シン・南斗の拳 俺達の戦いはこれからだ!   作:マジカル☆さくやちゃんスター

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第三話 私の弟がこんなに肉達磨なわけがない

 ダンネを連れて城に入った俺は、最上階へと向かった。

 そこは今まではシスカの部屋だったが、これからは俺の物だ。

 ただ、椅子や机、ベッドなどは全て外から運び込んだ別の物と取り換える。

 あの脂ぎったカエル男の使っていたベッドなんかで寝たくないからな。

 ともかく、これで足掛かりとなる拠点は確保した。

 後はここから勢力を広げ、俺にとって居心地のいい文明社会を少しずつ復興していこう。

 ただ、悪政は敷かない。それをやるとケンシロウとかいう自動追跡悪党抹殺マシーンが来てしまうからな。

 

 とりあえずまずは奴隷改め、労働層だが、前科持ちはそのままとする。

 前科のないただの被害者……ダンネ一家のような人々は、町を離れるか、それとも町に留まって仕事先を選ぶかを自由に決めさせよう。

 まあ、この町を離れて生き延びられるとは思わないけど、そこは本人の自由だ。

 その事によって不足する労働層は、既に手を打っている。

 ジョーカーやハート、ジュガイに付近の野盗団を壊滅させるように指示を出しており、生き残った野盗は労働層として補充する予定だ。

 一定期間何事もなく労働に勤しめば待遇改善。逆に反逆の兆候があったり態度に問題があったりした場合は食料の量も減らし、実際に反逆を行えば真面目に働けば食っていけるだけの力だけを残し、筋力を奪う。

 ケンシロウがやっていた鋼筋分断脚の真似事だな。こういう切断系はむしろ南斗の方が得意だ。

 これでもまだ反逆するなら、もうどうしようもないので見せしめに公開処刑する。

 こうして付近の野盗を捕獲することで労働力の確保になり、同時に治安向上にも繋がる。

 いずれはサザンクロスの周囲にも村を増やしていく予定だが、その村が野盗に襲われて壊滅しました、じゃ話にならんからな。

 まずは掃除と整頓。拡大はその後だ。

 

「おい! 私をどうする気だ?」

「どうする、か……その問いに答える前に、俺の質問に答えてもらおう。

小娘……お前は北斗七星の横にある星を見たことがあるか?」

「あ、あるよ! それがどうした!」

 

 はい、アウト。それ死兆星。

 まあ最初から知ってて聞いたんだがな。

 そりゃ、本来なら爆弾で吹っ飛んで死んでるはずの子だもの。

 死兆星くらい見えてるさ、そりゃ。

 

「クククッ……そうかそうか。やはり見えていたか」

「な、なんだよ! 何がおかしい!」

「そいつは死兆星だ、小娘。その星が見えた者には、近く死が訪れる不吉の星よ。

我が師フウゲンの言葉に倣うならば天の意思……天がお前を見放したのだ」

 

 普通なら眉唾物の話だ。しかしこの北斗の拳の世界では死兆星は特大の死亡フラグである。

 天によって勝手に決められた命のリミット。

 漫画として見ている分には何も思わなかったが、いざ当事者になってみれば、俺の思う事はクソくらえだ。

 

「下らんと思わんか?」

「えっ……?」

「俺達の選択、選んだ道、選んだ生き方……その果ての末路。その全てが天によって定められているとしたら、これほどつまらん事はない。自分で決めているようで全てが天に決められているとすれば、そんなのは天の操り人形だ。俺はそんな生き方をしたくはない」

 

 この世界での俺の基本スタンスはとにかく、天の意思に歯向かうことだ。

 何故なら天の意思に従うと、俺は死ぬ。我、殉星ぞ?

 天の意思なんてものが本当にあるとしたら、そいつは間違いなくケンシロウとユリアとリンの味方で、それ以外は駒と見なしている。

 この町なんて本来はケンシロウの哀しみを背負う第一歩として爆弾で全員死亡だ。

 作中でのフウゲンの言葉を信じるなら、ダンネ一家がケンシロウを荒野で救ったのは天の意思だし、ケンシロウが生きるのも天の意思だし、ケンシロウが救世主になるのも天の意思だし、人々がケンシロウの盾になるのも天の意思らしい。

 ……アホか。何だそりゃ。

 そんなんもう、天のラジコンじゃねーか。

 フウゲンやユリアといった宿命厨はそれを良しとしているらしいが、俺はそんな生き方嫌だね。

 それよりは、神だろうとぶっ飛ばして天を掴むというラオウの考えの方がずっと共感できる。

 まあ、奴は奴で色々やり方がおかしいんだが……。

 

