれ以降、戦っていない……恐らくは、核戦争が起こるまで。
流石に世界がこんなになってしまって以降は、自らの身を守る為に野盗くらいは倒しているだろうが、互角のレベルの強者との戦いはしていないだろう。
それではいくら鍛錬を続けようと、拳が錆びるのは止められない。
一方リュウケンは伝承者となってから、幾度もの他流試合や、北斗神拳の使命としての要人暗殺、あるいは要人の護衛との戦いを潜り抜けて来たはずだ。その中には魔道へ堕ちたジュウケイすらいたのだ。
一線を退いてからも弟子の育成を続け、当然弟子達を相手に組手を行っていた。
伝承者を退いたその時から拳が錆び続けてきたコウリュウと、強くなり続けたリュウケン。その差は決して小さくない。
恐らくは全盛期のリュウケンどころか、病に冒されたリュウケンを比較対象としても、コウリュウが劣るだろう。
コウリュウがリュウケンに勝るという評判はあくまで、伝承者になる前のリュウケンと比較した場合の話でしかないのだ。
「そう……今の貴様はリュウケンより弱い!」
「…………」
「錆び付いたその拳では相打ちに持ち込む事すら出来まい。その錆を落とす為の実戦という名の研ぎ石……欲しくはないか? 俺ならば、好きなだけくれてやれるぞ」
コウリュウは答えない。
流石に、拳法家としてショックだったのか、それとも思う所があるのか。
構わず、俺は言葉を続ける。
「貴様は十分我慢した。兄弟弟子と殺し合う事に疑問を覚え、拳を封じた。だが本当にそのままでいいのか?」
「……何が言いたい」
「貴様の拳は戦いたいと叫んでいる。闘争を望んでいる」
コウリュウの闘気は衰えていない。あのラオウが絶賛するほどで、それは俺も感じている。
妙ではないか。兄弟弟子との殺し合いを嫌い、拳を封じたはずの男が何故これだけの闘気を持っている。この強靭な肉体は鍛錬を欠かしていない事の証……何故拳を封じた男が鍛錬を続けている。
それは、コウリュウが戦いへの渇望を捨てきれていない事の証だ。
そもそも彼は、リュウケンとの殺し合いを嫌って身を引いただけだ。拳法そのものに嫌気が差したわけでもなく、実力で候補から落ちたわけでもない。
俺の言葉に応えるように、コウリュウの闘気が強まった。
「己の欲望に素直になれ、コウリュウ。
磨き上げたその拳、ただ封じるだけでいいのか? 封じる為にそこまで鍛えたのか?
錆びさせる為に厳しい鍛錬を乗り越え、それだけの力を手にしたのか?
そうではあるまい」
「…………それは」
「欲望こそが強さに繋がる。お前の拳に足りぬものはそれだ」
コウリュウは拳を封じた後、伝承者争いに敗れた者達を供養し続けて来た。
何故そんな事をしていたのか……それは、折角鍛えた拳を封じられる苦しみ、悲しみを誰よりもこの男が理解し、共感出来たからだ。
だから、自分と同じ境遇の者達を供養する事で自らを慰めていた。
「いつまで古い掟に縛られる。貴様が遠慮するべき相手のリュウケンはもうこの世にいない。
奴はラオウという怪物を世に解き放ち、そして死んだ。
ならば貴様は一体、誰に遠慮する事がある? 何を迷う事がある」
コウリュウは誘惑を振り切るように、俺に背を向けた。
だがそれこそ、俺の言葉が効いている証拠だ。
それに、先程から高まり続けている闘気が本音を隠せていない。
コウリュウは拳法家として、戦える場所を求めている!
ただそれを、掟と理性、そして甘さによって抑え込んでいるに過ぎない。
「その拳で掴み取れ――今は悪魔が微笑む時代なのだ!」
俺の言葉に応えるように、あるいは咎めるように。
洞窟の外で落雷が落ち、閃光が俺達二人を照らした。
「……………………。
…………帰ってくれ」
コウリュウは、やっとの思いで絞り出すように、小さな声でそう告げた。
俺はその返答に小さく笑い、背を向ける。
帰れと言われてしまったが、手応えはあった。コウリュウの全身から立ち昇る闘気はますます昂り、言葉とは裏腹の本心を俺に雄弁に伝えている。
「サザンクロスで待つ。席はいつでも空けておくぞ」
マントを翻し、俺は洞窟を後にした。
――そしてその数日後……サザンクロスは、新たな四重臣スペードとして、コウリュウを迎え入れた。
キング:南斗六聖拳シン
クイーン:サラ(外道伝 HEART of Meet)
ジャック:ジュガイ(真救世主伝説 『ZERO ケンシロウ伝』)
エース:ガルダ(金翼のガルダ)
ハート:アルフレッド(原作/外道伝 HEART of Meet)
スペード:コウリュウ(原作)
ダイヤ:カレン(蒼黒の餓狼)
クラブ:島谷こうへい(原作/追憶のへヴィメタル)
ジョーカー:ジョーカー(アニメ)
食客:南斗六聖拳レイ(原作/蒼黒の餓狼)
相談役:森のリュウロウ(天の覇王)
同盟:南斗六聖拳シュウ(原作)
医者:アミバ(原作)&デュラン(アニメ)
クラブ(やばい……明らかに俺だけ格下!!!)
死兆星(そろそろ狩るか……♣)
【翡翠なのにダイヤ】
翡翠拳の使い手であるカレンをスカウトに成功。
ケバい外見から、修行時代の美少女に戻った。
ハマーンだってシャアと和解すれば14歳の時の顔に戻るんだし、このくらいええやろ。
【コウリュウ】
かつてリュウケンと伝承者の座を争い、龍虎と称された男。
一時期、コウリュウ=霞拳志郎説があったが今は完全否定されている。
拳ではリュウケンを上回っていたと言われるが、それはあくまで伝承者争いをしていた頃のリュウケンなので伝承者になった後のリュウケンと比べてどうなのかは不明。
このSSではリュウケンより下としている。
ケンシロウだって伝承者になる前と原作最終巻時点では天と地の開きがあるし。
極端な話、最終回付近で「かつてケンシロウより拳の腕は上だったが、自ら伝承者を辞退した男!」なんてのが登場したとして、「今のケンシロウより強いのか!」とは思わないわけで……。
【実際コウリュウってどのくらい強いのだろう】
描写だけで判断すれば六聖拳上位くらいの強さはあると思われる。
このSSではサウザー未満レイ以上。
【コウリュウの息子二人】
名前はゼウスとアウス。ゼウスは北斗ワールドでの名前負けキャラランキングがあれば一位を狙える逸材。
一応コウリュウと一緒にKING軍入りしたが、弱いので下っ端。
多分今後は名有りモブ程度の扱いになる。
【今は悪魔が微笑む時代なんだ!】
本来はジャギがシンを魔道に誘惑した台詞。
このSSではシンが言った。
【トキのようななにか】
かつてアミバだったもの。
シンの地雷を踏みぬいた結果、死環白を突かれて記憶が飛ぶ。
以降、自らをトキと思い込むようになった。
しかし時々アミバに戻る。