「俺は天の意思に全力で歯向かう。その俺の前に、天に見放されたお前がいた。

お前の死の運命を捻じ曲げ、生かすことができたならば……それは、俺が天の意思に勝利したという小さな一歩となる。その為にお前を拾い上げたのだ」

「なんだよそれ……! そんなの、あんたが自己満足する為の道具ってことじゃないか!」

「そうだ」

 

 ダンネの言葉に、あっさり肯定を返してやると、彼女は面食らったように目を丸くした。

 

「それがお前の弱さだ。弱者は命どころか自分の死さえも自由にできない。ただ利用され、道具にされるのみよ。お前を道具にするのが天の意思か、それとも俺か……その違いしかない」

「……っ!」

「気に入らんか? だがお前が自由を得るには、俺を倒すしかない」

 

 俺が近付くと、ダンネは反射的に俺の頬を打とうと手を出してきた。

 その細い腕を掴み、こちらを強気に睨むダンネと眼を合わせた。

 この状況で怯みながらも屈しない精神力や良し!

 そのくらいでなければ、拾う意味がない。

 

「お前に俺の南斗孤鷲拳を授けてやる。俺から自由を勝ち取るだけの強さと執念をこの手に掴んでみせろ」

「……私が強くなったら、絶対あんたをぶっ飛ばしてやる」

「それは楽しみだ。無理だと思うがな」

 

 こりゃ完全に嫌われたかな。まあ残当。

 そして状況の理解と、決断が早い。

 ここまでの会話で、自由を得るには俺を倒すしかないこと……そしてその為には今は大人しくして、俺から拳を教わるしかないと分かっている。なかなか聡明な娘だ。

 俺はダンネの手を放し、机の上に置いていた鈴を鳴らした。

 するとドアが開き、侍女が数人入って来る。

 

「そいつの世話をしてやれ。適当に空いている部屋を与えろ」

「はっ!」

 

 侍女達はダンネを連れて退室し、入れ替わるように一人の女が入って来た。

 蜂蜜色の髪を腰まで伸ばした、美しい女だ。

 彼女はサザンクロスの最高幹部『クイーン』だ。立場としてはハート達四重臣よりも上で、俺に次ぐナンバー2となる。

 原作ならばクイーンの位置に相当していたのはユリアなのだろう。シンも「お前を女王にしてやる」と言っていたしな。

 しかし俺はユリアを迎え入れる気など全くない。なのでクイーンの座を空席にする理由もなく、別の人物を入れたのだ。

 

「珍しいわね、シン。貴方が目をかけるなんて……あの子から才能を感じたの?」

「いや? 無いとは言わんが、才能に恵まれた天才と比べれば明らかに見劣りするだろう」

 

 クイーン――本名はサラ。

 彼女はハート――アルフレッドの実姉であり、その出会いは核戦争前に俺が海外旅行に行った時にまで遡る。

 裕福な家庭でありながら、姉と弟の二人だけで暮らしていた彼女達は悪党にとって格好のカモだったのだろう。

 アルフレッドが誘拐犯に攫われ、弟を救出に向かったサラは悪党に殺されかけていた。

 彼女は剣術の達人だったが、その時使っていたのは剣ではなく棒であり、本来の実力を発揮できなかったのだ。

 あわや誘拐犯にナイフで刺される寸前、俺が割って入り、誘拐犯二匹を殺処分することで姉弟を救ったのが最初の出会いだ。

 ところでどうでもいいが、北斗の拳ってサラって名前の女性やけに多くね?

 確かトキ伝に登場したトキの意思を継ぐ女性の名前がサラだし、サヴァ国の王女の名前もサラだし、新・北斗の拳に登場した女医さんの名前はサーラだし、ダンネの母の名前はサヤだし。最後はちょっと違うか。

 

「では何故?」

「気まぐれだ。お前も知っての通り、俺は強く美しい者が好きだ。

死の運命に抗おうとするあの儚くも強い花を育ててみたくなった」

「あの子をアルフレッドのようにしてしまうおつもりで?」

「……それについてはすまんと思っている。だがハートがどうしてああなってしまったのか、俺にもよく分からんのだ……」

 

 サラの弟であるアルフレッドは元々は線の細い美少年だった。

 サラと並べば、姉弟ではなく姉妹に見えてしまうくらい華奢で頼りなく儚かったし、身長もサラより低かった。

 誘拐犯を倒した俺を見て、彼は言った。「僕も貴方のように強くなれますか」と。

 彼は、姉を守れるほど強い男になりたいと願っていた。

 俺はその彼の……あまりの弱弱しさを哀れに思い、同時に儚くも確かに燃えていた執念の炎を感じ、彼を鍛えてやることにした。

 そして俺が鍛えてから数年……何という事でしょう。あの儚く華奢だった美少年は、身長3mはあろうかというスキンヘッドで髭の肉達磨に進化してしまいました。

 ……どうしてこうなった? いやマジでどうしてこうなった?

 俺は普通のトレーニングをさせただけなんだが……。

 このあまりの変貌ぶりにサラは当然のようにショックを受け、弟に会いに来日した時は現実を受け入れることができず卒倒していた。

 その後サラは、「貴方に弟は任せられません!」と日本に残り、それから俺とサラの付き合いが始まったわけだ。

 

「ブッヒッヒッヒ。お呼びですか? KING、姉上」

「呼んでない。外で待機していろ」

「分かりました。ブッヒッヒッヒ」

 

 ボヨン、ボヨン、と自慢の腹を叩きながらハートがドアの向こうから顔を出したが、追い払っておいた。

 大きすぎてドアを通ることすらできていない。

 

「ああ……アルフレッド……! どうして……どうしてあんな……!」

 

 サラは額を抑えてよよよ、と泣き崩れる。

 うん……まあ、その……強い男にはなったから……。

 いや駄目かな。強い男になってほしいと望んでも、巨大な肉達磨になってほしいなんて望んでないもんな。

 唯一の救いは、ハート本人は今の自分を気に入っているということか。

 

「まあ、ハートは相当特殊なケースだ。流石にダンネはそうならん……ならんように、気を払うと約束しよう」

「そうして下さい。いや本当に」

「う、うむ……」

 

 

 さて、突然だが我がサザンクロスのイカれたメンバーを紹介しよう。

 我が軍はトランプの絵柄に当てはめた幹部の席を用意してある。

 まずはクイーン。本名はサラ。

 俺に次ぐナンバーツーであり、俺がいない時は全権を彼女に委任している。

 クイーンの下に四重臣。ハートを筆頭に、ダイヤ、クラブ、スペードがいる。

 四重臣とはいうが、ハート以外はぶっちゃけ大して強くない。というか弱い。

 もうちょっと詳しく言うと、ダイヤは原作でケンシロウに「スローすぎてあくびが出るぜ」と言われたアホ。

 クラブはケンシロウに約束を守ってもらえず二つに折れて死んだアホ。

 スペードは種籾でヒャッハーしたアホ。こいつに至ってはその辺のモヒカンと大差ないからそろそろ一般兵に降格しようか真面目に検討している。

 四重臣と同格であり、俺の直属の配下であるジョーカー。神出鬼没で人を動かすことに長けるとても有能な奴だ。

 それから南斗暗鐘拳のザリアに、南斗百斬拳のダンテ、その他諸々アニオリのKING軍の皆さんは大体配下に入れている。

 ただしバルコム、てめーは駄目だ。あいつは俺に取って代わろうという野心モリモリだったので問い詰めたらあっさり正体を出して俺に襲い掛かって来たので、バラバラにしておいた。

 それと、切り札として『エース』がいるが、そいつは今は別の場所に出向いている。

 エースみたいでやんした……。

 

「クイーン、現在空席はいくつある?」

 

 城内のホールで、部下達を集めた俺は玉座に座り、隣に立つクイーンへ声をかけた。

 

「今はジャックが空席ですわ」

「ふむ。ならば……ジュガイ!」

 

 俺はホールの片隅にいる、元同門にして今は新参の部下であるジュガイを呼んだ。

 俺と同じ南斗孤鷲拳の使い手ということもあり、皆が恐れて近付かないのでジュガイの周りだけ不自然に人がいない。

 

「どこかの馬鹿が水に毒を入れたせいで、この町がせっかく貯蔵していた水を全て捨てる羽目になってしまった。おかげで今、この町は水不足だ」

「ぐ……」

「シスカが予め、自分用に用意していた水が大分あったので、まだ切羽詰まってはいないが、いずれは尽きる。雨が降ればダムに溜まり、浄水器を通して飲み水にできるが……そう都合よく雨が降るとも思えん」

 

 俺はそう言いながら、ジュガイを睨む。

 水に毒を入れた馬鹿とは、何を隠そうこのジュガイだ。

 こいつ実はアホやろ。何で町奪うのに水に毒入れるかな。

 籠城をさせない為っていうのは分かるけど……そんなん、南斗孤鷲拳なら門を正面からブチ破って無理矢理突入できるんだから、水に毒を入れる必要なんかないだろ。

 実際本編でも、トラック突撃させてあっさり門を破って突入してるから、もう本当に意味分からん。

 幸いにしてシスカが自分だけは大丈夫なように20Lくらいのタンクを大量に隠し持ってたから何とかなるが……それも無限じゃない。

 なので早急に、どこかからか水を持ってこなきゃいけないわけだ。

 

「竜神山という山に巨大な湖がある。今は我が軍とゴッドランドが睨み合い、どちらも手に入れることができていない状態だ。

そこに赴き、現地で指揮を取っているパトラ、ドラゴンと協力して、神に選ばれたと抜かす軍人崩れを蹴散らして湖を手に入れてみせよ。

見事やり遂げた暁には、貴様に『ジャック』の名をくれてやろう」

 

 竜神山の湖は、アニオリで登場したエリアの一つだ。

 アニメでは山の麓に村があり、山にある湖を水源としている。

 そして湖の所有者であるパトラに貢物を差し出すように言われ、苦しんでいるというストーリーだった。

 しかし今の所、村なんかどこにもない。

 代わりにゴッドランドが湖を手に入れようと動いていて、俺の軍とかち合ってしまっているせいで、どちらも湖が手に入らず睨み合う膠着状態になってしまっていた。

 こちらの軍は南斗竜神拳のドラゴンと、幻術士パトラを指揮官に五千ほどの兵を送り込んでいるが、どうも苦戦しているようで援軍要請が来ている。

 そこにジュガイを送り込み、一気に敵を蹴散らしてしまおうというわけだ。

 ジュガイは俺には負けたが、原作シンと互角の男。こいつを派遣するのは原作で言えばKINGが直接現場に出向くのに等しい。

 ゴッドランドの総大将のカーネルとぶつかっても、ジュガイならば勝てるだろう。

 

 しかしゴッドランドか……正直目障りだな。こっちは早い所勢力を安定させて拳王軍や聖帝軍との衝突に備えなきゃいけないんだから、いつまでもこんな連中に構っている暇なんぞないんだが。

 いっそ俺が乗り込んで、ゴッドランド丸ごと取り込んでしまおうか?

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

【サラ/クイーン】

「北斗の拳イチゴ味外道伝 HEART of Meet」に登場。ハート(アルフレッド)の姉。

古流の剣術を習っており、誘拐犯二人相手でも優位に立ちまわるが、長棍では有効打を与えられず、返り討ちに遭ってナイフで刺されて死亡した。

彼女の死と血がハートにトラウマを植え付けたと思われる。

このSSの世界線ではシンが本来より早くその場に現れた為、生存。

強くなりたいと願う弟が日本に渡り、その後弟を追って日本に行った結果、完全体ハートと化した弟を見て卒倒。

以後、シンに弟は任せられないと自らも日本に住むが、結局ハートが元に戻ることはなかった。

そんな事情から、当初はシンとの仲は最悪だったと思われる。

現在はシンと共に修行を積んだりして、剣さえあれば拳王軍のレイナと渡り合えるくらいには強くなった。

 

【アルフレッド/ハート】

皆大好きハート様。ゴムのような身体を持つ拳法殺し。四重臣最強。

元々は線の細い美少年だったが、シンと出会い強さを渇望し、鍛え抜いた結果こうなった。

そうはならんやろ。

貧弱だった頃の自分を嫌っており、今の自分を気に入っている。

豚呼ばわりされることを失礼とする一方で、何故か自分で「ブッヒッヒッヒ」と鳴く。

強い男になれとは確かに言った。だが誰が豚になれと言った。

 

【ダイヤ&クラブ&スペード】

一応サザンクロス幹部の四重臣。

なのだが、ぶっちゃけそこらの盗賊団リーダーと大差ない。

こいつらは一般兵に降格でもいいかなと真面目に検討されてしまっている。

 

【パトラ】

某レアゲーハンターとは何の関係もない。

幻術士であり、ドラゴンとのコンビネーションでケンシロウを苦しめたが、最後は唐突に自ら剣で斬りかかってやられた。

そんな事をせず普通に幻術&炎のコンビネーションを続けた方がよかったのでは……?

竜神山の湖の所有者であり、麓の村に貢ぎ物を要求している悪女……なのだが、元々村の水源だった湖を後からやってきたパトラが勝手に所有物にしたのか、パトラの所有物だった湖の近くに勝手に村が作られたのかで、話は全く変わってしまう。

もし後者だった場合、そりゃ対価くらい寄越せという話になる。

まあ流石に前者だろう……多分。

 

【ドラゴン】

南斗竜神拳の使い手。後に登場するシュレンと同じかそれ以上に炎を操る。

ただ、パトラとのコンビネーション前提のようなところがあり、一人だと大した事がないのかもしれない。

彼の村にはシンが数日滞在したらしく、食料も豊富だったので案外内政では有能な可能性がある。

 

Q、こういうのって普通、主人公の介入で美少年のまま強く成長とかするものでは?

A、でも「ブッヒッヒッヒ」と鳴いてお腹ボヨンボヨンしてしてるハート様の方が私は好きです。

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